さて、2日目の晩です。今晩は前回と違った選択をしたところ、若い男を乗せることができまして。この男、まだ引っ越してきたばかりで、番地も言えない有様ですが、急いで引っ越すとこういうことにもなるでしょう。

 それで、彼が引っ越した理由として、話してくれた怪談が、「後ろのテレビ」。そういや「後ろの百太郎」なんていう心霊マンガがありましたが、これはテレビに映った老婆の亡霊の話ですね。こういうアパートやマンションを舞台にした怪談も、本当に数が多いです。私のところは大丈夫でしょうか?

 そして、次に拾った中年の男も、例によって怪談を話してくれました。この男、山頂をめざして進んでいた私のタクシーを捕まえて、麓まで行ってくれという極悪な奴ですが、まあ、怪談を話してくれたので、別にいいでしょう。その怪談というのが、「二人で聞いた」。幽霊も何も出て来ない、純粋に怪音だけを取り上げた怪談ですが、こういうのも、それなりに現実味があって、怖いかも知れません。

 その後は客を拾えず、今晩はこれで終わりです。続きはまた明晩ということですね。


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稲川淳二 真夜中のタクシー(PS)へ戻る