主人公に励まされ、超能力の特訓を続ける琴音ですが、どうやら経過は順調のようで、日増しに扱える力の量が増加しています。この調子なら、いずれ超能力を完全に制御することも夢ではありませんね。

 そんなある日の昼休み。中庭で琴音と話した主人公は、彼女がとても動物好きなことを知らされました。なんでも、子供の頃、水族館でプールの中に帽子を落としてしまい、泣いてたところ、なんと中にいたイルカが帽子を取ってくれたのだとか。その時、琴音はイルカと話せたと思い、それ以来、動物が好きになってしまったようですね。

 もっとも、幼かった頃の琴音のメルヘンチックな想いにケチをつけるわけではありませんが、イルカという動物は水面に何かが浮いていると、それをくちばしでつついたり、背中に乗せて運んだりする習性があるのです。水族館のイルカショーでは、この習性を利用して、イルカにボールを運ばせたりしてますが、恐らく、このイルカもたまたまそういったショーの練習をしていたイルカだったのでしょう。それで、いつもショーでやってる通り、水面に浮かんでいた何かをくわえて、飛んできた方向へ差し出したら、それがたまたま琴音の帽子だった、という話なのだと思われます。

 そして、この琴音の動物好きというかイルカ好きが原因で、思いがけない事件が発生しまして。放課後、主人公は琴音につきあって、一緒にイルカの絵の展覧会を見に行くことになったのです。それで、会場が駅ビルの7階ということで、二人一緒にエレベーターに乗ったのですが、なんとこのエレベーターが途中で故障。おまけに、緊急連絡用のインターホンまで、なぜか一緒に故障し、二人はそのまま完全に閉じ込められてしまいました。

 それでも最初の頃は余裕があって、なにやかにやと雑談していた二人でしたが、さすがに閉じ込められて3時間以上が経過しては、余裕も無くなってきます。そのうち、琴音が息が苦しいなどと言い始めまして。通常、エレベーターには必ず通風口がありますので、例え電源が落ちてもこんな状況にはならないのですが、すっかりパニックになってしまった二人にそんな冷静な判断はできません。琴音の気のせいが、主人公にも伝染してしまい、二人とも暗示にかかったように、息苦しくなってしまうことに。おやおや・・・。

 とにかく、このままでは窒息だという話になって、なんとか脱出しようとする二人ですが、あいにく脱出路はありません。こうなったらドアを壊すしかないのですが、手で叩いたくらいでどうにかなる代物ではなく、状況は絶望的。このまま二人窒息かと観念する主人公ですが、そこで頭に浮かんだのが、琴音の超能力です。これを使えば、あるいはドアを壊すことだってできるかも知れません。

 というわけで、琴音の超能力に最後の希望を託す主人公ですが、これがとんでもない大外れ。なんと琴音はドアに向かって炸裂させるはずだったパワーを、何を勘違いしたのか、エレベーターを吊るしているワイヤーに向かってぶつけてしまいまして。おかげでエレベーターは、がくんと降下です。これでは逆効果どころではなく、このままワイヤーが切れれば、一巻の終わりですね。

 結局、もう駄目だと覚悟した二人は、互いに最後の別れみたいなことを言い合う始末でしたが、そこで外からドアが開きまして。なんでも、ワイヤーがからまってエレベーターを動かすことができず、どうしたものかと困っていたところ、琴音の超能力のおかげで、からまっていたワイヤーがほどけ、うまい具合に下の階の出口まで降下してくれたのだとか。実に間抜けな展開ですが、まあ、結果的に超能力が役に立ったことは間違いありません。

 それにしても、この時の駅ビル側の対応ですが、これは非常に疑問の残るものですね。通常、エレベーターが停止する事故は、たまに起こりますが、インターホンまで同時に故障するとは、よっぽど保守管理に手抜きがあったとしか思えません。おまけに閉じ込められた客がいるにも関わらず、警察にも消防にも連絡せず、あくまで内部だけで処理しようとしたのですから、呆れた話です。本来、大問題になりそうな事態なのですが、琴音はぎゃあぎゃあ騒ぐタイプではなく、主人公も寛大な男ですので、商品券をいっぱいもらって納得した模様です。ビル側としては、相手が良かったですよね。

 そんなこんなありましたが、琴音の超能力も役に立つことはあるわけです。それに、特訓のおかげで琴音も超能力を制御できるようになり、しかも今まで彼女を悪霊女などと呼んで、気味悪がっていたクラスメイトたちも、彼女の力が害にならないものだとわかると、途端に琴音に話しかけてくるようになりまして。事態は確実に好ましい方向へと、動き始めてますね。

 というわけで、万事順調、このまま行けばもう超能力に悩まされることも無く、琴音も普通の女の子として、皆と楽しくやれるはずだったのですが・・・。残念ながら、そうは問屋が卸してくれませんでした。

 ある日の放課後、雨の降る中、琴音と相合傘で帰って、ご機嫌な主人公ですが、そこで久しぶりに琴音の超能力が暴走してしまったのです。事前に警告された主人公は、慌てて琴音から離れましたが、間が悪いことに、ちょうど琴音に向かって、子犬がじゃれついてまして。この子犬、どうやら捨て犬のようで、優しそうな琴音を見つけて嬉しかったのでしょうが、琴音が必死に追い払おうとしても逃げようとせず、そのまま琴音のパワーの直撃を食ってしまいました。あらら・・・。

 幸い子犬の怪我は大したことはなかったのですが、琴音が受けた精神的な衝撃は、計り知れないものがありますね。なにしろ、全てがうまく行っていた矢先、狙いすましたように発生した暴走なわけですから・・・。それも今回はガラスが割れる程度では済まず、子犬とはいえ、実際に生き物に害を与えたのですから、尚更です。嗚呼〜。

 というわけで、もはや口もきかなくなった琴音に対し、主人公の慰めなどは何の効果もありません。子犬を動物病院へ入院させた後、重苦しい雰囲気のまま、別れることになりまして・・・。やれやれ、せっかくここまで来ながら、なんということでしょう。まあ、世の中というのは、得てしてこういうものですが・・・。


姫川琴音その5・・・暴走、決意、想いへ進む

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