さて、ゲームの始まりです。このゲームは全部で22の話から構成されていて、プレーヤーの選択により、それぞれ話の組み合わせが変わると言う方式をとっているようですので、まあ、何回かプレイして全ての話を見終えたら、ゲーム終了と見ていいでしょう。

 で、まずは最初の話です。この話の主人公を務めるのはアランと言う、世の中のこと全てに醒めてしまったような印象を与える虚無的な青年で、一応大学生と言うことになっておりますが、これは単なる方便。実態は闇の世界で暗躍する殺し屋です。今回、仕事の関係で一時的にイタリア中部の大都市フィレンツェに住むことになったアランは、アパートの一室でいかにも殺し屋らしい虚無的な生活を送ることになりました。

 と、普段のアランなら、こうしてハードボイルドにきめて、それなりに格好よく、生活することが出来たでしょうが、今回はそうは問屋が卸してくれませんでした。と言うのも、いきなり彼の家へ来訪者があったのです。それもまだ子供と言っていいハイティーンの女の子。無論、アランは相手が品のいい美少女だからと言って油断はせず、慎重に周囲を確認し、大丈夫だとわかって初めて彼女を家へ入れましたが、そんなアランのハードボイルドぶりも、彼女から手紙を渡されるまででした。なにしろ、その手紙、アランに仕事を依頼するモーリスと言う男からのもので、このモーリス、こともあろうに問題の少女を預かって面倒をみるよう、指示して来ていたのですから・・・。

 こうして、いきなり同居人の出来たアランは、さっきまでのハードボイルドぶりはどこへやら、すっかり慌てふためいております。無論、断って少女を放り出すと言う選択肢もあるはずですが、アランはモーリスにちょっとした義理があって、それも出来ませんで。結局、苦虫を噛み潰したような顔で、この同居を認めることになったのですから、大笑いですね。

 それで、問題の少女ですが、名前はティと言います。これは本名ではなく、愛称のようですが、より重要なのは彼女がマフィアの娘であること。実は今ティの実家は、対立する他のマフィアとの抗争で、大変な事態になっておりまして。はっきり確認したわけではないようですが、どうもすでにティの家族は、彼女一人を残して皆殺しにされてしまった気配があるのです。つまり、このままではティ自身もいつ襲われて殺されるか知れたものではないわけで、たまたま彼女の祖父と知り合いだったモーリスが、その義理で彼女の隠れ家を提供することになり、それに選ばれたのがアランの家だったと言うわけですな。

 まあ、アランは殺し屋としては相当な腕前のようですし、そういう意味ではボディガード役としてはうってつけです。ただ、問題は一つ屋根の下で、若い男女が暮らすことになった際、当然懸念される事故のこと。アランはそうした事故を故意にほのめかしてティを試したりしてましたが、彼女の方も華奢な外見に似合わず、それなりに芯は強いようで、アランの脅しを震えながらもちゃんといなして見せたのです。これでアランはティに対するそういう意味での興味は無くしたようで、後は男と言うより兄としての立場でもって、彼女と接するようになりました。

 こうして、全くひょんなことから始まった二人の生活でしたが、ティはずっとお嬢様育ちだったせいか、家事がまるで出来ず、掃除をしようとすれば部屋を無茶苦茶にして、外から戻って来たアランに、てっきり何者かの侵入かと慌てさせ、コーヒーを淹れろと言われれば、豆のひき方も知らずに立ち往生。結局、この方面でもアランが全部面倒を見る羽目になり、全くボディガード兼召使いとは、凄腕の殺し屋も形無しですが(笑)、ティは基本的に明るく礼儀正しいもので、アランもはっきり口にこそ出しませんが、それなりに彼女のことを気に入った様子です。で、ティと同居生活を送るアランの前に、またしても同居人を連れて来た男が一人。今度はシュガーと言う名の大男で、こ奴はモーリスと同様、アランに仕事の依頼を持って来る男なのですが、今回は殺しの依頼ではなく、最近病死したとある知り合いが可愛がっていたと言う猫を1匹預かるよう言って来たのです。しかも、モーリス同様、アランに対する恩をちらつかせて・・・。アランもほとほと頭を抱えてしまいましたが、結局断りきれずに、猫を預かることになってしまいました。

 というわけで、ティに猫(名前はマシュウ)と、いきなり二人(と言うか一人と一匹)も同居人の出来たアランでしたが、マシュウは人馴れしているようで、すぐにアランにもティにも懐いてくれて、この点は話が早くて結構です。ただ、非合法の仕事を生業とするシュガーのような男が、いくら死んだ友人のためとは言え、たかが猫にそこまで執着するというのは、不自然も甚だしい話で、この点はアランも妙に思うことに。無論、何か裏があることは容易に推察出来るのですが、一体、その裏とは何なんでしょう?

 この疑問に対する回答は、マシュウが自分でしてくれました。すっかりティに懐いたマシュウが、彼女と二人散歩している最中、いきなり逃げ出して、近くにあった大きな空き家に入り込んだのです。ティに付き添っていたアランは、さっさと鍵を外して潜り込み、マシュウを見つけましたが、この猫が妙に床の一角に固執するのを見て、興味を抱きまして。試しに床板を剥がしてみたところ、中からオルゴールとこの家(と言うか屋敷)の持ち主だった人物の遺言状が出て来たのですが、そこには何と遺産を飼い猫のマシュウに贈ると書き残されていたのでした。

 結局、この金持ちは家族に恵まれず、遺産を猫に遺すしかなかったわけですが、無論、猫が自分で遺産の管理は出来ませんので、実際にはその後見人のような人間が、遺産を事実上好きに使えるわけです。アランはシュガーの魂胆を知って珍しく大笑いしておりましたが、恐らくシュガーはこの遺言のことを聞きつけ、遺言状の隠し場所が見つかるまでの間、マシュウをアランに預けたのでしょう。無論、遺言状さえ見つかれば、マシュウの保護者を名乗って、遺産の管理を請け負うつもりだったに相違なく、全く油断も隙も無い話ですね。

 それで、アランは問題の遺言状をさっさと燃やしてしまいました。ちなみに、ティは気づいたのですが、今現在マシュウが手元に居ることを利用して、アラン自身が遺産の管理を請け負うことも可能だったのです。ただ、ティからその点を指摘されたアランは、自分が金に全然執着が無いことを教えてくれただけで、それっきり。この辺りは何となく殺し屋らしい話ですな。

 もっとも、アランが遺言状を燃やしてしまったせいで、シュガーがマシュウを保護する理由は、無くなってしまいました。で、シュガーの下を放り出されたマシュウは、そのままアランの家に居つくことになり、こうなることを計算していなかったアランは、頭を抱えることに(笑)。まあ、ティは喜んでおりますので、これで良かったのかも知れません。


第2話 小鳥の見る夢へ進む

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