8月の日記とエッセイ
2003/08/31(日) エキストラのように

戦力となっていた社員がひとり辞めてしまい
とんでもない事になっている。
ひとり二役、三役と仕事をこなさなければならず
今までにない忙しさとなっている。
こんな状況なものだから、作業ばかりの仕事になって
接客がおろそかになってしまう。
当然ながら、売上はコロコロと転がるように落ちる。
なのに、忙しい。なのに、虚しい。
そんなふうに無理をしてるから、いろんな意味で叱られてしまう。
お客さんから、店長から、通勤電車のおねーさんから(?)
うちに遅く帰れば奥さんにまで・・・
まったく、何やってんだかよくわからない。
努力が報われないとはこのことだ。
今日はお客さんから、レジでワケもわからずに叱られてしまう。
普通にレジで応対したつもりが、単に虫の居所が悪かったせいか
お客さん(中年のおばさん)が不機嫌な態度を取られ、
具体的に何かを言うでもなく、ただ、「ドンドン」とゴリラのごとく
レジカウンターを拳で思いっきり叩いて、そして、行ってしまった。
一体、なんだったんだろう?
後ろでそれを見ていたお客さんが
「いろいろと大変ですねぇ」と私に同情してくれていた。
そう言われて、いかにもそのおばさんのことが、変な人だと思うより先に
私は何かにハッと気が付いて、そして、本当に虚しくなってしまっていた。
あの不機嫌な態度の人は、私の心の中にあるものと
きっと、シンクロしたんだと思った。
たまたま同調しなかった人に、同情されても
心は虚しくなるしかないだろう。
そのとき、私の心は余裕もなく、目の前のお客のことよりも
次の仕事の事で頭がいっぱいだった。
あのお客さんの「ドンドン」は、もしかしたら
”もっと、こっちを考えなさい”と、
それを伝えたいメッセージだったのかもしれない。
・・・なんて、そんなところまで深く読んでしまった。
そんなわけはないだろう。
まったく・・・私はどうかしているなぁ。
いつも、いつも、私は”今、この人は何を考えているのだろう”
と不思議に思う事がある。売場で、街角で、駅のホームで
特にぼんやりと、遠くを見ているような人に・・・。
本当は、ひとりひとり聞いて回りたい気分ではあるけれど
そう思いながらも、ひとり、何も言わず、存在すら感じさせず
ぼんやりと考えている私がいる。
まるでドラマのエキストラのみたいだ。
そんな気持は・・・たぶん、どこか自信がないせいなのだろう。
明日も朝が早い。
やる事はエベレストの山くらいある。
そんな中、やはり私はひとり、ぼんやりと考えてしまうのだろう。
通勤ラッシュの駅のホームで、人々の波に紛れながら
まるで通行人Aという名のついた
エキストラのように・・・。
2003/09/01 1:13:54
2003/08/28(木) 見え透いた未来

今朝から私は随分と、その人に冷たく当たっていた。
何もかもが気に入らない。仕事のやり方とか、決め方とか・・・。
今日も何かと不満は溜まる一方で、「どうして出来ないんだ?」と
心はまるで鬼のように、暴力とかわらない言葉を吐いていた。
そんな彼が夕方のこと、私に話しかけてきた。
「ちょっと伝えたいことがあるんだけど・・・」
とうとう宣戦布告か、と思った。
やれるものならやってみろ、と言う気持だった。
彼は静かにこう切り出した。
「オレ、今日で仕事を辞めようと思うんだ」
私は自分の耳を疑った。
何を言っているんだ、コイツは?
なんだそのスッキリとしたような明るい笑顔は。
冗談だろ?明日には、今日までつめていた企画が始まるし
商品だって大量に入る。チラシの準備だってしなきゃならない。
彼がいなきゃ、何も始まらない。
わかったよ、私の事が嫌いなら、一発殴ることくらい許してやるよ。
そこまで私を困らせることないじゃないか。
私の心の声は、そんなふうに止まらない。
実際には、私の頭の上にハテナマークが浮かんだまま
何も言葉が出せないでいる。何か言おうとしたら、
彼の言葉が、私の言葉をさえぎってきた。
「急で悪いけど、家の事情なんだ。もちろん、誰のせいでもない。
自分で決めたことなんだ。たっぷりと考えもした。
詳しく話せないけれど、さっき、店長の許可がおりたばかりだ」
こんなときに限って、どうして人は、天使みたいになれるのだろう?
まるで私ひとりだけが、ピエロみたいでバカみたいじゃないか。
辞める彼のほうが、きっと私の100倍もの苦しみが
その先に待っているのだろうに・・・。
なんてことだ。私はさっきまで、何をしてきたのか?
今日、辞めてゆく人に、明日はもう、ないというのに
あんなにただ、彼のことを、怒鳴っていただけだなんて・・・。
どうしてもっと、早く教えてくれなかったんだろう。
というよりも、きっと、お互いに忙しすぎて
そう言う状況じゃなかったんだろうけど。
本当に、それだけだろうか・・・?
人間なんて、明日はつくづく何も見えない。
今日が無事終わったとしても、その先に何も保証はない。
そんな当たり前のこと、私はずっと忘れていたんだ。
明日から・・・どうしよう。
そもそもこんな私達の明日に、どんな確かさがあるのだろうか?
いや、それよりももっと、大切なことは、そんなことではなくて
もっともっと、単純に
「少しでも素直になればよかった」
・・・ただ、それだけだった。
なのに・・・もう、彼に何も償えない。
その先のすべては、不安という見え透いた未来。
後悔だけが、そこにあるんだ。
私達はただ、約束のない
未来をこうして待っている。
2003/08/29 0:36:28
2003/08/27(水) 私という不可思議

どう考えたとしても、すべて、私が悪いことなのに
どうして私は怒り苦しみ、あの人のことを妬むのだろう。
まるで制御のきかなくなった、狂ったロボットになったかのようだ。
心では、後悔するとわかっていても、体では、すでに絶望的なほど
激しくまわりを罵っている。
自分がよくわからない。一体、何を望んでいて
どんな結末を待ち続けているのか?
何もかもが、すべてわからない。
どうしてだろう?
すべて私のことなのに、なんだかまるで知らない人が
遠くで怒っているような気がする。
私なのに、私でない。
・・・私という不可思議な存在・・・
ならば、これを書いている私は
一体、誰だというのだろうか?
2003/08/28 1:52:18
2003/08/26(火) 作り上げられたクレーム

「だから、私の太ももを、イヤらしい手つきで触ったのよ!」
それは、突然の出来事だった。
これでもか、というくらいに太った中年のおばさんが
これでもか、というくらい大きな声で、熊のごとく叫んでいた。
言われたバイトのA君は、ただ、おどおどするばかりで
意味もわからず、立ち尽くしていた。
「な、何かございましたでしょうか?」
そう言って、私はすぐに駈け寄ったが、いきなりその中年のおばさんに
足で思いっきり蹴られてしまったのだ。
「いたた、な、何をいきなり・・?」
私はそこまでしか言えなかった。
あまりの痛さに足を抱え、身動きさえ出来なかったのだ。
まったく身に覚えない暴力だ。絶対に何かを言わねばと
私はそのおばさんに向かって、思いっきり厳しく言葉を投げつけてみた。
「いきなり、なんです?
わ、私が一体、何をしたって言うんですかっ!」
おばさんは私を見下ろしている。
「あなたが私の太ももを触ったのでしょう!」
そうおばさんは怒鳴りながらも、私の顔をじろじろと見つめた。
やがて、間違いに気づいたようで「あ?あなたじゃないわね。
余計なところで出てこないでよ。まったく・・・とにかく私はね、
さっき、店員のおっさんに、接客のふりしてセクハラをされたのよ!
どう責任を取ってくれるのよ!」
そんなバカな・・・一体誰が、そんなことを?
思い当たるような店員はいなかったし、誰も名乗り出る者はいなかった。
まさか、Aさんが、それともBさんが、と思わず誰もが容疑者に見えてきた。
だいたいこんな太ももを(と言っては失礼だが)、誰が好んで触るだろうか?と
根本的な大きな疑問を、思わずおばさんに質問したくなったが
もちろんそれを言えるはずもなく、それでも、おばさんの勢いも止まることなく
最後には、警察がどうの、とまで言い出した。
おばさんは、私達をにらんだまま、ケイタイでどこかに電話をかけはじめた。
「ちょいとあんた、ちょっと店まで来てくれる」
言葉短めにそう言って、おばさんはケイタイを切った。
そして、おばさんは、私に向かってこう言ったのだ。
「まったく話にならないからうちのひとに来てもらうよ。
あんた、○○組って知ってるよね。うちのだんな、そこの偉い人。
まぁ、覚悟しときなよ」
私は(たぶん)顔が真っ青になった。
どうしよう・・・落ちつけ、考えろ!考えろ!と心で思うが何も考えられない。
逃げたい、逃げたい・・・しかし、どこにももう、逃げられはしない。
やがて、深い谷底に落ちてゆくような感覚が、私を襲った。
落ちてゆきながら、やがて、地表に叩きつけられるようなその瞬間に
私の体は大きくバウンドした。
・・・・そこで目が覚めた。
ウソをつくようで心苦しいけど、すべては夢の出来事だったのだ。
やけにリアルな夢だった。その凍るような恐ろしさよりも、
夢であったという事実だけが、私の何よりもの救いだった。
・・・夢でよかった・・・心からそう思った。
あまりの出来事にしばらくの間、放心状態になった。
同じ接客業をしている人なら、こんな経験は
(聞いたこともないから不確かではあるけれども)
たぶん、誰にでもあるのだと思う。
まず、夢の中で起きたそのクレームは、不思議なことに
まったくもって身に覚えのないことがある。
過去に同じ経験をしたというのであれば、話はわかるがそうでもない。
そのリアルさだけが、余計に恐怖心をあおるばかりだ。
たぶん、記憶のすり替えのようなことが、私の中で起きたのだと思う。
それまで私が経験したあらゆるクレームの記憶のパーツが
それぞれプラモデルのように組み立てられ
自ら作り上げてしまったのかもしれない。
それにしても、現実の世界でも大変なのに
夢の中までクレームに恐怖しているなんて
(もちろん、根本的な責任は店側にあったとしても)
そのお客様の言葉や態度は、知らないうちに
店員の心の奥底まで刻み込まれている。
それは逃れなれない運命のようなものなのだろうか?
最近読んだ本の中のこんな記述が、私の心にずっと残っている。
”人はどろぼうに入られても、それで自殺する人は滅多にいない。
しかし、人は他人の言葉や態度で、自殺する人はいくらでもいる。”
目に見える損失は、人は何かで代用できても
目に見えない心の傷は、その深さを誰も知り得ない。
自分の心でさえもそれは・・・
だから人はもっと今以上に、自分の心を見つめる必要がある。
時として現れる恐い夢は、私達にそんな警告を
教えてくれているのかもしれない。
でも・・・
もしも、数日後になって、同じ出来事が起きたなら
それはまた別の話には、なるけれど・・・
2003/08/26 23:12:19
2003/08/19(火) きれいな瞳の彼女

昨日、あんなふうに、私が書いたものだから
私を哀れに思ってくれたのだろうか・・・
今日は火星を見ることが出来た。
一瞬、UFOかと思ってしまいそうな明るさで
真赤に光る星ひとつ、夜空にキラキラと輝いていた。
火星は今、6万年ぶりに地球に最接近しているらしい。
だから、こんな火星が見られるのは、ほとんど奇跡と言ってもいい。
だから、どうなると言うものでもないけど、夜空を見たいと思う気持だけは
まだ、持ち続けたいと思う。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
今日、レジに新しいバイトの女の子がやって来た。
まだ、女子大生だそうだ。「おねがいしまーす!」と明るい笑顔が
とても印象的な女の子だった。
一日様子を見ていたら、その彼女の態度に、私はとても感心をしてしまった。
別にそんなふうに教育した覚えもないというのに
レジに来るお客さんひとりひとりに、明るく声をかけていた。
「いらっしゃいませ!いつもありがとうございます」
「いらっしゃいませ!こんにちは!」
「いらっしゃいませ!お荷物は重くないですかぁ?」
いらっしゃいませ、のあとに、必ず一声かけている。
しかも、お客さんの顔を見て、その声のかけ方も工夫をしている。
ご年配の方にはゆっくりと
主婦の方にはテキパキと
小さな子供には「バイバイ!」と明るく手まで振っている。
驚いた。ただ、ただ驚いてしまった。
彼女は本当にこの仕事を、心から楽しんでいるように見えた。
お客さんもいつのまにか、楽しそうにレジに並んで待っていた。
きっといつもなら、何も言わないであろうお客さんまでもが
彼女の明るさに負けてしまったのか、思わず「ありがとう」と
ぎこちなく声をかけているのが見えた。
きれいな瞳を持った、とても美しい彼女だ。
髪の色は、今、流行りなのか、少し明るめのブラウンで
でも、それがとても自然で強調もせず、彼女の明るさを
フォローしてる装飾品のひとつに見えた。
でも、彼女の美しさだけが、喜ばれる理由でもないだろう。
まるで教会に描かれた絵画のような清らかな心が
そのまま表面に浮き出たかのような
そんな彼女なのだから。
レジでちょっとしたトラブルがあった。
どうやら彼女がお釣りを間違えてしまったようだ。
そのときばかりは、彼女はとても丁重にお詫びをしていた。
不思議なことにお客さんは、簡単に彼女を許してくれていた。
まるで、マジックでも見ているかのようだった。
それからも、彼女は明るくレジをしていたから
私は気にもとめていなかったのだけど
あとで彼女は申し訳なさそうに、私にこう言ってきた。
「先ほどはすみませんでした。
もう少しでお客さんを怒らせてしまうところでした・・・」
その言葉に、私は新鮮な驚きを感じた。
私は今まで何度となく、レジの人から
「お客さんが、あんなにせかすから」とか、
「お客さんが、レジの途中で話し掛けるから」とか、
自分の間違いのほとんどが、お客のせいになっていたけれど
でも、彼女は違っていた。
彼女の言葉は、いつも”お客さん”が中心になっている。
自分のことなど忘れたかのように・・・。
”お客さんを怒らせるところでした”
何でもないようでいて、こんなにも深い言葉があるなんて・・・。
「ううん、あのお客さんはきっと、君のことに
とても喜んでいたと思うよ」
私がそんなふうに言うと、意味がわからなかったのか
とても不思議そうな顔をしていた。
それでも元気そうに「はい」と答える彼女に
私は大切な何かを教えられていた。
私は、接客というものは、
どこか心を偽った”義務”のように感じていた。
でも、やはりそれは間違っていた。
彼女の笑顔は言葉なく、私にこう教えてくれる。
”接客”(仕事)と言うものは本来
互いに喜び合うための、価値ある人の心なのだと・・・
2003/08/20 0:38:37
2003/08/18(月) 何万年と言う奇跡。

私はどうしてこんなにも、嫌われてしまうのだろうかと
思うような出来事が、時々、あるのだけれども
今日はそんな一日だった。
私の思い過ごしかもしれない。
でも、その度に冷たい態度をとるあの人は
傷ついたのかもしれないし、傷つけたのかもしれない。
冷静に考えれば、私はどこか人と違っている。
あまり人と喋りたがらない私は、冷たく思われている節があって
それを別に”構わない”と思っている私がそもそも
大きな間違いを犯しているのかもしれない。
毎朝、ぼんやりと、電車の窓から流れる景色を私は見つめる。
逃げたいと思う・・・素直に言えば。
人につぶされてしまうような、こんな空間にいたくない。
流されてゆく風のように、一瞬にして消えてしまうような
そんな存在に私は憧れる。
そんな私を、私はただ、驚くばかりだ。
今日も火星は見えなかった。
何万年に一度だという奇跡なのに
私には、そんな資格すらないのか・・・。
夏の星座さえ、今はとても
見つけられそうにない。
2003/08/19 0:10:35
2003/08/13(水) なつかしい人(日記再録)

その陽だまりのような懐かしさに
私は幾度となく日記の中で、想い出を振り返ることがある。
3年前のこの日記も、すでにもう、私の大切な想い出になっている。
過去の日記を振り返って。
Looking back 2000/08/05・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「なつかしい人」
「なんでお前がここにいるのだ?」
いきなり、売場でお客さんからこうたずねられた。
「なんだ?」と私は思った。
いきなり、こう言われるとあせってしまうというものだ。
しかし、私はすぐに気が付いた。
そのひとに、私はいたずらっぽく、こう言葉を返していた。
「さぁ?なんで私はココにいるのでしょう?」
それは、とてもなつかしいひとだった。
実に、10年ぶりくらいではないだろうか?と思う。
(あとでちゃんと逆算してみると、実に12年ぶりだった。)
その方は、私がまだ新入社員のころ同じ店で働いていた先輩だった。
私よりも、四つくらい年上かな?年が近い事もあって
当時、いろいろとお世話になっていた。
とっくに忘れていたあの頃のことが
私の中で蘇っていた・・・・。
あの頃、先輩は私に対してとても厳しい人だった。
新入社員である私の教育係みたいな存在だった。
当時の私は、若すぎてか、いろいろとこの先輩と反発したものだ。
当時、こんなことがあった。
先輩が「この仕事は、こういうふうにするものだ!」と言って私は叱られたのだ。
それは、私なりに”これがいいんだ!”と思いこみ、勝手に作った売場だった。
私は先輩に誉められるものだと思っていた。それくらいに自信があった。
しかし、私はそれを頭から否定されたのだった。
そのときはじめて、私は先輩に大きく反抗したのだと思う。
そのときの私は、”裏切られたのだ”と、どこか被害者めいた気持になり
その言い方に、態度に、その先輩のすべてのやり方に
自分の存在すら否定されたような・・・そんな気持になっていた。
実に愚かな私だった。
「私は間違っていない!あなたが間違っているんだ!」
気がつくと、私は声が裏返りそうなくらい激しく怒鳴っていた。
いままでの怒りが、なんの理性も働かずに、ただ爆発したのだと思う。
情けないほど単純な私だった。
そんな私を、先輩はただ黙って見つめていた。
やっと喋った言葉は、「勝手にしろ・・・」
ただ、その一言だけだった。
とても意外な態度だった。
いつもなら、殴られるものと覚悟していたから・・・
それから、1週間くらい口を聞いてくれなかったように思う。
それほど、お互いに若かったのかもしれない。
しかし、今にして思えば、先輩は私に冷却時間をくれたのだと思う。
人は、先が見えないほど、怒りの感情を抱いているうちは
なにも分からなくなるものだ。
結局は、私が間違っていたのだと思う。ひとりの力なんて小さなものだ。
あの頃、それに気付いた私は、悔しくて悔しくて涙を流していた。
先輩だけには気付かれまいと、小さく小さく泣いていたのだった・・・。
そんな厳しい先輩に、私は1度だけ泊めてもらった思い出がある。
ある日、年末の残業で、もう夜中の12時過ぎまで
仕事をしていたときのことだ。
今から帰っても、もう、あまり時間がなかった。
(当時私は、通勤に1時間かかっていた。)
そして、先輩が私にこう言ってくれたのだ。
「俺の家が近いから、うちに泊めてやるよ。」
信じられないような言葉だった。
そうするくらいなら、地を這ってでも帰りたい気持になっていたが
すでに疲れ果ててた私は、素直にそうさせてもらうことにした。
先輩は、ご両親と一緒に住んでいらしたが
その会話が、暖かな石油ストーブが、心までホッとさせてくれて
とても緊張しているのに、先輩の、売場では見せない小さな笑顔が
妙にうれしかったのを覚えている。
結局、翌朝ふたりとも寝坊をして
遅刻しそうにはなったけれど・・・。
今日、久しぶりに出会った先輩の印象は
穏やかな顔つきになったんだなぁと思った。
当たり前の事だが、12年ぶりの出会いは、そんなものなのだろう。
ちょっと太ったのかな?顔まで丸くなっちゃって・・・。
先輩が転勤してから、風の便りさえなかったので
すっかり辞められたのだと思っていたが、今は本社で勤務していて
今日はたまたま出張でこの店に来たそうなのだ。
あの頃のこと、今の事、いろいろと話したい事、聞きたいことがあった。
何気ない会話を、ほんの5分程度したくらいだったろうか?
離れた売場から、私はお客さんに呼ばれてしまった。
私は、先輩に「ちょっと待っていて下さい。」と言おうと思った。
とても5分の時間では、この12年間のことなど話せはしない。
しかし、先輩は私が言うより先に
私にペコリとお辞儀をして行ってしまった。
「もう行くよ。それじゃ、がんばってな・・・」
という小さな一言を残して。
心残りだった。
もっと、もっと話していたかった。
なのにもう、背中は見えなくなっていった。
やがて、そのお客さんの接客しながら
ふと、私はこう思っていた。
「がんばってな」・・・か。
12年という歳月の中で、
こんなふうに励まされたのは
思えばはじめてのことだった・・・。
2000/08/05 23:31:08
過去の日記を振り返って。Looking back 2000/08/05
2003/08/13 23:53:06
2003/08/12(火) 大型家電量販店へのクレーム

よその店の悪口は、あんまり言いたくないんだけれど
それでも今回ばかりは、あまりにもあきれてものも言えないくらいなので
言えないかわりに書いてしまおうと思う。
さて・・・
電器店勤務の私が、競争店ともいえる大型量販店に
電話するなんて事は、まったくもってありえないことだけど
たまたま個人的に、その店に電話する必要があった。
どうでもいいような内容だったのだ。
それでも確認しなきゃならなかったので、気分はとても重かった。
今朝の10時くらいに電話をかけた。しかも競争相手の店だ。
こんな面倒なことは、とっとと終わらせたかった。
プルルー、プルルーと呼び出し音が何度か鳴る。
そのときすでに、その前兆は始まっていた。
ん?10回鳴っても誰も出てこない。なんなんだこれは?
”今日は定休日だったか?それとも電話番号を間違えたか?”
そんな不安が私をよぎった。
15回目のコールを聞いて、かけ直そうとあきらめたとき
ようやく誰かがその電話を取った。
「は、はい、えーと、○○店ですが・・」
取った相手は若い男性店員の声だった。随分と不慣れで慌てた声だった。
同業者として言うのだけれど、こんなに待たせ場合はまず
「大変お待たせ致しました」のお詫びの言葉が先にあるべきだ。
まぁ、それでもたぶん店員が少なく、売場が忙しいときに限って、
私の電話が鳴ったのかもしれない。
私にも思い当たるので、それくらいの事情はなんとなくわかる。
でも、15コールも出なければ、「一体いつまで待たせるんだっ!」と
怒鳴るお客はいくらでもいらっしゃる。
その店は、県内一の大型家電量販店だけど、私にしてみれば
それが不愉快というより”どこも一緒なんだなぁ”と思わず同情をしてしまった。
今はそんな事はどうでもいい。
私はその若い店員に要件を伝えた。
しかし、要領を得ないのか、まったく私の質問がわからないでいた。
しかも、何度言っても同じ事を尋ねるし、いい加減うんざりしてきた。
別に難しいことを聞いているわけでもないのに・・・。
きっと担当者がいないのか、または、担当者が電話に出られない状況なのか?
やれやれ、こうなると同情の気持を通り越して、憐れむような気持になる。
「あのう・・・私ではわかりかねますので、折り返しお電話をいたしますので・・・」
最初からそう言えばいいのに・・・と思いつつ、私はその若い店員に
名前と電話番号を伝えた。
結果から言えば・・・
いまだに電話がないのだ。
あれから実に10時間以上が過ぎている。
ここまでくると、”いまだにあの若い店員は私の質問に悩んでいるのだろうか?”
などと嫌味のひとつも言いたくなる。
もちろん、1時間待っても電話がなかった時点で
私からもう1度電話をかけようかと思った。(普通は30分のところを、だ。)
もしかしたら、私の電話番号を相手が聞き間違えたのかも知れず
かけようにもかけられないのかもしれない。
そうだとしたら、今頃随分と慌ててしまっているだろう。
そう思ったりもしたが・・・
やっぱりやめた。
私はちゃんと番号を知らせたし、仕事のクセで
2度も繰り返しそれを伝えたのだ。聞き間違いはありえない。
それにいくら忙しいにしても、1時間以内に1度くらいは電話があっていいはずだ。
仮に担当者が不在で答えられなくても、その旨を電話で知らせるのが当たり前だろう。
私の要件は、完全に忘れられたか、または、ほったらかしにされたのが
ほぼ間違いないと思われた。想像にすぎないが、その若い店員がメモに書いて
そのまま誰も見ていない状況が、なんとなく目に浮かぶ。
そう思うと、それまでの同業者としての寛大な気持も
すべて吹き飛んでしまった。
折り返し電話すると約束をして、客からもう1度電話させる行為は
最悪としかいいようがない。
それに私は思うのだけど、それでもお客から電話して下さって
「一体いつまで待てばいいんだ!」とクレームを言って下さるお客さんは
本当にありがたい存在だと思う。
店の誰かが痛い思いをしないと、店はなかなか改善しようとしないのだ。
そもそもその体質自体、なかなか気付かないから困ったものだ。
何度も書いてきたことではあるけど、クレームを言うほうもパワーがいる。
クレームの電話をかける直前でも、”こっちに落ち度はなかったか?
こんなことで怒る私が悪いのだろうか?
変な客だと後から嫌がらせをされないだろうか?”
などと、そんなことまで考える人もいると思う。
それに、人はいつも気分よくいたいものなのだ。
好んで怒りたいとは思わない。
私も同じだった。
怒りたい気持の前に、いろいろと考えた。
考え過ぎじゃないか?と思えるくらい考えた。
考えているうちになんだかとてもバカらしくなってきた。
仮に私から電話したとして、一体どうなるというだろう?
その担当者から苦し紛れの、嘘で固めたような言い訳を
聞かされるのが目に浮かぶ。
結果、私から電話をしないことにした。
言うだけ時間の無駄だと思った。
私のその要件は、もう、あきらめるしかなかった。
電話番号を調べる為に用意したその店のチラシが
私のすぐ近くにある。新聞紙を開いたくらいの大きさだ。
うちの店よりも随分と大きい。それには大きくこう書かれている。
「買って安心、どこよりも親切丁寧で万全なアフターサービス!」
たった1度のクレームで
「もう、お宅の店では絶対に買わない!」とお客に怒鳴られることがある。
あぁ、たまたまあの不慣れなアルバイトが対応しただけで、店のみんなが
あんな対応じゃないのに・・・と私は心で嘆くけど、やはりそうじゃない。
お客にとっては、ひとりの店員の行動が、店全体の行動につながる。
電器屋は、個人経営の八百屋じゃない。いわばサッカーチームのようなものだ。
誰か一人のミスが、その試合の敗因につながる。
いくら個人プレーが素晴らしくても、一番大切なのはやはり、チームプレーだ。
・・・なんて、お客の立場になって、はじめてそう実感した。
恥ずかしいことではあるけれど。
私はその大型家電量販店で、商品を買うことはないだろう。
まぁ、それ以前に、競争他店で買うわけもないが・・・
とにかくそう誓いたくなった。
さて、明日は集合の笛を吹き
みんなのポジションとプレーを、もう1度見直さなくてはと思う。
誰一人として、
イエローカードを出さないためにも・・・。
2003/08/12 21:25:43
2003/08/05(火) 刺されるかもしれない?

本当に、今更ながらって感じだけれど
接客をしていると、いろんなことに驚かされる。
売場で扇風機の商品補充をしていたら
私の目の前を、若いカップルがいちゃいちゃと歩いていた。
まぁ、べつにいちゃいちゃは構わないんだけれども
ただ、大きな問題がひとつだけあった。
それはふたりとも、片手にタバコを持ったまま
プカプカとふかして歩いていたのだ。
もう1度言うけど、ここは店内で営業中だ。
まわりにお客さんも何人かいる。
確かに”店内禁煙”と大きく書いていないにしても、
それがダメなことくらい、一般常識の範囲だろう。
だから私は、そのカップルに”ぴしっ”と注意してやったんだ。
・・・と本当は書きたいところなんだけど
私ときたら、そこで迷ってしまったのだ。
男のどくろマークのTシャツの裾からイレズミがチラッと見えている。
それに男の眉毛が異常に細い。女性のほうも、よくわからないけど
目のやり場に困るほど、露出の大きい高そうな服を着ている。
あぁ、なんだんだこれは?どこからみても恐そうな人達にしか見えない。
どうしよう。
注意したとたんに、大声で怒鳴られるのかもしれない。
いや、それならまだマシなほうで、もしかしたら、いきなり刃物が出てくるのかもしれない。
”刺されるかもしれない”
そんな大げさな、と思われるかもしれないが、今の世の中、何が起きても不思議じゃない。
昨日今日のニュースを見ていれば、誰もが納得するだろう。
ここはひとつA君にと思ったが、震える彼の目は、すでに同じ事を考えていたらしく
”せ、先輩、たのんますよ!”と消え入るような小さな声で私に懇願していた。
(ちなみに彼のほうが先輩だっ!)
注意するほうも命がけだ。
相手をまったく知らないのだから、最悪な事態ばかり頭をよぎる。
しまいには、家族の顔まで浮かんでしまうからどうしようもない。
でも、これを見逃してしまったら、自分で自分が許せなくなる。
きっと、心のどこかで常に自分を、後悔することになるのだろう。
そんなの嫌だ。私は思い切って声をかけてみた。
「あのう、申し訳ありませんが・・・売場は禁煙なので・・・」
はっきりと言うつもりが、自信なさげな弱々しい声になってしまった。
男は「何?」としかめっ面をする。
一瞬私は後悔をする。やはりああなってしまうのか・・・
と思っていたら、連れの女性がこう言った。
「へぇー、ここでタバコ吸っちゃいけないんだぁー
全然知らなかったわー」
とアニメみたいなかわいい声でそう言った。
「へぇー、そうなのか?誰からも注意されなかったけどな」と
男も笑いながら、不思議そうに答えていた。
なんだ・・・よかった。べつに悪い人じゃなかったんだ。
それにしても、本当に知らなかっただけだなんて・・・
いや、本当は誤魔化されただけなのかもしれない。
でも、本当のところの問題としては
(もちろん、本人の自覚のなさが一番にしても)
それを見て見ぬふりをしてきた私達のせいでもあるのだろう。
なんて・・・私がこんな教訓めいたことを
言えるような立場でもないけど。
それよりも、私にとってショックだったのは
これほどまでにも、他人を信じられなくなったということ。
私の前を歩いている人が、”私を刺すかもしれない”などと思っているのだ。
それを”考えすぎだろ”と笑って済まされない事実がまた哀しい。
今は見掛けでも判断できない。ふつーの人が、新聞に載る世の中なのだ。
小学生の子供に持たせる為か、あの事件以来
防犯用の携帯ブザーが静かに売れてる。
そのブザーが鳴らない日を、
私はただ、祈るしかない。
2003/08/05 23:37:48
2003/08/04(月) 見えない私

この頃の私は、本当にどうかしていて、何をするにも素直になれない。
職場ではいっつも膨れっ面をしていて、一応、お客さんの前では明るく接客するが
それが終わると、またすぐ膨れっ面になってしまう。
まるで機嫌の悪い子供のようだ。
いや、要領がいいぶん、憎たらしい子供と呼ぶべきか?
理由はいろいろとある。
長年この仕事をしていると、社内のどうにもならない事実がわかりすぎて
そのうっぷんが、たまりにたまって、いつしかこんな態度になってしまう。
わかっていても、どうかしたくても、抵抗勢力?がいつもどこかあって
それなりに努力はしたつもりでも、自分ひとりの小ささを思い知るだけのことで
いつも、なんにもならなかった。そのうちあきらめることを覚えてしまった。
まだ、私が新入社員だった頃、「どうしてあの先輩は
いつも不機嫌な態度なんだろう?」と思うことが多かった。
長年勤めているレジのパートさんや、ベテランと言われる店員ほど
その傾向は強く思えた。
”私だったら、いつも明るく接客をするのになぁ”
”私だけはあんなふうにはならないぞ”と
その度に、心に強く思っていた。
今はその不機嫌な店員の気持が痛いほどわかる。
わかるどころか、今では自分がそうなっている。
それはなんて、悲しいことか・・・。
同じ仕事に長く就いていると、次第に笑顔は少なくなる。
新鮮さはすでに色褪せていて、同じ事の繰り返しのようにしか思えず
理不尽なことも、その度に黙って堪えることが増えてくる。
特に接客業においては、その傾向が顕著に出てくる。
私はこの仕事を通じて、”人間観察をしている”という事実を、あるとき思い知った。
この人間観察の中で、私はどれだけの人間不信と人の恐さを知ったことだろう。
万引き、恐喝、嘘、詐欺、金銭トラブル、恨み・・・
それはクレーム日誌の中で、さんざん書いたことなので、今更もう、繰り返さないけど
”信じられない”という言葉が、いくつあっても足りない思いだ。
私には、見えない私がもうひとりいて、仕事で苦しむ度に
不機嫌な態度でいる私を、とても悲しそうに、じっと見ているのがわかる。
それは同情というわけではなく、とても冷めた感情。
また、誰かに冷たい言葉を投げかけている私がいる。
その人に、何も罪はないというのに、言葉で誰かを傷つけている。
もうひとりの私がそんな私を、憐れみながら見つめている。
”愚かな私”とつぶやきながら・・・。
何度となく、”もうこの仕事を続けるべきではないのかもしれない”
とそんな態度をとるたびに、私は思い悩み続けた。
でも、日々の生活に追われる度に、答えはいつも後回しになった。
そして今も、答えは見つけられないでいる。
そんな私に、もうひとりの私が問い掛けてくる。
”じゃあお前は、一体、何が出来るのだ?”と・・・。
私は何も出来やしない。ただ、接客しか出来ない。
ほかに手には、何も持ち合わせてはいない。
なんの資格も、なんの技術も持たない私は
ただの店員に過ぎない。
誇れるものがあるとしたら
私には、少しくらいは接客で、人を喜ばせることが出来る。
喋り下手な私だから、とても小さなものかもしれないけど
時として、接客を通じ、私が生きているという価値を見出せることがある。
今はまだ、私はダメなのかもしれない。
積み重なった理不尽な思いは、なかなか消えてはくれないのだろう。
それでも私は私をちゃんと生きてゆきたい。
本当の私というものを、私はまだ、知り得ていない。
このままでは、私は私でいられなくなる。
それが今は果てしなく恐い。
ただ、私は信じていたい。
たとえどんな結末が、私を待っていたとしても
そのときの私を、もうひとりの私が
静かに微笑んで見ていることを・・・。
2003/08/05 0:11:22
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