主人公の性格を考える上で、もうひとつ見逃せないのが、その勇敢さです。彼らは一般的に極めて勇敢で、普通の男だったら逃げるか、あるいは怖くて身動き出来なくなるような状況でも、構わず自分の為すべきことの出来る人間なのです。
無論、RPGのようにモンスターなどと闘うような類のゲームですと、主人公が勇敢なのは、当たり前ですが、これは普通にヒロインと恋愛するだけのゲームであっても同じこと。実際、主人公がヒロインのために体を張って怪我をしたり、それどころか、命がけの勇気を発揮したりしたケースは、もう枚挙のいとまがありません。「To Heart」の主人公は、琴音の超能力を制御するため、一歩間違えば死ぬかも知れない賭けを迷わず実行しましたし、「infinity」の主人公は、行けば死ぬかも知れない危険な神社に、ヒロインの優夏を振り切ってまで駆けつけました。「Kanon」の主人公は、舞のために命がけで魔物と闘い、「幻想のアルテミス」の主人公は、さらさをかばって自分がナイフの的になり、「Lの季節」の主人公は、死んだヒロインを追って、行けば二度と戻れなくなるかも知れない異世界に、自分から飛び込んで行くといった具合。自分勝手で嘘つきで怠惰で、本当、どうしようもない駄目男である「Memories Off」の主人公でさえ、電車にひかれそうになったかおるを、命がけで助けたり、熱い紅茶をかぶりそうになった詩音を守って、自分が紅茶をかぶったりしてたぐらいですので、この手のイベントが、いかにありふれたものであるのかは、よくわかりますね。
ただ、ここで気をつけて置きたいのは、こういった主人公の勇気は、常に発揮されるものではないということです。はっきり言えば、彼らの勇気は、ヒロインが危機に瀕した時にのみ、発揮されるもので、常日頃の主人公達は、特に勇気があるわけでもなく、むしろ、面倒なことからはすぐに逃げたがるような人間ばかり・・・。別な言い方をすれば、主人公が命がけの勇気を発揮する時は、ストーリーが山場を迎えた時だと言えるかも知れません。
こういった主人公の勇気は、彼らの性格を考える上で、非常に興味深いものです。前の協調性というのは、主人公とヒロインとを絡めてストーリーを作る上で、必要不可欠なものでしたが、こうした勇気は、別に無くてもストーリー作りに、さほど支障は来たさないはず。つまり、主人公達が勇敢であるというのは、ギャルゲーというものの性質と密接な関係があるわけですね。
現代において、女性というものは、昔よりも(少なくとも表面的には)強くなりました。従って、男は女よりも強いのだから、女を守るのが当然、という一昔前の風潮は、かなり薄らいで来ているのです。ところが、物語の世界においては、以前として、男は女よりも強いという風潮が、さかんでして。ギャルゲーもまた、そういった風潮と無縁ではない、というより、それをかなり積極的に活用して、話をまとめるケースが多いのです。
そう考えれば、何故、主人公達が揃いも揃って勇敢なのか、その理由はすぐにわかります。つまり、彼らは日頃、いかに怠惰で臆病であっても、ヒロインがピンチになれば、思いがけない勇敢さを発揮する必要がある。そうであって、初めて、ヒロインと結ばれる資格を持てるわけで、逆の言い方をすると、ギャルゲーに出て来るヒロイン達は、男に守られることをごく自然だと考える子ばかりというわけですね。
これはギャルゲーに、フェミニズムなどと縁のある進歩的な女性は、全くと言っていいほど登場しないひとつの証左になると思われます。さらに言うなら、ギャルゲーをプレイする人たちの間では、そういった女性と肩の凝るつき合いをしたいと思う人は、まるでいないということにもなりますね。
そうしたギャルゲーの事情を反映して、ギャルゲーの主人公達は、非常に勇敢な男になりました。言うまでも無く、命がけで自分を守ってくれた男が居れば、相手の女性も粗略にするわけがありません。彼が日頃から仲の良い間柄であったなら、たちまち好意が愛情に変わるのも当然。これが主人公が女性にモテる理由のひとつでしょう。
主人公の性格その3 怠惰さへ進む
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