千代鶴(ちよつる)
―中村酒造場―
■これぞ地酒
今僕が、“東京の地酒でいちばん好きなのはどれですか?”と問われたら、たぶん「千代鶴」と答えるだろうと思う。
それは個々の商品の味を比較してのことではなく、いろいろな要素を総合した結果としてである。つまり、
全国的な知名度は今ひとつだが、地元への浸透度は申し分ない。
商品構成が豊富で、特に普通酒アイテムが充実、しかも糖類添加してない。
もちろん、カップ酒もある。
マニアック度合から他地域の皆さんに喜ばれそうなのは「日出山」や「喜正」あたりかも知れないが、僕が考える理想的な“地酒”のあり方にもっとも近いのは「千代鶴」である。
とにかく、秋川(あえて“あきる野”とは言わない。五日市地区は「喜正」ががっちり市場を押さえているから)を中心とした多摩地域における「千代鶴」の浸透度は素晴らしいのひとことに尽きる。一般の酒屋さんはいうにおよばず、スーパーの酒売場とかに「千代鶴」のいろんなアイテムが大量に置かれているのである(一般的に、多摩のスーパーは地元の酒を大事にしているけど)。
そして、カップ酒。ここ多摩地区も例外でなく酒自販機はかなり撤去されたが、それでも稼動している自販機の設置数を見ると「千代鶴」のそれは「多満自慢」といい勝負、あるいはそれを上回っているかもしれない。このことは、蔵元が単にコツコツと酒造りをしているだけではなく、“いかに売るか”をよく考えているかを表わす指標になっている気がする。変にマスメディアに媚を売ったりしていないのも好印象だ。
■感動! 普通酒の充実ぶり
今回↓で紹介する商品を購入したのがJR五日市線秋川駅から徒歩3分くらいの「東急ストアあきる野店」。
早速酒売場をチェックする。おおっ、あるある、というか、これは凄いぞ。ほとんどコンプリートの品揃えなのでは。
普通酒が、佳撰(四段仕込)と辛口の佳撰と上撰辛口と超辛口、つごう4種類。
本醸造と特別純米酒、各1アイテム。
中吟と純米吟醸と大吟醸、各1アイテム。
それに粕取焼酎。以上が常温販売。
そして冷蔵庫には純米酒と純米吟醸、それぞれの生酒とゆず酒(リキュール類)が・・・。
スーパーでこれだけ揃えているというのは(管理状況はさておき)かなり凄いといえよう。
そしてやはり特筆すべきは普通酒の充実ぶりだろう。多摩地区の蔵元は通常の普通酒の他に「辛口」を出しているところが多いが(このことは当地区の酒の本来の酒質が旨口指向であることを意味しよう)ここでは上撰・佳撰それぞれの辛口のその上にさらに「超辛口」があるということは、多様な普通酒の飲み手の嗜好を考えてくれているということだろうか。今や普通酒の存否自体が問われる時代だから蔵元のこういう姿勢を評価しない方もいると思うが、“特定名称充実→普通酒少々生産→糖類入り”の図式に当てはまってしまう蔵元と比べたら、「千代鶴」はほんと素晴らしいと、個人的には思うのである。
■飲んでみました
千代鶴 本醸造 あきる野
そういいながら本醸造を紹介するのもなんだが、普通酒は既にカップ酒ギャラリーで紹介しているので。
いちばん安い佳撰の4合瓶は660円で買えるから、1010円(税抜)の本醸造はなかなかの贅沢品といっていいだろう(一般的な本醸造の相場から考えると少し高いし)。
さてこの本醸造、はっきりとしたスペックがわからないのだが、上の手の商品が酸の少ないものが揃っているので、冷や向きのスッキリ型を想像して飲んでみた。
正解。冷やだと綺麗ながらほどよい旨味。よく味が乗っているなあと感じる。
一方、燗をつけても味に広がりがなく、むしろ冷やでは感じない雑味がちょっと頭をもたげる感じ。
つまりこの酒、冷やして飲むべし。
千代鶴 純米生酒
上記のとおり、(吟醸でない)純米アイテムには火入れのものと生酒とが置いてあった。どちらを買おうか迷った末、出荷月の新しい生酒を選んでみた。
この商品、というか「千代鶴」の生酒の大きな特徴は、ラベルを貼らずに瓶に直接銘柄等が刷り込まれている点にある。日本酒ではあまり例がないような気がするが、冷蔵販売を前提とする酵母が生きてるタイプのビールではよくあると思う。どうしてだかはよくわからないが、冷蔵→常温になる際にラベルがべたついたり剥がれたりするのを避けるということかも知れない。
値段は1060円(税抜)。
さて、最初の1杯は生酒のお約束で最初はよく冷してのんでみる。
おー、吟醸酒のような華やかな香りがするぞ。味も爽やかで、生酒の魅力を堪能できる一本である。
ところが、諸般の事情があり、栓を開けてから1週間近く、飲む機会を失してしまった。生酒だけにこれは危険である。しかしとにかく再びよく冷やし、恐る恐る口をつけてみたら・・・まったく別の酒に変わってしまっていた。完璧な老ね。世の生酒の中には1週間くらいではびくともしないものもあるにはあるのだが、「千代鶴」の生酒は実に繊細なのであった。
もう冷やではとても飲めないので、ここは大博打を打って燗をつける。そしたら、だ。見事息を吹き返したのである。いわゆる燗上がりタイプのそれではなく、吟醸酒に燗つけたような味になるが、これはこれで美味しくいただけた。ほんのちょっとした温度変化で生きも死にもする、これだから日本酒は面白い。
■1日ゆっくり過ごせる場所
その日(9月中旬)僕は、東京サマーランドに行こうと思っていたのだった。
サマーランドといえば「千代鶴」の蔵元からもさほど離れていない(歩くとちょっときつい距離だが)。暑い日ではあるが別にプールに入るわけでなく、とにかく館内でちょっとなんか食って、その後秋川の街に出て「千代鶴」をゲットしようと目論んでいたのである。
が、八王子駅のバス乗り場に着いた途端、その計画は木っ端微塵に砕け散った。
サマーランド方面行きの乗り場にはバスを待つ家族連れの列・列・列・・・。
そう、今年の関東の夏は8月が大冷夏だった代わりに9月になって猛暑がぶり返していた。しかもその日は休日、絶好のサマーランド日和である。こりゃあ俺のような淋しい男がサマーランダーのみなさんの邪魔をしてはいけないと思い、予定変更。八高線・五日市線と乗り継いで秋川駅で下車。
| もちろん秋川駅前にもサマーランダーはいた(八王子はこの3倍)。 |
駅周辺で「千代鶴」を買い求めるにはあきるの東急SC(上述)が好適であろうというのは見当がついたので、駅前大通りを歩いて向かう。いや、その前に昼飯食おう。たしか左手にラーメン屋があったはずだな。お、あったあった。つけめんが名物みたいだな。そこそこ客の入りもいいようだし入ってみるか・・・。
(店の名前はネットで調べりゃすぐわかると思います。実際、俺が入店した〔すぐ座れた〕直後から行列ができたくらいで、味は上々、つけめんを食い終わった後に残ったつけ汁をスープで割ってくれるのは八王子のつけめんの名店と一緒だな)
腹いっぱいになったところで、改めてあきるの東急SCへ。それにしても、暑い。
店内に一歩足を踏み入れると、冷房がよく効いていてほっとする。
一息ついたところで店内チェック。
本屋が、結構広い。
ゲームコーナーも、結構広い。
一休みできるいすが、あちこちにある。
店内にドトールがあり、テラス席でマターリできる。
さらにこのドトール、メニューにピザがある(ごくまれにそういう店舗見かけるが、珍しいことに変わりはない)。
つまり、である。
この、あきる野東急SCというところ、周辺の昼飯環境も考えると、1日ゆっくり過ごせる場所といえるかもしれない。
しかも「千代鶴」は買い放題、飲み放題だし、この街で暮らすのも悪くなさそうである。