さて、まずは主人公の位置付けについて考えてみましょう。一口にギャルゲーの主人公と言っても、ゲームにおける位置付けは、全員同じというわけではなく、そのゲームの性質によって、いくつか異なるパターンが存在します。
(1)物語の中で、主役を務めるタイプ
(2)ゲームの中で、プレーヤーの分身としての役割を果たすタイプ
(3)ゲームの主役を務めると同時に、ヒロインとしての役割を果たすタイプ
以上です。このうち、3のタイプに関しては、要するに主人公自身が、ヒロインとして活躍するというケースで、「マリーのアトリエ」を始めとするアトリエシリーズの見習い錬金術士達や、「あやかし忍伝くの一番」の葉隠楓等が該当します。
もちろん、3のタイプも主人公には違いないのですが、この研究では、彼女達に関しては、無視することにしましょう。通常、ギャルゲーの主人公として取り上げるべきなのは、1か2のタイプ。3はあくまでヒロインとして、考えるべきでしょうから・・・。
そして、1と2二つのタイプですが、1のタイプの主人公に関してはパラメーターのようなものが無く、名前も固定されていて、境遇や性格もきちんと設定されているケースが、ほとんどです。逆に2のタイプの場合は、パラメーターが存在し、名前は自由に決められて、境遇や性格については、ほとんど語られないケースが多いのですが、両者はそのゲームの内容によって、住み分けが出来ていると言っても過言ではありません。つまり、ストーリー重視のアドベンチャーなら1のタイプ、ゲーム性重視のシミュレーションなら2のタイプというわけです。
では、なぜこのような住み分けが発生するかということですが、アドベンチャーとシミュレーションの違いを考えれば、その答えは明白です。ストーリーを重視するアドベンチャーでは、主人公は正真正銘、物語の主役を務めなくてはなりません。当然、境遇や性格もきちんと決めておかないと、物語を作る上で、大変な支障を来たすことになってしまうのです。一人暮らしか家族と同居してるのかもわからないし、陽気なのか陰気なのかも不明。そんな人物を主人公にしたのでは、物語をどう展開すればいいのか、見当がつかなくなってしまうでしょうから・・・。
逆に、ゲーム性を重視するシミュレーションでは、主人公をきちんと設定することは、ゲームの性質上、不可能です。なにしろ、主人公がどのような人間になるのか、成績はどうか、運動はどうか、デートの約束はきちんと守るのか、ふたまたかけたりしないのか、それらは全てプレーヤーの意志によって決まるわけで、最初に決めるわけにはいかないのです。これでは主人公に関する設定は、必要最小限のものにせざるを得ず、境遇や性格についても、大まかな枠だけ決めて、後は無視するしかないでしょう。
このように、あらゆる点で対照的な二つのタイプの主人公ですが、その昔、「ときめきメモリアル」が大売れしていた時代には、2のタイプの主人公が、ギャルゲーの主流を占めていたものでした。この時期、ギャルゲーの主人公とは、単にプレーヤーの分身に過ぎず、彼ら自身が自己を主張する場面は、無いも同然。そのため、名前も性格も特技も不明で、会話の受け答えも平凡そのもの。そんな顔の見えない主人公こそが、ギャルゲーの最も一般的な主人公だと思われていたのです。
これはRPGなどでも同じで、実際、昔のRPGの主人公は、ギャルゲーの主人公に似て、まるで顔の見えない存在でした。名前も「ひろし」だとか「たかゆき」だとか、プレーヤーの名前をそのままつけるのが一般的で、主人公自身の台詞は無いか、ごくわずか。無論、設定も単に伝説の勇者の子孫だとか、冒険好きの少年だとか、大まかな枠組みが決まっているだけで、後の部分は、ほとんど無視されるのが、普通だったのです。
では、何故このような主人公が主流になったのかということですが、これは当時のゲームの性質を考えれば、すぐにわかります。この時期、RPGもギャルゲーも、単にプレーヤーをして、バーチャル空間での擬似体験を楽しんでもらうだけのものに過ぎませんでした。つまり、ゲームの主人公イコールプレーヤーなのですから、主人公の設定を固定するなどもってのほか。主人公はなるべく顔の見えない存在であった方が都合が良く、そうであるからこそ、プレーヤーが自分で冒険の旅をしている(あるいは恋愛をしている)ような気分に浸ることが出来たわけですから・・・。
ただ、こういう顔の見えない主人公は、RPGでもギャルゲーでも、すでに過去の存在となりました。それというのも、プレーヤーが単にバーチャル空間での冒険の旅や擬似恋愛だけに満足していた時期は、とうに過ぎ去って、今はRPGでもギャルゲーでも、密度の濃いストーリーが、求められるようになって来たからです。こうなると、顔が見えない故に、ストーリーの作れない主人公の出番は無く、代わって名前も境遇もきちんと設定された本当の意味での主人公こそが、求められるようになるというわけですね。
そして、この顔の見える主人公こそ、この研究で取り扱うべき、主人公なのです。彼らはプレーヤーの分身ではありません。無論、ゲームの主人公なのですから、プレーヤーの代理的な存在を果たすのは当然なのですが、ただ、彼らイコールプレーヤー、ではないのです。彼らには彼らの名前があり、考えがあり、境遇があり、過去があり・・・。それらは必ずしもプレーヤーのそれとは一致せず、場合によってはプレーヤーの意志など無視して、彼らが勝手に話を進めてしまうケースも発生します。こうなると、彼らは彼らで独立したキャラクターとみなさざるを得ず、とてもプレーヤーの分身などとは、呼べなくなるでしょう。
それで、そのような主人公達ですが、彼らはひとりひとり様々な特徴を持っています。ただ、大まかな部分では、共通することがあって、特に最大の共通点とも言えるのが、彼らはいずれも常識では考えられないほど女(それも男と見れば誰にでもとびつくパー女ではなく、身持ちの堅い魅力的な女性ばかり)にモテまくるという点です。
これは物語のリアリティという点では、明らかに変なのですが、実際、ゲームをプレイしていると、大して変だとは思いません。無論、出来の悪いゲームはこの限りではないのですが、いずれにせよギャルゲーの主人公が、女にモテまくるというのは事実。と、なると、ひとりひとり事情の異なる彼らについて論じる場合、この最大の共通点に的を絞って論じて行くというのが、もっとも効果的なやり方になるでしょう。具体的には彼らは何故モテるのか、その理由を様々な角度から検証していくわけですね。
それでは、次項からは、ギャルゲーの主人公が何故モテるのか、その理由について、様々な角度から考察してみたいと思います。
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