1月の日記とエッセイ
2003/01/30(木) 光も声も届かない場所で。

突然にまた、憂鬱な気分が私を襲う。
こんな日は、何を考えても最悪で、不安に不安を重ねるばかり。
もしも私の目の前に、巨大なスコップがあったなら
私は地面を掘りつづけ、地底深くこの身を置いて
光も声も届かない場所で、やがて消えてゆくのだろう。
ひとりが好きなはずなのに、ひとりになると心細くて
誰かの声とやさしさを、いつしか私は求めている。
”考えるな!迷うな!”といくら心で叫んでみても
自分の小ささと力のなさに、途方に暮れる私がいる。
どうしていつもこんなふうに、負けた気持になるのだろう。
どうしていつもこんなふうに、誰かと比べているのだろう。
私は何と戦って、何に勝たなければいけないというのか?
目の前に、存在している大きな不安はあまりにも大きすぎて
何処へゆこうにも心がためらう。
私は何を恐れているのか?
何をあきらめようとしているのか?
頭上に広がる雨雲は、光さえ遮って、雷鳴は私を怯えさせる。
今はただ、息を殺し、じっと通りすぎるのを待つしかない。
ただ、待つことでしか、今の私には出来そうにない。
遠く雷鳴が聞こえている。
私は息を殺している・・・。
2003/01/31 0:21:14
2003/01/26(日) 役立たずな偽善者・・・。

その時、私の中でいくつもの醜い感情が生まれては
言葉の中で殺し続けていた。
もう、どうしようもないほどに、すべてが手遅れなクレームだった。
心の中ではひどい嵐が、こんな私を襲っていた。
30代くらいの男性だろうか?電話で感情のままに、大声で怒鳴っている。
情けないくらいに、私はオロオロするしかなかった。
テレビの故障だった。数年前に買われたテレビだ。
「責任者を出せ!」と狂ったように叫んでいる。
無償修理の保証期間はとっくに過ぎてる。
普通なら、有料での修理扱いだが、とてもそれを言える状況じゃない。
どうすればいいのか考える余裕も与えずに・・・
「この程度で壊れるテレビがあるか!
お前の店は客をなめとんのか!」
男の感情が、受話器から私に突き刺さる。
なめてるつもりはないが、絶対に壊れないテレビなどない。
男のセリフはどんどんと無謀な要求へとエスカレートしてゆく。
「お前の対応は最悪なものだ!
金は払わない!タダで修理しろ!」
そんな無茶なことを命令してる。
それに対し、私はただ、繰返す。
「申し訳ございません」と・・・。
”・・・何が申し訳ないんだ?・・・”
私の中で声が聞こえる。もうひとりの私の声だ。
見えない私が、心の中で叫んでいるのだ。
”お前は何も間違っていないのに、
どうしてお詫びしなきゃいけないんだ?”
そう自分に聞かれても、私も何がなんだかわからない。
”わからないだと?嘘をつけ!本当はお前はこう思っているんだろ?
相手はどうせ、日頃、仕事も満足に出来ない愚かなヤツで、
こうして弱い立場のヤツにしか大声を張り上げられず、うっぷんを晴らしてる小さいヤツだと。
え?どうだ、違うか?なのにどうしてそんなに卑屈になる?相手の思うつぼじゃないか!”
だって仕方ないじゃないか。これが私の仕事なんだから。
それに愚かなヤツとかは思っていない。私は相手を知らないのだから。
だからこそ恐いんだ。怒鳴られたらお詫びする以外、私には何も出来ないんだ。
”そうかい、お前はある意味すごいよな。そんな嘘が言えるのだからな。
それでまた、結局、相手の言いなりのままになるのがオチなんだろ?
随分卑怯な手を使うじゃないか。それがお前の仕事かい。随分と都合のいい仕事だな。
プライドも何もないのか?大声を出されたら、恐れをなして逃げるだけなのか?”
そんなことはない!
逃げないで、言うべきことは言ってるつもりだ!
”よく言うな。一体いつ、お前が言うべきことを言ったというんだ?
ただ、怖いものから逃げてるだけじゃないか?
そうだろう?違うか?”
そんなことはない。
ちゃんとお客様のことを考えて対応している。
”へぇ、お客様のことをねェ・・・で、そのクレームはどう解決したんだ?
勇気あるお前さんは、ルールどうりに、有料修理扱いで説得したんだよな。”
いや・・・
結局、無料ですることに・・・なってしまって・・・
”ほら見ろ!なんてあきれた奴だ!所詮お前はその程度の男だ。
安易な方法で解決しようとすぐに逃げてる。
今まで有料扱いで修理して、毎月の少ない給料の中から
まじめに修理代金を払ってきたヤツらのことはどうなるんだ?
怒鳴って無料になるんだったら、誰だって怒鳴り声を上げるに決まっているさ。
この不況の中、誰だって1円も無駄に使いたくはないさ。
お前みたいな店員がいるから、こんなクレームがなくならないんだ!
わからないのか?お前がまた、次のクレームの種をまいているんだ!
お前はただの役立たずな偽善者に過ぎない!
それにお前が気付かないでどうするんだ!”
・・・心の中の、もうひとりの醜い私の言葉が、声もなく叫んでいる。
私にはもう、反論の言葉を言う気力すら残っていない。
ただ、古いレコードの傷のように、同じ言葉を繰返してる。
”お前は役立たずな偽善者にすぎない。
役立たずな偽善者にしか・・・”
いつしか私はこう思っている。
私も弱い立場の誰かに、大声で怒鳴ってしまいたいと、
何度も私の前で、頭を下げさせたいと・・・
クレームは繰返される。
クレームは繰返されてる。
役立たずな偽善者によって・・・・。
2003/01/27 1:07:33
2003/01/23(木) 心、空いたもの・・・。

最近、空白な時が流れている、と思うことがある。
なんだろう?この切なさはいったい・・・。
仕事をしていても、誰かと笑っていても、いろいろと考えていても
目の前に、ポッカリと空いたものが私を包んでいるみたいで、
どうにも心、虚しくしている。
まるで、大きなシャボン玉の中に入ってしまったみたいだ。
まわりがゆがんでぼやけて見えて、はっきり見ようと手を差し伸べたなら
そこでパチンとはじけてしまい、すべてを台無しにしてしまいそうな・・・
そんな気がして、いつも何かにためらうような私がそこにいる。
・・・・
先日、液晶テレビをお買い求め頂いたお客様が来店された。
70代くらいのおばあさんで、背中が丸くとても小柄な人だった。
テレビを返品したいのだという。
金額は20万円近くもする。
まだ配達はされる前だったから、使用されているわけではなかったけど
いきなり20万円もの売上のマイナスは、思わず悲鳴を上げたくなるものだ。
当然、私はその理由を聞いてみた。
おばあさんはうつむきかげんで私の目を見ずに、そっと答えた。
「主人の為に買ったのですが、昨日、退院するつもりが
急に具合が悪くなって、また長く入院することになりまして・・・」
おばあさんの言葉が、力を失ったみたいにそこで終わった。
私は次の言葉を待ったが、沈黙が苦しく感じるばかりだった。
そのおばあさんの年齢からして、ご主人もかなり高齢なのだろう。
液晶テレビは、おばあさんにとっての、最後のプレゼントだったのかもしれない。
「せっかくいいものを買われたのですから、キャンセルなさらずに、
そのまま配達でお使い頂いたらいかがですか・・・」
丁寧な言葉のようでいて心では、”勘弁してくれよ!”と
私はひどくつぶやいていた。売上のことしか頭になかった。
さっきからおばあさんは、「本当に申し訳ございません」と
言葉をつまらせ、何度も私に頭を下げてる。
白髪が、少しだけ乱れても直そうともせずに、両手は前に組まれている。
少しやつれたその頬は、歳のせいではないような気がした。
「たぶん、主人はもうテレビを
見ることはないのだと思います・・・」
かすれた声は、私にただ、その意味だけを伝えていた。
とても後悔した・・・哀しくらいに。
私があんなふうに引き止めなければ
私はその意味を知らなくて済んだのに、
おばあさんにあんな言葉を、言わせなくて済んだのに・・・。
私はただ、成す術もなく、心の震えは止まる術を知らなかった。
夕方のこと・・・
”どうして急に売上が落ちたんだ!”と店長から電話でひどく叱られる。
”作り話じゃなかったのか?キャンセルをどうして食いとめなかったんだ!”と
その嫌味な声は、だんだん悲鳴に近くなる。
私は多くを語らなかった。
騙されたならそのほうがいい。お金を騙し取られたわけじゃない。
ただ、売上がちょっと減っただけだ。
本当の哀しみは、そんなもので、消えてはゆくことはないのだろう。
”なんとかその分、売上を作ります”とだけ私は言う。
何かあてがあるわけでもなかった。私のほうこそ、作り話なのだ。
電話を切ると目の前に、あのポッカリ空いた空白な時が
私の周りを包んでいた。
そっと手を、差し伸べてみる。
私はまた大切な何かを
台無しにしようとしている・・・。
2003/01/24 1:19:49
2003/01/20(月) 30%引きの、更に半額!

毎朝、朝日新聞の4コマ漫画の”ののちゃん”を見るのが
私の楽しみな日課になっている。
アニメ映画「となりの山田君」の元になった漫画といえば
誰にでもわかるんじゃないだろうか?
先日、”ののちゃん”の4コマ漫画の中で、こんなシーンがあった。
とあるスーパーで大バーゲンをやっている。
ののちゃんのお母さんとおばあさんが、その店の婦人服売場に来ていて
どの服を買うか迷っていたら、店内にこんなプライス表示がしてあった。
「今付いている価格の30%引き、のまた更に半額!」
そのとなりの売場では
「今付いている価格の半額の、また更に30%引き!」
とデカデカと表示してある。
それを見たおばあさんは、店員に向ってこう文句を言う。
「あんたは客をばかにしてんのかい!
いったいどっちが安いねん!」
*今週のののちゃん参照。
(残念ながら、今回の漫画はまだ掲載されてません。)
私の説明文じゃ、あんまり面白くないと思うけど
4コマ漫画の中じゃ、かなり笑えた。
これって実際どっちが安いのか、わかるだろうか?
ちなみに私は、最初に半額にしたほうが安いかな?と思って
よくよく計算してみたら、これってどっちも同じなんだよねぇ。
(これで私は店員なんだから嫌になるよ、まったく。)
うちの売場でも、つい、こういうの、やっちゃうんだよね。
”更に○○%オフ!”表示にすると、売場作りとしては実に簡単なんだよね。
ひとつひとつプライスを書き直さなくて済むし、
ひとくくりに”更に○○%オフ”と表示すればそれでいい。
実に手間がかからない。お客さんにとっても、安さ感がわかりやすい。
だから、今回の漫画のように、すでに更に○○引きという表示があっても
”更にまた○○引き”という二重表示になってしまう事も実際にあるのだ。
しかし、それとは別にこんな問題もある。
最近、家電製品のメーカー希望小売価格が、ほとんどなくなりつつある。
その一番いい例がパソコンだろう。カタログを見ても希望小売価格は書いていない。
売場の店頭表示価格しかないのだ。
昔なら、プライスを表示して”メーカー希望小売価格から3割引しています!”
と書くだけで、お客さんにどれだけ安いのかという安さ感を教えることが出来た。
でも、今じゃ割引率が表示できなくて、ズバリ表示しかできなくなった。
商品を選ぶ際に、それで苦労した方も多いのだろう。
時々、お客さんからは「この商品は定価(メーカー希望小売価格)で売ってるの?」
なんて勘違いをされてしまうことがある。
特にご老人の方の場合においては最悪だ。
「いえいえ、定価がないので、当店にてお安くしているのです!」と
簡単に言ったつもりでも「じゃぁ、結局、何割引なんだ?」と質問されてしまう。
「いえ、ですからそういう表示は出来なくて・・・」と言うと
「だったら、別に安くなってないじゃないか!」と言われてしまう。
どうシンプルに説明すれば、わかっていただけるのだろうかと、いつも頭を抱えている。
だからといって、くどくどとその経緯を説明しても、余計にわからなくなるだろうし。
こう言う時こそ”更に○○%オフ!”の表示が単純でわかりやすいのだろう。
それで、こういう安さ感をどの店でも使ってしまうんだろうけどね・・・。
・・・・・
さぁ、これでどれだけ安いのかわかるだろう!と思ったら大間違いで
今度は更にこう、ご老人に聞かれてしまうことになる。
「更に30%オフ?
それじゃ結局、いくらになるんだい!」
どっちにしたって、結局、同じように叱られてしまうことに変わりはない。
最終的にはひとつひとつ、値引き後の価格を付けている。
どうあがいたって、手間がかかるのだ。
というわけで、私達店員は今日もなかなか帰れない。
やれやれ・・・。
2003/01/21 0:59:08
2003/01/15(水) 間違えて来られたお客さま。

これはもう、去年の年末の話になるのだけど
ある日のこと、売場でキョロキョロと何かを探しているお客様がいらした。
とても品がよくて、和服の似合う40代くらいの女性だった。
とても困った表情をされていたので
「何かお探しですか?」と私はいつものようにさりげなく聞いてみた。
たぶん”○○の売場はどこでしょうか?”と聞かれるものと思っていたら
それがまったく違っていたのだ。
「この店は○○店(某大型家電量販店)じゃないのね?
あぁ、間違えてしまったわ。○○店へは、どう行けばいいのかしら?」
それを聞いて、思わず吉本の芸人みたいにズッコケたくなってしまった。
なんてことだ!?この人は、どうやら間違えてうちの店に来てしまったようなのだ。
救いようのない間違いに、救いようのないほどお人好し(?)の私は
それでも親切に道を教えてあげた。
なんだかまるで競争他店の売上に協力しているみたいで
我ながらあきれてしまったのだけど・・・まぁいいや、という気持だった。
何度も道を説明するのだけど、そのお客さんは、なかなかわかってくださらなくて
ああでもない、こうでもないって言ってるうちに、イライラが増すばかりだった。
ええい、もうっ!って気持で私は思い切って聞いてみた。
「一体、どんな商品をお買い求めになりたいのでしょうか?」
「えぇ、食器乾燥機を買いたいのですけど・・・」
「それならうちの売場にもありますけど・・・」
「えっ??」
そのお客さんは、やっと重大な何かに気付いたのか
顔を真赤に染めながら、私にこう言った。
「あぁ、そうよね。よく考えたらココも電器売場なのよね。
私ったら、よその電器屋さんの道をたずねていたなんて・・・
失礼なことを聞いてしまったわ・・・本当にごめんなさいっ!」
単なるわがままなお客さんじゃなくて本当によかった、と思った。
こういうお客さんほど、親切にしてあげたいと思うから不思議だ。
それで商品説明しているうちに、「これにするわ」ってことで
なんだか気まぐれのうちに決まってしまい、
結局、うちの店で食器乾燥機を買って下さった。
ついでにIH炊飯ジャーも買って下さったから驚きだ。
そのお客さんも大変喜んでくださって、「ここで買えてよかったわ。
道のわからない店まで行かなくてすんだのだから・・・ご親切に本当にありがとう」
そんなふうに、何度もお礼を言って下さった。
いえいえ、そんな・・・と私は恐縮するばかりだった。
最後にそのお客さんは、こうも言ってくださった。
「でも、これってなんだか笑い話よねぇ。本当にごめんなさいね。
電器屋さんで、違う電器屋さんの道を教えてもらおうとしていたなんて・・・
今考えても恥ずかしいわ。
でも、ちゃんと教えて下さってありがとう。結局ココで買わせてもらったけど
この店のことを知ってうれしかったわ。また、今度も利用させて頂くわね」
あれは久しぶりに楽しい接客だったと思う。
お客さんとあんなに笑ったのも本当に久しぶりのことだった。
私はそのお客さんに、何か感謝したい気持でいっぱいになった。
それ以来・・・
今でもそのお客さんは、時々、私に顔を見せに来店してくださる。
「今日はジャーポットを買いたいのよ」と明るくおっしゃって下さる。
いつもニコニコと微笑んでいらっしゃるので、思わず私もニコニコしてしまう。
素敵なお客さんにめぐり合えたなァって心から思う。
奇妙で偶然な出会いになったけど
こんなことから始まる接客もあるのだなぁ・・・
2003/01/16 0:16:03
2003/01/12(日) もう二度と戻らない言葉・・・

また、どうしようもなくやってしまった。
今朝のことだ。
朝礼の時に、つい、胸の内に秘めていたことを
どうにも我慢ができなくなって、私の口から知らないうちに
厳しい言葉があふれ出ていた。
具体的には書けないが、仕事への熱意とか責任感とかが損なわれて
みんなに真剣さがなくなっていて、ただ、勤務時間が終わるのを
まるで、あくびをするかのように待ってることに、我慢が出来なくなってた。
一日の3分の1近い時間を、そんなふうに無駄に過ごすなんて
私には信じられない。今を生きていないのと一緒だ。
同じ時間を、無駄に過ごすか価値あるものにするかは
自分自身が決めること。どうせなら価値あるものに私はしたい。
人生なんて、長いようであっという間に終わってしまう。
たとえ、仕方なくというか、好きでもない仕事だとしても
辞めない限りは、同じ時間を一生懸命生きて欲しいし、私も生きていたいと思う。
自分の価値観を強制するつもりはないが、過ぎた時間は戻らないことを忘れたくはない。
私が仕事でダメになりそうなときや、イライラや自分の機嫌の悪さに
クレームになりそうなひどい接客をしているときには、いつも、こう考えるようにしている。
「もしも今、自分の子供がこんな私を見ていたなら、どう思うんだろう?」って。
いつでも子供に誇れる自分でいたい。
時々、逃げてる自分に誇れずに、泣きたい気持になるけれど・・・。
それにしても、黙っていれば円滑に、人間関係を保てるのに
わかっていながら、どうして私はわざわざ反感を買うようなことを
やってしまうんだろう?
言ってしまったあとの言葉って、本当に恐ろしいと思う。
文章なら読み返せば、間違った言い方を直したり表現を変えたりして
自分の気持を見つめ直すことが出来るのに
言ってしまったあとの言葉は、二度とやり直しがきかない。
たぶん、私が言ったことで、その何人かは
間違いを直せない領域にいるのじゃないかと思う。
私はたぶん、何も弁解しようとも思わないし、何も話すこともしないのだろう。
もう、みんなに好かれようとは思わない。そんなの無理だとやっと気がついた。
そんなふうに、今の自分は小さな自分に
強がっているにすぎない。
・・・・・・・・・・・・・・・
それは突然のクレームの電話だった。
”商品を注文したが、いまだに連絡がない!どうなっているのよ!”
というものだった。
調べてみると、受付けたSさんが、ちゃんと
伝票処理をしていなくて、発注が漏れていたのだった。
”あんなにいつも言っているのに、また、同じ間違いをしている。”
腹が立った。どうしようもなく腹が立った。
今朝の件で不安な気持が、そうさせたのかもしれないが
その時の私は最悪な気分だった。そのSさんは今日は公休日なのだ。
なんてことだ、怒りが押さえ切れない・・・。
”どうして注文できてなかったのか、正直に答えなさいよ!”
その中年のキンキンとしたおばさんの声が、私を余計にイラつかせた。
だから正直に答えた。
すべてSが悪いんだと言わんばかりに人のせいにして。
すると、急にそのおばさんの声が小さくなって私にこう言ったのだった。
「そうなの・・・
でも、Sさんを責めないで下さいね」
意外だった。言葉にさえ出来なかった。
どうして?クレームを言ってきたお客さんが
そのクレームの元となったSさんのことをかばってうなんて。
その言葉の意味もわからず、呆然と受話器を持ったまま
私は立ち尽くすばかりだった。
”あの人は親切に接客してくれたから”と
そのお客さんが聞きもしないのに私にそう話していた。
私のSさんへの不機嫌な言葉に、おばさんは心配したのだろう。
「たぶん、私に時間がなくて急がせたからSさんが
あせってしまったのね。だから叱ったりしないで下さいね」とも言ってた。
なんだろう・・・この私の中に生まれた虚しい心は。
本当の過ちは一体なんだったんだろうと、その時ずっと思っていた。
でも、たぶん私にはもうわかっていた。
それはきっと、この私の中にあるものなのだと。
そのおばさんはまだ、Sさんのことばかり心配していた。
私はそれをなだめるように、言葉を選んでしゃべっていた。
「もちろん叱ったりしませんし、私のせいでもありますし・・
連休明けに、早急に取り寄せて連絡いたします」
そう言って約束をした。
おばさんのお礼の言葉を聞いた後
落ち着かない気持を引きずったまま、静かに電話を切った。
ひとりひとり、みんなをそっと見つめていると
それぞれが、それぞれの笑顔で接客をしていた。
私はどれだけわかっているというのだろうか?
ここにいるみんなのことを・・・。
2003/01/13 0:26:25
2003/01/09(木) 箱なし症候群?

これは最近の傾向だと思うけど、この頃、接客をしていて
こんなことが、時として起きることがあるのです。
実は今日もそうだった。
電気カーペットをお買い求めのお客様(中年のおばさん)がいらっしゃって
レジで支払いを済まされ、いざ、お持ち帰りの時になって
こんなことを言われたのです。
「ねぇ、店員さん、箱はいらないから中身だけにしてくれる?」
”あぁ、またか・・・”
そのセリフを聞くたびに、心の中で唖然としてしまう。
箱なしで本体だけを持って帰られるなんて・・・
数年前なら、とても信じられないことだと思う。
そんなの持ち歩いていても見栄えが悪いし、
運悪くどこかにぶつければ故障の元にもなるし・・・。
それでも最近のお客さんって、「箱は要らない!」って
頑固におっしゃる方が意外と多いのです。
これも一種の世の中の価値観の変化と言えるのかなァ?
特に炊飯ジャーとかジャーポット、ラジカセに多くて、たまにテレビもあるけど・・・
さすがにこれには困ってしまう。
「でも、箱に入ったままで持って帰られたほうが、
持ちやすいし安全ですし・・・」
「だって、ゴミになるだけでしょ!いらないったらいらないのよ!」
私が心配して言ったって、まったくの無意味になってしまう。
逆にお客さんに叱られてしまうのだから困ったものです。
確かに今は、ゴミを出すにもお金がかかるし、手間もかかる。
それが理由なのもよくわかる。結果的には箱なしでお渡しもしている。
でも、たったそれだけのことで(と言えば失礼かもしれないけど)
そんな危険を犯してまでも、箱なしで持って帰ろうとする、このすがすがしさはなんだろう?
不況の影響がこんなところにもやって来たのかと、そのたびに実感してしまう。
読者の方の中にも、案外、そんな経験をお持ちの方がいらっしゃるのかもしれませんね。
なんだか今の世の中って、本当にとんでもないことになっているんじゃないだろうか?
決して安くない電気製品なのに、そんな扱いをしてまで安く済ませたいなんて・・・
経費節約の為ならば、見た目なんか気にしなければ、無駄なものなんてまったくいらない。
そんなふうに、あらゆる企業が必死で経費削減している中で
きっと日本の主婦(主夫)のほうが、日本中でもっともうまい
ローコストオペレーターと言えるんじゃないか?と密かに思っている。
ただ、ひとこと言わせてもらえば・・・
それって店員にとって、ものすごく手間なんです。
箱から出して、そのまま「はい、じゃあ持って帰ってください」なんて言えるわけもなく
結果的には、ちゃんと傷が付かないように、簡単ではあるけど包装もしなきゃならないし
付属品や説明書に、ちゃんと注意もしなきゃならないし・・・。
(一度、付属品が足りないって、クレームになったことがある。)
あぁ、やっぱりお願いだから
箱ごと持って帰ってくれないかなぁ・・・
2003/01/10 0:31:49
2003/01/08(水) 売場に穴があいている・・・。

実は今日、とんでもない出来事があったのだけど、今書くと
何か問題になる恐れもあるので、別の機会に書きたいと思う。
あまりリアルタイムに書けないことに、時々苛立ちを感じるが仕方ない。
”ここだけの話なんだけど・・・”
なんてネット上で書いたとしても、それはすでに嘘になってる。
ここはそういう世界だってことを、時々忘れてしまうけど忘れちゃいけないのだろう。
そういえば、私はこうしてひとりきりで、パソコンに向って日記を書いているけど
その向こう側に見つめる人達のことを、ほとんど何も知らないでいる。
たぶんそれは不特定多数の人達と、接客することと
とても似ていることかもしれない。
怖いと思えば恐い。うれしいと思えばうれしい。
さて、本当はどっちなんだろう・・・?
(答え:やっぱりうれしい。)
・・・・・・・・・・・・・・・・
年末年始の死ぬほどの忙しさが一段落し、なんだか放心状態の私です。
お客さんも少なくなって、いつも通りの営業に戻ってしまった。
なのに売場が正月のまま手付かずで、汚れがひどいし品切れしているし
それはもう救いようがないほどガタガタの状態。
少し前なら、もっとすばやく手直し出来たはずなのに・・・。
たるんでるぞ!自分!どうした?自分!と
自分に激を飛ばすのですが、まったくの効果なし。
こんな時期にこんな店員は、たぶん私以外にもいるのだと思う。
がんばった分だけ、自分がダメになってしまうような感じというか・・・。
「ハロゲンヒーターありますか?」とお客さんに聞かれて
「品切れです」とだけ答える私。そんなことでどうする?
”すでにメーカーは品切れですが、なんとか1台探してみます!”ってどうして言えない?
まるで心にポッカリと穴があいたみたいだ。
売場にも穴があいているけど・・・
(品切れの売場の状態を、私達店員はこんな言い方をします。)
ま、悩んだって仕方ない、明日は明日の風が吹くだ!
あれもして、これもしてと、やることはいっぱいあるけれど
やることがいっぱいあるなんて、やりがいがあっていいじゃないか!
もっともっと前向きに考えよう!
そんなふうに、一瞬明るく思ったけれど
そういえば今度、車検に出さなきゃいけないんだった。
車検はあるけど、お金はない。
お金はないけど、車検はある・・・。
誰か助けてぇー!
2003/01/09 1:38:41
2003/01/01(水) 正月早々、事情聴取。

朝から万引き未遂事件の処理に追われる。
だいたいなんだって、正月早々、あんなに大きなシャワートイレの箱を
盗もうなんて思うんだろう?
店から持って出ようとしたところを、ガードマンに捕まったようだ。
(あんなに目立てば、誰だって捕まると思うけどなぁ。)
警察も来た。一応、私も事情聴取みたいなものを受ける。
私が犯人じゃないのに、書類作成の為にと指紋を取らされる。
「一時的なものですから、この指紋はすぐにリストから消しますので」
そうニコニコと笑いながら中年の警察官は言うけれど
”本当だろうか?”とつい、疑いの目を向けたくなる。
こればかりは、何度経験しても嫌なものだ。
その犯人は、大人しい小動物のように、ちょこんと座っていた。
実に素直そうな、どこにでもいるような普通の青年だった。
その顔に表情はなく、青白い顔がとても印象的で
ふっと口で吹いたなら、すっと消えてしまいそうな存在だった。
こうして並んで座っていると、売場に早く戻りたくてイライラしている
私のほうが、よっぽど犯人のように見えるからしゃくにさわる。
”もう、白状するから勘弁してくれよ!”って思わず投げやりな気持になる。
(私が白状してどうなる?)
もちろん、彼はシャワートイレが欲しくて盗んだ訳じゃないのだろう。
でも、誰もが浮かれてる正月に、そんなにまでしてお金が欲しかったのか・・・
そう思うと、なんだかとても切なくなる。
たった、それだけのことで、彼の人生は間違いなく遠回りになるのだろう。
それまでの彼の人生を、もちろんは私は知らないけれど
生まれた頃、幼い頃、まだサンタを信じていた頃、初恋の頃、失恋の頃・・・
それらすべてを抱えたままで、彼はどこでつまづいてしまったんだろう?
どこで見失ってしまったんだろう・・・
他人である私からすれば、彼がどうなろうと関係ないし、どうでもいいことだ。
”正月早々、シャワートイレなんか万引きして捕まって、バカなヤツだなぁ・・・”
なんて思ってすぐに忘れるだけだ。今は自分のことだけで手一杯というもの。
でも・・・もし、あの商品を、あんなところに置いていなければ
私がもっと早く気付いて、彼に声をかけていたなら・・・
もしかしたら、彼は間違いを犯さずに済んだのかもしれない。
まぁ、今さら私が気休め程度に、悩んだってどうしようもない。
時はそんなふうに流れてしまった。もう、巻き戻せはしないんだ。
これを何かのきっかけにしてくれたらいいと思う。
・・・なんて
ちょっと思ったりもしたけれど、彼は相変わらず小動物のように
静かに焦点の定まらない目で
じっと、床を見つめていた・・・。
がんばれ・・・。
2003/01/01 23:51:52
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