二人の親友を差し置いて、自分だけがいい目を見ることに抵抗感を感じていたみことですが、幸か不幸か、ミュージカルの主役はさらさの方に決まりました。やはり、すでにグラビアクィーンとして有名になっている分、今の所これといって実績の無いみことよりも有利だったみたいです。

 というわけで、残念ながら主役の座を逃してしまったみことですが、主人公は彼女が落ち込んでいるのではないかと心配しまして。実際、みことは萌の誕生パーティを無視して、ひとり剣道の素振りなどをしていたのです。これは明らかに落胆している証拠。そう思った主人公は、みことを励ましてやったのですが、本人は別に落ち込んでなどおらず、むしろほっとしている始末。何でも自分にはミュージカルの主役をやる力など無いのだそうで、つまりさらさが選ばれたのは、彼女にとって好都合だったのだとか。う〜む・・・。

 まあ、みことという子は、立派なスタイルをしていても、スタイルに自信が無いからと、水着になるのを嫌がるようなタイプですので、こう考えたのも無理はありません。が、これから芸能界でやって行こうという子が、主役になれなくて喜んでいるようでは、話にならないわけで、主人公もみことのこの態度を危惧。そんなことでは駄目だよ、と少しきつく言ってやることになりました。すると、みことはいきなり泣き出してしまいまして。主人公はびっくりして、しきりに謝ることに・・・。ふう・・・。

 しかし、そんなにきつく言ったわけでもないのに、どうして?と思えば、どうやら口ではほっとしている、などと言っていても、内心、みことは主役になれなかったことで、かなり落胆していた模様です。その辺りの、言わば負け惜しみを主人公に突かれたことで、自分の本当の気持ちを吐露することになったわけですね。

 それで、主人公は泣き出したみことを慰めてやって、彼女から感謝されることになりました。どうもみこととしても、誰かに慰めて欲しかったみたいですが、何にせよ彼女ほどの実力があれば、そのうち次のチャンスが巡ってくるでしょうし、そんなに落ち込むこともないですよね。

 ところが、この次のチャンス、意外に早く、やって来ることになりました。翌日のこと、主人公は学園内のホールで、さらさの舞台稽古を見物していたのです。ちなみに、今日は主役だけの集中稽古ということで、ホールに居たのはさらさの他には、演出の西条とみことの二人のみ。みことはさらさに何かあった時の代役ですので、一応、一緒に稽古しなくてはならないみたいですが、別にさらさが急に腹痛でも起こさない限り、彼女の出番はありませんので、稽古と言っても形式的なものみたいです。

 で、その稽古なのですが、さらさがセットの階段の上に上がって、何やら台詞を言っていたのです。すると、いきなり天井から血糊の入ったバケツが降ってきまして。さらさはこれをもろにかぶり、驚いた拍子に足を踏み外して、階段から転げ落ちてしまいました。何とまあ・・・。

 しかし、これぞ文字通りの「血の雨が降る」ですな・・・などと笑っている場合ではありません。主人公はおろおろするばかりで、何も出来ない西条を、人を呼びにやらせ、自分は頭を打って気を失ったさらさの方に向かったのです。が、そこで、みことが主人公を呼び止めまして。彼女、怪しい人影を目撃していて、それを主人公に知らせてくれたのでした。

 ただ、今は人影よりもさらさの具合の方が、心配です。主人公は早く人影を追わなきゃ!と主張するみことを無視して、さらさの方へ駆けつけました。幸い、さらさは気を失っているだけで、大きな外傷は無い様子。それだけ見て、改めて、みことが見つけた人影を追った主人公ですが、怪しい人物は見つからず、代わりに江里子に出食わすことに。江里子は怪しい人など見ていないとかで、どうも主人公が追いかけるのが遅かったせいで、犯人に逃げられてしまったようですね。

 まあ、これは仕方のない話で、実際、みこともさらさより犯人の追跡を優先しようとした自分の態度を、反省したみたいですが、幸いさらさの怪我は、大したことありませんでした。ただ、階段から転落した弾みで、足を痛めたらしく、当分ダンスは無理なのだとか。これでは、芝居以外に歌と踊りが重要になるミュージカルの主役は、到底、無理。それに、かおるといい、このさらさといい、どうも主役になった子に限って、誰かに狙われて、ひどい目に遭わされているのですから、次に主役になった子にも、同じ不幸が起こるかも知れませんし・・・。

 というわけで、「アルテミスの階段」は、上演中止にしましょう。学園の会議ではそう決まりかけたのですが、ひとり強硬に上演を主張したのが、江里子でした。犯人は明らかにミュージカルを中止に追いやろうとしているわけで、ここでやめたら犯人の思うツボだというのです。成る程、確かにそれはそうかも・・・。

 ただ、テロに屈しないという江里子の態度は立派ですが、肝心の主役がいなくては話になりません。無論、さらさが負傷した今、それを務められるのはみことしかいないのですが、彼女にして見れば、自分までかおるやさらさの二の舞になるかも知れないわけです。いくら主役の座は魅力的でも、命あっての物だね。ここは身を引くのが上分別というものですよね。

 と、多くの人たちは思ったわけですが、みことは決然と主役をやることを宣言してくれました。江里子はみことの決断を喜んでおりますが、こうなれば話は決まったようなもの。「アルテミスの階段」は予定通り、上演されることになりました。

 しかし、かおるやさらさが次々と酷い目に遭っているのに、主役を引き受けるとは、みことも度胸がありますが、どうも彼女が主役をやるのは、単に恐れを知らない無鉄砲さから、というわけではないようです。何でも彼女を始め、かおる、リカの仲良し三人組は、死んだ生駒健太郎の秘蔵っ子だったそうで、元々、この「アルテミスの階段」は、彼女たち3人のうち、誰かを主役にすることを前提にして、書かれたものだったのだとか。つまり、かおるが死に、リカが失踪した今、健太郎の遺志を継ぐことの出来る者は、みことしかいないわけで、どうも彼女は自分達を可愛がってくれた健太郎と、いなくなった親友たちのために、敢えて逃げることを拒否し、主役の座を引き受けた模様です。

 この辺りは義理堅いみことらしい話ですが、こうなると主人公もうかうかしておれません。犯人が「アルテミスの階段」の上演を中止させようとしている以上、次のターゲットは、みことになるに違いないのですから・・・。これは早急に犯人を突き止め、みことを守ってやらなくてはいけませんよね。


国栖みことその3・・・みこととハッピーエンドへ進む

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