正雪(しょうせつ)
―(株)神沢川酒造場―
■完全無欠だと書くネタがない
うーん困った。「正雪」のことである。もう、完璧すぎるのである。
大吟醸をはじめとした高級酒の評判はいうに及ばず、普通酒にいたるまで非常に質の高い商品を送り出している。
ちょっとマニアックな全国のファンを念頭に置いた商品群を揃える一方で、地元の愛飲家を大事にしているので地元シェアはとても高い。
カップ酒もあちこちで売っていて、しかも旨い。
まあ強いて難点をあげるとすれば、静岡には他に凄い蔵元がたくさん存在するため、あまり積極的に情報を収集していない普通のお酒好きのみなさんの間での認知度が今一つ低いことだろうか(別にそれはそれでいいと思うけど)。
ただし、ここに至るまでの道のりは決して平坦ではなかったようで、聞くも涙、語るも涙の逸話も残っている(静岡新聞社刊『地酒をもう一杯』参照のこと)。
■蔵元前の自販機がなくなってた!
タイトルの通りです。以上。ってわけにゃあいかないか。かつて蔵元の前にはカップ酒自販機が置かれ、220円の上撰(黒ラベル)と200円の金紋(青ラベル)が仲良く売られていて、地元のみなさんの利用に供していた。よその蔵元の場合、この20円の差は品質に大きく影響することが多いが、幸か不幸か「正雪」の場合200円の金紋が旨すぎるため、上撰のほうはあんまり売れてなかったような記憶がある(自販機横に並べられた空きカップのラベルがほとんど青だったような気が)。
僕がこの自販機でカップ酒買い求めたのが1998年4月(もう4年も前になるのか・・・)、その後いつ自販機が撤去されたかわからないが、カップ酒自体は今でも町内の酒屋や観光施設で絶賛発売中である。しかし、黒ラベルの方は見かけなくなったような気も・・・。
■飲んでみました
正雪 本醸造生
上でも簡単に触れたが、「正雪」の商品構成は地元で普通に流通している定番商品と県内外の地酒専門店が好んで扱うちょっとマニアックな商品群に大別されるようだ。
たとえば本醸造生酒に関していえばネットとかでよく見かけるのが「山田錦特別本醸造生」(1升2000円、4合瓶はないみたい)、地元でよく見かけるのがこの本醸造生(4合970円)。で、当ページのポリシーとして当然の如く安い方を飲む。でも、高いやつも飲みたいよー。
ちなみに今回「正雪」のアイテムを購入したのは国道沿いにある『ゆい桜えび館』(後述)。普通酒(含カップ酒)や純米酒は常温販売だが、吟醸酒や生酒は冷蔵庫で売っている。
さて、生酒ゆえ升で飲んでみよう。うん、旨い。アルコールもちょっと高めでよろしいし、甘味もある。驚くべきは生酒であるにもかかわらず、開栓してから日がたっても味が落ちないこと。特に開けたてよりも開栓3日目くらいの方が甘味が乗って旨く感じたぞ。いずれにせよとにかく、旨い。こんなお酒を始終飲める由比町のみなさん、幸せ者。
ただし、ラベルには工夫の余地ありか。
正雪 純米
純米アイテムもいろいろあるようだが、こちらは地元でよく見かける普通の純米酒。『ゆい桜えび館』で1200円(税抜)で購入。冷蔵ではなかった。
さて、どちらかというと地味目な印象のある「正雪」の純米酒だがそれでも「正雪」だけに期待して飲んでみたのだが、どうもちょっと土っぽい味がするなぁ。燗をつけると若干飲みやすくなるけれど、トータルの印象はあまり変わらない。常温下に置かれたのも影響してるのだろう。
他の蔵元の純米酒と比べて特に劣るというわけではないけれど、やはり「正雪」の純米酒というと過度な期待をかけてしまうわけで、お酒の評価というのは飲む側の期待値に左右されるものなのだなあと改めて思う。それにしても、以前飲んだ純米のしぼりたても自分的にはもう一息だったし、どうも「正雪」の純米系アイテムとは個人的に相性が悪い。
■
さくらえびの街、由比
とりあえず、由比といったらさくらえびである。
電信柱にも、
銀行の駐車場にも、さくらえびが住みついている。
このさくらえびちゅー奴、なかなかのくせ者で、年2回、合わせて数ヶ月しか収穫でき
ない(してはいけない)らしい。したがって、普段私たちが口にするさくらえびといったら、干したやつをかき揚げとかの具にしたやつばかりである。それはそれで旨いけれど、男たるもの(男でなくてもいいが)やはり生のさくらえびを喰いたい。それにはもちろん、漁が行われている時に喰わなければならないはずだ。
ところで、最近は輸送技術や冷凍技術が発達しているので、東京あたりでも生≠フさくらえびを置いてる店もあるようだが、一度冷凍して解凍したものを生≠ニ呼んでもいいものなのか(一度火入れした生貯蔵酒なのにラベルに生≠ニ大書されてるのと同ランクな気も)。すなわち、水揚げした地元で喰うべきであろうということだ。地元ならよもや台湾産のさくらえびを掴まされることはなかろう(自信度65%)。
つまり、私がここで何を訴えたいかというと、さくらえびの収穫期にさくらえびの地元・由比まで生のさくらえびを食べに行ってきました、ということである。ちなみにここを読んで生のさくらえびが食べたくなったあなた、残念ながら今(7月)は禁漁期です。秋まで待ってネ。
さてさて、それではどこでさくらえびを喰うべきか。高級料亭風の店から小洒落たレストラン、はたまたスマル亭まで店数々あるが、ここでは『ゆい桜えび館』をおすすめする。いわゆる道の駅風の、地場産品の販売(当然、シーズンには生のさくらえびもある)と食堂『桜えび茶屋』等のある施設である。で、ここの食堂、ぱっと見は風采が上がらない印象もあるのだが、実はここ、倉沢(由比駅をはさんで向こう側、東海道の難所・薩タ峠(タの字が出せないよ)の手前にある割烹『倉沢屋』の支店だから侮れない。こちらの支店はそばをメインに出しているようだが、そば自体よりやはりさくらえびに目が行ってしまう。
店内のメニューが写真つきなので、生のさくらえびが付いてくるものを慎重に選んだ結果、ちょっと高いけど桜えび茶屋定食(1300円・たしか税抜)を注文。
待つことしばし、生さくらえびと感動のご対面。ふーん、思ってたより身が大きいんだね。普段干からびたやつしか見たことないからなあ。さて、小鉢から一尾箸でつまみ、しょうゆをつけて口に含む…味の系統としては甘えびに近いものがあるが、さくらえびの場合しっぽだの触角だのも一緒に食べてしまうので独特の食感がある。いずれにしても旨いわけだが、これ、ご飯のおかずというよりは酒の肴だなあ。「正雪」の大吟醸あたりと合わせてみたいっす。
この他そばに付いてくるさくらえびのかき揚げも、一般的なかき揚げとはかなり違った感じで(かき揚げ中さくらえび占有率約75%)これまた旨いです。
それにしても、こういうオンリーワンの名物のある街って、いいですねえ。