木下恵介・人間の歌シリーズ


 当時、10時台にドラマがなかったTBSが実験的に設立当初の木下恵介プロにまかせた、人間の内面を深く掘り下げた大人のドラマシリーズ。

冬の旅

 立原正秋原作。行助(あおい輝彦)は腹違いの兄(田村正和)が母(久我美子)をレイプしているのを止めようとして、間違って兄を刺し傷害犯となり、そのまま少年院に送られ死んでしまうという、救いのないシリアスドラマだったが、大当たり。


俄・浪速遊侠伝

 スポンサーの東洋工業(現マツダ)・海塚宣伝部長の時代劇をという要望により、司馬遼太郎原作をもとに、幕末の大阪の侠客、明石屋万吉を描jく。しかし視聴率は低迷。


椿の散るとき

 前作は大阪弁がいけなかったんだろうという分析の元に、今度は藤沢周平原作jの女性もの。しかし、やっぱり視聴率は低迷。


冬の雲

 起死回生に木下監督が脚本を書く。当初は低迷を引きずっていたが、途中お涙ちょうだいを路線を入れ浮上、13話までの予定が35話まで延長。「二十四の瞳」の木下監督、芸術家というより大向こう受けの方が好きなのである。

 この作品により「冬」シリーズが確立。



それぞれの秋

 新島家はありふれた5人家族かと思われたが、次男・稔(小倉一郎)はそれぞれが問題を持ち、それを隠している事に気づいていくことを描いていく。

 圧巻は、父・清一(小林桂樹)が脳腫瘍となる終盤。病気のせいで、父は妻・麗子(久我美子)に対する積年の不満をぶちまけ始める。しかし、バラバラになった家族は危機に直面して再び家族の絆を取り戻していく。

 山田太一はこのドラマを「ドラキュラドラマ」と語っています。子どもが小さいときは家族は団結しているが、子どもが成長してそれぞれの生き方を始めるとドラキュラとなり、ぶつかって、食い合ってしまうのだと。

 みんなが思っている「山田太一作品」になったのはここからで、松竹で助監督時代についていた木下監督から「好きなように書きなさい」といわれて自分の書きたいようにして自分の文体を確立。

 第6回テレビ大賞、放送批評懇談会年間賞、ギャラクシー賞、日本放送作家協会賞(優秀番組賞、演出家賞を受賞。


早春物語

 白馬山麓が舞台の高校卒業後の男女の恋愛模様が軸。

 このドラマが歴史的に重要なのは「白線流し」のルーツであること。「白線流し」の行事は昔はあったが、このドラマが制作されたときはスタッフが調査した限りは絶えていて(当時ADの森田光則P談)、このドラマ以後復活。その後、フジテレビのドキュメントが制作され、さらにドラマ「白線流し」になったらしい。


冬の運動会

 向田邦子がシリアスホームドラマに作風を転じた第1作。古い家庭像をじょじょに解体していく。

 北沢家は祖父・健吉(志村喬)は元連隊長の会社役員、父・遼介(木村功)は総務部長のエリート一家。しかし長男・菊男は反発し、高校時代に万引事件をおこしたこともあり25歳でまだぶらぶらと大学生を続けている。
 ひょんなことから渋谷のガード下の靴屋に出入りし、津田夫妻(大滝秀治、赤木春恵)と親子のようにつきあっている。そのつきあいは、影のある女・日出子(いしだあゆみ)が嫁候補として加わって、津田夫妻もひょっとして夫婦養子に入ってくれないか、と夢を描く。

  あるひ母親(加藤治子)がその事をしり、息子と反目する夫に相談できず、舅の健吉に相談する。すると健吉は意外なことに、下町の長屋に菊男を連れて行き、病気の加代(市原悦子)の世話をしている姿を見せる。祖父にも「もう一つの家」があったのだ。

 しかし加代は病死、遼介の知るところとなり、祖父のもう一つの家はなくなってしまう。

 菊男の方も、日出子の金の工面のため、かつて蹴飛ばした祖父のコネの就職を再び頼み込み、また日出子を正式に家族に紹介する。引き際をさとり靴屋は閉店。就職の報告にいった菊男の前に閉店の立て札がかかっているのだった。

放映期間 主な脚本 主な演出 出演
冬の旅 70/4/16〜7/9 田向正健 鈴木利正 あおい輝彦、大谷直子、二谷英明、久我美子、田村正和、西村  晃
俄・浪速遊侠伝 70/7/16〜10/8 山田太一 鈴木利正 林 隆三、藤村志保、辰巳柳太郎、岡本隆成、七尾伶子、白木みのる
椿の散るとき 70/10/15〜71/1/7 田向正健 井下靖央 南美川洋子、田村正和、津川雅彦、信欣三 
冬の雲 71/1/14〜8/26 木下恵介 鈴木利正 二谷英明、久我美子、市原悦子、田村正和、大谷直子、近藤正臣
冬の華 71/9/2〜12/9 倉本聰 木下恵介 あおい輝彦、大谷直子、中山麻理、芦田伸介、立花直樹、市毛良枝 
春の嵐 71/12/16〜72/4/13 高橋玄洋 井下靖央 近藤正臣、岡田英次、小川真由美、松山政路、望月真理子 
地の果てまで 72/4/20〜72/7/27 近藤正臣、二谷英明、中野良子
白い夏 72/8/3〜11/30 高橋玄洋 井下靖央 芦田伸介、久我美子、十朱幸代、松坂慶子、紀比呂子
愛よいそげ 72/12/7〜73/5/3 窪田篤人 飯島敏宏 仁科明子、志垣太郎、篠田三郎、高橋幸治、紀比呂子、岸田森
風の色 73/5/10〜8/2 砂田量爾 飯島敏宏 近藤正臣、香山美子、十朱幸代、佐藤慶、大滝秀治
夏の別れ 73/8/9〜8/30 窪田篤人 飯島敏宏 田村正和、宮口精二、真野響子、井上れい子、三ツ木清隆、津島恵子
それぞれの秋 73/9/6〜12/13 山田太一 井下靖央 小倉一郎、小林桂樹、久我美子、林隆三、高沢順子、桃井かおり
冬の貝殻 73/12/20〜3/14 石松愛弘 山本陽子、松坂慶子、二谷英明、高岡健二
バラ色の人生 74/3/21〜6/13 高橋玄洋 井下靖央 香山美子、寺尾聰、仁科明子、草笛光子、森本レオ
風の町 74/6/20〜9/12 砂田量爾 鈴木利正 十朱幸代、原田芳雄、火野正平、奈良岡朋子
阿蘇の女 74/9/19〜12/12 松坂慶子、寺田農、市原悦子
三人姉妹 74/12/19〜75/3/27 高橋玄洋 片島謙二 浜木綿子、梶芽衣子、檀ふみ、曾我廼家明蝶
もう一つの春 75/4/3〜6/26 山田太一 井下靖央 小林桂樹、小倉一郎、白川由美、坂口良子、高岡健二、榊原るみ
魅せられた夏 75/7/3〜10/9 十朱幸代、紀比呂子、村野武憲、あおい輝彦
旅への誘い 75/10/16〜76/1/8 山田太一 鈴木利正 近藤正臣、香山美子、二谷英明、徳永れい子、小野寺昭
早春物語 76/1/15〜4/22 石松愛弘 飯島敏宏 仁科明子、沖雅也、五十嵐淳子、倍賞美津子、伊佐山ひろ子
遙かなる海 76/4/29〜10/21 高橋玄洋 山田高道 小林桂樹、近藤正臣、酒井和歌子、渡辺美佐子、望月真理子
お菓子放浪記 76/10/28〜77/1/20 窪田篤人 鈴木利正 板東正之助、島田 陽子、谷隼人、石橋正次
冬の運動会 77/1/27〜3/31 向田邦子 服部晴治 木村功、いしだあゆみ、根津甚八、加藤治子、志村喬、市原悦子



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