SUNFLOWER

 

 

 

抜けるような青空。

照りつける灼熱の太陽。

夏真っ盛り。

 

 

インフォスの南に位置するキンバルトのニーセンでは、例年どおりの暑さが続いている。

とはいえ、朝はまだ日も高くなく、そこまでの暑さではないのだが。

そんな夏のある朝。

キンバルトの外れにある大きな古い家からは、大きな声が聞こえてきていた。

「グリフィン!起きて!!」

大声を出しているのは、この家に住む若奥様、アクア。

寝室のベッドの横で腰に手をあてて立っている。

呼びかけられている人物、グリフィンはというと、枕に顔をうずめて眠っていて答えない。

「グ〜リ〜フィ〜ン〜!?

もう一度、アクアは呼ぶ。

それから、軽く肩を軽く揺さぶる。

「・・・んだよ・・・」

ややあってから、くぐもった声で返事が返る。

もちろん、起き上がる気配は全く感じられないが。

「起きてってば、ねえ、早く!!」

アクアの苛立った声にも構わず、グリフィンはベットの脇に仁王立ちのアクアとは逆の方に枕を抱え直して寝返りを打つ。

一瞬、眩しい光が目に入る。

それもそのはず。

寝室のカーテンは既に開いていて。

窓は全開。

開け放たれた窓からは、微かに風が入ってくる。

アクアの仕業だ。

「・・・んで、カーテン全開なんだよ。」

「朝だから。」

不機嫌さを隠さずに言うグリフィンに、アクアはきっぱりと答える。

まったく、可愛げってもんがねえ。

グリフィンはため息をついて、最後の抵抗に出た。

「俺、昨日遅かったんだぜ?

「知ってるわよ?」

同じだけ、アクアも夜更かしをしていたのだから。

知らないわけがない。

「全然寝てねーんだぜ?」

「だから、知ってるってば!!」

「わかってんだったら、もう少し寝かせろ。」

なんなら、お前も一緒に寝るか?

にやっと笑いながら言って、アクアを引っ張ろうとしたグリフィン。

だがアクアは。

一瞬にこっと笑った後で。

でも・・・。

「それとこれとば別!!」

と言って、グリフィンから枕を取り上げた。

 

20分後。

グリフィンはまだ眠気覚めやらぬ様子で、裏口にいた。

結局、あの後で無理やりベッドから引きずり出されたのだ。

水道から伸びるホースを、庭まで引っ張っていくのだ。

「まだ7時じゃねーか。」

先ほど、外に出る前に見た時計は、普段彼が起きる(起こされる)時間よりも優に2時間は早かった。

「なんで、こんな朝っぱらからメシも食わずに庭の水撒きなんだよ。」

まだ眠いっつーの。

なんて。

ふぁぁぁ。

でっかいあくびをひとつ、しながらぼやく。

「だって。」

と。

いつの間に来たのか、後ろからアクアの声が聞こえる。

振り返ると、アクアはじょうろを持っている。

「庭の水撒き、大変だし、それに。グリフィンに見てもらいたいものがあるのよね。」

「水撒きったって、こんな朝早くやる必要ねーだろ?」

「夏はね、水撒きは朝早いうちにやらなきゃダメなの!

アクアは呆れたように言った。

「なんでだよ?」

「水がお湯になっちゃうから。」

「はぁ?」

グリフィンは目を丸くした。

「なんだよ、そりゃ?」

「だって、ユリアさんが言ってたもの。」

「ふーん。」

水が・・・お湯に、ねぇ。

それにしても、アクア、俺がしらねぇうちに、交友関係を広めてるみてぇだな。

まあ、女ならいーけどよ。

「ま、いーけど。それよりも。」

俺に見せたいもんって、なんだ?

グリフィンは、ホースを片手で弄びながら聞いた。

すると。

「そう!!」

アクアは、顔を輝かせた。

「来て、来て♪」

じょうろに水を入れるつもりで来たらしいのに、それもしないで庭に向かってグリフィンの腕を引っ張っていく。

庭を見た瞬間、グリフィンはあんぐりと口をあけた。

目に入ったのは、鮮やかな黄色。

「・・・咲いたのか?」

グリフィンの目に入ったのは、庭の片隅で力いっぱい咲いている、ひまわり。

どれも、太陽の方を向いている。

それにしても、あのひまわり・・・。

「へぇ・・・。咲くもんだな。」

「ね、絶対咲くって言ったでしょう?

ふふん。

アクアは得意げに言って、胸を張って見せた。

それを見て、グリフィンはあることを思い出したのだ。

 

 

あれは4月だったろうか?

戸棚の中に、布の袋を、アクアが発見したのだ。

「ねえ、グリフィン、これ何?

アクアは、袋を開いて見せた。

「ねえ、これって花の種よね?

目を輝かせて、アクアはたずねる。

なんだかいやに楽しそうだ。

「あー?ひまわりの種だろ?

これ、炒めて食うと上手いんだぜ。

種をひとつつまんで、言う。

でも、これって、いつの種だ?

思考をめぐらす。

ひまわり、なんて、ここ数年この家で見たことないぜ?

もっとも、アクアが来るまでは、ここに住んでいるのはグリフィンだけだったし。

自分にはひまわりを植えたことなんてないから、見るわけがないのだが。

となると、これはずいぶん前の種だと言うことになる。

「ねえ、グリフィン、これ、植えたら花咲くかしら?」

「ずっと昔んだぜ、それ。咲かねぇだろ。」

「植えてみてもいい?

「・・・お前、話聞いてないだろ・・・。」

「だって、咲くかもしれないじゃない。やってみないうちに決めるなんて。」

だめよ。

アクアは言う。

「やってみるもなにも、もう何年も前の種だぞ?

「らしいわね。」

「無理だって。」

それよりも、炒めて食った方がいい。

「ひまわりの種も、植えられて芽が出ないよりも、俺に食われた方が本望だって。」

無茶苦茶なことを言って、アクアから袋を取ろうとする。

が、アクアは袋を後ろに隠した。

「じゃあ、賭ける?

「は?」

「これを植えてみて、花が咲いたら私の勝ち。咲かなかったら、グリフィンの勝ちね。」

「なんだよ、それ。」

「私が勝ったら、グリフィン、私の言うこと聞くのよ?

言うことを・・・ねぇ?

「じゃあ、俺が勝ったら、アクアが俺の言うこと聞くってことか?

「そうよ。」

ふーん。

言葉を返しながら、アクアとひまわりの種とを見比べる。

にやりと笑みを浮かべて。

「いーぜ、その賭け、のった。」

自慢じゃねぇが。

俺はギャンブルには強いんだぜ?

ま、言うこと聞いてもらおうか。

「じゃあ、私これ植えるから、グリフィン手伝ってね?

「ったく、しょーがねーな。」

賭けの勝利を疑いもしなかったグリフィンは、その後種まきを手伝いながらも、勝負が終わったら何をしてもらおうかとにやにやしながら考えていたのである。

 

 

そして、4ヶ月。

目の前にあるのは、力いっぱい咲いている、ひまわり。

グリフィンの負けである。

実はグリフィン、今、ひまわりを見るまで、そんな賭けについては忘れていた。

なにせ、4ヶ月も前のことだし。

その上、この4ヶ月の間にはいろんなことがあったからだ。

だが、アクアは毎日ひまわりの世話をしていたらしい。

ひまわりは、ずいぶん生き生きとしているし。

しかも、高く成長している。

「へぇ。」

グリフィンはもう一度呟いた。

あのひまわり、咲いたのかよ・・・。

つーことは・・・。

「賭けは私の勝ちね?」

いつもグリフィンが浮かべるのと同じで。

アクアはにやりと笑って見せた。

まったく、憎らしいほどの笑みである。

「そうみてーだな。」

賭けに負けたことを悔しく思いながらも、グリフィンはアクアの笑みにどきりとする。

何年経っても、慣れる事がない、無邪気な笑み。

まぶしさをかんじる。

「何を聞いてもらおうかな〜♪」

いいながら、アクアは庭に水を撒きはじめる。

ひまわりが咲いたのがよほど嬉しいと見えて、鼻歌つきで。

「いつも、言うこと聞いてやってね―か、俺?

こっそりぼやきながら。

そんなアクアを見つめるグリフィンなのでありました。

 

 

 

― END ―

 

 

 


「MY FAVORITE」のかずし様の

残暑お見舞いSSです。

ひまわりの種、おいしいですよね。

香ばしいし、油も取れるし。でも

種って何年経っても

わりと芽が出るみたいです。爽やかに

ラブラブなグリフィンとアクア

さんが微笑ましいですね(^^)。

かずし様、ありがとうございました!

 

 

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