山で使うアマチュア無線
                                                                   

国本秀夫(岳樺クラブ)  2000年10月1日 改訂


■アマチュア無線を行うには
■無線で呼び出す
■周波数の設定
■使用する周波数
■どんな無線機がいいのか
■電波をうまく飛ばす
■受信する
■交  信
■国本登攀チームと荒井さんBCと仮定した交信例
■非常通信
■非常時の通信例
■良く使う専門用語



 最近携帯電話が急速に普及し山から下界への連絡が簡単になりましたが、山の中でのパーティー間の連絡や、非常時の連絡など、無線機の活躍する場面は結構あります。

 3年前に山を再開したときに、せっかく免許持っているのだからと、無線機買ってきてアマチュア無線も開局しました。通常のアマチュア無線による「ラグチュー」(おしゃべり)は興味がないので、運用に関しては素人同然です。しかし、山の技術向上と同じで、いざ非常時というときに機能を充分発揮させられるように使用法をまとめてみました。
 今後内容を随時磨き上げていきたいと思います。作成にあたり、山関係のホームページで無線に関係してある記述を参考にさせて頂きました。
 無線に関して色々なご経験をお持ちの方がいらっしゃいましたら是非メールなどでご意見をいただければ幸いです。

 通信も慣れが肝要です。スムースな運用には停滞中や、早くテントに着いたときなど、無線機を取り出して、他の人達がどのような会話と運用をしているのか探ってみることも上達の必須条件です。




【アマチュア無線を行うには】

なお、アマチュア無線通信通信を行うには、アマチュア無線技師」の資格をとり、「無線従事者」となり、「無線局の開局申請」して郵政大臣から 「コールサイン」をもらい、その「コールサイン」で「無線従事者」が通信を行う必要があります。

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【無線で呼び出す】

 山でアマチュア無線を使う場合通常は、400MHz帯か144MHzを使用しています。そしてそれぞれの帯域では「呼出周波数」が設定されていて、他への呼びかけはこの周波数を使用します。

呼び出し周波数は各々
400MHz帯は 433.00MHz、
144MHz帯は 145.00MHz
                 …です。
ちなみに、岳樺クラブでは432.10MHzを通常の連絡に使用していますが、これは、最初から、お互いにこの周波数で通信やろうねとあらかじめ打ち合わせているからです。

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【周波数の設定】


 その取り決めが無い場合は、山行に無線機を持って行く場合、常時この呼び出し周波数に合わせておくべきでしょう。
 通常無線通信を行う場合は、「呼出周波数」で呼び出し、相手の確認取れたら、周波数を変えて交信を行います。これを専門用語で「QSY」(キューエスワイ)といいます。
いわば出会いの周波数が「呼出周波数」といえます。

 無線機には「CALL」と書かれたボタンがついているものもあり、このボタンを押すと、周波数が自動的に「呼出周波数」に設定されます。

 呼び出し周波数でずっとしゃべっているととっても迷惑ですし、「ブレーク」(割り込み)がかかりQSYしてくれなんて言われます。
 相手との通話確認できたら、空いてる周波数に移動して会話を続けます。

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【使用する周波数】

 電波の特性から周波数が高くなるに連れて、直進性が高くなる。言い換えれば、見通しが利かない所には電波が届かない。
じゃあ何でわざわざ高い周波数を使うかというと高い周波数帯では多くの交信がたくさん同時に行うことが出来るからです。これをチャンネル数が多いと言います。

低い周波数の場合は使用できるチャンネル数は少なくなりますが電波の「到達範囲」が広がる。
電波の山肌からの反射や鋭い稜線などによる回折効果により見通し範囲以外にも電波が届く可能性が高くなります。

400MHzの場合はほとんど目で見える範囲が「到達範囲」といえます。144MHzの場合結構いろんな所に届きます。

   実際運用上問題になるのは、電波が込み合って、特に低い周波数の場合、電波が飛びすぎ遠方で交信される電波が入ってきて空きチャンネルが全くないというような状況になります。

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【どんな無線機がいいのか】

144MHzと430MHzの2つの周波数帯が使用できるようなデュアルバンドタイプでハンディー小型が一番便利だと思います。
パワーはあったほうが良いに決まってますが限界がある。
電波到達距離は、パワーもさる事ながら、より高いところから発信する。見通しの良いところから発信するなどのロケーションにほとんど左右されます。


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【電波をうまく飛ばす】

430MHで運用する場合、電波伝播の状況が可視光線と殆んど同じなので、電波の通達距離は見通しの範囲(目で見える所)となる。
これはイコール交信対象と見通せる場所と思ったほうが良いということです。
144MHの場合は多少木の陰でも交信設定が出来る場合があります。
また見通し範囲以外でも反射波による交信設定出来る場合もあります。
無線交信はパワーより良いロケーションの選定が効果的。
  高いところに行く
  出来るだけ見通し範囲に行く(交信できなかったら動ける範囲でうろついてみる)
等が効果的です。

 例えば定着登山の場合、
ベースキャンプ側のアンテナをより高いゲイン=利得の物にするとか、アタックパーティーの位置が特定方向の場合、ベースキャンプ側を八木アンテナ等の指向性アンテナにする。(特定の方向にだけアンテナのゲイン=利得が高くなる)ということも考慮すると通信設定がより強化される。

 それから
電波には偏波面というものがあります。
電波は波動です。
そしてその波動の送り受けについては、双方が同じ向きをしている時が一番強く電波を受けられます。
具体的に言えば、アンテナの向き(上か横か)です。
山の場合ホイップか短縮アンテナになると思うので基本的には双方がアンテナを 重力の鉛直方向に向けておく。
  …ということに気をつけるべきでしょう。


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【受信する】

交信時間を設定して居るのになかなか受信できないことが多いです。
過去の岳樺による無線設定でテクニカル面で交信が上手く行かなかった時の原因を挙げてみますと

1:交信時間を忘れていた、又は登攀中でザックから取り出す余裕が無かった。
2:周波数が違ったところに設定されていた。
知らぬ間に、何かが無線機にあたり、周波数設定がズレている場合がホンと多いです。
3:電池切れ又は温度低下による電池機能の低下

等があります。 1はしかたない場合も多いのですが2−3は注意すれば防げます。
電池がないと無線機は動かないので
*電池の予備を持って行く
*送信内容は手短に(長時間電波出していると電池の消耗激しい)
*電池の特性から低温時能力が落ちるので、冬季などでは暖めながら使用する。などの対処が必要。

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 受信感度が悪い場合は?
 *無線機についている「スケルチ」を解除する。
 「スケルチ」は受信時の雑音低減の為に弱い電波をカットする装置で年中無線機が「がーがー」と受信状態になるのを防ぐ装置です。ただし、微弱電波もカットされるので、目的とする電波が弱そうな時に、この「スケルチ」をカットまたは、レベルを下げると雑音の間からかすかに希望する電波が受信することもある。

トーンスケルチなんて機能がある無線機では、特定の相手方の電波の時だけ受信状態にすることが出来る

*近くをうろついて電波が入りやすい場所を探す。
たとえ、見通し範囲でなくても、電波の反射、回折効果により電波が入る場所もある。

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【交信】

さていよいよ交信です。
会であらかじめ定めた周波数又は呼び出し周波数に無線機を合わせます。
先ず、相手の「コールサイン」を3回繰り返し(不特定多数の場合はCQを3回)
「こちらは」のあと自分のコールサインを3回繰り返す。
そして「感度ありますか どうぞ」とか「応答願います どうぞ」等と無線機に向かってしゃべります。
無線機の送信ボタンを押す前からしゃべり始める人が多い(ほとんどみんなそうだ)ですが、それでは、しゃべり始めが電波に乗っかりません。
プレスボタンを押して一呼吸置いてゆっくりしゃべり始めます

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【国本登攀チームと荒井さんBCと仮定した交信例】

荒井さん:
7L4UTS 7L4UTS 7L4UTS こちらは 7K4NED 7K4NED 7K4NED  荒井です。 感度ありますか?どうぞ

国本:
7K4NED 7K4NED 7K4NED こちらは 7L4UTS 7L4UTS 7L4UTS  国本です。メリット5で受かってます。どうぞ
(呼び出し周波数で行っている場合は、ここで周波数をQSY(周波数変更)する)

荒井さん:
7L4UTS 国本さん こちらは 7K4NED 荒井です。 周波数432.10MHzにQSYして下さい? どうぞ

国本:
7K4NED荒井さん こちらは 7L4UTS 国本です。QSY432.10MHz了解です。 国本:(呼び出し以外の周波数で)7K4NED荒井さん こちらは 7L4UTS 国本です。先ほど登攀終了点に着きました。
快晴です。岩もかっちり最高です。

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荒井さん:
7L4UTS 国本さん こちらは 7K4NED 荒井です。 終了点についた件了解です。用心してテントに戻ってきて下さい。ビールが冷えてます どうぞ。

国本:
7K4NED荒井さん こちらは 7L4UTS 国本です。 了解しました。 次回交信は00時正時に再び行います。
どうぞ

荒井さん:
7L4UTS 国本さん こちらは 7K4NED 荒井です。 定時交信の件了解。BCでは常時無線機はワッチしておきます。
それでは後程。こちらは7K4NED 荒井でした。

コールサインなどの発音はわかりにくいといけないので
国本のコールサインの「7L4UTS」の場合など
自身のコールサイン「なな える よん ゆー てぃー えす」
3回繰り返して言った後付け加えて
「セブン ロンドン フォー ユニフォーム タンゴ スーパー」 などと繰り返して確実性を増します。


【非常通信】


 あってはならないことですが、事故等による非常(又は緊急)通信を行わなければならなくなった場合は、動作の一つ一つに入る前に一呼吸ずつ置いて自分を落ち着かせる努力をしながら行動すべきかと思います。
無線通信には、「優先順位」というものがあり、 非常事態の通信は「非常通信」と呼ばれ最優先されなければいけない決まりになっています。 順位は
1:非常 2:緊急 3:警戒 だったと記憶してます。

「非常通信」を行うには、文頭に「非常」を3回繰り返すことにより、他に対して優先順位を主張します。
非常通信なのに、電波を使用されている場合、非常通信なので「沈黙」を願いしますとアピールすることも必要です。

強力な電波で通信を続けるアマチュア無線愛好家多いのでこちらの電波が届いていない場合は、非常通信が行われている事実に気がつかずに一般通信を続けられてしまう場合があります。このような場合、通常通信停止のお願いをどこかの強い電波の無線局から出してもらう様お願いするのも手。

通信内容は記録「ログ」しておくべきです。

チーム間で決められた周波数で連絡が取合える状態であれば、最初からその周波数で事故パーティーとBCなど仲間と連絡を取れば良いのですが。

*一般に救助を求める場合
*自分たちで救出できないので非常事態を公開し援助を求める場合など非常(緊急通信)を行います。


(非常通信)を行う場合の文例について記載します

文中コールサインは
事故パーティー国本7L4UTS 事故者クニモト
通信受信者荒井さん 7K4NED (この場合同じチームではなく通りかかりの親切な登山家という設定)
としました。


無線機を非常用周波数に合わせます。
非常事態なので、電波が空くのをずっと待っているとラチがあかないのでちょっとした隙間を見つけて交信開始します。

事故現場が、谷筋や沢など電波が届きにくい場所にいる場合は誰か同じ周波数の無線機を持って事故現場と電波が届きやすい見通しの良い高い場所に分かれ内容を中継を行います。

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【非常時の通信例】

国本(事故パーティー):
非常 非常 非常 CQ CQ CQこちらは 7L4UTS 7L4UTS 7L4UTS 国本です。どなたか応答願います。
どうぞ。
これを誰か受信してくれるまでくり返します。


荒井さん:
非常 非常 非常 7L4UTS 7L4UTS 7L4UTS こちらは 7K4NED 7K4NED  7K4NED荒井です。感度ありますか? どうぞ

国本(事故パーティー):
 非常 非常 非常 7K4NED こちらは 7L4UTS 岳樺クラブ 国本です。
本日9月15日 午前9時30分に 八ヶ岳 横岳西壁○○○にて遭難事故発生です。
くり返します。
 本日9月15日 午前9時30分に 八ヶ岳 横岳西壁○○○にて遭難事故発生です。
 長野県警山岳警備隊への連絡お願いします。7k4ned荒井さん こちら 7L4UTS
どうぞ

荒井さん:
 非常 非常 非常 7L4UTS国本さん こちら 7K4NED荒井です
本日9月15日 午前9時30分に 八ヶ岳 横岳西壁○○○にて遭難事故発生。
長野県山岳警備隊への連絡了解しました。

国本(事故パーティー):
非常 非常 非常 7K4NED 荒井さん こちらは 7L4UTS 国本です 応答ありがとうございます。
連絡設定周波数変更いたします。
QSY 432.10MHzです。宜しくお願いします。 こちら 7L4UTS 国本
どうぞ

荒井さん:
非常 非常 非常 7L4UTS国本さん こちら 7K4NED 荒井ですQSY了解しました。
呼び出し待ってます。どうぞ。

432.10MHzに周波数を移動して
国本(事故パーティー):
非常 非常 非常 7K4NED 荒井さん こちらは 7L4UTS 国本です 入感ありますか。どうぞ

荒井さん:
非常 非常 非常 7L4UTS国本さん こちら 7K4NED 荒井です メリット4−5で入感しています。状況を引き続きお知らせ下さい。 どうぞ

国本(事故パーティー):
非常 非常 非常 7K4NED 荒井さん こちらは 7L4UTS 国本です。

本日9月15日 午前9時30分に 八ヶ岳 横岳西壁○○○にて遭難事故発生。
負傷者はクニモト1名 △△△ルンゼ登攀中 転落
数箇所の骨折と出血があり、意識不明。
△△△ルンゼ基部にて応急手当て、と固定を行っています。
長野県警山岳警備隊への連絡お願いします。
7K4NED荒井さん こちら 7L4UTS国本
どうぞ

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荒井さん:
非常 非常 非常 7L4UTS国本さん こちら 7K4NED 荒井です。
本日9月15日 午前9時30分に 八ヶ岳 横岳西壁○○○にて遭難事故発生。
負傷者はクニモト1名 △△△ルンゼ登攀中 転落
数箇所の骨折と出血があり、意識不明。
△△△ルンゼ基部にて応急手当て、と固定。
長野県警山岳警備隊への連絡了解しました。すぐに警察に連絡します。 7L4UTS こちら 7K4NED どうぞ 

国本(事故パーティー):
ヒジョウ(ヒジョウ ヒジョウ) 7K4NED こちらは 7L4UTS 宜しくお願いします。
このまま待機しす。

この後、非常通信を行った、荒井さんは
*手持ちの携帯電話で警察に連絡
*山小屋へ事故内容を伝えて小屋から警察に連絡してもらう
*電話機のあるアマチュア無線局呼び出して警察に伝達してもらう
等の処置をとります。

全ての非常通信終わったら

国本(事故パーティー):
こちらは 7L4UTS 7L4UTS 7L4UTS
非常通信を終了します
皆様ご協力ありがとうございました


【良く使う専門用語】
良く使われるQコード(Qを頭にもって来たアルファベット3文字の用語)や用語。

QRK

了解度

QRM

混信

QRT

閉局

QRV

運用

QRZ

誰が、こちらを呼んでいますか。

QSL

了解、交信証

QSO

交信

QSP

伝言

QSY

周波数を変更する

ラグチュー

おしゃべり

メリット

受信状態 1−5の数値で表す 明快に受信されていれば「メリット5です」などという

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