電器売場店員のクレーム日誌

 クレームで泣いている君へ。


 これを読んでいるあなたは、きっとクレームに悩んでいて
それでネットを検索していて、私のこのクレーム日誌に辿り着いたのだと思います。
残念ながら、私のこのホームページをご覧になってもなんの解決にもならないでしょう。
私もあなたと同じように、クレームに悩んでいるひとりの店員にすぎないのですから。

接客という仕事は、本当に過酷な労働だと私は思います。
仕事は自分のペースで進める事は出来ない。
どんなに忙しくても、お客様に呼ばれれば、笑顔で接客しなければならない。

外線の電話が鳴れば、3コール以内で取らなければならない。
遅れようものなら”いつまでお客を待たせるつもり!”と叱られる。
どんなに忙しくしていても、電話のお客はこちらの状況を知る事はない。

接客している最中でも、平気で呼ぶお客さん。電話している最中でさえ”ちょっと店員さん”
と呼んでくる。電話片手に”ちょっとお待ち下さい”と言う事さえ情けなくなってくる。
レジを打っている最中に平気で話しかけるお客さん。”こっちに来て”とさえ言っている。
状況をまったく判断できない。自分さえよければいいというその行動。

わがままなお客、その信じられない行動、日常的に行われる万引き、カード詐欺。
ちょっとしたことで怒鳴る人。商品を荒し、袋から出してもそのまま。
挙句の果て気に入らないからと返品をする。箱はボロボロ、レシートもなし。
商品はすでに汚れている。出来ないと断ればお決まりの文句。”店長を出せ!”・・・。

怖いのはそれだけじゃない。
ヤクザ風のお客による言葉の暴力。組事務所への呼び出し。
店内をさまようにして歩く路上生活者。サービスが悪いと無理な主張をする人たち・・・。
そして値引きの強要。ゴネればなんとかなると思っているお客。

この不況のせいか、お客さんの心の内面というか、そういうものが
どんどん壊れているような気がする。
もちろん、それは店員も私自身も同じ事が言える。

人の心は、どうして見えないのかと私は苦しむ。
クレームに心が傷ついていても、次の瞬間には笑顔で接客をしなければならない。
私たちは心にウソをついてまで仕事をしなければならないのです。

”お客様は神様です。”その言葉に私は憤りさえ感じる。
では、私たち店員は、その奴隷なのかと・・・。

よく私の日記を読んで下さった方から「そんなにクレームって多いのですか?」
と、それはもう信じられない感じで、尋ねられる時がある。
お客さんの立場の方は店内で買物をしても
私たち店員のように一日店にいるわけじゃない。

私たちは日々の接客の中で、実に多くの人と接しています。
その中でクレームは大なり小なり必ず起きるものなのです。
それがお客様相手の過酷なサービス業と言っても過言ではありません。

日々のこの接客の中で”笑顔で親切な接客をしましょう”なんて出来る訳がない。
そう言い切ってしまう自分自身がとても哀しく思います。
接客は、チラシのような表向きの爽やかなイメージとは裏腹に、
ドロドロとした人の醜い部分を目の当たりにしてしまう。

それが接客という仕事だと言ってもなんら過言ではないと思う。
今日もどこかで、私やあなたと同じように苦しみ泣いている人がいるのでしょう。

私はこの仕事をしてきて、何度となく人間不信に陥りました。
今のあなたも、もしかしたら同じなのかもしれないですね。
人は、恐いです。そう言う自分が情けなくなります。

私は過去にお客様に土下座を強要させられた事があります。
いわゆる組事務所という怖い場所に何度も呼び出された事もあります。
お客様に殴られた事もあります。結果的に土下座もしました。
悔しくて悔しくて、お詫びをしながらお客の前で泣いた事もあります。
そんな日々を私はこのクレーム日誌に書き綴っています。

この日記は私のただの愚痴であり、心の声にすぎない。
そんな私に比べて、今、あなたが抱えているクレームは、もしかしたら
とても大きいものかもしれないし、それよりも小さいものかもしれない。
私にはわからないけれど。

ただ、あなたにわかって欲しいのは、クレームに苦しんでいるのは
あなた一人じゃないという事です。

私のこのページにもたくさんの同じ悩みに苦しんでいる読者から投稿を頂いています。
みんなが同じように苦しみ、そして、それでも明日を迎えているのです。
それは何の解決にもならないけれど、あなたの心の小さな支えくらいにはなるはずです。

私はこの接客と言う仕事を十数年続けてきてわかったことがひとつだけあります。
それは接客という仕事は、つまり、人と人との心のふれあいだということ。
それはまるで人生のようなものだと・・・。

つまり、クレームは、そのお互いの心と心が触れ合わない時に起こるような気がします。
接客で大事なことは、お客様の心に触れ合おうとする自分の心のなのです。
あなたのクレームをもう1度思い返して見てください。

その人の心があなたの心に触れていたでしょうか?
また、あなた自身が触れ合おうとしていたでしょうか?
どこか逃げていなかったでしょうか?それが知らずに相手には伝わるものです。

その人に対して、何か勝手な偏見を持っていなかったでしょうか?
どうせわかりっこないとか、お年寄りだからとか、ヤクザ風だからとか・・・。
そんな気持ちが、心のどこかになかったでしょうか?
また、思いやりの気持ちが、本当にあなたにあったのでしょうか?
本当にあなたに悪い点が、何ひとつなかったのでしょうか?

大事な事は、そのクレームから逃げるのじゃなくて、受け止める事です。
そしてひとつだけでもいいから自分の間違いに気付く事です。
自分に正直になって、謙虚な気持ちになる事です。

怒りの気持ちは自分に正確な判断を歪めてしまいます。
怒りの感情は、そのまま言葉や行動に起こしてしまえば
あなたの気持ちは収まるかもしれません。

でも、それは一時的なもので、何も解決していない。
それどころか、あなたに後悔の波が、嵐のように押し寄せてくるでしょう。
(もしかしたら、今のあなたはすでにそうなのかもしれませんね。)

でも、そういう気持ちになる事も大切です。何もあきらめる必要はありません。
人は間違いをする度に、本当に正しい事に気付くのです。
あなたは、今、そのチャンスを与えられたのです。

確かに今のあなたは、誰かに怒鳴りたい気持ちを我慢しているのかもしれません。
しかし、すべてお客のせいだとか、誰かのせいとは限らないのです。
まずは深呼吸をして、ゆっくりと考えてみて下さい。

もう1度言います。
大事な事はそのクレームを受け止める事なのです。
そして、相手の心に触れ合おうとする自分自身の心なのです。


もしかしたらあなたは”気安めだけの精神論は止めてくれ”と笑うかもしれません。
でも、クレームは同じ人間同士が起こすものです。
大企業や、政治家達が起こしている信じられない不正や事件は
すべてその歪んだ心が起こしたもの。
どれも複雑な問題じゃない。その心の問題なのです。


お客様が”神様”と言うなら、
私たちはその”天使”になろうではありませんか。
私たちは決して奴隷なんかじゃない。
その誇りだけは捨てないで下さい。私も捨てたりなんかしない。

どんなに苦しい夜も、どんなに激しく降り続く雨も
いつか必ず終わる時が来る。

夜の終わりには朝が来る。雨が止んだら虹が生まれる。
長く思えた寒い冬も、やがて必ず春は訪れるのです。

私も今までたくさんのどうしようもないほどのクレームを抱えてきました。
解決の糸口さえ見つからないものも数多く経験しました。
それでも、不思議と結局は、私の知らないうちに
こうしてあの頃の懐かしい思い出として、何か価値あるものに変わっているのです。

だから私は今も、こうして店員をやっている。
今はじっと耐えてください。いつか時がすべてを解決してくれます。
それはただ、時間が癒してくれるのを待つという意味なんかじゃない。
それはあなたが強くなれる為の、必要な時間なのです。

だから無駄に悲しむ必要は何もない。あなたはもっと強くなれる。
それだけは信じてください。それに相手は同じ人間です。
あなたの誠意は必ずどこかで伝わります。
もちろん、その為には努力も必要です。

どんなに眠れない夜だとしても、必ず誰にでも朝は訪れます。
クレームもそれと同じです。それだけは忘れないでいて・・・


  はじめてお客様に心から”ありがとう”と言われた時の
  あの気持ちを思い出してください。

  うれしそうに、心から喜んでいるあの日のあなたが
  必ずそこにいるはずです。



・・・・・・・・・・・・・
あなたが、どうしても自分に負けてしまいそうになったら
あなたひとりで問題を抱えないで、あなたの心の声を聞かせてください。
自分の心の中にあるものを、言葉に変えて文字にする事がいかに大切か
私は自分の日記を書き続けることで、本当にそれを実感する事が出来ました。

心を言葉に変えると、そこに何か新しいものを見つける事が出来ます。
あなたのその心の声を、言葉に変えてみて下さい。

あなたが私に書いたとしても私が問題を解決する事は出来ません。
クレームはあなた自身が解決しなければ意味がないのです。それが現実です。
でも、あなたは決してひとりじゃないのです。
あなたと同じ悩みを抱えながら、みんながココにいるのです。

この人生の中で、本当に大切な事を忘れないでいて下さい。

そして、あなたらしくがんばって下さい・・・。





クレームで泣いている君へ。

EACH TIME
あなたの心の声を聞かせてください。

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