2002/12/16(月) パワーハラスメント・・・。

朝、目覚めた時には、もう、誰もそこにいなくて
時計の音だけが、コチコチと退屈な仕事をしているみたいだった。
とても長い夢を見ていたような気がするけど、それがうまく思い出せない。
布団の中のぬくもりが恋しくて、私はなかなか動けないままで
今がいつで何曜日かさえも、しばらく思い出せないでいた。
”今日は仕事だったろうか・・・”と一瞬不安が横切った。
カレンダーにぼんやりと目をやる。
今日の日付けを思い出す・・・公休日の印がつけてあった。
助かった・・・ほっと胸をなでおろす。
でも、まだ頭がうまく働かない。
ひとつひとつ何かを確かめなければいけないようだ。
今度は時計に目をやる。
もう11時を過ぎていた。なんだ・・・道理で誰もいないはずだ。
子供達は学校で、奥さんは多分、買物に行っているのだろう。
こんなにも遅く眠っていたなんて・・・随分と久しぶりのような気がする。
みんなが私を起こさないように、気を利かせてくれたのだろか?
そんなふうに思っていると、心がじんわりとあたたかくなった。
昨日の忙しさがウソみたいに、とても平和すぎる朝だ。
まるで嵐が過ぎ去った後みたいに、静けさだけが包んだような感じで・・・。
・・・・・・・・・
昨日の小さな事件を思い出す。
あるアルバイトのA君が、仕事の中で私が注意したその理由が
どうにも納得できないままに、キレてしまっていた。
「オレが憎いなら、はっきり言ったらどうだ!」と彼は叫んでいた。
「やる気がないなら帰ってくれ!」と私は彼を罵倒した。
こんな事を言う相手に、何を言っても時間の無駄にしか思えず、どうでもよかった。
忙しかったのだ。
そう、忙しかったのだ・・・と私は自分に言い聞かせていた。
でも・・・
本当はそうじゃなかったのかもしれない。
正直に言えば・・・私はA君のことが、どうしても気に入らない。
その点、彼の言ってることは、たぶん、当たってる。
自分の価値観を主張するばかりの彼に、私は疲れるばかりだった。
彼も私のこの気持に、気付き始めていたのだろう。
「あなたはいつも、オレにしか、そんな大口がいえないくせに!」
店内のうるさすぎる雑音の中、彼のその言葉だけが
私の耳の奥まで響いていた。
「お前は何もわからないくせに何を言うか!」
そんなふうに意味ありげに、私は彼に叱るように言ったが
若すぎる彼の投げ捨てた言葉に、私のその態度とは裏腹に
心は傷つくだけ傷ついていた。
私は彼を無視したまま、動揺も見せず大人を演じ続けながら
目の前の仕事を器用に片付けるだけだった。
彼は不機嫌な態度のまま、しばらく接客を続けていたが
やがていなくなっていた。
Tさんが、後で私にそっと言ってくれた。
「彼のことは、さっき僕が十分に注意しておきましたから・・・」
その言葉に、私は胸が熱くなった。
そのTさんの”注意しておきましたから・・・”
の”から”のあとに続く言葉の意味が、私をどこまでも哀しくさせた。
僕から十分に注意しておきましたから・・・
”だから、もう、彼のことを許してやってください”
Tさんはそう、言いたかったのだろう。
笑顔で接客を続けながらも、私の心は深い場所で泣きつづけていた。
”パワーハラスメント”
この言葉を新聞ではじめて見たとき、私は息が止まる思いだった。
職権によるいじめや嫌がらせなど、強制による圧力のことを、このように言うのだそうだ。
私の彼に対する態度は、単なる”いじめ”にしか思えなかった。
どんなに努力しても売上は伸びず、結果しか見ない会社にしてみれば
そんな努力はまったく無意味で、業績が悪化しつづければ辞めるしかない雰囲気の中
サービス残業で心身ともに疲れ果て、そんな時、目の前の若いアルバイトが
自分の思ったような仕事をしてくれない。
私のそれまでのストレスは、何も知らない彼に自然と集中する。
ココでは書けないような罵倒を私は何度も彼に浴びせる。
アルバイトの彼は、私に逆らう事は出来ない。それを私は知っている。
だから私は激しく罵る・・・私の行為は、パワーハラスメントに違いないのだ。
やがて、しばらくして彼は売場に戻って、また、仕事をしていたが
目が少しだけ赤かったような気がした。
ひとりでどこかで泣いていたのだろうか・・・。
昨日はあれから彼に対して、私は何も出来ないでいた。
目の前の仕事を片付けるのが、ただ精一杯だったから・・・。
Tさんのフォローに頼るしかない私だった。
なんて情けない自分だろう・・・今更ながらに私はそう思っていた。
・・・・・・・・
遅く目覚めた朝の中、誰もいない部屋の中
こんな私は世界中の人達から見放され
ココにひとり、残されてしまったような気がした。
たとえそれが、彼のせいであっても、私はそれでいいような気がした。
いつしか私は、大切なものをなくしてしまったのだ・・・。
「ただいまぁ!」
やがて奥さんが明るい声と共に、大きな買物袋を抱えて帰ってきた。
「あ、起きた?昨日は随分とお疲れだったのね。まーちゃん(9才の娘)がね
”お父さん、お仕事大変だったろうからこのまま寝かせておきましょうね”って言ってたのよ」
と彼女の微笑むようなやさしい言葉が、私の不安を和らげてくれる。
職場での私の姿を、家族はみんな誰も何も知らないでいる。
こんな私は、家族のやさしさを裏切っているような気がして
彼女の言葉に、うまく言葉が返せないでいた。
”明日、彼に言うべき言葉はなんだろう?”
その答えは、まだ、見つからないでいる。
2002/12/16 23:43:46
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2002/12/15(日) 売場という名の戦場。

声が枯れ果ててしまった。
冬だと言うのに、汗でシャツが貼りついていた。
1時間が、5分で過ぎてゆくようだった。
ココはまるで、売場という名の戦場だ。
その1秒に余裕がない。
お客はそんなに待ってはくれない。
少なすぎる人員に、はじめから無理だとわかっていても
「いらっしゃいませ」とせかすお客を笑顔で迎える。
目の前の接客さえ、まだ終わってないというのに・・・。
ひとりのミスが、みんなをイラつかせる。
地雷のようなクレームだ。
受付けた誰かがその犠牲になる。
目の前のお客さまは、突然に怒鳴り声を上げている。
その時を選んだかのように、時間はまるで溶岩みたいに
ぬるりこぼれおちながら、周りのすべてを焼き尽くしてゆく。
やがて私は、うまく身動きが出来なくなる。
私の体はその熱で、不自然な形で溶かされて
プラスチックみたいに折れ曲がっている。
「申し訳ございません、申し訳ございません」と
お詫びの言葉を言いながら・・・。
すでに相手は、巧みな言葉で攻撃している。
私にはもちろん、武器は・・・ない。
理由を言うにもお客の前では、そのすべてが言い訳になる。
心がもう、砕けてゆく。
私はただ、床の汚れを見つめている。
売場という名の戦場に、援護射撃はされることなく
弁護人も存在しない。
あるのはただ、SOSという聞こえない信号。
どんなに心が張り裂けそうでも
心に言い訳するように
みんな、笑顔で接客をしている。
そして、私も、笑っている。
届かない信号を送りながら・・・。
2002/12/16 1:53:40
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2002/12/08(日) 見えない何かの感情・・・。

その電話は、もうすでに4度目だったし
日曜日の混乱と疲労とが重なったからかもしれない。
いや、はっきり言えば、私はその電話をすぐに切りたかった。
”切る”という表現では、まだ、生ぬるい。
許されるものならば、二度と鳴り出さないように
その電話線を引き千切って、電話の息の根を止めたい気持だった。
その電話のお客は、私に何度も同じことを聞いてきた。
先日、テレビを買ってくださった中年男性だ。
その内容をココに詳しく書けないことが、悔しくて仕方がないが、
書くに値しないほどの、とてもくだらない内容だから、ある意味助かるというもの・・・。
電話の声というものには、つくづく裏の表情というものが
備わっているのだなと思う。
電話機のそのプラスチックの箱の中には
知らないうちに悪魔が潜んでいるんじゃないか?とさえ思うほど・・・。
私はその時、普通に喋っているつもりだったが
そのお客が急に声を荒げ、こう言ったのだ。
「なんだ!おまえのその偉そうなものの言い方は!
お前は大卒か?え?」
確かに、その時の私の言い方は、偉そうになっていたかもしれない。
それをストレスや悪魔のせいにはしたくない。
素直に反省したい。申し訳なかった・・・。
しかし・・・なぜここで、”大卒か?”という言葉が出るんだ?
それとこれとなんの関係がある?私にしてみれば、それは偏見にしか思えなかった。
偉そうだから大卒か?それとも、礼儀を知らないから大学を出てないと思ったのか?
どちらにしてもくだらない。なんなんだそれは一体・・・。
別に私はひがんでる訳ではないが、大学を自ら中退した私は大卒ではない。
それを恥ずかしいと思ったことは一度も無いし、それはウソじゃない。
確かに、私が大学を辞めたその経緯は、心に大きな傷が残るくらい
ひどいものには違いなかったけど、私はどちらかと言えば
何かの”繋がり”から解放されたかっただけなのだ。
大学はその入れ物にすぎなかった。
私にとって、それは・・・。
「高卒です」と私ははっきりと言った。
誤魔化すことも出来ただろうが、逃げるようでイヤだった。
それに、恥ずべき事でもない。
私にしてみれば、それは”形”にしかすぎないのだ。
しかし・・・
中年男性はそんな私を鼻で笑った。
”ふん、お前なんか、そうだろうと思ったよ”とでも言いたそうに・・・。
その態度が・・・申し訳ないが・・・私をキレさせた。
その時の会話は、ココではあえて書かないが、念の為、断っておくけど
私は最後まで怒鳴ったりはしなかった。
大卒じゃなくても、店員としてそれくらいの事はわきまえている。
私はただ、冷静に、あるべき心の場所を求めただけだ。
でも、結局は、何も理解されなかったが・・・
挙句の果てに「オレが何度も電話するからお前はそんな態度をとるのか!」
と言い出してきた。
別にそう言うわけじゃないが、逆にそれがわかっていながら
どうしてそんなことをするのだろうと私は思った。
さすがに私は疲れてきて・・・
もう、電話はこれで最後にして欲しいと、それとなく伝えたところ・・・
「何言ってんだ!お前は店員だろうが!
店員だったら、お客が何十回電話してこようが親切に対応するのが
当たり前だろうが!それがサービスだろうが!」と声を荒げた。
確かにそうかもしれない。しかし、なんて歪んだものの見方をしているのだろう?
電話だと、なぜか人は上から言葉を、平気で捨てるように叩きつける。
まるで人影に顔を隠し、野次を飛ばしているようなものだ。
言われたほうが、憐れむ気持になってしまう。
そんな相手に、なぜか私はお詫びの言葉を述べている。
なぜか、繰返し、述べているのだ。
なぜだろう・・・と思う。
たぶん、私がその理由を捜し求めたなら、
出口のない入り口に迷い込むようなものだろう。
そこに意味は、たぶん、ない。
求めてはならないのだ・・・店員と言う生き物は・・・。
今日の私は、どうしてこんなにも、卑屈になっているのだろう?
どんどん自分が、最低になってゆくのがわかる。
その中年男性の”大卒か?”という言葉が、何かの引き金になったのだろうか?
よくわからないが、あの頃を、思い出してしまったのかもしれない。
その人には、関係のない感情が、私の中に生まれたとしたなら・・・。
「今日のわしは、酒に酔っているのだ」
中年男性が、最後にそう言って、電話を切った。
つぶやくように捨てられた言葉・・・
私の心が、なぜかチクっと痛んだ気がした。
そして、それから二度と、もう電話は鳴る事はなかった。
それは、私の望んだ事だったのに・・・
どうしてだろう?
その言葉の本当の意味が、
私は今もわからなくて、見えない出口を探している。
もしや彼にも、
私の知らない何かの感情が
そこに生まれたとしたのなら・・・。
2002/12/09 1:16:08
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2002/12/05(木) 片足のないサンタクロース・・・。

12月の忙しさが、ひしひしと伝わってきて
日記を書く時間さえ、ままならない感じがします。
でも、たった数行しか書けなくても、出来るだけ毎日書いて行きたいと思う。
今日という日は、二度と来ないかけがえのない一日だから・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
今日、我家にもクリスマスツリーを飾りました。
高さが90cmくらいのとてもシンプルなものです。
実は、このクリスマスツリーは、2年前に勤務していた店で
売場のディスプレーに使っていたものです。
今はもうその店は、同じ2年前に閉鎖してしまったのだけど・・・
(閉鎖店舗の情景にて当時の日記をまとめています。)
時は過去へとさかのぼる。
あれは、店が閉鎖してしまった後のいろんな残処理業務をしているときのことだった。
残処理と言っても、本当に捨ててしまうことしかしなくて、店に飾ってあるものとか
日頃使っていた机や椅子や、鉛筆立てひとつにしてもすべて捨てるんだよね。
そこにあるのが当たり前だったものを、それを捨てなきゃならないというのは
本当に身を切るような悲しみしか残らなかった。
もう、何にも必要とされない。明日にはもうそこにはない。
その作業の中、実際に涙を流しながら捨てるパートさんなんかもいて
私は何も言えなくて、ただ、黙って捨てるしかなかった。
あんな何かに押しつぶされそうな重い空気は、その場にいた者にしか
永遠にわからないものだろうと思う。
誰かが泣いてる中で、終わらせる仕事をしている。
あんなの、もう、二度とゴメンだ・・・
ちょうどそんな時だったのだと思う。
このクリスマスツリーが売場の倉庫の奥からひょっこり出てきたのは。
「どうする?ちょっと汚いしこれも捨てる?」って誰かが言った。
「でも、もったいないし、誰もいらないなら想い出として私がもらうよ。」と言って
私がそれをもらって帰った。
ちょうどその頃、季節は冬の終わりの頃で、クリスマスも終わったというのに
なぜか私は捨てる気になれず、春も近い午後の中、街ゆく人達の視線もそのままに
箱のまま自転車で持って帰ったのだった。(帰りながらちょっと後悔したものだ。)
今思えば、別に捨ててもよかったのだけど、いざ、こうして
この季節が来ると、やっぱり捨てなくてよかったと心から思っている。
去年はすっかり忘れていて、押入れの奥でホコリをかぶっていたけど
今年はまーちゃん(9才の娘)が偶然に見つけてくれたので
その赤い箱を開けることとなった。
「サンタさんの片足がないねー」とまーちゃんがポツリと寂しそうに言った。
確かにミニサンタの片足が、もげてなくなってしまっている・・・。
そう言えば2年前のあの頃、ラジカセの売場でこのツリーをディスプレイしている時に
若いアルバイトのKさんが、何かの拍子にミニサンタを床に落としてしまって
サンタの片足が無残にも、ポーンとどこかに飛んでしまったのだった。
あの時彼女は、「あぁ、ゴメンね」と
本当に申し訳なさそうに、片足のサンタに謝っていたけど
結局、その片足のないサンタだけ飾れなくなって
ずっと暗い箱の中にしまっておいたんだ・・・なんてこと思い出す。
「今度は明かりがつかないねー」と、またまーちゃんが残念そうに指摘してる。
おかしいな?確かにスイッチを入れても、小さな豆球の半分しか点滅しない。
おかげでちょっと華やかさに欠けている。
あの頃、売場ではちゃんとすべて点滅していたはずなのになぁ。
まるで童謡の”大きな古時計”のように、何かが終わって壊れてしまったのかなぁ・・・
そう思ううちに、あの頃のにぎやかだったクリスマスの売場が、みんなの笑顔が
この心に蘇ってくる。あの頃を思い出すなんて、本当に久しぶりのことで
あの時の場面が、私の中で巻き戻され、再生されて行く。
時が一瞬、私の中で止まる・・・
いつしか、まーちゃんと私とで飾った我家のクリスマスツリーが完成した。
まーちゃんが最後に、そのてっぺんに小さな物を飾っていた。
「ココにおいてあげようね」ってまーちゃんが微笑みながら話してる。
なんだろう?と思ったら
それは、あの片足のないサンタクロース・・・。
枝と枝の間にちょこんと乗せて
そのサンタの顔だけが笑ってる。
私は少しだけ涙がこぼれそうになった・・・。
2002/12/06 1:10:34
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2002/12/04(水) 自然体のままで・・・。

今、ペットショップボーイズの音楽を聞いている。
”Behaviour”(1990年)・・・というタイトルの古いアルバム。
彼らの歌は、力強く何かを求めることもなく
何も語りかけていないかのように、ただ、自然体のままでいるけど
そのメロディは、私の心の深いところを
まだ、誰にも見せていないような場所へと、そっと導いてくれる。
彼らの歌は、もしかしたら天使達に守られてるんじゃないだろうかと
錯覚するほどのその美しい旋律と透き通る声。
何も飾ることもなく、ただ、自然体のままで・・・
あんなふうに自然体でいられたら・・・と私はあこがれる。
自然体であったなら、誰かの言葉に左右されることもなく
恐れず不安にもならず、怒りを忘れ背筋を伸ばし
この人生を凛と歩いて行けるというのに・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・
今朝から最悪な状態だった。
まるで頭の中に、クモの巣が張り巡らされているかのように
ぼんやりとして、物事がはっきりせず、気だるいままで・・・。
起きているのに、まだ夢の中でまどろんでいるような感じ。
どうしたというのだろう?
結局、そのままの状態で私は仕事をしていた。
もちろん、それで仕事になるわけもなく
ただ、時が過ぎてゆくのを待っているようなものだったけど
平穏に終わることもなく、たるんだ気持に不意をつくように
アルバイトのS君の怒鳴り声が、店内を駆け巡った。
「そんなに値下げ出来るわけが無いじゃないですか!
もう、十分にセールで安くなっているのに、
どうしてまだ安くしなきゃならないんですか!」
まただ・・・またS君がキレてしまったのだ。
相手は中年のおばさんだ。たぶん値下げを強要したのだろう。
私の頭痛がひどくなる・・・周りのお客さん達も信じられない表情で
彼の態度をひそひそと見つめている。
そんな自分の異常にはっと気付いたのか、S君は慌ててお詫びをしていた。
その中年のおばさんも、彼の大声にひどく驚いてはいたのだけど
そんな彼を・・奇跡的にも・・許していた。
私の出る番もなく、とても奇妙な形でそのクレーム
(にもなっていなかったが)は終わった。
キレやすい彼は、この接客には向いていない。
何度も私が注意しても、その気持は押さえ切れずにお客さん相手に怒ってしまう。
その原因が、どれもお客のわがままにしても、それを笑って対処しなきゃならないのが
私達店員の仕事だ。なのに我慢という言葉の意味を、彼は理解しようとしない。
でも、私は思う。
笑って誤魔化して、お客をなだめながら接客している私達より
正論として主張する彼のほうが、どこか自然体のような気がする。
もちろん、お客さんを怒るなんて言語道断ではあるけれど
その意味を問われたなら、私はなんと答えればいいのだろう?
正しいこと、間違ったこと・・・接客の中ではそれらのことが
どんどん形を変えながら、私達店員を困惑させる。
例えば、特別に安くして特定のお客さんに喜ばれたとしても
他の客さんには高い値段で売っている事実。
安くしたことで喜ばれても店員に罪の意識が生まれる。
(どうでもいいだろう。と思う店員は、その時点で長続きはしない。)
何が正して、正しくないのか、次第にわからなくなってくる。
それを私はあきらめるように、気持をコントロールするけれど
キレる彼はそれが器用に出来ないだけなのだ。
ただ、唯一の救いとしてうれしかったことは
今日はなぜかS君のほうから、普段はそんなこと絶対に無いのに
私に反省の言葉を言ってくれたこと。
「すみません・・・僕が悪かったです。」
そんな彼を見て”何が悪かったのだろうか・・”とぼんやりと思った。
でも、現実には私は彼に厳しく注意していた。
なんだか心がどうにかなってしまいそうだった。
自然体な彼は接客には向いていない。
自然体になれない私は、そんな彼に少しだけあこがれる。
やっと、就職先を見つけた彼は、この仕事も年内までという。
今度の仕事は、接客とはかけ離れた場所にある。
物事は収まるべきところへ収まるのだろうとつくづく思った。
彼のことで、私は何度も頭を痛めたけれど
今はもう、そんな気持もどこか遠くに感じている。
正直言って、彼がいなければどんなにいいかと思った時さえあった。
でも、なぜか今では少し寂しく感じるから
想いなんてとてもいい加減なものみたい・・・。
・・・今、ペットショップボーイズの
”Only the wind”が流れている。
頭の中のクモの巣が、彼らの歌に少しづつほどけてゆく。
せめて今だけ、自然なままに、この心の深い場所へと誘え・・・。
2002/12/05 1:49:09
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2002/11/21(木) ワープロとベータデッキ。

ワープロを、どれだけの人達がまだ使っているのだろう?
店頭からワープロが姿を消してから、どれだけの歳月が流れたのだろう・・・
・・・なんてことを、しみじみと思わせる出来事があった。
そのご老人(といっても60代後半くらいかな?)が私に尋ねてきた。
「インクリボンはあるかな?」
「はい、インクカートリッヂでしたらあちらに・・・」
「違う!わしが聞いているのはインクリボンじゃ!」
「え?インクリボン・・・あぁ、失礼しました。ワープロ用のリボンですね。
でしたらこちらに・・・」という感じで私はご案内をした。
最近、インクリボンなんてほとんど売れないから
インク・・・と言われると”カートリッヂ”という感じで忍者の合言葉のごとく
パソコンプリンター用の方を条件反射的に思ってしまうので困ったものだ。
あぁ、失敗失敗、思い込みって本当に恐い。
一応うちの売場にも、EやEWタイプといったポピュラーなワープロ用インクリボンは
置いていあるのだけど・・・そのご老人のリボンは、少々特殊なタイプだった。
それで私が、「申し訳ございませんが、こちらのタイプは
もう、売場に置いておりませんのでお取り寄せになるのですが・・・」
と丁重にお詫びをしたのだけど、そのご老人は・・・
「どうしてないんじゃ!お前の店で買ったんだぞ!
なぜないんだ!置いてないとおかしいじゃないか!」と
急に顔を真っ赤にして、怒り出したのだった。
確かにそのご老人のおっしゃる通りなんだけど
ワープロの生産がすでに打ち切られた中、ワープロ用インクリボンも
うちの売場ではもう、来年からは扱わない方向ですらあるのに
今はもう、ワープロからパソコンに変わってしまったという現状を
そのご老人は、よくご理解でないようすだった。
でも、もちろん、そんなこと言ったとしても、ただのいい訳にしか聞こえないだろうし
私はただ、この現状をお詫びするしかなくて・・・これはとても難しいところだ。
ちなみに、「いつ頃買われたのですか?」と尋ねたところ
「10年以上前じゃ!」ということだった。
”10年以上前じゃ!”と元気よく言い切られても困るというものだ。
よくぞそこまで壊れずに・・・と逆に拍手を送ってあげたい気持になる。(パチパチ)
それで結局、取り寄せる事になった。
メーカーに確認したら、メーカーさんもビックリしていたけど
まだ、何とか在庫は残ってると言うことだった。
ご老人も、なんとか私の申し訳なさが通じたのか、それとも
一応、やんわりとワープロのこんな現状を説明したのがよかったのか
急に腰が低くなって・・・
「えへへ、スミマセンねェ」と愛想笑いをするようになり
逆になんだかとても無気味に思えた。
まぁ、それはいいにしても、ご老人は、私に一礼すると
「それではお願いします。」とさっきとは別人じゃないか?と
思わず思ってしまいそうな(変な日本語だ)感じで帰って行った。
これは推測だけど、ご老人の書斎にあるホコリの積もったワープロを見て
”久しぶりにワープロで年賀状を作るか。”と思ったんじゃないかと思う。
時代は確実に変わって行っているんだけど
ご老人の中じゃ、なにも変わっていなくて
”わしの知らぬうちに勝手に変わるんじゃねェ!”という思いなのだろう。
やれやれ。
・・・・
そういえば先日も、こんな事を聞かれるお客様がいらっしゃった。
それは50代くらいの男性の方だった。
「ベータデッキありますか?」
ベータデッキ・・・なんて懐かしい響きなのだろう。
なんだかまるで、本棚の奥のほうから偶然に古い写真を見つけたような気分だ。
もちろん、うちの売場にはベータのビデオデッキなんてものは置いていない。
(確かソニーも最近生産を打ち切ったんじゃないのかな?)
時代はDVDですよ・・・とにこやかに笑顔で答えたのだけれども
「じゃ、うちにあるベータテープ100本はどうなるの?」と聞かれて
私は唖然としてしまった。
もちろん・・・どうにもならない。
思わず涙目になってしまいそうだった。
それで、いつ頃買われたのですか?と何の気なしに尋ねたところ
「そうだなぁ、あれは10年以上前だったかなぁ・・・」という事だった。
最近、10年以上前が流行っているようだ。
みなさん、商品を大切に扱っていらっしゃるのでしょうね。
でも、時代はどんどん、そんな人達を置き去りにしてしまうんだよね。
ワープロにベータデッキ・・・
そんなふうにしみじみと思っていたら、さっきのワープロのインクリボンの
ご老人が、また血相を変えて、私のところにやって来た。
「おいおい、ちょっと遠かったが、さっき○○店(超大型量販店)に行ったら
ちゃんとわしのインクリボンが置いてあったぞぉ。どうなってるんじゃ?
お前のところの品揃えが悪いだけじゃないか!」
・・・あのう、お客さん、店の規模が違いすぎます!って
訴えたくなったけど・・・やめた。
(○○店さん、まだあれが置いてあるなんて凄すぎますよ!)
きっとうちの店が悪いのだ!わっはっはだ!ちきしょうーめ!
・・・って思わず投げやりになってしまったけど
そのご老人は、実は本気で怒っていたというわけじゃなく
本当のところは、私をからかいたいだけなのだった。
「お前も頑張れよ!」と手を振る茶目っ気たっぷりのおじいさん。
「そろそろパソコンにされたらどうですか?」と
私がちょっと皮肉を込めて言ったら
「もう、先が短いからいらん!」って言ってた。
私はまだまだ
長いような気がするのだけど・・・・・・・・・・・・・・・・・・。(^_^)
2002/11/21 23:37:24
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2002/11/17(日) 現実と夢の狭間で・・・。

仕事を辞めた・・・・というとてもリアルな夢を見た。
確かに今の私は、自分にウソをつくワケでもないけれど
そんな暗い気持はあるにしても、夢に見るほど最悪ではないと思っている。
それどころか、最悪な売上のために、いくら時間があっても足りないくらい
やるべきことがたくさんあって、いつも頭は1週間先のことまでいっぱいになっている。
なのに、どうしてなんだろう・・・。
私は夢の中で、辞表を片手に店長の目の前に差し出していた。
本当にあれは私なのだろうか?と思うくらい、なんのためらいもなく躊躇もなく
まるで洗礼されたもののように・・・でも、心の中ではまだ迷いがあった。
ひき止められるかな・・・
そんなかすかな甘い気持が、まだ、心の中にあった。
まだ、間に合うのかな?まだ、思い止まれるのかな?と・・・
でも、そんなものは、海辺に作られた砂山のように、容易く打ち砕かれた。
店長は実に事務的に
「ココとココに印鑑と、それと名前を記入して・・・」という感じで
まるでそれは、私のその受付けが、今日はすでに56番目であり
まだあとに長く続いているかのような・・・
そんなふうに、そこには個人に向けられた心というものは
何ひとつ存在してなくて、私にとっては、人生の一大事であるはずなのに
店長にとっては、私はその他大勢のひとりでしかなくて・・・
「なんだ、私って、それくらいの価値しかなかったんだ。」と
実にさっぱりとした気持で私は思っていた。
そう思うと、”これでよかったんだ。”と素直に思える情けない自分がいた。
「はい、これでおしまい。お疲れさん」といった調子で
店長の業務的な笑顔ですべてが終わった。
私の辞職は実にあっけない幕切れだった。
私は縛られた何かから解放され、それを望んでいたはずなのに
なぜか、親からはぐれた迷子のように、見えない不安は消える事はなかった。
場面がなぜか見なれた売場に変わっていた。
みんなが、実に忙しそうに仕事をしていた。
私は誰にも声をかけられなかった。
私はすでに、そこでは部外者になっていたのだった。
ふと見ると、あまりの出来事にビックリしてしまった。
これまでに、私が出会ってきたアルバイト達や仕事仲間達が
それぞれの売場で商品を運んだり接客をしていたりしていて
中には汗を流しながら、重たい冷蔵庫を陳列しているヤツもいた。
思わず手伝おうと思ったが、そいつに”いらっしゃいませ”と私は言われてしまった。
哀しくなった・・・私はもう、何も出来ない。
気付けば、売場を歩いているお客さんも、かつてのクレームのお客さんや
親しくしてもらった懐かしいお客さんばかりだった。
なんということだろう・・・。
まだ、私が若かった頃、本気で言い争ったフリーターのあいつ。
映画を作りたいなんて言っていた・・・夢はもう、叶ったのだろうか?
接客が嫌で、仕事の途中で逃げ出してしまったアルバイトの彼。
それを私が追いかけて、とうとう家にまでたどり着いたこともあった。
いつも自分に自信がなくて、泣いてばかりいたレジの女の子。
その度に、私が彼女に”大丈夫だよ”と勇気を与え続けたけれど
結局、つまらないひとつのクレームがきっかけで辞めてしまった。
あの子も今頃はもう結婚をして、旦那さんに守られているのかなぁ・・・。
同期で入社したあいつ。
まだ、若すぎて現実も知らずに互いに夢を語り合っていた。
結局、あいつが先に日の当たる場所に出て
そして、あいつが先に辞めてしまった。
今はどんな夢を追いかけているのだろう・・・。
・・・そんなあふれそうな思いが、私の中で駆け巡った。
これは夢だから、それに理由は何もないにしても
人は死ぬ前に、それまでの人生を走馬灯のように見るという。
それが、仕事を辞める時でさえも
こんなふうに同じ現象が起きるとでも言うのだろうか?
私は毎日の仕事の中で、”仕事”というものをしていると
どこか自分の人生とは”別なもの”としてみているような気がして
確かに今は、こんなことをしているけれど、本当の私はこんなのではなくて
いつか、もっと日の当たる場所で・・・
みたいな感じをどこか心に抱えていて・・・。
でも、本当はそうじゃない。
ありふれた日常の中の、日々の仕事でさえも
私達は自分の大切な人生を歩んでいる。
私の今のこの想いは、うまく言葉に出来ないけれど、私達は仕事をしていながらも
実は、その中の本当に大切なものの存在を見逃しているのではないかと・・・
夢を叶えられる人は、ほんの一握りしかいない。
ほとんどの人達が、どこか心にため息をつきながら、日々の仕事や日常に
いつも小さな愚痴をこぼしている。
でも、悲観的になる事はないのかもしれない。
私達は人と人との繋がりの中を
こうして生きていることを忘れさえしなければ・・・
本当に大切なものは、たぶん、そんな中にある。
”今、がなくて、どうして未来があるというのだろう。”
そんなふうに、思う私がいた。
この世の中は、未来が何も見えなくなって
確かに不安で逃げ出したくもなるけれど
私もそんな中にいて、潜在的に、こんな夢を見たのかもしれない。
未来が見えないからこそ、もっと、”今を生きよう”と私は思う。
未来は”今”がなければ、きっと何もはじまらないんだ。
・・・・・・
やがて目が覚めた私は、それが夢とわかるまで
しばらくの間、ぼんやりと、そんな事を考えていた。
朝の日差しがあたたかくて
そのやわらかな光りの粒子さえ見えるような気がした。
夢だったんだ・・・と思ったとき
まだ、その夢の切れ端が、目覚めた朝の中にいつまでも残っていて
なかなか信じられないでいた私は、それでも何か救われたような気がして・・・。
朝のまどろみの中、現実と夢の狭間で
ただ、単純に”今”の幸せを私は感じていた・・・。
2002/11/17 22:10:57
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2002/10/07(月) 効率主義と本当の思い。

また、お客さんを怒らせてしまった。
S君である。先日もやらかしたばかりだった。
その本人はまったく反省の色がない。
「すべてはお客のわがままのせいなんだ、
あいつらはみんな、自分さえよければいいと思っているクズだ!」
と自分の思いあがった主義を、汚い言葉で主張していた。
「その言葉は、そのまま君にも通用するよ。」と私は静かに言った。
別に皮肉のつもりではない。
もう、彼に怒鳴るだけ無駄な事と、私はどこかあきらめていた。
確かにお客さんのわがままはある。
私も何度それに悩み、苦しんだ事だろう。でも、私はこう思う。
お客さんがわがままでどこが悪いんだ?と・・・。
もしもお客さんがみんなやさしくて、それでいて物分りがよかったとしたら
それが本当に私たち店員にとって、幸せなことなのだろうか?
人は必ず、どこか不満を抱えて生きている。
この世の中に完璧なものはないし、何ひとつ愚痴をこぼさない人なんていない。
それが生きている証拠であり、つまり、人生はそう言うものだ。
仮にやさしいだけの人がいるとしたら、どこかそれは嘘っぽく
とても信用することなど出来ない。
不満や愚痴を訴える人がいるからこそ、世の中は変わって行くのだ。
「どうしてお客さんの事を、もっとよく考えないんだ?」
面談室でふたり、私達は互いに向かい合った。
ここはとても静かな部屋だ。ここにだけ、フカフカのイスがある。
きれいな机もある。けれども、私はあまりこの部屋は好きではない。
ここはクレーム処理の部屋でもあるからだ。
ヤクザ風の恐いお客さんに、ここでどれだけの店員達が大声で怒鳴られ
頭を下げ、そして、いくらかの見えないお金が動いたのだろうか?
もちろん、それはクレームに対しての正当な金額だとしても、
どこかやりきれない気持は常に残ってしまう。
「あんなお客なんて、最低じゃないですか!
1年前に買った商品を、最初っから壊れていたから新品と交換しろなんて
そんなバカな話ってあるもんか!それが通用するんだったら
オレは1年ごとに新品に交換してもらうね!そんな最低なお客に
どうしてペコペコしながらお詫びしなきゃならないんだ!?」
彼の言葉は、いわゆる私達店員の本音だった。
そこから彼に、私はどうやって”それは違うんだ”と説明したらいいのだろう・・・。
そんなふうに悩む前に、私に言葉はまるで意思を持った動物のように
静かに動き始めていた。
「お前は何か勘違いしていないか?
お客さんが望んでいた事は、本当にそんなことだったのか?」
彼は机の上の灰のないきれいな灰皿をじっと眺めていた。
遠く誰かを呼び出している店内放送が聞こえていた。
まるで海の中の赤潮のように、ここだけ別の時間が流れているみたいだった。
「気持とか、思いやりとか、そんな精神論は僕は聞きたくないですよ。
そんなもの、一体何になるんですか?
結局クレームは、言ったお客のゴネ勝ちじゃないですか・・・。」
彼がポツリと言った。
その言い方は、なぜか不思議と負け犬のように聞こえた。
「人間って不思議な動物で、どうしてもこの世に自分の何かを残したがるんだ。
ただ、生きてるだけで満足する人なんてひとりもいない。
君にもわかるだろう?その君の主張も、ひとつの君の残したい何かだと思うんだ。」
自分でそう言いながら、”私は何が言いたいんだろう?”と思っていた。
時計がもう、夕方5時を過ぎている事を私に教えていた。
そろそろ売場に戻らないとまた忙しくなる時間だった。
「お客さんも君と同じ考えなんだと思うよ。」私は言葉を切り出した。
「同じ考え?」
「そう、つまり、自分を認めて欲しかったんだ。
商品を交換しろとか、そういう無理難題なことを言ったのは
自分を認めてもらえなかった代償にすぎない。結果にすぎないんだよ」
S君は、それがなんの意味かがわからないでいるようだった。
「思い出してもみなよ、お客さんが君に言った最初の言葉を
それは”なんだお前のその態度は!”だったろ?
お客さんはただ、素直に認めて欲しかっただけなんだ。
あれはそういうわがままが、本来の目的なんかじゃないんだと思う。
確かに中には、心無い人もいるけれど、それは店員も同じことだ。
結果的には、君の嫌いな精神論になるかもしれないけれど
お客さんは自分の立場になって、君に考えてもらいたかったんだ
クレームは、複雑なようでいて、つまりは、単純な精神論に行きつくものかもしれない。」
私はそう言いながらも、正しい事を言ってるだろうか?と少し不安に思った。
でも、これがわからなければ、彼には別の道を歩んでもらったほうがきっといい。
このままここにいたとしても、互いになんのプラスにもならないだろう。
しかし、それと同時に、ただ、こうして不良材料をなくす事だけが
私の何かのプラスになるとも思えなかった。
それでは単なる効率主義でしかない。
私のもっとも嫌いなものだ。リストラ・失業者・自殺者の増加・・・
そんな言葉がふと頭をよぎる。
効率主義が、私達に何をしてくれたというのか?
彼はまだ、じっと灰皿を見つめていた。
まるで、そこに確かな答えがあるかのように・・・。
私が彼に本当に望んだことは、一体何だったのだろうか?
今更そう思う、私だった。
彼のその今の思いは
私には何一つとして届くものはなかった・・・。
2002/10/08 0:28:38
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