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「テルミィ、これからは、もう誰にも
『じゃあ、どうしたらいいの?』ってきけないんだよ」
書名:
『裏庭』
著者:梨木香歩
発行所:新潮社(新潮文庫)
ジャンル:ファンタジー
おすすめ度:☆☆☆
丘の麓のバーンズ屋敷は、戦前は外国人の別荘として使用されていたが、今は荒れ放題。
その屋敷に何か秘密があることは、その辺りの子どもなら誰もが知っていた…
主人公、照美は屋敷の秘密の「裏庭」へと入り込む。
その孤独と胸にきざまれた傷ゆえに。
登場人物のそれぞれが、それぞれの傷を背負い込んでいる。
照美の双子の弟の死。その死の原因が自分にあると思っている照美。
母から関心を持たれずに育ったと思っている照美の母、幸江。
無感情な父。
親が受けた虐待が子へも伝わっていくという、負の連鎖。
少女が「裏庭」という異世界に入り込むというファンタジーの世界にありながら、それぞれが
切実に抱え込む傷の重みゆえに、起こる現象も人の生き死にがからみ重い。
(以下引用)
−ママと自分ははるかに遠い場所にいるんだ。
その認識は照美に、自分と母親はまったく別の人間なのだ、という事実を肌で理解さ
せた。
(中略)
…まったく個別の人間。
それは、何という寂しさ、けれども同時に何という清々しさでもあったことだろう。
(中略)
「私は、もう、誰の役にもたたなくていいんだ」
全世界に向かって叫びたかった。
(引用終了)
照美が親という呪縛から開放された瞬間であり、成長した瞬間でもある。
人は個と個、それぞれ別々であるからこそ、交わりお互いを支えていくことが出来るのかも
しれない。
癒しとは、流行語のように容易には訪れない。時に死ぬような経験の向こう側にしかない。
自分を救うことが出来るのは自分しかいないのだ。
いつだって、「ワンダーランド」を彷徨う権利を持つのは、傷ついた魂だけだから。
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