ギャルゲーの主人公には、一定の平均像のようなものがあり、そこから大きく逸脱した主人公は、その多くが特殊な設定のゲームにおいて見られることがわかりました。では、ごく普通の設定のゲームにおける主人公達が、なぜモテるのか。その最大の理由である性格について考察して行くことに致しましょう。

 さて、彼らの性格ですが、まず、重視されなくてはならないのは、その協調性です。通常、人が社会生活を営む上で、他人の意思に自分を同調させ、相手と良好な関係を築くというのは、非常に大切なこと。当然、これはギャルゲーの主人公にとっても同じですが、彼らの多くは、特に協調性に富んでいるわけでもなく、男友達からの誘いなどは、何だかんだと理屈をつけて断るケースも多いのです。が、相手がヒロインとなると、話は別。彼らの多くは、常識では考えられないほど、極端な協調性を発揮するのです。

 その典型的な例が、「To Heart」の主人公でしょう。彼はヒロイン達からどれほどひどい目に遭わされようと、決して彼女達の下を去ろうとはしないのです。具体的に彼がヒロイン達から受けた仕打ちを挙げて行くと
*保科智子・・・主人公に会うたび、無視するか、悪口雑言を浴びせかけた。
*来栖川綾香・・・主人公を自分の得意な格闘技につき合わせ、会うたびボコボコにした。
*松原葵・・・主人公を格闘技同好会に入れ、練習につき合わせて、会うたび痛い思いをさせるか、疲れさせた。
*姫川琴音・・・主人公をいつ暴走するかわからない超能力のトレーニングにつき合わせ、危険な目に遭わせた。
*マルチ・・・何をやってもドジばかりで、その都度主人公に尻拭いをさせた。
*来栖川芹香・・・極端に無口で感情表現が乏しく、主人公に色々と気を遣わせた。
 と、いった具合です。

 無論、これらの仕打ちは、ヒロインがわざとやったわけではなく、主人公が自ら望んだもので、実際、このゲームの場合、ヒロインの多くが心に悩みを抱えているため、彼女達の悩みを解決しながらつき合おうと思えば、どうしてもこういう結果にならざるを得ないのですが、それにしてもこれは随分な話。いくら相手が美人でも、会うたび悪口を言われたり、ぶん殴られたりすれば、普通の男なら抗議して、逃げ出すことでしょう。

 にも関わらず、この主人公はヒロインに抗議することも無く、彼女達の下を去ることも無く、ひたすら我慢に我慢を重ねて、彼女達の悩みが解決するのを待つのです。その忍耐力は大したものですが、それ以上に、そうまでして、ヒロインに合わせようとする協調性は、現実では考えられない稀有なものだと言えますね。

 そして、こういった極端な協調性の発露は、この主人公だけに見られるものではなく、むしろ、多くのゲームにおいて、当たり前のように見られるもので、通常、ギャルゲーの主人公というものは、攻略対象になったヒロインに逆らうことは、ほとんどありません(逆に、たまに逆らうと大抵喧嘩になって、ストーリー上、重要なイベントになります)。それは、ただ単に彼女達の趣味や好みに合わせてやるというレベルではなく、特殊な性格や境遇故に、学校中の人間から相手にされないようなヒロインを、主人公だけが相手にする、万難を排して、その特殊な性格にも境遇にも合わせてやる、といったストーリーは、ギャルゲーでは、ごく当たり前のものなのです。

 これはギャルゲーの主人公の性格を考える上で、極めて重要なことになると思われます。つまり、彼らは普通の男なら、「彼女とは趣味が合わないから」と去って行く、あるいは「これ以上、彼女につき合ってたら、俺まで変人扱いされちまう」と愛想を尽かす。そんなことになるような状況であっても、構わず、自分をヒロインに合わせるということなのです。つまり、興味が無い趣味にでもつき合い、迷惑をかけられても無視し、ひたすらヒロインのそばで、奉仕を続けるというわけですね。

 無論、これは全ての主人公に当てはまるものではなく、例外も当然あります。特にストーリー性が薄く、主人公をモテモテ状態にして、プレーヤーを楽しませるといった類の作品ですと、これが全く逆になって、ヒロインの方が、わがままばかり言う主人公に奉仕するようになるのですが、そういった低レベルの作品に言及するのは、この研究の目的ではありません。ここではあくまでもストーリー性が濃い作品、すなわち、主人公にプレーヤーの分身以上の意味が認められる作品だけをとり上げるつもりですので・・・。

 そして、この極端な協調性は、主人公の性格のベースであり、さらに言うなら、彼らがモテる最大の理由のひとつであると言えそう。人間、誰しも自分の趣味や境遇を肯定してくれる人には、好意を抱くもので、特に、普通の人では理解出来ない(あるいは合わせられない)ような趣味や境遇にも合わせてくれる人が居れば、当然、並々ならぬ好意を抱くことになるでしょう。で、相手が、ちょっと素敵な異性だったりすれば、好意が愛情へ昇華しても、何ら不自然ではないわけですね。

 こういった協調性は、物語を作る上で、どうにも欠かせない部分です。ギャルゲーには、普通の人なら引いてしまうような極端な設定のヒロインが多く、彼女達と主人公とを触れ合わせて物語を作るためには、主人公が並みの男のように、ちょっとのことで、すぐヒロインを見捨ててしまっては、どうにもなりません。彼らはヒロイン達が何をしでかそうと、それを理解して、合わせてやらねばならず、そうなって、初めて物語を作ることが出来るのですから・・・。

 というわけで、ギャルゲーの主人公は、人並み外れた協調性を発揮するようになりました。これは彼らがモテる重要なファクターのひとつであると言えるでしょう。


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