事前のアドバイスがありました。7ドル(924円)のガラベーヤを100ドル(13,200円)で売りつけられた例があります。10ポンドの品物を50とか100ポンドで売っていると思って下さい。言われた値段で買わないで下さい。値段が決まるまで、お金は出さないで下さい。釣り銭はよこさないと考えて下さい。4ドルのおつりをよこさないで、別の品物を4ドルにまけますと言って、返してくれません。ぴったり持っていない場合は、お金を渡す前に、「フォー・ダラー・バック」と言って、おつりをもらってからにして下さい。帽子やカメラを店のどこかに置かないで下さい。ジュースをすすめられたら、必ず「ノー・サンキュー」と断って下さい。背負っていたリュックが剃刀で切られて中身が盗まれたことがあります。リュックは胸の前に回して下さい。金、銀、革製品は高価です。品物に裏切られた時のショックが大きいですので、買わないで下さい。
ハン・ハリーリ市場 では、何を買ったらいいのか。お勧めは香水の瓶で、小さい物で3〜4ドルが適正な値段です。日本に帰るまでに割れやすいので、スポンジでくるんでもらって下さい。ガラベーヤは20ポンド(760円)ぐらいで、飾りの皿は小さいのが15ポンド(570円)、大きいので20〜25(760〜950円)ポンド程度です。バナナのパピルスはすぐに破けますが、「ジューマイ・センエン」の類ですから、「30枚から50枚で1,000円」が適当でしょう。水タバコの機械は50ポンド(1,900円)ぐらいで、大きければ100ポンド(3,800円)です。日本では売っていませんので、タバコの葉も忘れずに買って下さい。アラバスターは偽物が多いので、やめておいて下さい。15?Bから20?Bの小さな彫刻なら40ポンド(1,520円)ぐらいです。私はずっと、メインの通りの喫茶店、あとでそこで水タバコを飲めます、待っていますから、トラブルや喧嘩があったら大声を出して下さい、飛んでいきます。
ハン・ハリーリ市場は西暦14世紀から続いていると言われています。あらゆる路地の交差点に観光警察官が立っています。私は1個10ポンド(380円)という言い値のトランプを15分かけて2個13ポンド(1個247円)まで値切り、店員の髭の男では決済ができないから、ちょっと待ってと、若い親玉らしき男を呼んできて、2個14ポンド(1個266円)ならオーケーというのを、2個13ポンド(1個247円)で押し切って、あなたは良い買い物をしたと若い親玉に誉められました。
ちょうど春祭で、店は九割方、閉店していました。 金属の盆は、裏返すとメッキが剥がれていたり薄くなっていたりして、かなりの粗悪品のようでした。アラバスターやラクダの骨の像は、二束三文の代物に見えました。トルコ石や真っ青な石を使った貴金属は、石そのものはまあまあの見栄えですが、金属部分に目を懲らすと、作りの荒さが目につきます。そういう商品を、時間をかけて値切りに値切って適正価格で買える、原価を割ってまで売ってもらえることはあり得ないという不毛な交渉をしなくてはならなりません。それがハン・ハリーリ・スークの魅力だと言われれば、その通りでしょう。
店員はほとんどが男性でした。メインの通りで一軒だけ、スカーフを巻いた素敵な若いアラブ女性が狭いコーナーで貴金属を売っていました。まずは貧弱な方のネックレスの値段を尋ね、65と返事をもらいます。ポンドですかと聞き返して、そうです、ポンドです、と確認されました。2,470円です。次に私は、狙い目の、幅が狭いけれど品質ははるかに上に見える方を指さしました。100ポンド(3,800円)でした。彼女は恥じらうように微笑みながら、こちらの方がずっと良い、手作りです、持ってみてください、と壁から外して私に手渡します。重い。50ポンド(1,900円)なら買います、と申し出ると、見て、しっかり造ってあるでしょう、良いでしょう、50ポンドではとてもお売りできないわ、と可愛い声で口ごもります。幾らなら、ときくと、90ではどうでしょう、それじゃ60なら、うーんと黙ります。 私は既に疲れていました。集合時間までは一時間も残っていましたが、曲がりくねった路地を歩き回り、見通しのきかない曲がり角で方向を失い、粗悪品であることを確認する作業と、何とかして高値で売り込もうとする男たちを相手にしての、最終的には勝ち目のない値引き交渉の一時間を過ごした後なのです。店員の女性は素晴らしく美しく若いのです。気に入った品物はたったの3,000円かそこらです。私が彼女に大いに儲けさせるとして、それに勝る喜びがあるでしょうか。80(3,040円)と、私は言いました。彼女は素晴らしい笑みを浮かべ、オーケーと囁きました。
ハン・ハリーリ市場の喫茶店で、3ポンド(114円)の水タバコと3ポンド(114円)のトルコ・コーヒーを試しました。料金から考えて高価とは考えられない葉タバコに真鍮の穴あきキャップをかぶせ、その上に炭を置き、釘で穴を開けた金属製のコップを逆さにかぶせます。吸い口から吸うと、煙と空気がいったん水を通過して、タバコが喉に入ります。水を通すことによっていがらっぽさが消え、上等の葉巻のような味に変化します。15分間ほど、グループのみんなで回し飲みしましたが、まだまだ残っていました。悠長なタバコです。
トルコ・コーヒーは、特に美味しくもなく、不味くもなく、楽しめました。まだカップにコーヒーが残っていると思いましたら、カップの下の四分の一はコーヒーの粉が溜まっていました。私が買ったのと同じトランプをリュックから取り出している、グループの年輩の女性がいました。私は内心得意になり、表面上は冷静に、単に値段を知りたいだけという口調でそれを尋ねました。5個20ポンド(1個152円)で買ったという答えが返ってきました。 なお、ウエーターが注文をきく度に、マンゴー・ジュースをすすめていたので、仕入の量より出足が鈍かったのかもしれません。