【番外】酒田錦(さかたにしき)と舞姿(まいすがた)
―瀬戸酒造店(株)&舞姿酒造(株)―


■委託醸造(もしくは、集約製造参加)のはずなのですが・・・。
 最初にお断りしますが、今回報告する2銘柄については、現地を訪ねただけで、買ってないし飲んでません。
 元々「酒田錦」「舞姿」については自醸していない≠ニ頭にインプットされていたのではなからオミットするつもりでいたのだけれど、ちょっと気になることが出てきたもので、一応蔵元まわりをチェックしておこうという気になったのである。
 実は私、今年初めて(株)醸界タイムス社の「全国酒類製造名鑑」を購入したのである。この名鑑には全国の酒造場の製成数量が掲載されていて、なおかつ集約製造参加の蔵元や休造中の蔵元はそれぞれ(集約)(休)と表示されているので、今どの蔵元が稼動していて、どれだけの量を出しているかが一目でわかるはず・・・なのである(*)。
 そこで我が神奈川県のページを開くと、ん?自醸していないはずの「酒田錦」「舞姿」の年間製成数量欄、それぞれ「44」「11」(単位はkl)と表示されているではないか。
 実は他県のページをめくっても「ここ委託なんじゃなかったっけ」て蔵元に同様に製成数量が記載されていたりして不審に思ったのだが、いずれにしても実は自醸しているなんてことだと大変である。とにかく現地視察することにした次第である。

■「酒田錦」(開成町)
 まず足柄上郡開成町、「酒田錦」の(株)瀬戸酒造店から。
 前にも書いた記憶があるが、私5〜8歳までこの町に住んでいた。開成町というのはものすごく面積の狭い自治体なので、幼年時代とはいえ、町の全域についておぼろげではあるが記憶がある。
 小田急新松田駅(マニラ食堂前)から関本(=伊豆箱根鉄道大雄山線大雄山駅)行き箱根登山バスに乗り、酒匂川を渡るとそこは開成町。新松田→関本の路線のみ旧道経由と新道経由があり(旧道の道幅がとても狭いため往路のみ旧道経由があり、復路は新道経由のみ。30年後現地を訪ねて何が驚いたって、幼年時代の自分にはいっぱしの大通りであった旧道がこれほどまでに狭い道だったこと)新道経由で「四ツ角」で降りるのが一番近い(ただしいい感じなのは旧道経由、狭い道を揺られて新道と同じ「四ツ角」で降りても徒歩5分くらいの違い)。ここから山北方面にとぼとぼ歩いて行く。以前は山北〜開成町〜小田急線栢山駅を結ぶ富士急のバス路線があったのだが(といっても1日5往復くらいだったけな)数年前に廃止。歩くよりほかに手段はない。
 しかし、これが実に素晴らしい、日本の田園風景なのである。道幅が狭いところへ車の量が案外あるのが難だが、天気のいい日にぶらぶら歩くと気分は最高である。
 20分くらい歩いただろうか。左手に、いかにも蔵元な建物が見えてくる。

 隣が直売所、というか「瀬戸酒店」という酒屋さんである。
 酒造の建物を、住居侵入にならないぎりぎりのろころまで近づいて目を凝らす。杉玉がさがっているわけでなく、「瀬戸酒造場」という看板がかかっているわけでもない。この2点だけで造っていない≠ニ断言するのは危険であるけれど、私の眼には、今この場で酒造りが行われているようには見えなかった。
 酒屋に眼を移す。

 ドア横に新酒粕 出ました≠ニ張り紙がしてあるのが気になるが、でも出来ました≠ナなく出ました≠ネところが怪しい。
 店内では「酒田錦」の1升瓶、300ml瓶、それにカップ酒も置いてあるようだ。結局店外から眺めただけで買わずに帰ってきてしまったが。

 ちなみに、蔵元からほんの少し手前の地では、当地区の名主・瀬戸家(蔵元と何らかの血縁があるにちがいない)の江戸時代からの屋敷・あしがり郷瀬戸屋敷の整備工事が進んでおり、来年には整備が終了して町の新たな観光スポットとして公開されるそうだ。その際は是非「酒田錦」を販売してほしい、願わくば自醸のものを・・・と思うのですが。

 
■「舞姿」(南足柄市)
 もうかなり前からメルシャンとの集約製造に参加しているはずの「舞姿」ではあるが、楽天に直販サイトを出していたり(実際に出展しているのは小田原にある「舞姿商店」。蔵元との姻戚関係は不明)県外の酒まつりに出展したり、なかなかアグレッシブである。なお、左記の楽天サイトにはちゃんと「集約製造参加」と書いてあった。なんだかホッとした気分。
 さて、蔵元へ行くには大雄山線岩原駅が最寄りになる。岩原はホーム片面(大雄山線の駅の大部分はそうだが)の無人駅。駅からは歩いて10分もかからないはずなのだが、マピオンで調べた地図のコピー片手に現地を訪ねたにもかかわらず、道に迷った。一度岩原駅まで戻り、そこから同じく10分くらいのところにある南足柄市立図書館へ(近くてよかった)。ゼンリン住宅地図で道順を確認する。やはり1本曲がる場所を間違えていた。
 ところが気になることが。住宅地図の当該住所のところを見ると、「舞姿酒造」とは書かれておらず、「(株)大やしき」と書かれているのである。大やしきって、なんだ? 同じく図書館内にあったハローページ(企業編)で「大やしき」を調べたら、(酒店)とあった。なるほど。
 三たび岩原駅に引き返し、再び蔵元を目指す。途中こんな案内板を発見。

 一応正門とおぼしき場所(看板とかはない)から覗いてみたら、かつて酒造をしていたと思われる建物はあったが、現在はひっそりとしていた。ただここで商品の貯蔵はされているはずであるが。
 で、大やしきといえば、これまた地味〜な住宅街の中の酒屋さんである。ただし、店頭には「舞姿」のカップ酒自販機が。

 カップ酒2種類(たしかどちらも無糖加)の隣に三楽焼酎ホワイトパック(メルシャン製)が並んでいるのはさすがである。ちなみに外から店内を覗いたところ、メルシャンワインのラックも見えた。これまたさすがである。店のおっちゃんと目が合ってしまったちょっとビビったが。
 ちなみに、自販機の上部に「生酒」というシールが貼ってあるが、カップ酒が生酒とは思えない。お店の遊び心でしょう。

※本項を公開してから約1か月半後の2004年4月下旬、驚いたことに舞姿酒造(株)の保田照雄社長より直々に、丁寧なメールをいただいた。メール内で私が本稿で疑問に思っていた点に対してご教示くださった。掲載の許可をいただけたのでその概要を記す。

・舞姿酒造(株)と販売会社(有)舞姿商店は、共に保田氏が社長を勤めている。
・「全国酒類製造名鑑」に製成数量が記載されていることについては、同社でそのような表明をしたことはなく、毎年神奈川県酒造組合からの組合費徴収票に、同社の未納税移入数量がそのまま醸造数量の基礎数値として使われているので、そこから転載されたのではないかと推測する。
・岩原駅から蔵元・「大やしき酒店」への道順については、岩原駅前にある(有)保田酒店(兄弟会社)に案内図を用意したい。

 社長さんからのメールには「消費者を迷わせるような実態があり申し訳ない」と書かれていたが、決して蔵元に落ち度があるわけではなく(直営販売店のホームページを持っていたり、その中で集約製造参加であることを表明していたり、むしろ限りなく良心的といえよう)、蔵元さんからメールいただく時には毎度のことながら、恐縮の至りである。保田社長さんはじめ関係者の皆様、ありがとうございました。
 ちなみに、あくまで推測であるが↑で「店のおっちゃん」と紹介した方が社長さんだったと思われる。たいへん失礼いたしました。


*「全国酒類製造名鑑」のデータについて
 この名鑑、個人的には非常に重宝しているのではある(高いけど)。各蔵の製造規模がある程度わかるし、甲類焼酎や合成清酒のデータがあるのもありがたい。しかし、「舞姿」のように集約製造参加しているのに製成数量が表示されていたり(たぶん酒造組合もしくは税務署のデータがそうなっているのだろう)、ある県のページでは半数近くの蔵元の製成数量が「未判明」になっていたり、もう一歩踏み込んだリサーチができないものかと残念に思う。
 もし拙サイトをご覧の方で同名鑑よりも詳しく各蔵の実態を知ることができる資料をご存知の方がいらっしゃいましたら御教示願えれば幸いです。



地酒の真実インデックスに戻る