さて、ここで何故主人公がモテるのかという考察から少し離れて、彼らの家族構成について見てみましょう。実はここにギャルゲーの主人公が持つ特性の一部が、垣間見られるのです。
多くのプレステギャルゲーにおいて、主人公は高校生です。無論、大学生や社会人の主人公も居るのですが、割合から言えば、高校生が圧倒的に多く、これがギャルゲーの主人公の基本と言っても過言ではありません。そして、普通、高校生というものは、ひとりで下宿するよりも親やその他の家族と同居するケースの方が、圧倒的に多いわけで、当然、主人公の家族が、ゲームに絡んでくるケースは多くなりそう。ところが、何故かそのような事態は、ほとんど見られないのです。
無論、これは家族が出て来るケースが、皆無だと言っているわけではなく、家族の中でも妹だけは、極めて高い頻度で登場します。実際、妹キャラというのは、これだけでギャルゲーの一分野を構成するくらい、重要なのですが、ここで彼女達に言及するのは、やめておきます。と言うのも、妹というのは、あくまで攻略対象ヒロインの一員であって、主人公と血縁関係にないケースが多く、厳密な意味で、家族とは呼びづらいから。ここで考えるのは、あくまでも主人公と血縁関係にある人たち、特にその両親なのです。
そして、主人公の両親というものは、ほとんどゲームに登場しません。もちろん、中には「風の丘公園にて」のように、主人公の両親が、ストーリー上、極めて重要な役割を果たしたというケースも存在します。が、これは明らかに例外的な事例に過ぎず、多くのゲームでは、主人公の両親というものは、居るのか居ないのか、それすら判然としないほど、存在感に乏しいのです。実際、「To Heart」や「Memories Off」のように色々な理由を設けて、高校生の主人公に実質的に独り暮らしをさせている作品も、多々見られるのですから・・・。
では、何故、主人公の両親(あるいは兄や姉や祖父母)といった存在が、これほど邪魔者扱いされているのかということですが、その理由は、いくつか考えられます。まず、主人公がヒロインを自宅に招いて何らかのイベントを起こす際、家族の存在が邪魔になるということで、家で二人っきりになっているところへ、親がどかどかと入って来ては、せっかくのムードが、ぶち壊しになってしまうのです。こういった事態を防ぐためには、色々と今現在両親が不在である理由作りをするよりも、あらかじめ両親を仕事の都合とやらで、遠くへ放り出して置いた方が、確実ですよね。
次にギャルゲーの主人公は、ゲームの設定上、特殊な環境で暮らさざるを得なくなるケースが、多いということです。特に同居人が出来るような作品の場合、主人公の両親が、前面に出てしまっては、ゲームの設定そのものが、成立しなくなるわけで、それを防ぐためには、やはり両親に消えてもらわなくてはなりません。仕事の都合で遠くへ移り住んだ両親と別れて、独り暮らしを始める主人公に、ふとした事から同居人が出来て、様々な騒動が起きる。こういうパターンの作品も、実に多いのですから・・・。
そして、3番目の理由になるのが、主人公がヒロイン達と恋物語を紡ぐに当たって、その両親の影響力を排する必要性が、あるということでしょう。これは恐らく主人公の両親が登場しない最大の理由だと思われますが、ギャルゲーにおける主人公は、常に自らの判断に基づいて行動し、他者(特に両親)の影響力を、極力排除する必要性に駆られているのです。
例えば、実際の恋愛において、互いの両親がもたらす影響力は、決して小さなものではありません。時にはその恋の行方を左右する決定的な要因にもなり得るのです。互いの両親とうまくいかずに、結局、彼氏(あるいは彼女)と別れる羽目になったというのは、よくある話ですし、逆に互いの両親が乗り気で、それに引きづられているうちに、元々、それほど好きでもなかった人と、いつの間にやらくっついた、というのもこれまたよくあるケース。実際、結婚を前提にしたつき合いをするのであれば、互いの両親の存在は、絶対に無視することの出来ない重要な要素でしょう。
ところが、これがギャルゲーになりますと、話は全然違ってきます。ギャルゲーの世界において、重要視されるのは、あくまでも本人達の意志。さらに言うなら主人公自身の意志でして。通常なら、間違いなく両親から苦情が出るような無茶な恋でも、主人公がそれを望んだら最後、それを止めることは出来ません。両親はそれを見守るしかないのですが、かと言って、いちいち両親の性格を説明して、息子が何をしても気にとめない大らかな人たちだと、規定するのは面倒。それならいっそ主人公の両親は、現在不在だということにしておけば、苦情が出ること自体を防げるわけで、これは実に都合がいいですよね。
こうした理由が組み合わさって、主人公は妹以外、ほとんど家族に構われることの無い存在となってしまいました。これは彼らの人間的な魅力とは、直接関係の無いことですが、ギャルゲーというものを考える際は、無視することの出来ない要素です。現実の恋とは違って、親の束縛を全く受けないギャルゲーの恋。だからこそ、後述する主人公の性格づけが、可能になるのですから・・・。
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