組成から見るジルコニア

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更新日 2009-11-16 | 作成日 2008-04-12

Zirconia

ジルコニアとはなにか?
 

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ジルコニアとは

金属元素ジルコニアzr(元素記号40)との違い

歯科で使用されている「ジルコニア」は正確には酸化イットリウム等を数%含有させる事によって強化された酸化ジルコニウムの事です。
ジルコニウム元素と酸素が結合することにより酸化し、金属元素であるジルコニウムから全く新しい非金属材料(セラミックス)となります。
機械的性質も科学的性質も全く異なるセラミックス素材となります。
この酸化ジルコニウムに3〜5%希土類元素の酸化物である酸化イットリウムや素材によっては酸化セリウム等を含有させる事により、非常に強度の高いセラミックスとして応用が可能になっています。
このような説明をいちいち解説出来ませんので、歯科の世界では「ジルコニア」といえば暗黙の内に上記のような素材を指す訳です。

強度の秘密

ジルコニアはセラミックスでありながら、金属の様に結晶構造が変態をする希有な素材です。
熱変動により単斜晶→正方晶→立方晶と変態をしますが、常温域ではほぼ正方晶です。ジルコニアの強度を高める為に一部完全でない安定化をさせる部分安定化ジルコニアでは部分的に正方晶と立法晶が存在する様にしてあります。

イットリア等の希土類元素の酸化物をジルコニアに固溶させると、内部に酸素空孔という格子欠陥が出来ます。格子欠損が増加する延長上に関連した安定相が存在するので、昇降温度の変化にもジルコニアを安定させられるのです。

ジルコニアの強度の秘密は応力誘起相変態強化機構にあります。
強い圧力がかかった部分が瞬時に正方晶から単斜晶に変態するのです。
単斜晶は正方晶より体積が大きいため、強い圧力によるクラックなどの進展を押しつぶすように止めてしまうため、これを進展させるにはより大きな圧力が必要となるわけで、結果強化が達成されていると言える訳です。
この変態による結晶構造の膨張はもちろん目では見えませんが、電子顕微鏡では、はっきりと膨らんでいる事が確認出来ます。

歯科でのジルコニアの応用

歯科ではクラウンブリッジに応用が解禁されるまでに矯正の分野のブラケットなどが使用されていました。
元々、人工関節等体内においても充分な強度と生体親和性を持っている素材として認知されていましたので、2005年に国内においてジルコニアの認可が降りてから様々な試みが行われて来ました。
通常のクラウンブリッジにおいては現在、色調表現の為の上部築盛陶材とジルコニアそのものの関係やその作業における注意点が注目されています。

ジルコニアの熱伝導率について考える

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上記の図は2009年3月のドイツ・デグデント社の研修で頂いた資料です。
上がジルコニアブリッジ、下がメタルボンドブリッジです。
陶材を焼き付けた後の応力の残り方を表していますが、ジルコニアブリッジの方がメタルボンドより多くの応力が残っているのが理解出来ます。
赤の部分に強い応力が残っていますが、なるほど臨床で経験した陶材のチッピングが起こりやすかった部分と一致します。
では、なぜこの部分に応力が残るのか?
やはり、ジルコニアの持つ低い熱伝導率に起因すると考えられます。
そのためには充分な係留と徐冷が必要である事も述べられていました。

従来のメタルセラミックスのような焼成スケジュールでは、ジルコニアの熱伝導率が低いので内部になんらかの欠陥が出来る可能性があるため、低昇温速度とより多くの徐冷時間が必要と考えられます。

主な素材の熱伝導率
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表のようにジルコニアは金合金の100分の1程度の熱伝導率で、アルミナに比べても10分の1程しかありません。

ジルコニア母材の熱伝導率が低いと…

・昇温時には、築盛した陶材が先に温度が高くなり、ジルコニア母材はその後に昇温してくる
・冷却時には、築盛した陶材の温度が先に下がり、ジルコニア母材の温度はなかなか下がらない

という状態になり、その熱伝導率の差によりメタルボンドの焼成よりも大きな引かれを生じます。

熱膨張比較.jpg

表面的な引かれなどは陶材を追加焼成すれば外観的には完成しますが、内部的な引かれに対する対応は難しい訳です。
陶材の「引かれ」という事実に歯科技工士は慣れすぎていて、事の本質を見失っている様に思います。
内部的な「引かれ」はそのままでは構造的な欠陥(強い応力)を意味する訳で、ゼロにはならないにしても極力少なく小さくすべき性質の物だと言えます。

ダイヤモンドのように構造が密な物質は高い熱伝導率がありますが、ジルコニアの場合、安定・強化のために格子欠陥である酸素空孔があり、(空間上に分子や原子がある一定の規則正しく並んでいる状態「結晶」の中に不規則な部分を作り出す事によって材料の安定を図る方法)熱の移動を妨げます。また赤外線をほとんど通さないのもジルコニアの特徴ですので、従来耐火材として使用されていた程、低熱伝導率なのです。

各社のジルコニア用陶材には低熱伝導率である事を考慮した物と考慮されていない物があり、焼成する技工士が低速の昇温や係留・徐冷等の配慮をしていく必要があります。

ピクチャ 2.jpg

当初ジルコニア上部に築盛した陶材のチッピングに悩まされた歯科医師・歯科技工士の方も多いと思いますが、弊社では低速の昇温や係留・徐冷等の配慮をしていく事により、ほぼトラブルフリーになっているのが現状です。

現在のジルコニア用陶材は、そういったジルコニアという新素材に完全に対応しきった熟成された物となっていない「第一世代」とも言われており、今後の様々な面での改良が期待されています。

そういった現状に対応するようにジルコニアにプレス素材を用いる技法も登場してきましたが、プレス素材は圧入後も埋没材に内包されているため、温度の下降が緩やかであり内部応力が少なくなると言われております。


ジルコニアの今後

ジルコニアを応用した治療は、中長期的に見て増える事はあっても減る事はないと考えられています。
まず、ジルコニアの普及率は未だ十分とは言えず、その認知度からも可能性が大きい点、またジルコニア自体が進化をしていく事が考えられます。
イットリア系のジルコニアの技術は確立されたものなので、しばらくは主力と思われます。
現在イットリア系ジルコニアでも米国のシステム「etkon」などではHIP-Zirconiaの加工が可能になっています。
HIP-Zirconiaとは、焼成加工時にガス圧等により圧力をかける事により、曲げ強度が大幅に上昇し、またジルコニアに透明感が出てくるという処理です。HIP加工をしたZirconiaは現在のジルコニア素材の欠点をかなりの部分で補っており、現在の応用範囲より広い範囲において利用されると考えられ、術者にとっても患者にとっても大きな福音と見られています。

インプラントとの親和性も話題です。
カスタムアバットメントをジルコニアで作る事で、今迄より高い審美性のと生体親和の良いインプラント治療が可能です。
インプラントパーツも元々CAD/CAMで作られているわけですから、ジルコニアとインプラントは作業システム的な親和性も高いと言えます。


ジルコニア自体、他の素材との組み合わせ等で更に進化する可能性もあります。
セラミックスの中で唯一変態する素材であるジルコニアが、歯科の世界で金属に置き換わって行くという事も近い将来のような気がします。





DSC_0012.JPG老年代の表現
DSC_0014.JPG4歯欠損の下顎前歯Br

DSCN3133.jpgジルコニア内冠を製作
DSCN3150.jpg人口歯をジルコニアにて製作
DSC_0016.JPGフルマウスフレーム