リンと愛との奇妙な同居生活を続ける秋俊ですが、ここで話は少しの間、この二人から離れることになりました。秋俊の予備校仲間で、友人でもある紫が、なぜだか秋俊を自宅に誘って来たのです。ちなみに、紫はこれまでも度々色んな理由をつけては秋俊を自分のマンションに誘っていたのですが、今現在、彼女の両親は外国に居て不在。おまけに他に家族のいない紫の家に行く(しかも夜・・・・)と言うのは、当然、別な意味を含んでいるわけで、彼女に関心の無い秋俊は、いつも断っておりまして。実際、秋俊は昼間、荷物運びか何かで紫の家に行ったことが一度あるきりで、それも家にはあがらずに帰っているみたいですから、紫に関心が無いのは本当なのでしょう。
もっとも、紫に異性としての関心は無くても、いい友達だとは思っている秋俊のこと。彼女から泣くような顔をされて家に来て欲しいと頼まれては、無視するわけにも行かず、結局、一度断った後で、心配になって様子を見に行ったのです。すると、玄関先に出て来た紫は、まるで死人のような顔色をしていて、おまけに何の判じ物なのか包丁なんか構えている始末・・・・。これには秋俊も仰天しておりますが、一体全体、これはどういうことなのでしょう?
で、紫から事情を聞こうとした秋俊でしたが、彼女が何も話さないうちに、その事情が理解出来る現象の発生。何だか部屋の中でラップ音がしたかと思うと、家具が振動して動いたり、そうかと思うと窓に妙な物体が出現したり・・・。特にこの物体は不気味で、何だかなめくじが這った跡に似ていて、それがうねうね動いているのですから大変です。全く見るからにおぞましい物体ですが、この物体、紫と秋俊とでは見え方が違うのですから、さらにわけがわかりませんよね。
結局、怪現象に毎夜苦しめられていた紫は、誰かに側に居て欲しくて、秋俊を執拗に誘っていたわけですが、事情を聞いた秋俊は、とにかく怯えきって泣き出した紫を励ましてその力になってやることに。ちなみに、紫の家で起きる怪現象はこれだけではなく、何だか郵便受けを漁られたり、下着を盗まれたりもしている様子です。これには秋俊もいやに現実的な怪現象だな、と首を傾げておりましたが、実際、下着泥棒を働く幽霊と言うのも妙なものですよね。
まあ、何にせよこんな奇怪な現象に毎晩責め立てられていては、そのうち紫の神経が参ってしまいますので、何とかしてやらなくてはならないでしょう。ちなみに、この怪現象は以前から時折起こっていたようですが、ここ一月ほどの間に、異常なほど頻度が増えたのだそうで、もしかするとこの街で起こっているゆらぎ事件と何らかの関係があるのかも知れません。実際、窓の物体は触手状に姿を変えて、秋俊に襲いかかったりもしましたので、ますますゆらぎと関係がありそうに見えますな。
それで、窓の物体の攻撃を必死によけて、そのまま紫を連れて外へ飛び出した秋俊でしたが、こうなるともう彼の出る幕は無く、後は愛かリンの出番でしょう。というわけで、紫を家に連れ帰った秋俊でしたが、リンはともかく、愛の方は紫を連れた秋俊を見てご機嫌斜めもいいところ。全く、しばらく会わないうちに、リン以外にもこんな彼女をこさえているとは、愛が秋俊に腹を立てるのも当然ですな(笑)。
もっとも、秋俊と紫は単なる友達同士であり、少なくとも秋俊の方は、紫に恋愛感情など持っておりません。ただ、紫の方は秋俊に異性としてのはっきりした好意を抱いている節があるのですが、何にせよ今はそんなことより、彼女の家で起きる怪現象を何とかしなくては。で、事情を説明した秋俊ですが、愛もリンも話を聞いて驚いた様子は無く、リンなどそんな雑魚を相手に逃げ帰るだなんて情けない奴!と露骨に秋俊を馬鹿にしてくれる始末・・・。雑魚と言っても相手がゆらぎでは、一般人の秋俊の手には負えないと思いきや、愛の解説では、それはゆらぎではなく、その元に過ぎないのだそう。何でもゆらぎと言うのは、生物の強い思念が化け物になったものだそうで、紫の家で秋俊を襲った窓のなめくじは、まだ単なる思念のレベルでしかなく、この後大人のゆらぎになるには、数十年の月日が必要なのだそうです。
結局、相手が思念では、こちらが何をしようと肉体的な被害を受けることは無く、そうとも知らずに必死になめくじの攻撃をかわした秋俊は、俺は無駄なことをしたのか!と頭を抱えておりましたが、何にせよこのゆらぎの元を消滅させるのは、至極簡単なことなのだそうで、確かにいつも立派に成長した本物のゆらぎと戦っている二人から見れば、その赤ん坊と言うか、胎児と言ってもいい存在を消し去るなど朝飯前もいいところなのでしょう。というわけで、これで紫の家の怪現象を解決出来る目途がついたわけですが、ただ、秋俊は紫の異常なまでの怯え方から、これはただ彼女が運悪く、通りすがりの幽霊に憑かれた程度のことでは無いと察っしておりまして。もっと何か事情があるのだろうと、その辺りのことを聞いてみたのでした。
この秋俊の読みは確かに的を得ていたのですが、紫の話は別な意味で秋俊の予想を裏切りました。実は紫は以前、仲間と吊るんでいわゆる親父狩りをやっていたのです。つまり、紫なり誰なりが囮になってすけべな親父をおびき寄せ、それを皆でボコって財布やら何やらを巻き上げると言うわけですが、紫自身は金よりもむしろ退屈しのぎの方のウェイトが大きかったよう。それだけに悪質と言えば悪質ですね。
ただ、そんな不良娘だった紫が、突如真面目に勉強に打ち込むようになったのは、2年前に起きた事件が原因でして。その日、紫達は例によって獲物の親父を仲間のアパートに連れ込んだのですが、この蒲木次郎と言う親父がとんでもない奴で、何と紫の仲間6人を殺してしまったのです。で、たまたま外出した紫が部屋に戻ってみると、そこは一面血の海・・・。子猫を苛めるつもりで、間違えて虎を引っ張り込んだようなものですが、何にせよ自業自得と言うには、あまりにも悲惨過ぎる話です。
もっとも、蒲木と言う男はすぐに逮捕され、しかも拘留中に死んでしまったそうですので、紫が怯える必要は無いのですが、だからと言ってこの悪夢のような体験が、心から消えてくれるわけでもありません。ちなみに、例のなめくじの正体は、この蒲木の残留思念らしく、こ奴は紫を殺し損ねたことを悔やんでこうして死してなお、彼女につきまとうのをやめようとしない様子。全く執念深い奴ですな。
それで、打ち明け話をしながら泣き出した紫をとにかく抱きしめて落ち着かせた秋俊でしたが、これで怪現象の正体もはっきりわかりました。後は蒲木の残留思念を消し去ってやれば万事OKで、こちらは紫と仲のいいリンが、胸を叩いて請け負ってくれたため、問題はありません。ちなみに、今回は相手がゆらぎではないと言うことで、魔法を使えない今のリンでも楽勝なのだそう。話が早くて助かりますね。
11日目・・・蒲木との対決へ進む
魔法少女アイ2(Windows)へ戻る