梨乃のおかげで随分と楽が出来るようになった美桜ですが、これはすぐに単に楽になったと言うようなレベルでは、済まなくなってきました。というのも、梨乃は人間に近いロボットと言うコンセプトで作られていて、その学習能力は、従来のロボットなどとは比較するのが無意味なくらい優れていたのです。つまり、最初は命令されたことだけしかやらなくても、すぐに自分の仕事の内容を学習して、それからは命令されなくても先読みで行動を起こすことが出来るわけで、まさに人間が成長するのと同様、この梨乃も成長する仕組みだったのでした。

 というわけで、家事全般を学習した梨乃は、いちいち命令されなくても次々と家事を片付けて行くようになり、おかげで美桜が何かしようと思っても、その時にはすでに梨乃がその仕事を終わらせていると言う事態が続発。しかも、ロボットである梨乃の仕事内容は、当然人間の美桜がするよりもずっと完璧で、要するに美桜は楽になったどころか、もう何もしなくてもよくなったわけですね。

 無論、これは和彦も事前に予測していたことでしょうし、亮もこれで美桜が普通の女の子のように自分の時間を持って色々と好きなことがやれるだろう、とこの事態を歓迎。ただ、当の美桜は何か浮かない顔をしていて、何だか自分の仕事が無くなることに、ある種の抵抗感を感じているような雰囲気です。確かに、彼女が普通のメイドなら失職の危機に見舞われているわけですから、こうなるのは当然ですが、元々亮も和彦も、美桜のことをメイドだなんて思っておりませんのでねぇ。別に仕事が無くなったからと言って家から追い出すはずもなく、むしろ二人ともこれで名実共に美桜が森咲家の娘になれる、と喜んだことでしょう。

 ところが、美桜の感覚は二人とはちょっとずれていて、どうも自分はあくまでメイドであって、この家の娘ではない、と考えていたらしいのです。で、亮が梨乃に以前美桜が欲しがっていたウサギのキーホルダーを、何気なくプレゼントしたことから、自分の立場が本当に無くなってしまう!と焦った美桜は、失地を挽回すべく、とんでもない方法を考案することに。それはこれからはもう亮の妹であることをやめて、本当の意味でメイドに徹しようと言うことでした。

 というわけで、美桜は亮のことをご主人様と呼ぶようになり、これには亮も閉口。今の今まで妹だと思っていた相手から、こんな呼び方をされりゃ、普通の感覚の男だったら頭がおかしくなるでしょうが、美桜はこれは遊びだから、と言い張って、戸惑う亮に無理矢理押し付けてしまうことに。それどころか、美桜は亮が自分をメイド扱いしないことに腹を立てているくらいなのですから、何ともコメントのしようがないですね。

 しかし、無理矢理こしらえた話を、さらに無理矢理展開させているのが丸わかりで、どうにも締まりのない話ですが、とにかく美桜がそう言い張る以上、亮も彼女に合わせてやるしかありません。で、これからは美桜のご主人様として振舞うことになった亮ですが、程なくこれはそんな程度の話じゃ済まなくなることに。というのも、美桜の仕事ぶりが以前とは全く違ったものになってしまっていて、彼女、どう見ても異常だとしか思えない様子で、極端に仕事に打ち込むようになったのです。おかげで亮は仕事中の美桜を見ても、気軽に声さえかけられなくなる始末で、これではご主人様のふりをして遊ぶどころの話ではないですな。

 もっとも、人間の体と言うものはある程度以上の酷使には耐えられないようにできていて、夜もろくに寝ずに頑張っていたらしい美桜は、すっかり体調を崩してしまうことになりました。美桜はそんなになってもメイドとしての仕事をやめようとせず、とうとう亮の前で倒れてしまったのですから、大笑い。おかげで亮は大事な卒業式をすっぽかして、美桜の看護にあたることになりましたが、どうにも困った妹ですね。

 それで、ずっと美桜の看病をした亮は、もうご主人様と呼ぶのをやめさせ、以前と同じ兄妹の関係に戻しましたが、何でこんなことをしたのか、と尋ねた亮に、美桜は
「梨乃さんに負けたくなかったから」
 と答えまして。美桜がロボットに対抗意識を持って、こんな馬鹿なことをしたと知った亮は、呆れておりますが、実際人間がいくら頑張ったところで、ロボットに叶うはずはないわけで、大体これではせっかくの和彦の意志が、全く無駄になってしまいますよね。

 というわけで、そんなことを考える必要は無い、と美桜を説得した亮でしたが、美桜は何だか納得していないようで、事態はあまり変化しませんでした。ただ、下らないご主人様ごっこが終わっただけ、亮としては安心出来たようですが・・・。


森咲美桜その3・・・美桜とハッピーエンドへ進む

れでぃ☆めいど(PS)へ戻る