酒が好きで、仕方がない。



 遠くに行くことが好きなものだから、日帰り・泊まりにかかわらず、高速バスを利用する機会は多い。
 ただ、以前に比べるとその利用率は減ってきたと思う。
 それは、鉄道のように車内を自由に歩き回ることができないので長時間乗っているのが窮屈に感じるようになったのも(太ったから)理由のひとつであるが、時折ニュースを賑わせる、高速バス絡みの事故・事件の報に接するとしばらくはバスを遠ざけるようになってしまうことも大きな要因として挙げられる。
 バスジャック事件、自家用車に巻き込まれての死傷事故、そして運転手の飲酒運転・・・。
 そう、先月のJR関東高速バス運転手の酒酔い運転事件、とにかく飲んでた量が半端じゃなかっただけに、世の中こんなこともあるのかと、ちょっと驚いたものである。
 高速バスの場合、一部の路線を除いて一度乗ったら最後、目的地まで運転手に命を預けねばならない乗り物である。しかも、客の座っているところからは運転席が見えないタイプの車種もある。
 これは考えてみたら、なかなか怖いことである。
 まあ、多かれ少なかれ公共交通機関を利用するには危険が伴うものなのだろうが、バスの場合客と運転手との距離感が微妙に近い分、何か恐怖感が水増しされる気がする。
 しかし、僕が今興味を持っているのは、この酒酔い運転手が漏らした一言である。

 「酒が好きで仕方がない」

 そんなに酒好きな人間が運転手やるなよ、と突っ込みたくなる気持ちも少しだけある。
(僕は運転免許を持っていないが、その理由のひとつとして“好きなときに飲むことができない”というのがある)
 しかし、それはそれとして、彼が勤務中にどういう心境で飲んでいたのかは、非常に気になるところである。
 一説によると、前の晩飲み過ぎて二日酔いがひどいので“迎え酒”をしていたという噂もあるが、それにしたってあんまりな行動である。
 無論、彼の行為は断じて許されるべきものではない。
 しかし、“酒が好きで仕方がない”彼がどうして勤務日前日の晩にしこたま飲んでいたのか(楽しくて飲んだのか、自棄酒だったのか?)、どうして自分を抑えることができなかったのか、その心理面はきちんと調査すべきであろう。
 そして、僕だって、いつ、彼のような暴走行為をしでかすかわからないから、必要以上に彼を責めたてることはできない。

 それは僕自身、酒が好きで仕方がないからだ。




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