さて、ここで話はレーニエの方に戻ります。ただ、今回はレーニエ自身の出番はほとんど無く、正確には彼女の同居人の一人エリチェが主人公。このエリチェ、パレルモ達のグループでは、肉体を使った荒事の担当のようで、かなり腕っ節が強く、そして、銃の扱いにも秀でているのですが、そんな彼がいつも銃の練習に使っている廃屋から、今回の物語は始まりました。

 それで、物語の内容ですが、エリチェが練習をしていたところへ、何やら若い女と人相の悪い男どもがやって来たのです。連中は会話の内容から察するに、最近巷を騒がせているテログループの一員らしく、どうも活動方針をめぐって仲間割れが起き、男どもと女とは敵同士のよう。で、女は男どもに殺されかけたのですが、間一髪助けが入り、逆に男達の方が、狙撃されて殺されてしまいまして。事の一部始終を見ていたエリチェは、やれやれこんなところで迷惑なことだ、と肩をすくめることに。ちなみに、問題の女は以前レーニエを励ましてくれたレプレだったりするのですが、エリチェは彼女のことを知らないため、特に何の感想も出て来ませんでした。

 というわけで、妙な事件を目撃することになったエリチェでしたが、何にせよ彼には関係の無いことです。ただ、問題の射撃練習場代わりの廃屋ですが、日を改めて行って見たところ、今度はユーンと名乗る少女と出会うことになりまして。彼女、以前ティの話に少し出て来てましたが、ワーニャと言う男に引き取られている娘で、早い話、人身売買に使われる商品。無論、現時点のエリチェはそこまで知る由は無かったものの、お互い無口な者同士で気が合ったのか、何となくユーンと仲良くなってしまったのでした。

 こうして、今回は主役として色んな女の子に出会うエリチェでしたが、そうこうしているうちに、またまた妙な女の子に出会う羽目になったのです。それが、以前レーニエを追っかけていたフランチェスカでして。彼女、相棒のセスに命じ、エリチェを尾行させたのです。もちろん、こんなむさい男に用があるわけではなく、狙いは同居しているレーニエの方。で、エリチェはセスの尾行を見破って、相手をまくと同時に、逆尾行をかけたのですから、さすがに一筋縄ではいかない男ですね。

 もっとも、セスの方もすぐにエリチェの尾行に気づいたため、この勝負は引き分けです。で、セスと対決したエリチェは、止めに入ったフランチェスカを見て、その不思議な雰囲気に呑まれてしまいまして。無論、フランチェスカが綺麗だから見とれてしまったと言うような生易しい話ではなく、彼女、どういうわけかエリチェの過去を知っていて、彼の古傷をちくりと突いて来たのです。何でもあなたは友達が悪いことをしているのに止めなかった、でも、私は友達が悪いことをしていれば止めます、と言うのですが、ここで言うフランチェスカの友達が、レーニエを指しているのは間違いありません。ってことは、レーニエは実は悪いことをしているのでしょうか?そりゃ、家出は悪いことには違いないのですが、どうもそんな単純な話じゃなさそうですな。

 それで、古傷を突かれたエリチェが、動揺している隙に、フランチェスカとセスは姿を消してしまいました。ちなみに、二人のかくれんぼの技術は大したもので、すぐに後を追ったエリチェが、たちまち見失ってしまうくらいなのですが、そんなことより大変だったのが、エリチェの友達の方。実はフランチェスカらを見失って、面白くない気分で家に帰ったエリチェは、問題の悪いことをしていた友達から、電話を受けたのです。ちなみに、相手はカサルという名前で、昔エリチェが刑事をやっていた頃、同僚だった男のよう。今は警察ではなく、軍の特殊部隊に居て、かなり出世しているようですね。

 そして、カサルから是非会いたいと言われたエリチェは、珍しく感情的になって怒ってましたが、結局は渋々ながら会うことに決め、例の廃屋でカサルと待ち合わせをしたのです。このカサル、以前何かでエリチェを裏切ったらしく、そのせいでエリチェは大切な友人を死なせてしまい、それで人生が狂った模様。つまり、カサルこそ立派な刑事だったエリチェが、こんな裏街道を歩かざるを得なくなったそもそもの元凶と言うわけで、エリチェが会いたがらなかったのも無理はないですな。

 ただ、今回カサルがエリチェに会いたがったのは、純粋に彼の身を案じてのことでした。というのも、今エリチェ達が所属している組織で、派閥抗争が起きており、このままではエリチェ達は邪魔者として消されてしまう危険性大なのだとか。それを防ぐには、敵対派閥の大物でルチアーノと呼ばれている男を何とかして処置するしかないのだそうで、つまり、カサルはエリチェ達を救うために、わざわざこんな情報を持ってきてくれたわけですね。

 そして、エリチェに情報を流すと言うことは、当然敵対派閥の連中から見れば、許し難い行為になるわけで、ここでカサルとエリチェは、連中が送り込んだ殺し屋達に襲われたのです。不意を突かれたカサルはたちまち射殺されてしまい、エリチェの方は、何とか敵の第一撃をかわして逃げ出しましたが、所詮は多勢に無勢。いつまでも逃げ切れるものではなく、連中に撃たれて重傷を負わされてしまったのです。それでも、とっさに仕掛けたブービートラップのおかげで、一時的に連中をまいたエリチェですが、傷口からの出血が激しく、意識朦朧状態に。結局、そのまま倒れこんでしまったのですから、やれやれですな。


第17話 私は私の好きな人の名を呼ぶへ進む

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