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遊月の俳句 < hajko >



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2002年1月

元日や鴎は波の揺らすまま

去年今年父なき部屋の文机

天命を知る歳なれど寝正月

留守番の炬燵に猫の寝息かな

オリオンの真下夜ふけのかえり道

古き家を訪ねて庭の梅もどき

舞う雪のなかを腕組み二人かな

法衣から携帯電話若き僧

電灯の消えて寒夜の月明かり

バスを待つひとびとの目に寒椿

風をきりまた風にのり冬かもめ

境内の砂ふむ音や梅ほころぶ

子は父の面影寄せて焚火かな

コンビニの袋ぶらさげ寒の雨

寒月や庭に貼りつく影法師

ストーブのひとつあたたか夜学かな

しんしんと冷気の海の底を行く



2002年2月

春立つ日道路工事の砂匂う

春暁や一面空の群鴉

立春のたまごごろごろ一人きり

一歩二歩さんぽは軽く麦青む

朝刊のインクの匂う浅き春

いつもより甘くなってる春のチョコ

春暁や木魚の丸き音つづく

ふるさとの山笑うなり大あくび

人間も家も炎に重戦車

春灯し送辞読む声二度三度

朧の夜道路密かに伸び縮み

雨降ってすこし暖か二月果つ



2002年3月

花道の子らに幸あれ紙吹雪

卒業やゆっくり進む車椅子

巣立つ子のやさしく強き言葉かな

春昼や餃子の皮のぱりぱりと

雪やなぎ一途に思いつめしこと

たんぽぽやホップステップスニーカー

妻も子も猫も休日春炬燵

子の語る旅行写真や春の夜

あたたかな窓あり電車は春野にて

春川の水まぶしくて君を見ず

温そうで実は冷たい春の雲

机ひとつ裸になりて異動かな

菜の花やご飯を食べて仲直り

舟べりに五羽の客あり春の川

旅立ちの朝は雨ふる傘に花

手に肩に荷物娘は家を出る

花冷えや主待つ部屋の青畳

空広くどこまで高く揚雲雀

花色の空にふわりと春満月



2002年4月

歯ブラシの一本減って四月かな

春風にプラスチックの花かざり

雨雲の空の重さを燕かな

目瞑れば咲いて散り逝く花の声

春眠やねこが文句をいいにくる

つきとおす鉛筆の芯花の冷え

はつ夏の国道銀鱗こぼしつつ



2002年5月

自転車をこいで青葉の街並木



2002年6月

青実梅また見てしまう父の夢

宿題に手をつけぬまま葱坊主

相席の紫煙のゆくえ薄暑かな

はつ夏のあしたに消えし面影よ

明易や昨日のことは済んだこと

陽の光るなかに夾竹桃の紅

立ち尽くす樹齢八百年の下

七夕や踏切で待つ終電車

炎天のふり返れない道標

カンナ咲く子供の飛び出しに注意

ふるさとや雨に打たるる花柘榴

夏帽子笑い転げて止まらない

砂山に砂の声聴く夏の雲

君の手に銀河飲みほすソーダ水



2002年7月

ふるさとは緑したたる山と河

片蔭の猫は薄目をそっと閉じ

夏シャツの笑顔のそこにありし頃

ごいさぎの休耕田に一羽立つ

雲の峰お腹が空いた起きようか

オクラホマミキサー夏の細き指

炎天の街白くなる人の影

夏雲を静かに馬の瞳かな

てのひらに雨蛙さあ跳びなさい

アスファルトに夏蝶にじみ消えゆけり

比べてはならぬならぬと花南瓜

氷カリッ光をはこぶ車、車

珈琲のかおりは深く蝉しぐれ

朝顔のことを言いつつ朝餉かな



2002年8月

猿笛を吹く少年の顔をして

瀧霧と化す千尋の断崖に

逆らわず付かず離れずくらげかな

真夜中のサイレン眠らぬ赤い月

チューブからぎゅっと絵の具を夏の空

顔寄せて老婆と老婆笑う日傘

約束の時間は痩せて夏終わる

青春は懐メロとなり晩夏光

写真帳開く母と子盆の家

コスモスや淡き心の風に揺れ

忘却の淵より遠く雷走る



2002年9月

日曜の家に音なし秋昼寝

虫の音の膚よりしみる湯舟かな

胸に抱く位牌を撫でる母の指

生きるとはそこに居ること竈馬

紙飛行機高く色なき風のなか

秋気澄む街を往交う輪郭線

返答を決めかねている秋薊

奈良漬をしゃりしゃりと噛む無口の子

樫の実を陽射にこぼす大樹かな

遠くから手を振るすがた萩の花



2002年10月

ときどきは頁繰る音虫の夜

朝寒や丸く猫抱く日曜日

コスモスの彩り街を新しく

秋夕焼ポンポンゆれるランドセル

列島にコスモス洪水注意報

くすぶりて涸井の底の枯葉かな

天高く尻尾をたてた猫のゆく

ただいまと猫はみやげにゐのこづち

秋雲の水面に浮かぶダム湖かな

山里はハーブの庭の赤のまま

黄落やきりんが星を食べるころ

雑草実り来年も増えてやる

木犀や黄昏に降る金の粉



2002年11月

秋雲の流れる影のなかにたつ

マラソンを観るのが好きな母の居間

木枯に舞う幾百の群鴉

煎餅は揚げないがいい文化の日

老若男女市民総合美術展

薄日さす窓カタカタと冬に入る

小春日の境内手に手に缶ビール

ショッピングモール賑わう風邪薬

やはり実を結ばぬ鉢の林檎草

小春日もありますフリーマーケット

冬日なか開きしままのしじみ蝶

休日の猫と朝寝の布団かな



2002年12月

雪雲や田畑に伏せる家並あり

微笑みて出あいがしらの手にみかん

年の瀬や子の好物を買揃へ

ぬくもりを纏いて冬ざれの街へ


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作成日 2003年8月15日