スピーチ at 飯坂ロータリークラブ 2006年8月31日(木)
遠藤孝秀と申します。この度は、お招きいただき、地域活動を紹介する機会を与えていただきまして、感謝申し上げます。実は、飯坂ロータリークラブさんでスピーチするのは二度目でして、前回は7年前でした。その時は、私が高校生の時に仙台のロータリークラブから交換留学生としてアメリカに派遣していただいたこと、また、ちょうど観光協会に青年部が出来て、そのお話をした、と記憶しています。ご覧のように、もう私は青年とは呼べない年齢ですので、今日は、飯坂町周辺地域づくり協議会のお話しをさせていただきます。
長時間のスピーチは、聞くのもするのも好きではありませんで、20分ぐらいで終われるようにまとめてみました。きっとご質問がおありでしょうから、残った10分間を質問と答えにあてたいと思います。
今現在、目に見えてわかる飯坂の変化は、旧若喜旅館本店の解体工事です。そうなるに至る経緯は、すべてこの二年間に起きました。
…旅館組合が焼け跡地を買う。
…福島県が、飯坂を何とかしたいと提案し始める。
…福島市と福島県が、地域づくり協議会の前身である懇談会を造ったらどうかと打診する。
…懇談会が出来る。
…福島市が飯坂町地域再生計画を国に提案し、小泉首相から承認を受ける。
…懇談会からの県と市への提案書に、最優先事項として焼け跡撤去と整備が盛り込まれる。
…福島商工会議所が旧若喜解体目的の1,000万円の寄付を福島市にする。
…地元でも、飯坂ロータリークラブさんも参加してくれた募金運動が始まり、890万円と6,400名の署名が、福島市へ提出される。
…地域づくり懇談会が発展的に解散し、飯坂町周辺地域づくり協議会が発足する。
…福島市議会が予算案を承認する。
…福島市が国交省のまちづくり交付金を受け、それに福島市の予算を足した30億円から、焼け跡撤去の補助が、地権者の旅館組合に出される。
…旅館組合が解体工事を行う。この後は、
…来年二月に解体工事が終了する。
…300坪の更地が、旅館組合から行政へ寄贈される。
…来年度、協議会が既に作成した整備案が最大限に尊重されて、福島市が整備を始める。そうして今現在、解体工事が行われています。こういっためまぐるしい動きの中で、県も市も、特定の業種で構成されていない、また、ある特定のエリアのテーマを絞られた町づくりをする「新しい住民団体」を求めました。おそらくは、それが、国交省からまちづくり交付金を受ける条件だったのではなかったか、とも考えられました。
焼け跡解体は、これから、少なくとも平成22年度まで続く福島市による飯坂地区都市再生整備計画の最初の一歩です。皆様方の手元へお配りした地図には、福島県と福島市と協議会によって承認された33ヘクタールを点線で示されていますが、この中で、下水道工事、11本の福島市道の美装化、焼け跡撤去後の整備、もてなし空間の設置、飯坂温泉駅へのエレベーター設置、二カ所のポケットパーク、堀切邸の整備、が続きます。福島県の担当としては、温泉駅前から翠月旅館さんの交差点までの県道整備、ガードレール、十綱橋の欄干と街灯、摺上川の整備と続きます。
すでに別の懇談会が存在する堀切邸内部の整備と、6年目を迎えた湯沢の協議会が担当する湯沢通りは若干関係が異なりますが、それらの全てを、決して決定権を持っているわけではないのですが、福島県と福島市がこの33ヘクタールの地域づくりにおいて第一義的に協働すべき住民側の組織が、「飯坂町周辺地域づくり協議会」だと言えます。
ここでちょっと論点を変えます。それは、飯坂における観光業とは何なのか、ということです。すぐに頭に浮かんでしまう答えは、「旅館だ」ということです。私が飯坂へ来たばかりのころは、私もそう考えていました。でも、実際に旅館の営みにタッチしていくと、「飯坂=旅館」という認識は極めて不十分である、と感じました。
夏から冬にかけては、果物を宿泊客へ提供しますが、果樹農家があればこそ、可能です。お客さんがホステスを呼べ、と言った時に、置屋さんがなければできません。二次会の店を紹介しろ、と言われたとき、飲食店があるから、案内できます。畳が傷んだとき、灯油が欲しいとき、食材が欲しいとき、すぐに配達してくれる商店がなかったら、とても困ります。また、温泉駅に降りた宿泊客が、「○○旅館はどこですか」と地元の人に尋ねたとき、親切に教えてもらえれば、幸せな気持ちで旅館の玄関に入ることができます。
飯坂の観光業とは、それらのすべての総合体であり、宿泊業だけが身分制度の上位にあるかのように突出しているのではなく、農業、商工業、人材派遣業、飲食業、町の人たち、そして宿泊業のすべてが含まれているのだ、と感じました。繰り返しますが、飯坂の観光業とは、決して、宿泊業だけではない、ということです。
さらに視点を変えてみましょう。福島市と国は何故30億円も投入するのでしょうか。地方自治体は税収の自然増加を望みます。福島市の場合、工業化で失敗しましたので、成長する可能性のある業種はおおむね、観光農業と宿泊業だと考えられます。そしておそらく、福島市は、観光業には二種類ある、と判断しているはずです。立ち去り型観光と宿泊型観光です。立ち去り型観光地の例は、花見山であり、古関裕而記念館であり、民家園であり、四季の里です。宿泊型観光地の例は、高湯、土湯、飯坂の温泉地です。何が異なるのか? 答えは明らかです。立ち去り型観光と宿泊型観光では、個人の消費単価が二桁違います。四季の里でアイスクリームを食べてもらっても270円しか使われませんが、温泉旅館に泊まれば平均15,000円を消費してもらえます。だからこそ、行政は温泉地へ大金を投資して、税収の自然増を狙うわけです。つまり、行政は税金を温泉街へ投入したい、ただ条件がある、税金投入に値する人たちが住んでいる温泉地ならば、という条件があったのかもしれない、と今私は感じています。
また、視点を変えてみましょう。飯坂温泉地はどうして、右肩下がりの温泉地になってしまったのか、という分析です。私が旅館組合青年部員だった頃、盛んに先進地研修をしました。草津温泉、湯布院、黒川温泉、別府温泉、宿泊業はありませんが、愛知県で山城を復元した足助町、栗菓子の小布施町。そのうちの成功した観光地が備えていて、飯坂にないのは何なのか、とみんなで考えてみました。観光地により姿は違っても、観光客が写真を撮りたくなるエリアが200m四方の広さに造られている、という共通点に気づきました。飯坂には、医王寺やなかむらやさんや、後に鯖湖湯がありましたが、残念ながら、点としての写真スポットであり、200m四方の広さを持つ連続性はない、と気づきます。
200m四方の意味は何なのか。それは、「200m四方に魅力が詰まっていて、歩いて味わうには3時間かかる、となれば、そこの温泉街のどこかの旅館に泊まるのが、自分には好都合であると観光客が判断する」という意味だと思われます。
花見山のような立ち去り型観光地の特性は、高速交通網が発達した今日、花見山を午後3時に見終えて、高速道路を走り、宮城県の秋保温泉でも会津でも、そこの夕食の時間までに到着できる、ということです。福島市の3温泉地に花見山から流れる宿泊客は、増えてはいますが、25万人の何割にも達していません。何故、余所の温泉地へ流れてしまうのか。それは、福島市の3温泉地に、魅力ある200m四方がないからだ、と考えられます。
ないのだから造ればいいんです。皆さん方の手元にあるマップの真ん中の四角い部分は400m四方の広さを持っています。同時に、400m四方の真ん中に一級河川が流れています。そして、温泉街の周囲は果樹園で囲まれており、ちょっと離れて医王寺があり、整備されつつある舘の山桃源郷があり、かなり離れて摺上ダムもあります。この400m四方が整備されれば、日本の他のどの温泉地にも負けない地域が出来上がります。
その整備されるべき400m四方に汚点がありました。旧若喜本店の焼け跡です。湯沢通りの方々などの多くの方々の努力がなされても、いったん話題が焼け跡に移ると、飯坂に関する口調は急に暗くなりました。でも、それもみんなの力で解決されようとしています。
数年後、このマップの400m四方が写真エリアとなり、桃源郷や摺上ダムがリンクされ、そういう温泉地へは東京駅からわずか2時間で来れる立地を持つ温泉地は、他にありません。皆さん、実は、飯坂の近未来は桃色に輝いています。
先々月、石川県の北陸中部新聞社の加賀支局の支局長さんが、飯坂を視察に来ました。お話を聞くと、加賀温泉郷は、飯坂以上に惨憺たる状況のようでした。今更ながらに加賀温泉郷の旅館の方々が「住民と一緒になって地域を造ろう」と口にしているが、住民は誰も耳を傾けない状況がある。国交省の町づくり交付金を受けた温泉地で行政とうまくやっている先進地を探したら、日本で飯坂温泉地だけだったので、どうしても現地を見たかった、とおっしゃっていました。「飯坂が先進地」と言われて、私は、正直、とまどいました。まあ、「先進地になりかけている温泉地」だとは言えないことはないでしょうが。
また、今月には、国交省関係の代議士さんたちが福島県の特区と地域再生の視察に訪れ、地元説明会が開かれましたが、民間で呼ばれたのは、私たちの飯坂町周辺地域づくり協議会だけでした。
二年前を振り返りますと、もしかして、旅館組合が借金をして焼け跡を買ったとき、福島県と福島市の方々は、「飯坂に新しい住民団体が欲しい、その住民団体は、そういう外部からの評価に答えられる団体構成でなければならない」と、前もって考えていたのかもしれません。協議会を構成団体を整理すると、以下のようになります。
…33ヘクタールにある18の町内会から36名。
…飯坂地区と湯野地区の町内会連合会から1名ずつ。
…飯坂方部女性団体連合協議会から2名。
…飯坂町商工会、飯坂温泉観光協会、飯坂温泉旅館協同組合から2〜4名ずつ。の、全員で53名です。
このような、かつての飯坂ではあり得なかった団体はうまくいっているのか。答えは、最初からすべて順調にいっているとは言えません。なぜなら、私も含めて、行政が用意した30億円の使い道に住民の立場から組織として関係する、などという経験がまったくないからです。それでも、協議会が発足して四ヶ月たち、三つに分かれた委員会のそれぞれで、「福島市道の美装化の路線や美装化の有り様」「焼け跡撤去後の整備案」「もてなし空間の具体的なシステム」がここ一ヶ月の間にまとめられてきました。おそらくは、協議会はきちんとやっていけます。そして協議会の基本理念は、明文化しているわけではありませんが、「(私を含む旅館組合や観光協会からの)旅館の人が、住民を地域づくりの対等のパートナーとして認め、旅館へ宿泊客を呼ぶためだけに協議会活動が行われるのではない」という一点だと思っております。
行政と協働する協議会活動はどのような影響を地域にもたらすか、と、概念的に想像してみましょう。
1,「住民とお客様のための地域づくり」を行う協議会により、「住民とお客様のためになる地域」ができます。
2,協議会の他の組織(観光協会、旅館組合、商工会等)は、「住民とお客様のための地域」を、これまでの飯坂になかった新しいセールス・ポイントとして取り上げ、「誘客宣伝活動」をやりやすくなります。
3,「住民とお客様のための地域」は、ちょうど鯖湖湯がそうであったように、口コミやマスコミによる無料の紹介を誘発するでしょう。
4,住民参加により造られた「住民とお客様のためになる地域」であるが故に、「飯坂には何もないよ」と言い放つ住民は激減し、「住民とお客様のためになる地域」のパーツの維持管理を住民が行うこと(鯖湖湯そばの足湯、鯖湖湯そばの売店、舞鶴の松、湯野の足湯の清掃等が、今日も住民の手でなされています)が可能になります。皆様方にお配りしたのは、「協議会ニュース」です。この第一号は6月末に、飯坂支所のご厚意で、飯坂地区と湯野地区の3,570戸に配布されました。第2号は9月末か10月末に予定しています。
行政との協働により、これから下水道工事や道路の美装化の工事などが始まります。また、エリアを限定して、ちょうど湯沢のまち環で行われている修景整備も準備が始まります。なにとぞ、多少の一時的な不便はあっても、飯坂の「住民とお客様のための地域づくり」にご協力いただけると幸いです。
飯坂町周辺地域づくり協議会活動は、これから何年も続きます。ご理解、ご参加、ご協力をよろしくお願いします。
どうも、私が講演をするとお説教めいた口調になってしまうようで、申し訳なく思っていますが、すみません、変えられません。それでも長々とお聞きいただき、ありがとうございました。