NEW YEAR'S DAY
「ねえ、グリフィン
?」歯をがちがち言わせながら、アクアは、隣にいるグリフィンに問いかけた。
「なんだ?」
極めて普通に、グリフィンはこたえる。
「すっごく、寒いんだけど
?」「そーだな。」
まだ真っ暗な空を、グリフィンは見上げた。
アクアのほうを、ちらりとも見ずに。
その様子を見て、アクアはむっとしたように
「ちょっと!」
と、グリフィンのコートの袖を引っ張った。
「なんだよ?」
「なんで、私達はこんなところにいるわけ
?」アクアは、眼下に広がる広い景色を指差して言った。
そう。
さえぎるもののない広い景色。
なぜならここが・・・。
丘の上だから。
新しい年を迎えて。
年末の大掃除をして、居心地のよい家。
その家ではなく、なぜ今この寒空の下、丘に登ってるこの状況。
しかも、訳もわからず
!
何の説明もなしに、アクアは家から連れ出されたのである。
もちろん。
グリフィンによって。
数時間前。
アクアは暖かい部屋の中でソファに身を沈めて、
1月1日の0時を迎えようとしていた。隣にはグリフィン。
片腕をアクアの肩に回して、しきり窓の外を気にしている。
そういえば・・・。
「グリフィン。」
アクアは、先ほどからずっと窓の外を見ているグリフィンに声をかける。
「え?」
グリフィンは、アクアのほうを振り向いた。
「なんだ?」
「さっきからずっと、外みてるけど。何かあったの
?」そう聞くと、
・・ん、まぁな。
グリフィンは答えた。
「ほら。天気予報で、今日は天気が崩れるようなこといってただろ。だから、気になってな。」
「でも、全然、雨も雪も降りそうにないじゃない
?」「みたいだな。」
なぜだかわからないが、グリフィンは嬉しそうな表情を浮かべる。
別に、出かけるわけでもないんだから、雨が降ったって構わないのに。
アクアは、少し不思議に思いながらも、視線を元の位置、テーブルの上に戻した。
目の前のテーブルには時計。
アクアは数分前から、この時計とにらめっこしているのだった。
数分後に、インフォスは新しい年を迎える。
それは、何度も同じ年、同じ日、同じ時間を繰り返していたインフォスにとって、久しぶりの新しい年なのと同時に、アクアが人間として迎える、初めての年越しなのだ。
インフォスに降りて
1年近く。アクアは様々な
"初めて"を経験してきた。それは、どれひとつをとってもドキドキする出来事で。
グリフィンにとっては、日常とさしてかわらないこの年越しも、アクアにとっては、一大イベント、というわけだ。
些細なことで喜ぶアクア。
最初は、何でこんなことを喜ぶ
?"
初めて"のことを経験するたびに幸せそうな顔をするアクアを見て思っていたグリフィンだが。しばらくすると、それがグリフィンにとっても特別なことだと、わかるようになった。
一人ではなく、アクアとする。
それは、自分にとっても初めてのことで。
経験したことがあることでも、違う喜びがあるということに気づいたからだ。
だから。
時計の隣において合ったマグカップをアクアはとって。
こくん・・。
あったかいミルクティーを一口飲む。
チッチッチ・・・。
新年まで、あと
1分。「えぇと、あけましておめでとうって、言うのよね。」
先日、教えてもらったばかりの言葉を、小さな声で復唱する。
あと、
15秒。15,14,13,12,11
・・・。ドキドキする。
5,4,3,2,1
・・・。長針と短針、そして、秒針が重なる。
新しい年。
「あけまして、おめでとう!!」
グリフィンの顔を見上げて、笑顔を浮かべる。
「あぁ。おめでと。」
グリフィンも、答える。
新年の挨拶を終えると、グリフィンはソファから立ち上がり、窓に近づく。
「・・・大丈夫、みたいだな・・・。」
ガラス越しに空を見上げて、呟く。
一方のアクアは、新しい年を無事迎えて、挨拶もしたことだし。
あとは寝るだけ、のつもりだった。
マグカップを流しにもっていって、洗っていて。
でも、グリフィンの言葉が耳に入る。
「何が、大丈夫なの
?」マグカップを洗い終わって、グリフィンのほうを振り向いたアクアが見たのは、コートを着ているグリフィンだった。
「グリフィン
!?」まさか、カードでもしに行くとか
?新年早々
?「寝ないの
?どこか、でかけるの?」すると、グリフィンは、アクアのコートも取り出した。
「ほら。」
そして、アクアに着せる。
「え。私も
?」じゃあ、カードじゃないってこと?
「ねえ、グリフィン
?」何も教えてくれないグリフィンに、黙ってコートを着せてもらいながらも、疑問の表情を投げかける。
「いーから。」
アクアの首にマフラーを巻きつけながら、グリフィンはそれだけ言う。
「よくないけど・・・。」
ぶつぶついっても、グリフィンは教えてくれない。
ま、いつものことといったら、いつものことだけど。
アクアはため息をついた。
黙って、驚かされるしかないみたい。
「こんなもんか。」
アクアの頭に、帽子をかぶせて。
グリフィンは満足げににやっと笑った。
「んじゃ、いくぞ。」
自分の首にもマフラーを巻いて、グリフィンはアクアを外に連れ出した。
で。
街を抜けて、野原を抜け、丘をのぼり。
数時間後の、今に至るわけだが。
丘の上には、強い風が吹いていて。
顔に、遠慮なく冷たい風が吹き付ける。
信じられない寒さ。
歯が、かみ合わない。
夏は、あんなにも暑かったというのに。
「いーから、黙って待ってろって。」
「そんなこといったって、もうすぐ、夜明けなんじゃないの
?」腕にしている時計を覗き込んで、言う。
もう、ここに到着してから大分経つ。
先まで、真っ暗だったのに、少し、明るくなってきたようにも思える。
「ねぇ、寒いってば・・・。」
「もうすぐだからよ。」
そういうと、グリフィンはアクアを腕の中に引き寄せた。
アクアは、グリフィンの腕の中に、すっぽりとおさまる。
コート越しにグリフィンの体温が感じられて、なんだかくすぐったい。
「くっついてりゃ、あったかいだろ。」
そっけない言い方。
いつもの照れ隠し。
アクアはこっそりと笑う。
「なんだよ?」
すぐに気づいて、声をあげるグリフィンに。
「別に、なんでもないけど
?」笑いをかみ殺しながら、アクアは答えた。
「うそつけっ。」
そんな軽く言い合いをしていると。
急に。
アクアとグリフィンの視界の、ちょうど目の前の山際が、赤く染まっていく。
「始まったか。」
グリフィンは、言った。
その言葉に反応することなく、アクアは目の前の光景に見入っていた。
二人が見つめている間にも、どんどん、周りは明るくなっていく。
そして・・・。
「・・・!!」
アクアは息をのんだ。
ぱぁぁ・・・
山の頂上から、日が顔を出す。
アクアにとって、初めて見る日の出。
2
人の顔が、赤い光に照らされている。「・・・すごい・・・!!」
あまりに、綺麗な光景。
すごい。
それしか言えずに、ただただ、見つめる。
「どーだ?」
徐々に高く上がっていく太陽を見ながら、グリフィンはアクアに問う。
アクアは、というと。
グリフィンの言葉を聞くとぐるりと身体を反転させて、グリフィンの顔を見上げる。
「これを見せてくれるために、ここに来たの
?」アクアの瞳は、輝いている。
そう。
グリフィンは、この表情が見たかったのだ。
「まぁな。」
得意げににやりと笑う。
「すげぇだろ?」
アクアは、ぶんぶんと首を振ってうなずいた。
「すーっごく、素敵
!・・・でも・・・」でも。
そういった後、アクアは
「だったら、最初からそう言ってくれればよかったのに。」
と続ける。
そうしたら、文句なんて、言わなかったのに。
「なーに言ってんだ。」
そんなアクアに、グリフィンは言う。
「教えちまったら、感動も薄れちまうだろ。」
「そんなこと・・・。」
「別に、いーじゃねぇか!・・・日の出も見たことだし、帰るぞっ。」
くるり、方向を変えて。
グリフィンは丘を下り始める。
アクアは、慌ててグリフィンの後を追った。
「ちょっと、グリフィン、待って
!!」小走りで追いついて、グリフィンの腕に、手をかける。
自然に、手を繋ぐ。
「お前、手ぇ、冷えきってんじゃねぇか。」
アクアの手に触れたグリフィンは、そう言って強く、アクアの手を握る。
「だって、手袋つける間もなかったんだもん。」
ほっぺたをふくらませる。
「わーるかったな、急かせてよ。」
言うと。
グリフィンはアクアの手を、自分のコートのポケットに突っ込む。
「これでどーだよ?」
「うん、ちょっとあったかいかも♪」
機嫌よく、アクアは笑った。
普段は、外では手なんてめったにつないでくれないグリフィンなので、嬉しくて仕方ない。
「でも、いいの?」
めずらしことなんだから、黙って喜んでればいいのに。
嬉しく思いつつも、ついついたずねてしまう。
するとグリフィンは。
ややあってから
「新年早々、こんな時間に出歩いてるやつなんていねーって。だから、いーんだよ。」
と答える。
繋いでいない方の手で、マフラーを口元まで引き上げる。
グリフィンの顔が赤くなっているように見えるのは、気のせいではないだろう。
「そういうものなの?」
「そーいうもんだ。」
外であっても。
人が見ていなければいいらしい。
アクアの新年は、とびきりうれしい幕開けだった。
決して。
決して忘れられないだろう。
一方で。
「新年早々、こんな時間に出歩いてるやつなんていねーって。だから、いーんだよ。」
なんてことを言っていたグリフィンは。
野原を抜け、街に入った瞬間に。
普段のその時間よりもずっと多いニーセンの街の人々に目撃され。
その後しばらくの間。
「カーライルさん夫婦は、いつも仲良わねー。」
なんて。
街へ出るたびにひやかされることになり。
正月早々バツの悪い思いをした、らしい。
これも、ある意味忘れられない出来事となったのである・・・・。
―――――
How about you? ―――――
―
END ―
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新年のお祝いに
かずし様からいただきました
アクアちゃんとグリフィンの創作です。
相変わらずラブラブで初々しい
ですよね〜。羨ましいです。
好きな人と一緒に
することは、きっとどんなことも
大切な想い出になるんでしょうね。
かずし様、ありがとうございました!
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