さて、今度はティの番。今回の話はアランが例によって仕事の依頼を受けるところから始まったのですが、ただ、仕事の内容がちょっと妙なもので、殺しではないのです。なんでもモーリスが言うにはフィレンツェにある有名なウフィツィ美術館からミケランジェロの名画「聖家族」を盗み出した組織があって、連中はその絵を別な組織に売りつけようとしているのですが、その取引を妨害するため、絵を贋作とすり替えて欲しいと言うのです。つまり、ただ絵を取り戻すのではなく、盗んだ組織と買おうとしている組織双方の関係まで悪化させようと言う魂胆で、恐らく闇の世界の勢力争いが関係しているのでしょう。

 まあ、その辺りの話はアランとは関係のないことです。で、いつもとは勝手の違った仕事ながら、とりあえず引き受けたアランでしたが、こうなるととりあえず問題の絵、つまり「聖家族」があった美術館を一度確認しておいた方がよさそう。というわけで、ティを連れてウフィツィ美術館へ繰り出したアランは、そこで意外な人物に出会うことに。なんとアパートの下の花屋でバイトしているソリノが、美術館へ来ていて、そこで絵の模写をしていたのでした。

 それで、ソリノと話すことになったアランでしたが、彼女は油絵を専攻している学生で、この美術館へもよく来るのだそうです。特に彼女が「聖家族」が好きで、その模写を何度もやったことがあると聞かされたアランは、これは好都合とばかり、彼女から「聖家族」についてあれこれ聞くことに。何でも問題の絵は、キリストとその家族を描いたもののようですが、ソリノは幼い頃両親の離婚で家族がばらばらになったせいか、暖かい家族の姿を描いたこの絵が好きなのだそう。ちなみに、このソリノ、どうやらシエナの妹みたいな感じなのですが、この姉妹、例えどこかで遭うことがあっても、お互いそれとは気づかないだろうと思われますね。

 そして、その後ソリノの家に招待されて、ティにオルミナも加えて昼食をご馳走になったアランでしたが、モーリスの計画に使われる「聖家族」の贋作を、なんとソリノが描いていたことを知り、ちょっと複雑な気分です。恐らくモーリスは足がつかないよう、わざと闇の世界とは無関係のソリノに目をつけたのでしょうが、アランは後日モーリスに会った時、この辺りのけじめに関して、一言釘を刺すことになりまして。モーリスももう2度とソリノには頼まない、と約束することになりました。

 それで、絵のすり替えを楽勝で終わらせたアランは、取り戻した絵を美術館に返却し、これで一件落着です。ソリノはいつかこの絵のような暖かい家族を手に入れたいと願っているようですが、彼女の場合、姉とは違って健全な世界で生きているのですから。きっとその希望を叶えられる日も来ることでしょう。


第12話 幕間劇ー道徳の交差へ進む

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