旅のエピソード:1:オーバー・ブッキング遺跡以外でもっとも印象的だったのは、メキシコの航空会社による国内便のオーバー・ブッキング(予約超過)でした。航空機の座席の数以上に予約を受けつけるので、誰でも予想できる混乱が生じます。理由は幾つかあります。当日無断キャンセル分を見越して、多めに予約を受けておく。正規の料金でも搭乗したい客が当日に現れれば、割引料金の予約の客を押しのけて、席を割り振る。こうして、航空券を手にして、リコンファームもしてありながら搭乗券をもらえない客がカウンターで、メキシコへは2度と来るまいと決心します。
私の場合、ケツアルコアトルの降臨という一大イベントと重なったためか、悲惨な移動となりました。行程表どおりなら、メキシコシティ→オアハカ→ビヤエルモーサ→メリダ→(バス)→カンクン→メキシコシティという無理のない順序で航空機を利用できるはずでした。ところが旅行出発数日前に、ビヤエルモーサからメリダへの便のオーバー・ブッキングが解消できる可能性が極めて少ないという旅行業社の判断で、ビヤエルモーサからメキシコシティへ戻り、そこからメリダへという便に変更されました。搭乗日間際ではこちらの都合に合わせた時間帯の新たな予約を取れるはずもなく、午後8時に着陸、夕食が午後10時、バッゲージダウンが午前3時30分で、離陸が午前8時前という、ベッドでの睡眠が3時間の日々が続きます。また、地方空港の滑走路で2時間も座席に座りました。パック旅行のチラシにそう印刷されていたら、誰も参加しない、という行程になってしまいました。
ある便では、離陸直前の航空機の通路で、搭乗券を手にした2人の女性がうろうろしていました。スチュワーデスとのスペイン語の会話は聞き取れませんが、座席の数字とアルファベットに関して口論しているようでした。察するに、どの列も6席あるはずなのに、搭乗券に記載された列にはABCの3席しかなく、DEFに相当する場所は、機内食の格納スペースだったのです。その2名は航空機を降りていきました。
メキシコシティからメリダへの便では、グループの26名中、5席足らない、という状況になりました。若い添乗員は泣き顔で、私を含む、1人で放っておかれても日本へ帰れそうな5人に残ってくれと頼みました。その日の最終便でしたし、明日乗れるとは誰も保証せず、明後日のケツアルコアトルの降臨に間に合わなくなる可能性が生じます。この旅行は春分の日にそれを見るということを第1目的にうたっています。ホテル代や旅行代金の払い戻し、慰謝料が発生するかもしれません。そして同様のトラブルはメキシコ中で起こっていると想像されました。さらに信じがたいことには、離陸直前に5席空席になってると判明し、私たちは乗り込むことができたのです。
良く言えばおおらか、きつく言えば前近代的な経済社会のペソは値下がりを続けることでしょう。