谷川岳一ノ倉沢烏帽子岩南稜登攀

― のこぎり倶楽部、初夏の番外クライミング ―


【目的地】 谷川岳・一ノ倉沢烏帽子岩南稜登攀
【日 時】 2002年6月2日(日)
【天 候】 雨のち曇り
【メンバー】のこぎり倶楽部6名

 

■ 行動概要


 朝3:00土合山の家「山桜」の部屋で起床する。Tさんさっと起きて電気を点ける。やる気を感じる。
 3:30 Sさんの車で一ノ倉沢出合まで行くが、雨が車の屋根をたたき始める。風が葉に付いた雨水を落としているなどと話しているうちに屋根の音が大きくなりフロントではワイパーが早く動き出す。出合の駐車場はたくさんの車で埋まっていて、道路の脇に溢れている。何とか一台分のスペースを見つけて車を突っ込んだ。駐車場の先はしっかり車止めがあり進入禁止となっている。その先遭難者レリーフのたくさんあるところに数張りのテントに明かりが点いている。
 「この雨じゃしょうがない。車の中で様子をみよう」ということになり、待機する。持参のおにぎりやパンを食べはじめる。沢の水を集めて道路下からほとばしる水は黒く濁っている。
 Tさんが近くを歩きながら情報を集める。「昨日は4:00出発で南稜の取り付きは3番目であった」などの情報を得る。雨は降ったりやんだりだ。
 5:00 明るくなったがぱらつく雨の中を出発する。南稜テラスまででも登ってみようということになった。すぐに雪渓にでて深いガスがかかり下部がおぼろげに見える衝立岩を目指して歩く。溢れんばかりの車の連中は皆様子をみているのか雪渓を登るのは自分たちのパーティーだけのようだ。
 Tさんは歩くのが早い。雪渓も傾斜が増し汗が額を伝い始めるころテールリッジの末端にたどり着く。雨は相変わらずカッパをたたく。ここまでに若い4人パーティーに抜かれたのみだ。末端の滑る岩場を慎重に登り始める。とにかく落ちないこと。3点支持をしっかりとって岩を登り、藪の中の明瞭な踏み跡をたどる。「滑るから気を付けて」「ゆっくり慎重に」とTさんの声が上から呼びかける。藪を過ぎしばらくするとテールリッジ中間部のトラバースをする岩場にでる。南稜が濃いガスの切れ間から時々姿を見せる。フィックスロープが張ってある。
 我々を追い越したパーティーが取り付いている。3番目の人が滑ったがフィックスロープと自分たちで張ったロープで止まる。Tさんがリードしロープを1本張って、フィックスロープとの2本にカラビナをかけて登り始める。
 ロープの末端はTUさんがビレイする。この頃雨が一番激しくズボンを通して下着まで濡れてくる。滑る岩場を慎重に、慎重に、慎重にのぼり中央稜取り付きにでる。既に数パーティーが登攀準備中であった。その脇をまわりこんで水が流れる草付きの踏み跡をたどる。
 落ちたら左のスラブを雪渓まで滑り込んでしまいそうだ。烏帽子沢奥壁の基部を通り南稜テラスを目指す。とにかくよく滑る。慎重にテラスへ登った。7:00だ。晴れたら快適なテラスだろうな。ぱらつく雨。
 1ピッチめの目指すチムニー状の岩もガスで隠れる。しかし時々は下の駐車場が見えることもある。寒い。多めに持った水を飲む人はいない。行動食を口に入れたり、足踏みしたりして寒さを防ぐ。
 7:45 時々ガスが切れて、雨はやんだ。天候が悪くなったら下りることにして1ピッチをTさんが取り付く。アプローチシューズや余分な荷物はデポする。6人を3組に分け、Tさん・Sさん、Mさん・Iさん、ITさん・TUさんとの組み合わせにした。トップをTさんが登り1ピッチ目はチムニーの下で切る。ホールドは豊富にあり問題はない。2ピッチ目TさんがトップロープをセットしSさんが下でビレイされて登る。彼は2組目のロープを引いて行く。最後のTUさんは上からロープを投げてもらい、上からのビレイで草付きに至る。チムニー状のところは雨で滑り登りずらい。熊笹の中の踏み跡をたどり、4ピッチ目の取り付きに至る。
 この頃雨はすっかり止んで時々陽が差し始める。ハング下を左から廻りこんで馬の背リッジへでる。ロープの流れが悪く廻りこんだ上でピッチを切る。左から馬の背リッジにでて奥壁側クラックの5m程手前でピッチをきる。狭く高度感があり一番緊張するピッチである。終了点手前のフェイスにTさんが取り付いているのが見える。クラックを越えたところでTさんが上からロープを投げてくれて、上からのビレイも加えて終了点に這い上がる。
 熊笹の草付きで抜群の展望だ。白毛門越に遠くの山がかすんで見える。下の駐車場には陽が差している。13:00だ。水分を補給しパンを食べて13:30下降開始する。
 終了点から左側に下がったところにボルトがしっかり打たれた下降支点がある。50mロープを2本繋いで6ルンゼ側を懸垂下降する。40m位でチムニー状の下部に着き、其処にもしっかりした下降支点がある。
 また50m2本を繋いで上りで草つきからハングの下を回り込んだところに下りる。この支点からかその場所は良く見えるので下りやすい。当然6人が同じ場所に下りたら次の準備という具合だ。
 ハング上の支点に今度は1本のロープを折り返して草付き上部に下りる。この支点はリングボルトやハーケンが数本打たれた支点で中にはぐらついているのもあり、確認を要する。草付き下部からは50mを2本繋いでチムニーの下まで降りて、後はテラスへと続いた。
 クライミングシューズをアプローチシューズに履き替え、デポした荷物をまとめて下山の準備をする。テラス右下から50m2本繋いで一杯に下りて烏帽子沢奥壁基部を抜けて中央稜取り付きに至る。途中1箇所ロープを張り懸垂する。テールリッジトラバース地点までは慎重に下り、そこでロープを出して衝立スラブ側をめがけて懸垂する。岩は乾くとフリクションが効き早朝の足捌きがうそのようだ。それでも慎重に、慎重にテールリッジ末端まで下る。雪渓のうえに立って一安心。出合の路上で完登の握手。皆いい顔をしている。17:30だ。実に12時間30分の行動であった。ご褒美は谷川温泉でのゆったり湯だ。


■ 感想

 

 中間支点はハーケンがたくさん打たれている。古く腐っているものもあるが「絶対に落ちないぞ」という気持ちで登った。インスボン「ウイディ」ルートを思わせる景観で鋸山とは大分違ったクライミングでした。スケールの大きさが素晴らしい。
 懸垂でのロープの引きは全てスムーズで引っかかることははかった。結びはエイトノットである。捨て縄は使用せず、捨て環は用心のために1個使用した。クイックドローは各自5個持参したがつるべ状態での登りではそれで十分足りた。天気が良く陽が差すと喉が渇くので多め(2L位)の水が必要とTさんは話しておりました。今回は天候の具合から雨具と防寒衣は必携でした。当然ヘルメットも同様です。

 「のこぎり倶楽部」が発足してから二度目の番外イベントをとにかく無事に終了してホットしております。反省すべき点はたくさんありますが成功の喜びは大きなものです。年に2、3回は鋸山から離れて番外編を企画したいと思います。

 
                                       (記 微苦笑)