低タール低ニコチンタバコは意味がないどころかかえって害が大きい
「たばこは健康によくない」と思いつつもたばこを止められない人は多い。そこで、
次善の策としてたばこを低タール低ニコチンたばこに替える。たばこを吸う人は、
その方が健康への悪影響が少ないと考えているからだ。
 オランダで1975年から1994年の間に、肺がんの発症率とその組織型を年齢別に調
べた研究がある(参考文献1)。それによると、特に1920年生まれ以降の男性に、肺腺
がんが増加傾向にあるという。米国(同2、3)やスイス(同4)における類似の研究でも、
最近、肺腺がんが増加していると報告されている。いずれの研究者もその原因として、
1960年頃より広まりだした低タールたばこを挙げている。
 一般にたばこのタールが10分の1になれば体への危険性は10分の1になると思われ
がちである。しかし、これにはいくつかのカラクリがあるのだ。
 たばこの箱に表示されるタールの値は、人工喫煙装置を用いて測定されたものであ
る。しかし、実際に人がたばこを吸う場合は、この機械と同じようにはいかない。そ
の一つの理由として、たばこが止められない喫煙者、つまりニコチン依存者は、常に
血液中のニコチン濃度を一定に保つように喫煙行動を変化させていることが挙げられ
る。
 ニコチン依存者は、強いたばこから低タール低ニコチンたばこに替えると、吸入さ
れるニコチン量が少ない分、喫煙間隔を短くしたり、煙を深く吸い込んだり、肺に長
くとどめたりなどしてニコチンの吸入量が増すように喫煙行動を変化させるのだ(同5、
6)。
 しかも、タールが10分の1となっていても、必ずしもその中の発がん物質も10分の1
まで減っているとは限らない。ニコチン吸収量を一定にしようと喫煙行動を変化させ
た結果、かえって発がん物質の吸入量が増加してしまうなどということがありうるの
だ。
 また、煙を深く吸い込むと、煙の粒子が肺の奥(腺がんの発生部位)まで沈着して
しまう。このことは末梢の肺腺がんが増加している理由の一つとして挙げられている。
 たばこ会社は、低タール低ニコチンたばこの方が健康への害が少ないなどとは一言
もいっていない。しかし、彼らはタールやニコチンが少ないということを強調するこ
とで、間接的に健康への害が少ないかのような印象を与えている。それにつられて、
低タール低ニコチンたばこに切り替えた結果、かえって喫煙本数が増えるようであれ
ば、まさにたばこ会社の思うつぼである。
 さらに問題なのは、低タール低ニコチンたばこ、軽いたばこという印象により、た
ばこに対する抵抗感が減ることだ。これは喫煙開始の低年齢化を助長する恐れもある。
社会への影響も考慮すると、むしろ低タール低ニコチンたばこの方が、問題は大きい
かもしれない。

1) Epidemiology 2001;12:256.
2) J.Natl.Cancer Inst. 1997;89:1580.
3) Cancer 1997;80:382.
4) Cancer 1997;79:906.
5) 日本醫事新報1994;No.3670:132.
6) 日本醫事新報1996;No.3790:99.

肺の奥のがんも喫煙で増加 厚労省調査