曽我の譽
―石井醸造(株)―


■神奈川酒の良心
 そもそも「曽我の誉」のカップ酒を探してみようと思い立ったのは我ながら好判断だったと思う。ことのきっかけは「智恵袋」のところでも紹介した、小田原駅にほど近いコンビニでかつて売られていた石井醸造製の「酒匂川」銘の三増カップを昨年から店頭で見かけなくなったことである(「酒匂川」三増カップは現在相田酒造店が引き継いで製造している)。もしや石井醸造では三増酒造りを止めたのではないかと。
 この期待に関してはまだ完全に解明されたわけではない。石井醸造のカタログやホームページ(自社制作ではないが)にはいまだ「酒匂川」が載っている。しかし、この半年ほど蔵元周辺の酒屋をずいぶん回ってみたが、少なくとも同社の三増アイテムはまったく発見できなかった。これは期待してよさそうだ。
 にもかかわらず、神奈川県内でここの酒をフィーチャーする酒屋はちっとも現れない。無論三増酒やめたイコール酒質向上≠ナは必ずしもないことはわかっているが、こういう高い志をもった蔵元を育てて行こうという気概のある酒屋はないものか
 その代わりといっていいのかどうか、「曽我の誉」の地元浸透度は極めて高い。同じ大井町に蔵を構える「箱根山」が海外をはじめとした地元圏外への拡販を行ってきたのとは対照的といえる。大井町、それに酒銘のいわれでもある小田原市の曽我地区ではごく一般的に売られている酒である。
 以前日記でほんの少し触れたことがあるが、昭和47年刊行の山本祥一郎著『日本の銘酒地図』(阿部写真印刷(株)出版局刊、たぶん入手かなり困難)で山本氏は蔵元を訪問している。とはいっても酒質に惹かれてというわけではなかったようだが、山本祥一郎、若かりし頃より目利きは確かだったということか。
※以上は2001年の記述。2003年現在、石井醸造は自前のホームページを立ち上げ、その中で完全無糖加≠宣言している。よかったよかった。

■下曽我駅前のコンビニ
  「曽我の誉」のカップ酒なんか紹介してるホームページは拙サイトだけだと思ってたら他にもあった。作者の方は曽我梅林周辺の山を歩いて帰りの電車の待ち時間に買い求めた模様。買った店がJR御殿場線下曽我駅前のコンビニ酒屋だったそうな。
 僕がカップ酒を買い求めたのは大井町内の、極めて場所の説明の難しいところにある酒屋だったのだが、この下曽我駅前のコンビニというのはちょっと興味が湧いたので久々に下曽我まで行ってみようと思い立った。
 御殿場線は今やローカル線に成り下がってしまったが戦前は東海道線の一区間だったわけで、その名残か今も松田や山北、それにこの下曽我の駅前には古めかしいが雰囲気のいい商店街が延びている。沿線にはまだ案外日本酒の蔵元が残っているのも好印象である。
 さて、件のコンビニ(ヤマザキYショップ)、「曽我の誉」の各アイテムはもちろん、「箱根山」あたりもよく揃えている。コンビニ(といっても今でも『内山酒店』という看板を残している)でここまで地酒を揃えれば立派のひとことである。余談だがヤマザキ系の酒ありコンビニって以外と地元の酒をきちんと置いてるところが多いんだよね。弁当はいまいちだけど。
 さてさて、目的の「曽我の誉」、カップ酒はもちろん普通酒の各アイテムも充実の品揃え。純米酒はきちんと冷蔵庫内で売ってるぞ。それに季節商品(訪ねたのは3月)、おり酒(にごり酒)も売ってるぞ。まあにごり酒ってあんまり好みじゃないのだけれど、値段の奇跡的な安さと(下に記す)活性清酒≠ニ書かれたラベルに惹かれて、前記純米酒と共に買ってしまった。
 店長とおぼしきおじさんは物腰が丁寧でおり酒を袋に入れながら『横にして運ばないでくださいね』とか『飲む前におりを混ぜてくださいね』とか(この時は活性清酒なのにおかしいな≠ニ思ったのだが)さりげないアドバイスをくれる。地酒屋の店主で俺が旨い酒飲ませてやってんだ%Iエラソーな態度のに当たるとほんと腹立たしく思うのだが(だからマニアはそういう店主のいる専門店にはほとんど買いに行かないのだけれど)ここの店長さんはそういう偉ぶったところは全くなし。コンビニといっても家族みんなで力を合わせてやってますといった雰囲気もよろしい。
 いい店だぞ、ヤマザキショップうちやま。みなさんも曽我梅林見物ついでに是非お立ち寄りを。



■飲んでみました
 佳撰カップ酒のことについては『ギャラリー』に書いてるのでそちらを参考にして。レギュラーの普通酒はもち米使用の四段仕込みにより濃醇甘口なのが特徴だが、辛口の普通酒も出している。

曽我の誉 おり酒
 普通酒のにごり酒である。4合入りで値段がお、驚きの660円! いくら普通酒とはいえ安過ぎだろう。おそらくにごり酒は季節限定、かつ地元流通限定ゆえ、地元の愛飲家に対する感謝価格なのだろうと推察される。それにしても安い。
 さて、ラベルには『活性清酒』と書かれている。活性というと「神亀」あたりでおなじみの、栓を開けたとたん中身がジュワッッと溢れてくる、ああいう酒だと思っていたのだが。
 ジュワッとはこなかった。つまり、普通のにごり酒。
 もしかしたら、購入後常温下を何時間も持ち歩いたので活性だったのが活性じゃなくなったんだろうか。よくわかりません。でもコンビニ店長のおじさんが『おりをよく混ぜて飲むこと』と言ってたのは間違いでなかったようだ。
 でも、普通のにごり酒としてもこれは上出来だと思う。僕のにごり酒の評価基準はいかに酸味を感じるかにあり、酸味のないにごり酒はただドロドロしてるだけで飲めたものではないと個人的には思う。しかしこの品は酸味がしっかりあり、酒の中に舌を浸していると(人前ではみっともないのでしないように)ちょっぴりピリピリ感があるのもいい。
 いずれにせよ(しつこいようだが)この価格でこの味なら大満足。「曽我の誉」自体が地元以外で見つけるのがかなり困難な酒だが、この「おり酒」は本当に蔵元周辺数km以内でしか購入できないのでは。









SOGANOHOMARE 純米酒
 見よ、このクールなデザイン(笑)。一生懸命オシャレに作ってみました、って感じなんだが、オシャレになり切れずに野暮ったくみえるのがかえって好印象。
 裏ラベルには『経験豊かな越後杜氏と若い力の融合により、爽やかな酸味と柔らかい口当たりの洗練された新しい酒をつくり上げました。』とある。日本酒度+1.0、酸度1.2というのは純米酒にしてはかなり淡麗な造りといえよう。
 とあれば燗よりは冷や向きかなとの推測どおり、はっきりいって燗上がりしない。常温だと口当たりはいいが(その分純米らしいコクには欠ける)切れがもうひとつ。ではとちょっと冷やして飲むと、これは結構いけます。日本酒度プラス1ってのはほとんど甘口の領域に入れていいような気が個人的にはするのだが、たしかにほのかな甘味を感じる。切れの悪さも冷えてると気にならない。タイプとしては「黒牛」あたりと似てるかな。
 純米のグッとくる押しの強さや燗向きの酒を求める向きにはあまりおすすめできないが、純米でも冷やで(ボトルのデザインからしても蔵元が冷や向きを想定してるのは明らか)ぐびぐびやりたい人にはグッドマッチだと思います。
















箱根のしずく 本醸造生貯蔵酒
 2003年に小田原駅の橋上駅舎がとりあえず完成し、改札外にそこそこまともな土産物屋ができた。そこで売られている本醸造生貯蔵酒。300ml入りで396円(2004年4月購入)。
 ちょっと気になったのはこの銘柄。石井醸造のある大井町のもうひとつの蔵元・井上酒造のメイン銘柄が「箱根山」であり、“箱根”の呼称は同社の専売特許的存在だったからである。両社の間で話し合いが持たれたのか、それともそのへんはクールに割り切ってやっているのか、興味あるところである。
 ラベルを見る。アルコール分15〜16度、生貯の場合往々にして度数下げてることがあるがこれはそのようなことなし。精米歩合70%をきちんと表示しているのは偉い。出荷年月は2004年4月、まだ店頭に並んで新しい商品である。
 さて、生貯だしとりあえず冷やして飲むのがいいかな・・・と思い1本空けてしまったわけだが・・・案外燗したら旨いのかも、なんて飲み終えてから感じた。普通酒との差別化はきちんとできているのだが、爽やかというほどでもなく、特に冷たい状態だとやや味わいに欠ける。かつて飲んだ普通酒のカップ酒がそうだったように、燗つけると旨味が乗るのかな、なんて気がした。








■追悼・トーヨーボウル
 極ローカルネタですみません。「曽我の誉」の蔵元のある神奈川県足柄上郡大井町には昨年までトーヨーボウルなる、ちょっと有名なボウリング場があったんですよ。
 どれくらい有名だったか、数年前の町民意識調査から紹介しよう。
Q.大井町の名物は?
A.1位 ひょうたん  2位 トーヨーボウルのサーチライト  3位 第一生命本社
Q.大井町のオススメ観光スポットは?
A.1位 いこいの村あしがら  2位 トーヨーボウル  3位 乗馬クラブ
Q.大井町のオススメデートスポットは?
A.1位 トーヨーボウル  2位 255号沿いのファミレス  3位 夜の相模金子駅

 個々についてはいちいちコメントしないが、トーヨーボウルが町民にいかに愛されていたかがおわかりになろうかと思う。かくいう僕も4つか5つの頃に一度だけ(当時小田原市民だったか隣町の開成町民だったか、記憶は定かでない)家族で出かけたことをおぼろげながら覚えている。当時は国をあげてのボウリングブームのちょうど末期だったと思う。ブームが終焉を迎えると全国のボウリング場はバタバタと潰れ、大部分はパチンコ屋に鞍替えした。トーヨーボウルもパチンコ屋を併設したもののボウリング場は潰さずに残した。素晴らしい事である。後に大井町には東京スターレーンなる第二のボウリング場が誕生したが、やはり大井のボウリング場といえば老舗・トーヨーボウルで決まりだった。
 そしてもうひとつ、ここの名物が上記調査にも登場したサーチライト。夜になると光の帯がクルクルと360°回転して周囲を照らし出す。近隣の住宅にとってははた迷惑な話だったろうが、あれは強烈なランドマークだった。

 そんなトーヨーボウルが、併設のパチンコ店ともども昨年潰れてしまった。東京スターレーンとの抗争に敗れたということなんだろう。僕にとってもちょっと思い出のスポットだっただけに悲しい。
 どうやらちょうど1年前くらいに潰れたらしい。その跡地がどうなったか、私めが視察して参りました。結論からいいますと、荒れ果ててます。その姿はさながら、乱世を生きぬいてきた巨大戦艦のごとし。

田んぼに隣接したナイスなロケーション。 さらに近づくと梅の木が。
既に荒らしの落書きが・・・。 ボウリングで愛を育てよう!!・・・ 入口には有刺鉄線が・・・。


※前記『町民意識調査』はマニアのでっちあげであります。当然っしょ。

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