真実を突き止めることは・・・。 投稿者 がんだらさん

真実を突き止めるって事は本当に良いことなんでしょうか?
私はとある百貨店の紳士服売場の売場マネジャーをしています。
先日起こったクレームについて書かせていただきたいと思います。
「お客様が売場で大声で怒鳴っていますぅ」と部下が事務所に駆け込んできたことから
始まりました。売場に駆けつけるとご年配ご夫婦の御主人様がフロア中に響き渡るような
大声で怒鳴っていました。
私が責任者であることを名乗りお話をお伺いすると
1.先日このブランドでジャケットを購入し、袖丈のお直しがあったので今日取りにきた。
2.ジャケットを購入した際、シャツも購入してジャケットのお直しが出来上がった時に
一緒に持って帰ることになっていた。
3.シャツも持ち帰ろうとすると販売員が「シャツは代金未収のお取り置き」なので代金をいただくと言っている。
4.ジャケットの代金を支払った際にシャツの代金も支払っている。
状況はこのような事でした。相当ご立腹の様子でしたので、丁重に丁重にお聞きしました。
「そのジャケットとシャツをお買上げの時のレシートはお持ちですか?」と。
そうしたら、火に油を注いでしまったらしく、さらに大声で「ふざけるなぁぁぁ!!!」
「客が金払ったって言ってんだから渡せばいいんだよ!!レシートなんか持ってくるわけ
ないだろう!!!」
困りました。すぐに売場控えを探したのですがジャケットの入金控えはあってもシャツの控えはない。
シャツについていた取り置き票もしっかり未収の欄に丸がついている。
売場控えを提示してご入金がないことを説明しても一向にお客様の怒りは収まりません。
そのうち怒りは販売員に向いてきて「お前が金を盗ったんじゃないか!!」。
販売員はあまりの自分に向けられた怒鳴り声に泣き出してしまいました。
泣き声にかぶせるように「だから○○は(当店の名前)だめなんだ。
こんな失礼なミスをしやがって!!ふざけるなよ!」
御主人のテンションは上がりっぱなし。一向に納まる気配はありません。
このままでは埒があかないので、ひとまずはジャケットをお持ち帰りいただきシャツの
ご入金についてはもう少し調べさせていただき、入金が確認できたら私がお詫びかたがた
直接お届けすると申し出ました。
ぜんぜん怒りは収まってないようでしたが、とりあえずはその日はお引取りいただきました。
さあ、それからが大変です。
販売員が冷静になってから再度確認したところ「シャツは柄について迷われていたので
一応取り置きにしておいて、ジャケットが出来上がった時に再度違った柄も見直したい」
という状況だったらしいのです。
ですが、入金がないことを証明しなくてはならない。
お客様ご来店当日のレジジャーナル全ての登録をチェック。
念のため前後の日も全てチェック。どう考えてもレジ入金はない。
それでも、お客様が払ったと言い張るならば、
それこそレジを通さずに販売員が着服したと考えるしかないのです。
次の日、調査状況を報告する為に、お客様宅へTEL。
今度は奥様が出られて、やはり払ったはずだと。
そして貴重な発言が・・・「息子に商品券(ナイスショップ5千円券10枚)を5万円貰った。
それでジャケットを買いにきた。ジャケットを買うときに4万円分を使ったので、
今手元に商品券は残ってないので残りの1万円でシャツの代金を払ったはずだ」と。
さあ再度調査の始まりです。
回収した1週間前の商品券は当社の某所に集められていました。
膨大な商品券の中からこのお客様が使った分を探し出さないといけません。
幸いなことに全国共通や各社クレジットギフトカードとの分類はしてありましたが
ナイスショップ商品券だけでも膨大な量。レジ回収印を見ながら一枚ずつチェックしていきました。
すると確かに当日のジャケットを取り扱ったレジの番号の商品券は4万円分連番で見つかりました。
残りの5,000円券2枚はどこでいつ使ったのか。今度は連番を全て見ていかなくてはなりません。
そして約3時間後、見つけました、お客様が使われた残りの1万円分。
そこにはジャケットお買上げ2日後のメガネ売場のハンコが押してありました。
そして店に戻り、メガネ売場へ。控えを確認すると商品券1万円と残額をクレジットで
めがねを購入したことが判明しました。ほとんど1日を費やし真実は判明したわけですが
なんか、晴れ晴れした気持ちにはなりません。
なんで俺はこんな警察みたいなことしてるんだろう。
このことをお客様に伝えたらあれだけ怒鳴った手前、もう買い物にこないんじゃないか。
でも、疑われた販売員の潔白も証明しなくてはいけないし。
そもそも、人間誰だって勘違いすることはあるのに、何であのお客様は人を罵倒してまで
自分が正しいと言い張ったのだろう。
で、タイトルのとおり、真実を突き止めるって本当にいいことなんでしょうか?
強いて良かった事といえば販売員の潔白が証明されたことくらいで
(もともとありえないことでしたが)何も良いことなんてない。
捜査官よろしく調べ上げたのはいいけれど無駄な時間だけが費やされ、
お客様は戻ってこない。関係した全員気分が悪いままの結果です。
後日お客様宅へTEL。結果を報告しました。
奧様が出られて「ああそう。メガネ売場ではクレジットで買ったと思ってたわよ」と、あっさりしたもの。
お詫びの言葉は一言もなし。まあ、それを期待してた訳ではないのですが・・・
あれだけ怒鳴りまくった旦那さんとは最後までお話は出来ませんでした。
もちろん、シャツは買いには来られませんでした。
こんな事件があって僕は「性善説」で物を考えられるようになりました。
そして人がやることに「絶対」はないんだぞと。怒ることってなんにも良いことはないんだぞと。
そしてこの仕事って「サービス」という名のもとに起こるなんとももどかしい理不尽
さを感じました。ただ理不尽に感じていながらも前提は「お客様は正しい」んだと言うこと。
このスタンスを崩したら本当の「サービス」はできないのではないでしょうか。
毎日そんな気持ちでお客様や部下に接しています。
・・・・・・・・・・・・・
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あとがきとお返事
がんだらさん、投稿ありがとうございます。
「電器売場店員のクレーム日誌」のEACH TIMEです。
この投稿の数日後に頂いたあなたからのメールを
そのまま掲載させていただきたいと思います。
(失礼があったらお許し下さい。でも、この中に
大切なひとつの答えがあるのではないかと思うのです。)
・・・・・・・・・・・・・・
がんだらさんのメールより。
こんばんは。
先日の投稿に元部下がメールをくれました。
是非とも全文を見せてくれと。
それで、返事があったのが下記のとおりです。
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全文送っていただきありがとうございました。
大変だったんですね。
確かに真実を突き止めても、後味が悪い事になったかもしれませんが
仮に、マネージャーが最後まで調べずに『お客様がそう言っているんだから
払ったんだろう』として、シャツをそのまま渡してしまっても同じように
後味が悪く、逆に関わった人達は『どうせ私達は・・・。』とこの仕事に
諦めの気持ちで臨むようになってしまったんではないでしょうか。
『唯一良かった事は・・・。』とありますが、部下の方にとっては大事な事です。
今後のその方の励みになるのではないでしょうか?
お客様を一人失ってしまってこんな事を言うのは、甘いかもしれませんが・・・。
近年、お客様の『質』が悪くなってきていると思います。
お客様だって間違いはあるのに、その間違いは私達は許してもらえない。
自分の事は棚に上げて。皆少しは相手の立場に立って考えてよ!と言いたくなります。
そんな中、サービスって何だろう?とつくづく思います。
そして接客業ってなんて因果な商売なんだろうとも。
私もあのHPをみるようになりました。
皆受けてるクレームは同じなんですね。
もっと平和になりませんかね・・・。
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僕の稚拙な文章を取り上げていただいてありがとうございます。
ただ、あの投稿にどうしても不足なことがありました。それは
最後に下記のように付け加えて欲しいのです。
こんな事件があって僕は「性善説」で物を考えられるようになりました。そして人が
やることに「絶対」はないんだぞと。
怒ることってなんにも良いことはないんだぞと。
>>そしてこの仕事って「サービス」という名のもとに起こるなんとももどかしい理不尽
>>さを感じました。ただ理不尽に感じていながらも
>>前提は「お客様は正しい」んだと言うこと。このスタンスを崩したら本当の「サービ
>>ス」はできないのではないでしょうか。
僕は毎日そんな気持ちでお客様や部下に接しています。
と、結びたいです。
徹底的に調べることは部下にとっては「信頼できる」上司にもなるみたいです。
それはこの彼女のメールで解りました。
確かに僕以外のマネジャーは客が「うるさい」から、面倒くさいから、
シャツを渡してしまうかもしれません。
そのほうが楽だからです。
でも、僕はどうしてもできませんでした。
大企業ですからいわゆる「グレーゾーン」が多いことも確かです。
でも自分自身がかかわったことに「グレー」にはなりたくないのです。
こんな元部下からのメールを見ると「結果的に」正義感の強い上司に写ったのかもしれませんが
僕の考えは混沌です。
それは「会社」は僕の使った時間は、本当にいいことだったとは思ってないはずだからです。
でも少なくとも客は一人失ったけれど一人の部下には信頼関係が深くなったのは事実なのでしょう。
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がんだらさん、あなたのこのメールで
私がここで何も言う必要が、なくなったように思います。
あなたが今、そう思っていること。それでいいのだと思います。
たとえ、何かひとつの間違いがあったとしても、
その受け止め方次第で、大きな成長につながります。
あなたは今、その階段を、大きく一歩上がりました。
そして、そのあなたを、
誇りにしながら見上げる人たちがいます。
それは、きっと
あなたの大切な部下たちなのです。
EACH TIME
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