まーちゃん(プライベートフォトへ) お客様クレーム日誌
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6月の日記とエッセイ

 2003/06/30(月) 自己逃避行



 時々、この自分がとても怖くなる時がある。
何もかもやる気の起きない日は、特に最悪だ。
こんな日は、本当に接客をしたくない。

どんどん、自分がダメになってゆくのがわかる。
あぁ、私は今、お客さんに対して、ひどい事を言っている。
クレームになりそうだ。

お客さんの顔が、どんどん険しくなっていってるのがわかる。
その表情に、慌てて言葉を選んでる自分がひどくみじめに感じる。
この気持を、はやくどこかで止めないと、大変な事になってしまう。

そんなこと、私は十分にわかっているのに
なのに私は”もう、どうでもいい・・・”
そんな気持が、この心のほとんどを占めている。

接客をしていながらも・・・
”もう、いいから、買うのをあきらめてくれないか・・・。”
なんて思う私がいる。そんな自分がとても信じられなくなる。
もっと正直に書けば、私はもう、この仕事をすべきではないだろうと
思うほどに、更に私の言葉はエスカレートするばかりで
まるで時代劇のわかりやすい悪人のような私になっている。

そして、そう思う自分に対してひどい自己嫌悪に陥るのだ。
更に気持はひどくなってゆくばかりで・・・。

そんな時、私は売場から逃避する。
みんなには申し訳ないけれど、そうするしかないのだ。
最低なこの私は、逃げるしかその術を知らないのだ。
逃げないと、私はどんどんひどい生き物になってしまう。
そうなった時、誰が私を救ってくれるというのか?

まるで私はゾンビにでもなったかのようだ。
何かに心を食われ、そして、私は誰かの心を食ってゆく。

そんな私に”あなたはやさしい人・・・”と誰かが言ってくれるけど
そんなのウソだ。本当の私を誰もまだ知らないだけだ。

私の言葉にお客さんが怒った。
慌てて言い訳する私がいる。

何を言っているのだこの私は?
どうしてまず、はじめにお詫びの言葉がでないんだ?
どうして難しい事をそれらしく誤魔化してるんだ?
相手がおばさんだからか?お年寄りだからか?

恐そうな人や、中年の男性、女性に限って、
どうして私はペコペコしてるんだ?

あとがやっかいだと思うから・・・ただ、それだけのことか?

逃げろ、逃げろ、この私から逃げろ!
とんでもないヤツだ、本当のあいつは・・・

だからこの私から逃げるんだ。
早く、早く、もっと早く・・・

何を言っているのか。
この私から、私が逃げられる訳がない。




一生逃げられないのだ・・・。



2003/07/01 2:32:33





 2003/06/26(木) 大きな誤算



 最近、職場内の人間関係がギクシャクしていて
とても疲れてしまっている。

どうして人は、ああも簡単に、憎しみ合う事が出来るのだろうか?
その人のそばにいると、とても疲れる。気付けば私もイライラしている。
そしてそのイライラが、気付けば誰かを傷つけている。
最近、その繰り返しだ。

そんな中、昨日の万引きの件が、あらぬ方向に向かってしまい
もともと仲の悪かったKさんとYさんの口論が始まってしまった。
みんなのイライラが、ピークに達していたのだろう。

情けない事に、私はただ、オロオロするばかりで
どうしていいかもわからずに、事態を見守るしかなかった。

KさんもYさんも、パートの30代の女性なのだけど
Kさんはどちらかというと、のんびりタイプで
それでいて、言いたいことは言うほうで、一方、Yさんはその逆に
ちょっときつい性格で、気に入らなければ怒鳴ってでも正そうとする、
自分の信念を曲げない人だ。
(実を言うと、私はYさんが苦手だ。生き方は好きだけど。)

どちらの言い分も、もっともなことで、でもそれには
なんの解決にもなりそうもない虚しさがあった。

それもそうだろう。
問題の本質は、お互いの人間不信なのだから。


裏方の面談室は、とても静かな場所で
耳をすませば、深い海の底にいるみたいに
店内放送が聞こえてくる。

私も交え、KさんとYさんとで話し合った。
この機会に、というワケではないけれど、お互いに
言いたいことを言い合って、そこから解決してゆければ・・と
私は願った。

いつまでも、影で愚痴をこぼすよりも
はるかにいいと思ったからだ。

でも、結果的には失敗に終わった。
最悪と言ってもいいほどに、それは私の大きな誤算だった。

人には、決して言ってはならないその人への言葉と言うものがある。
Kさんが、Yさんに対して、その言葉を使ってしまった。
ほんのはずみだったに違いない。でも、言った言葉に取り消しは出来ない。
残るのはたぶん、後悔だけだ。

屈辱的な表現に近いその言葉に、私は何も言えなかった。
何も出来なかった。何が正しいと言うわけでもなく
何が間違っていると言うわけでもなく、ただ、その言葉を前にして・・・。

私には、その言葉を何かで浄化してゆくほどの
力と能力を持ち合わせていない。
ただ、政治家のように、ありきたりな言葉を使うしかなかった。
何を言っても私の言葉は、ただの建て前にしか聞こえなかった。

そして、Kさんが出て行った。
もう何も話す事はないからと言って・・・でも、その声は震えていた。
きっと、さっき言った言葉を、心底後悔しているのだろう。

それに気付かずか、言われたYさんは、Kさんへの
ひどい罵声と思いつく限りの悪口を、私に言い並べていた。

まるで私は、妻に浮気がばれた情けない夫のようだった。
何を言われても、ただ、黙っているしかなかった。

気の強いYさんの声が、だんだん消え入りそうになる。
時さえも、息をひそめたかのように、静寂が広がってゆく。

店内放送が、遠くかすかに聞こえてくる。



やがて、Yさんがうつむきながら
私にポツリとつぶやいた。


「泣いて・・・いいかなぁ」




私はただ、うなずくしかなかった。




2003/06/27 0:05:27





 2003/06/25(水) 100個の愚痴と言い訳と・・・。



 自分で言うのもなんだけど、今日の私は一日ずっと
機嫌が悪くてどうしようもなかった。

ことの発端は、朝から始まる。
開店してまもなく、私が売場を整理していたら・・・ないのだ。
そこにあるべき商品が、すっぽりとなくなってしまっていたのだ。
確かに、さっきまでそこにあったはずなのに・・・。
(しかも、もっとも高額なDVDレコーダー!)

一体何がどうなってしまったんだ?
理解不能なその状態に思わず私は
ムンクの叫び顔状態になってしまった。

どうしよう・・・
昨日も万引きにあったばかりなのに
”もう、絶対に万引きを起こさせません!”って
昨日、あれほど店長に約束したばかりだというのに・・・

このまま黙っておこうか?と悪魔の私がささやいたが
正直に話したほうが良いと、天使の私が微笑んだ。

なんて悩んでいるうちに、偶然にも店長が売場にやって来た。
なんという運命的な出会いであろうか。
ぷしゅ〜と私の中の空気が、すべて抜けて行くような気がした。

結局、正直に話した。(天使が勝った)
ネチネチと1時間にわたって叱られた。
もう、たまらない・・・本当に気持が悪い。なんと言っていいのか
まるで30匹のナメクジが、私の体を這いずり回っているかのようだ。

お前は仕事に対して意識が足りない!とか、全然管理がなってない!とか
そんなわかりきったことばかり言っている。(わかりきったでは困るが。)

人員が足りないんだからしょうがないじゃない。
増やせないんだからしょうがないじゃない。
赤字だから、何も出来ないでしょう?
売上が悪いから、黙ってサービス残業でしょう?

そんな中、ただでさえ私達は、まるで泣きながら仕事をしているような状態なのに
万引きをされた事実は、確かに反省すべき事だけど、果して100%私達店員の
責任か?というと決してそうではないわけで・・・。

どうして管理職は愚痴るばかりで、具体的な案を一緒に考えてくれないのだろう?
どうして根本的な問題を、問題として見ないままで、私達が犠牲になるのだろう?
こんな状態では、お互いにマイナスのエネルギーが増すばかりというのに・・・

どうして私を、もう信用できないのだろう・・・

叱られながら、私は心の中でそう思った。
そう思ったならちゃんとそう言えばいいじゃないか!と
誰かの声が聞こえてきそうだけど、情けないことに
それほど私は強くないのだ。 強くなれないのだ・・・。

心がどんどんしぼんでしまって、やる気がどんどんなくなってしまった。
それと同時に、私の中でふつふつと、怒りの感情が増幅された。

「じゃ、どうすればいいのですか!」と私が開き直ったからいけなかった。
更に私の心に、ナメクジが30匹追加されることになった。

更に1時間、説教を受けたのだった。

・・・・・

売場に戻ってから、防犯対策に追われる。

もう、どうでもいい。
ただでさえ、企画商品の売場作りに忙しいというのに・・・
防犯対策が出来なければ叱られ、企画の売場が出来なければ叱られ
結局、私は叱られる運命にあるのだ。

そう思うと、すべてを投げ出したい気持になった。
そして、私は不機嫌になった。誰に言うにも、すべて命令口調になった。
ずっとずっと、しかめっ面だった。どうしても怒りが消えなかった。

パートさんにもアルバイトにも、すごく冷たく当たった。
ごめん・・・ここで謝ってもどうしようもないのだけど
ゴメン・・・本当にゴメン。ごめんなさい。
許して・・・許して欲しい・・・お願いだから。


私はつくづく自分を想う。
なんて私は人間が出来ていないのだろうかと。
なんて心が狭く、ちっちゃな人間だろうかと。

万引きされ、店長が怒るのは当たり前の事だ。
1万円の利益を出すにしても、死に物狂いで働かなきゃ
私達はその利益を作れない。それが、万引きという卑劣な手段で
すべての苦労が、一瞬のうちに消えてしまうのだ。

これを怒らない店長がいれば、とっくに店はつぶれているのだろう。


言い訳や愚痴なら、たぶん100個はすぐにでも言える。
(今日の日記も、たぶん、そのひとつに過ぎない。)

でも、本当に大切なことは、100個の愚痴を並べることよりも
たったひとつの信頼関係だと、それでも私は言いたいのだ。

そこから生まれたものがきっと、
すべてを解決へと導くはずだと・・・。



2003/06/26 0:25:02





 2003/06/24(火) 私のかわいい恋人



 実を言うと、長年連れ添っているものがいる。
思えばいつのまにか、実に親密な関係にあり
いつも私のそばにいてくれて、困った時には何も言わずに
そっと私を助けてくれる・・・

それは私の妻に内緒のかわいい恋人・・・
と言いたいところだけれども、残念ながら
それはかわいい彼女でもなくて、古い折りたたみ傘のことだ。

この傘とは、もう随分と長い付き合いになる。
この傘が、一体いつ誰が買ったものなのか?
記憶をいくらたどってみても、なぜか思い当たる節もなく
もしやどこかで拾った傘かもと、そんな疑いすら否定できない。

気づけばもう、6年以上も昔から、私の通勤カバンの中にあって
当たり前のように、いつもそこにちょこんと居座っている。

この傘は、正直言って、かなり流行遅れでどうしようもないものだ。
単なる黒傘ならまだしもいいが、ダークグリーンの変なストライプは
中途半端でとても地味だし、先端の尖った先の部分は
とっくの昔になくなっているし・・・

普通なら、こんな薄汚れた傘は、なんのためらいもなく
すぐに捨てるべきものだろう。
妻からも「いい加減に買い替えたら?こっちが恥ずかしいわ!」と
ことあるごとに言われ続けている。

この傘が今度もしダメになったら、またはなくしたら
新しいのに買い替えようと、いつも思っているのだけど
なぜかこの傘を捨てるタイミングを、私はことごとくなくしているのだ。

例えばある日のこと、急な出張で違うカバンにその傘がなくて
急な雨に降られてしまい、”仕方ない、新しい傘を買うか”と決心してたら
帰りに”ぱぁ”といきなり晴れて、結局買わないで済んでしまったり・・・

先日も台風で風が強くて、その傘をさして歩いていたら
思いっきり逆向きに折れてしまい、”あぁ、とうとう壊れてしまったか”
とあきらめがちに思っていたら、すんなりと元の形に戻ったし・・・

ふと気がつけば、この傘はいつも私のカバンの中にあって
まるでセーラー服の女の子のように、きれいな折り目を
いくつも付けながら小さく折りたたまれ、涼しげな顔してそこにいる。

納得のいかないこれらの出来事に、実はこの傘には心というものがあって
私に惚れているんじゃないか?と、最近はそんな疑いまで持つようになった。


ところが先日のこと・・・
とうとうこの傘をなくしてしまった。

どこを探しても見つからない。かなりショックだった。
そのショックだった自分のことが更にショックで
ひとり、愕然としてしまう私だった。

なくしてはじめて気づくもの・・・
たかが一本の傘なのに、私にとっては
いつしかそれが、とても大切なものになっていた。

一体、どこでなくしてしまったんだろう?
先日、雨が降ったときに、傘をさして電車に乗ったまでは
覚えているが、その先がどうしても思い出せない。
あのとき、私の右手に傘があったかどうか・・・
途中で記憶が途切れている。

もしや電車の中に、傘を置き忘れてしまったか・・・
その可能性が強くなった。そうだ、私は置き忘れてしまったんだ。

すでに3日が過ぎていた。今更駅に問い合わせても無理なことだろう。
私の傘は、名も知らぬ誰かに拾われて、どこか寂しい路地裏に捨てられ
冷たい雨に打たれながら、ひとり寂しく泣いているに違いない。

「今度こそ新しい傘を買いなさいよね!」
気落ちした私に、妻は笑いながら私に言う。
まるで私が、かわいい恋人に逃げられたかのようで
”それ見たことか”と言わんばかりだ。

仕方ない・・・あきらめるしかないか。
「今度、雨が降ったら新しいのを買うよ」
私は少しだけ、ぎこちない笑顔で笑った。


そして何日か過ぎたある日のこと
仕事が終わった後、外は雨が降っていた。
朝はあんなに晴れていたのに、しとしとと静かな雨だった。

「仕方ない、駅の雑貨屋で新しい傘を買うか・・」そう思いながら
私は自分のロッカー室の扉を開けた。
するとその奥には、なんとあの見なれたダークグリーンの
ストライプが、何かの隙間にチラリと見えたのだ。

「あ・・・あった!」

なんとそれは、なくしたあの傘だったのだ!

なんてことだ、暗くて今まで気づかなかったけど
傘は私のロッカー室の奥で、ずっと横たわっていたのだった。
まるでイタズラ好きな女の子が、私を心配させたくて
隠れてそのまま寝てしまったような・・・そんな感じだ。

そうか、私は傘をロッカー室に入れたまま
うっかり忘れただけだったんだ・・・。

家に帰ってから、”やれやれ、傘が見つかっちゃったよ”とそんな具合に
妻にこのことを報告した。でも妻は、「なんだかやけにうれしそうね」と
あきれた顔で笑うばかりだった。

そんな失礼な(?)妻ではあるけれど、この傘のことで
いつも感謝していることがある。

私が妻に何を頼んでも、面度臭がってなかなか何もしないくせに
この傘だけは、雨が降った翌朝には、私がまだ眠っているうちに
乾かしてきれいに折りたんで、まるで何事もなかったかのように
私の机の上にちょこんと置いてくれるのだ。

それを見つける度に、私は小さな幸せを感じる。

たぶん妻もこの傘が、どこか好きでいるのだろう。
もはや私のこの傘は、妻公認の、私のかわいい恋人なのだ。


その小さな恋人は、今も私のカバンの中で
小さな寝息をたてて眠っている・・・。



2003/06/24 22:57:02





 2003/06/22(日) 決して言ってはならない言葉。



 レジのアルバイトが、お客さんから長々と説教を受けていた。
30代くらいの体育の先生かな?と思ってしまうような体格のがっちりした方だった。

クレームってほどのことじゃなさそうだったけど
「君、今後は十分に気をつけるように」という最後の言葉だけ
私の耳に聞こえてきた。

アルバイトが丁重にお詫びしていた。
お客さんが立ち去ったのを見て私は尋ねた。

「一体、どうしたんだ?」

バイト君は、不思議そうな顔してこう言った。

「いや〜、なんかよくわからないんですけど、
言葉使いを注意されちゃったんです。”何々でよろしかったですか?”
って確認の意味で尋ねたら”その言い方は間違ってる”ってくどくどと
言われたんです。どこがいけないんでしょうかねぇ?」

・・・うわちゃー、やられてしまった。

私が前回の日記に書いたことだ。
私ときたら、夕方からのこのバイト君に、教えることをすっかり忘れていた。

本人は、どこが間違いなのかさえ、さっぱりわかっていない様子だ。
やれやれ、コンビニ言葉が、こんなになるまで浸透していたとは・・・
(詳しくは、この下にある6/19の日記にて)

これから本当に注意しないと、今後、敏感になっているお客様からご指摘を受け
大きなクレームへと発展してしまうのかもしれない。

正しい接客用語の使い方・・・これからもっと大切なことになるのかもしれない。


・・・・・・・・

私はかつて1度だけ(かどうかは定かでないが)
接客の中の言葉使いで、大失敗をしたことがある。

かなり昔の話になるけれど、あるお客様が”ビデオの調子が悪い”と
クレームを言いに来られた時のことだ。

まだ、新入社員だった当時の私は、忙しすぎる先輩達に比べ
一番暇そうにしていたので、私が対応するはめになった。

「買ったばかりなのに、もう、動かなくなった!すぐに交換してくれ!」

最初は怒鳴るほどのクレームではなかったが、40代のいかにも中間管理職
の”今が働き盛り”みたいなその男性は、本当に困っている様子だった。
すぐって言われても困るというもの。調べてみないと・・・
でも、確かに動かない。やはり故障しているようだ。

しかし、保証書を見てみると、3ヶ月くらい前に買われたもので
しかも、現品限りの商品を、”こんなに安くていいのか!”と叫びたくなるような
超激安な価格で売られていた。

先輩からは、「現品特価商品の場合、価格が極端に安い為
もしも初期不良の場合には、保証期間内ということで
無償修理、またはご返金で対応するように」と教えられていた。

確かに現品処分品の場合、どうしてもすぐに故障してしまう時がある。
それを新品が初期不良を起こした時のように、すぐに新品と交換していたのでは
まったく商売にならない。価格が違いすぎるのだ。
(今は現品とはいえ、極端に安くはないから、交換できる場合もある)

私はそんな事情をやわらかく説明をして、「無償修理か、もしくはご返金で・・・」
とお願いしたのだが、そのお客さんはどうしても納得をして下さらず、
逆にどんどん声は大きくなり「新品と交換するのがあたりまえじゃろがー!」と
叫び出す始末だった。

まだ、若かった私は、その時点でカチンときた。
”何が当たり前だ!それはあなたが自分の都合で勝手に作ったものだろうが!”
なんて心で叫んでいた。

「しかし、お客様、申し訳ないのですが、こちらの商品は古い型のため
もうメーカーも在庫は持っておりません。ですから新品と交換は不可能です」と
それでも私は丁寧に答えた。現実的に無理なんだと理解してもらう為に。

すると、そのお客様はこう言われたのだ。
「だったら、この新型と交換したらいいだろうがぁ!」

このとき私は今で言う、”キレて”しまったのだ。
しかし、それを態度に出してしまったら終わりだと思った私は
震える気持を抑えつつも、言葉はすでに別の生き物になっていた。

「人の弱みにつけこみやがって・・・」

そう心でつぶやいたつもりが、はっきりと言葉になってしまっていた。
体で態度に出さない代わりに、言葉が態度に出てしまったのだ。
今思ってもぞっとする。お客様に対して絶対に言ってはならない言葉
「・・・しやがって」という最悪な言葉を、私は使ってしまったのだ。

3秒くらい、頭の中が真っ白になっていたと思う。
気づいたらお客様が血相を変えて、私の胸倉をつかんだまま叫んでいた。

「なんだその言いぐさは!今すぐ店長を呼べー!店長を呼ばんかいっ、ごらぁ!」

私も若かったのだろう。
その言葉に、ちゃんと謝りもしないまま不機嫌な態度で、店長を呼んだ。
私はお客さんと店長のふたりから、嵐のごとく長々と説教を受けるという
ワケわかんない状態になり、ボロボロと涙をこぼしたのだった。

結局、そのクレームは、お客様の言い分がすんなりと通り
新型を同じ金額で交換することになった。

それから私は1ヶ月くらいずっとヘコんでいた。
情けない自分自身と、怒鳴ればすぐにお客の言いなりになってしまう
店の態度とそのいい加減さに、涙が枯れるほどあきれてしまったのだ。

接客とはこういうものなのか・・・
そう思うと、私は果てしなく絶望をした。

”こんな仕事、絶対に辞めてやる!”とあの時、心からそう思ったが
あれから15年も過ぎた今では、なんの説得力もないだろう。

なんだか知らないけど接客は、あきらめきれない初恋のようだ。
好きと嫌いをくりかえすばかりで、私のほうが、実にいい加減なものだと言える。

思えば今日のバイト君の使った言葉、”〜でよろしかったでしょうか?”
なんてものは、実にかわいく思えてしまう。
そのくらい大目に見てよって、つい、お客さんに言ってしまいそうだ。


・・・とまぁ、そんな苦い昔のことを思い出しつつ、私はバイト君に
正しい接客話法を教えた。こうして今、教える立場にいる私が
不思議で仕方がない。

最後に私は彼に、こう意味ありげにアドバイスをしてみた。

「いいか、お客様に決して使ってはいけない言葉というものがあるんだ。
それがなんだかわかるかい?」
そう言うと、バイト君は真剣なまなざしで私をみつめた。

私は深呼吸ひとつして、ゆっくりとこう話した。

「それはだね、例えば”何々しやがって!”とお客さんに対して
とんでもなく偉そうな態度で言うことなんだ・・・」

ニヤニヤしながらそう言うと、3秒間の妙な静寂の後
彼は不思議そうな顔をして、やがてこう笑い飛ばしたのだった。

「なんの冗談すかそれ?そんなの当たり前のことじゃないっスかー!
そんなヤツ、店員に、いや、この世にいるわけないっスよー!ハハハ!」


やれやれ・・・

その”いるわけないっスよー”のヤツに
キミはこうして教えられているのだよっ。


2003/06/23 0:36:26





 2003/06/19(木) コンビニ言葉。



 「コンビニ言葉」(またはコンビニ用語だったかもしれない。)
というものをご存知だろうか?

これは”若者流の丁寧語”と言われるもので
先日、テレビで放映されたこともあってか、
最近ちょっと話題になっているみたいだ。

私はたまたまその番組(ニュース番組だったと思う)を見ていて
あまりにも意外なその事実に、思わず愕然としてしまった。
そういえば今まで、まったく違和感がなかったな・・・と。

例えば・・・
「お釣りのほう、5千円になります」「千円からお預かりします」。

実際これって、間違った言い方なんだよね。
”5千円になる”のなら、”じゃぁ1万円になるのか!”と
こわいお兄さんに言われたら、もうどうしようもないわけで・・・

〜のほう・・・というのも、よく聞かれる言い方だ。
どうしてこうなったのかはよくわからないけど、例えば”こちらのほうにお願い致します”
じゃなくて、”こちらにお願い致します”が本来の言い方になるだろう。

千円から・・・っていうのも、本当は”○○円から、○○円のお預かりになります”が
いつのまにか、短縮されてしまったものらしい。

また、「○○でよろしかったですか?」というものもある。

これはどこでもよく聞かれる表現だけど、よく考えたら
過去形で聞くのは、おかしいことなんだよね。
店が勝手に決めつけてしまっていて、これではお客さんに
選択の余地がまったくないのだ。

この表現の一説には、レストランなんかでオーダーの時によく使う
端末の機械があるけど、店員がお客さんの前でデーター入力し終えた時に
”私はこう入力したけど、これでよかったかな?”という動作確認の為に
お客さんに”よろしかったですか?”と過去形で聞いてしまうのだという。

なんだかよくわからないけど、まぁ、それなりに意味はあるということだろう。

それにしても、お客様相手のサービス業で、こんな間違った言い方をするなんて
信じられないなぁ、なんて思いながら、最近、接客をしていたのだけど・・・

「あ、お客様、こちらのほうにご住所とお名前をお願い致します!」
「あ、お客様、こちらの商品でよろしかったでしょうか?」
「あ、お客様、お釣りは2千円になります!」

全部、私のセリフだった・・・

あぁ、もろ使ってるじゃないか!全然気がつかなかった。
これって結構ショックだった。いつのまにか私も
まわりに洗脳されていたらしい。

*正しくは「こちらにご住所とお名前をお願い致します」
「こちらの商品でよろしいでしょうか?」
「2千円のお釣りになります」になるのだと思う。(たぶん)


よく注意してみると、アルバイトなんかは、ほとんどこの言い方なんだよね。
コンビニで身に付いてしまったのかなぁ?どうなのだろう?

最初聞いた時には変に思えても、繰り返し聞いているうちに好きになる
というのは、CM効果でもよく知られているけど、たぶん、それと同じことで
その間違った表現が、繰り返すうちに当たり前になってしまったのだろう。

”意味はわかるからいいじゃない?”
なんて思う方もいらっしゃるかもしれないけど、統計では30代以下の人では
”気にならない”人が多いが、これが40代以上になると
”そういえば変だ”と違和感を抱く人が多いのだと言う。

これはやはりサービス業としては、直すべきことなのでしょうね。
きっと、マスコミで言われ始めてから、みんながどこか意識していると思うので
そろそろ注意したほうがいいと思う。

それこそ恐いおじさんから「釣りが5千円になるんなら、1万円にもなるんやろな!」
なんて言われかねないし、”〜でよろしかったでしょうか?”なんて言ったとたんに
”ほら、今言ったで〜!”なんて大声で笑われてしまうのかもしれない。

接客業のみなさん、今後は十分に注意しましょうね。



・・・ということで
以上が私なりの提案のつもりですが

これでよろしかったでしょうか?



2003/06/20 1:29:48





 2003/06/17(火) 憎しみあった人へ。



 別れの最後の時というものは、人は誰しもその人への
最高の贈り物としての言葉を捜す。

それが好きな人ならまだしも、憎しみさえ抱いた人へは
どうすればいいのだろう?

Sさんが店を辞めることになった。
理由は家庭の事情からと言うことだったが
本当のところはよくわからない。

正直言って、私はホッとした。
もう、あんなイラついた感情で、自分を憎まなくて済むと思った。
Sさんとのことは、過去の日記でも何度も書いたが
心のぶつかり合いがあって、それきり私は心を閉ざしていた。

何度も激しい口論をしたし、心ない言葉でお互いを傷つけもした。
そのことで、何度も眠れない夜を過ごしたが、心の傷は消えはしなかった。

彼は私よりも随分と年上だった。
明るい性格だが、仕事に対してのいい加減さとその要領の良さに
自分のまじめ過ぎるこの性格から、どうしても許せないでいた。

たぶん、自由奔放な彼の中に、私の持ち合わせていない何かを見つけ
私はただ、それを妬ましく思っていただけだろう。
あの頃は、それを認めたくない一心で必死だったのだと思う。

怒りの感情というものは、ただ、疲れてゆくばかりだ。
挨拶もせず、すっかり口も聞かなくなり、どうでもよくなっていた私は
こんな自分でいることを、時々、心から憎んだりもした。


「言いすぎた、申し訳ない・・・」

口論をした後、彼は何度か真夜中に、私にそう電話をしてきた。
彼は本質的にどこまでも優しく、そして私はその度に
深い谷底に突き落とされたような気がした。

・・・涙がこぼれそうになった。

彼は成熟した大人であり、私は未熟な大人だったのだ。


私がこの店に転勤してきた時も、最初に言葉を掛けてくれたのは
彼だった。それまでの私の不安な心を、何気ない彼の笑顔が
吹き飛ばしてくれた。

最初の頃の彼との信頼関係は、冗談を言い合う仲にまでなったが
彼のたった小さな言葉から、わずかな心の亀裂を生み、
やがて音もなく崩れ去って行った。

「ねぇ、知ってるかい?Aさんは、○○らしいよ」

私は自分の耳を疑った。
もしも私がAさんだったら、その言葉に泣き叫んだことだろう。
彼はそんな信用のない噂話やいい加減な嘘を、平気で話す人だった。

次第に私は、彼のことが信じられなくなっていった。
そして、みんなが彼を避ける態度も、最初は不思議に思ったりもしたが
だんだん理解してゆくばかりだった。

そしてある日、彼の業務上の怠慢から、ひどいクレームが重なった。
今思えば、それは彼だけが悪いわけではなかったが
それが1つのきっかけになり、私の不信は怒りに変わり
激しい口論の末に、ふたりの憎しみは戻れないものになってしまった。

もう・・・
口も聞かなくなった今では、モノクロ写真のように懐かしくも感じられる。
ただの仕事仲間に過ぎず、なんの感情もわかないでいた。

それでも最後に、私は彼に優しい言葉をかけたいと思った。
そう思う自分が不思議だったが、答えはすでにわかっていた。

別にそれは、私の優しさからでもなく、彼への償いの気持でもない。

私はきっと、自分のために、別れの時を終わらせたいと思ったのだ。
このまま憎しみ合ったまま終わらせたなら、私はいつまでもこの想い出を
憎しみのまま思い出すしかない。
でも、優しい言葉で終わらせたなら、私は自分を許すことができる。
そして、美しい想い出として、この心を癒してくれるかもしれない。

人は時として、想い出の中でしか生きてゆけない時がある。
哀しいことに想い出は、自分の心の中にしかない、
たったひとつのものなのだ。

彼はきっと、許してくれるだろう。私はそう信じた。
最後の日の閉店後に、私は彼に静かに歩み寄った。

「Sさん、今日が最終出勤ですね。
いろいろあったけど、お世話になりました。
これからもお互いにがんばりましょう」

照明を落した薄暗い売場の中
笑顔で話し掛けながら差し伸べた右手は、彼の右手を待っていた。
しかし、彼はちらっと私を見ると、そのまま背を向けて立ち去って行った。

右手を宙に浮かせたまま、私は動けないでいた。
言葉さえない、あっけない幕切れだった。
彼は最後まで許してはくれなかった。
現実はこんなものだ。ドラマのようにいくことはない。


別れの時だけ、許してもらおうと思った私は
たぶんこの瞬間を、罪を背負った旅人のように
何度も繰り返し思い出すのだろう。

心が悲鳴を上げている。
後悔ばかりが、この私を苦しめている。
この想い出から解放されることは、きっと私には二度とない。


・・・・・

「言いすぎた、申し訳ない・・・」

真夜中の彼の優しい電話の声が、この心に蘇ってくる。
あの時にどんな言葉を返したのか、あふれていた心は
もう覚えてはいない。

それでも繰り返す想い出は、私に優しく語りかけてくる。

哀しみは哀しみとして受け止めたまま
人は生きてゆくものだと・・・



2003/06/17 22:53:23





 2003/06/15(日) 地上の天の川・・・
(ご無沙汰しました。約1週間ぶりの再開です。)



 深夜遅くまで、考えに考えて作成した報告書を、今朝早くに
上司に報告しようとしたら、「あぁ、そこに置いといて」と
まるでたいして意味のないことを、思い出したかのように
実に素っ気無い返事をしていた。

たぶん、このまま見もしないのだろう。
タバコをふかしながら、談笑することのほうが
彼にとって、一番大事なことらしい。

なんなんだ、これは一体・・・
また、憂鬱が私を襲う。

形式だけの報告なら、早くそう言ってくれたらいいのに。
どうでもいいものならば、私だって、ページを埋めるかように
ドラえもんの絵でも書いて、ただ、形式的に報告したのに。

一人だけはしゃぎ過ぎた後で、急に自分が嫌になるような
そんな切なさが体を伝わる。

私の人生は、いつもどこかかみ合わない。
なんだかちょっと投げやりになっている、この自分が腹立たしくなる。
一所懸命仕事をしても、無駄なことばかりのような気さえする。

なんてことだろう。
久しぶりの日記なのに、テンションは低く最悪だ。
おまけに眠たいし、でも書きたいしで、どっちつかずの状態だし・・・。

日記を休んでる間のこの1週間は、実に忙しいものだった。
9年ぶりに飛行機にも乗ったし、新店を視察してホテルに泊まって
レポートを書いて、そしてちょっと勉強もして発表もして緊張もして・・・
いつものように自己嫌悪になることもあったけど、成果はそれなりに
あったのだと思う。

誰も誉めてくれないので、
自分を”よしよし”と誉めてあげたい。(でも、ちょっと虚しいなぁ)

*ちなみに私は外泊すると、極度の緊張感からか、必ずお通じが悪くなる。
トイレでいくらがんばってみても、巨大なフタが邪魔してるようで
(わかる人にはわかるだろう・・・)腰が痛くて仕方がない”のだ。”

”のだ”と威張ってどーするんだ私?
なんだかよくわからないけれど、お昼時の方はごめんなさい。


この1週間で、唯一うれしかったのは、飛行機から見下ろす街の夜景が
息を飲むほど美しかったこと。地上の星たちが、まるでブレードランナーの
映画のような近未来都市を思わせ、色とりどりに輝くそれは、
車の列が偶然作った、地上の天の川だった。

宇宙飛行士が、宇宙から地球を見下ろした時、神を近くに感じると言う。
その気持、私にも少しだけわかるような気がした。

見えないけれど、あるんだな。
実にちっぽけなところに、私達はちゃんと生きてるんだなぁと・・・

思わず哲学してみたりして。


宇宙の天の川は、永遠のように輝いているけれど
地上の天の川は、いつまで輝いていられるのだろうか・・・


2003/06/16 0:28:54





 2003/06/05(木) 遠い海辺・・・



 泳ぐにはまだ、早いけれど
初夏の風は、この心を、遠い海辺へと運んでくれる。
車の窓から流れる風景が、心をどこまでも解放してくれた。

これがクレームの外出じゃなきゃ、
私はきっと裸足になって、熱い砂浜を歩いただろう。

「すまないが、ビデオがうまく映らなくて・・・」

それはまるで縁側で、日向ぼっこでもしてるような
そんなご老人の声だった。
クレームというよりはむしろ、人助けのようなものだった。

随分とお困りのようだったので「今から伺います」と
私ものん気に答えたのだった。

とりあえず、今日は人員に余裕があったことだし
それでもビデオの初期不良も、考えられたことだし・・・

とかなんとか言っても本音を言えば
そのお客さんのご自宅が、海辺に続く道だったからだ。

その家は、まるでもう忘れられてしまった古い旅館のようだった。
玄関に私を迎えてくれたのは、笑顔しか知らないような
白髪のおじいさんだった。(きっと、電話のご老人だろう。)

ビデオの接続を簡単にこなし、少しばかりお客さんと世間話をする。
お茶の香りがただよっている。時間がゆっくりと流れている。
どこからが鳥の泣き声が聞こえる。

夏が近いなぁ・・・とぼんやり思う。

こんな力の抜けたクレームも、たまにはいいというものだろう。
やがて映ったビデオには、チャンバラ映画の侍たちが
切ったり切られたりと忙しそうだった。

そんな中、ビデオの説明をひととおりし終わる。
そして今度はおじいさんが、映画の俳優の説明をはじめる。

今度は私がチンプンカンプン。

でも・・・おじいさんの声が弾んでいた。
私の心も知らないうちに、あの大きな夏空へと
軽くスキップをするのだった。



やがて窓の外にはもう、初夏の香りの遠い海辺が

どこまでも広がっていた・・・。



2003/06/06 0:25:18 THE SAME MOON!



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