さて、今度はティの番。彼女、もう以前みたくアランに強制されて家に軟禁状態にされることもなく、結構今の暮らしを楽しむようになりました。無論、これは彼女をめぐる情勢が好転したためで、アランももうむきになってティをガードする必要も無いわけですね。

 それで、ソリノと世間話をしたり、散歩したりして遊んでいたティは、広場で何やら困った顔をした少女に会うことに。彼女、フランチェスカという名前で、もしかしなくてもレーニエを追う謎の少女のことなのですが、今は相棒のセスとはぐれてしまって、どうやって彼を捜そうか途方に暮れていたのです。ティはそんなフランチェスカに声をかけ、一緒にセスを捜してやって感謝されましたが、そこで、フランチェスカがお礼にと何やら怪しげな占いをしてくれたのです。それによると、もうすぐティは、一生を決める重要な選択を迫られるのだとか。そして、何が自分にとって一番大切なのか、そのことをしっかり心に留めておきさえすれば、その選択を誤らなくて済むのだそうで、何だかわかったようなわからないような話ですね。

 まあ、占いなんてものは所詮その程度のものでしょうが、このフランチェスカの占いは、すぐに的中することになりました。と言うのも、ティの兄ルカがアランの部屋を訪ねて来て、ティを引き取ろうとしたのです。どうやら組織内のいざこざは完全に終息したようで、ルカは殺された父の後を継いで新たに組織のボスになったのですから、まずは万々歳。無論、もうティが狙われることもないわけで、となればアランは完全に用済みですな。

 そして、ティの反応ですが、てっきり両親と共に殺されたとばかり思っていた兄が生きていたことで、当然狂喜乱舞しなくてはいけないところです。ただ、ティは無論兄の無事は嬉しかったものの、今すぐアランと別れるのが嫌で、ちょっと日延べをしてもらうことに。ルカは渋い顔はしたものの、ティの言う通り、少しの間ホテルで待つことにしたのですから、マフィアのボスも妹には甘いようですね。

 ところが、アランの方はルカの態度がおかしいことを察知しておりました。そもそもマフィアのボスともあろう者が、いくら妹が可愛いからといって、手下を一人よこせば済むような使いぱしりの仕事を、わざわざ自分でやろうとすること自体、不自然極まりない話なのです。で、アランはワーニャの家へ出向いて、その辺りの情報を集めることに。するととんでもない事実が判明し、なんとティの両親を殺したのは、ルカ本人だったのでした。

 結局、ティの父親とルカとの間には、組織の運営をめぐって埋め難い溝が出来ており、それが父親派とルカ派とに分裂しての抗争になったわけで、道理でルカが絶望的な状況から、逆転勝利を収められたはずです。そして、この話にはまだ続きがあり、勝ったとは言え、それでなくても家族の絆を重んじるイタリアで、父親殺しの名を冠せられるのは、組織のボスとして人望の点で甚だ不都合で、このままだとどうもいつ何時、対立する勢力に反撃されるか、わからない状況らしいのです。そして、もし死んだ父親を慕う連中が反撃に出た場合、彼らが正当な組織の後継者に担ぎ上げるのは、誰が考えてもティでして。逆を言うと、ティを担ぎ上げて、彼女に誰かしっかりした婿でもとって、そやつの指揮の下、一気に反撃したなら、父親派の巻き返しも十分に可能と言うわけですね。

 となると、ティをこのまま生かしておくのは、どう考えても不都合で、これは早々に始末してしまわないと、大変なことになりそうです。事実、ルカがわざわざ自分でここまで出向いて来たのは、妹の始末を他人にやらせる気になれず、自分で直接ティを始末して、組織を固めるつもりだったからのようで、何とも情けない話です。

 まあ、権力に狂ってしまった人間は、正常な神経でなくなるケースが多いため、仕方がないと言えば仕方がないですが、全てを知ったティは、深夜兄を人気の無い広場に呼び出し、対決することに。ルカはティに詰問されても全然悪びれた様子が無く、両親を殺したことなど気にも留めていない模様です。そして、泣いて抗議するティに対しても情けも何もかけようとせず、あっさり射殺しようとしたのですから、すでに権力に酔ってしまって、人としての情なんて無くなってしまっていたのでしょう。

 もっとも、ティはここでルカに射殺されるほど馬鹿ではなく、隠れていたアランに合図して、逆にルカを撃たせたのです。全く持ってルカも甘い男ですが、ただ、致命傷を負わされた後、ルカは急に穏やかになって、ティにも優しい言葉をかけまして。どうもこの男、アランが居ることを百も承知で、わざとティを挑発して撃たれたような気配があるのですが、いずれにせよ彼が甘い男であることには変わりないですね。

 こうして、兄を殺すことになったティは、悲しみに押し潰されそうになってしまいました。アランは相変わらずぶっきらぼうでしたが、それでも涙をこらえるために、意味も無いことを一人しゃべり続けているティを見てはさすがに平静では居られず、もうよせ、とティを慰めてやったのです。そこで、ティはアランに抱きついて、彼が好きだと告白することに。アランはと言うと、さすがに俺も好きだ、と答えることはしませんでしたが、彼の態度は明らかに彼の気持ちも同じであることを示しておりまして。それを見たティは、安心して、アランとキスをしたのでした。

 というわけで、ルカの死がきっかけになっていきなりくっついてしまったアランとティでしたが、こうなったのはむしろ遅いくらいだったかも。いずれにせよ、ティはもう帰る場所も無いわけですし、アランと二人、どこまでも流れて行くのもいいかも知れません。


第20話 全ての者に降る雪へ進む

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