盛升(さかります)
―黄金井酒造(株)―


■手広くやってます
 神奈川県に現存する蔵元は面白いことに小田急線沿いにうまいこと点在していて、かつ1市町村に1蔵元なのでシェアの奪い合いをすることもなく平和にやっている感がある(小田原「智恵袋」−松田「松美酉」−秦野「白笹鼓」−伊勢原「菊勇」−厚木「盛升」−海老名「いづみ橋」)。おかげで各市町村へ行けば確実に地元の酒を買い求めることができる。全国に地元で買えない地酒≠ェ多数存在することを考えるとありがたい話である。
 今回紹介する「盛升」は厚木の酒。厚木といえば古より県央部の中核都市であり、学園都市であり、観光都市である。「盛升」の蔵元、黄金井酒造もそのことを理解しているのか、多様なニーズに合わせて日本酒だけでなく粕取焼酎(ゴールドあつぎ・旗頭・・・こちらも評価高し)や最近は地ビールも造っている。清川村の宮ヶ瀬ダムの土産物屋で売ってるカップ酒はここの品だったと思う。

■神奈川酒のトップランナーへ(2004.6記)
 当ページの第1稿を書いたのが約3年前、あの頃は正直観光蔵元的なイメージを抱いていたのだが、状況が大きく変わってきた。
 平成14年より地元杜氏による造りにシフトした途端14・15酒造年度の全国新酒鑑評会で2年連続金賞受賞。ちなみに神奈川の蔵元でH15BY全国金賞受賞したのは「盛升」だけ(ほかに「相模灘」が入賞)。ここ数年神奈川の地酒として広く認知されてきたのは「丹沢山」「曙光(天青)」「いづみ橋」が御三家だったと思うが、それらを差し置いて堂々の栄誉である。
 無論、全国新酒鑑評会の結果だけを尺度として評価を下すべきではなかろう(上記3蔵元は最近純米に特化した商品体系づくりを進めている気もする。となると必ずしも鑑評会では実力を発揮しきれないのかも)。しかしとにかく、黄金井酒造の技術力が全国的に認められたことは事実であり、失礼を承知で申し上げるなら、傍から見る限りあまり求道者タイプには思えない蔵元が何気に着々と力を付けていく姿は実に好ましいと思う。
 なお、2004年現在、佳撰クラスは未だ糖類添加。

■飲んでみました

盛升特選 しぼりたて
 本厚木駅前をイトーヨーカドー方面に2分ほど歩いた左側にミロード(駅ビル)地下にある酒屋の本店とおぼしき店があり、店頭はディスカウント酒屋風でちょっと気が引けるのだが、中に入ってみると結構品揃えはしっかりしており、日本酒セラーぽいものもある。そこで買ってきた2品。
 上に書いたとおり「盛升」はアル添アイテムに手頃なサイズのものがなかなかないのだが、ここで面白いものを見つけた。しぼりたて(何も書かれてないのでたぶん普通酒)を蔵元が瓶詰め後1年間貯蔵して出した品である(アルコール分19〜20度)。これはもう個人的にはよだれが出そうな商品だ。900mlで1500円というのも1年ものと考えれば高くないだろう。
 スペックを見ただけで旨いのはわかっているが、飲んでみて改めて感激。激旨っす。原酒特有の甘味が1年の時を経てさらに深みを増している。僕は本物の新酒は升で飲むのが好きなのだが、これに関しては升だと木香が邪魔になるようで、ロックグラスで(もちろん氷は入れずに)やると最高だった。
 しぼりたてを開栓せずに貯蔵して飲むと旨いという話はよく聞くけれど、いざ自分でやろうと思っても我慢できずに途中で飲んじゃうでしょ。これを蔵元自らやってくれるのだから有難い話である。








白寿 純米酒

 金箔入りである。
 バブリーな時期ならいざ知らず、このデフレ時代に金箔入り酒なんて流行らないですよ。入ってたからって旨いもんじゃなし、器に注いでも金箔は瓶の下に沈んでるのでなかなかバランスよく出てこなくて、結局最後の1杯だけがやたら金箔濃度が高くて飲んでも舌に当たって困る、といった具合だ。
 いちおう蔵元の主張も聞いておこう。

 本品は岡山米朝日を原料に用い180年の古い伝統の技術に近代設備の酒蔵で、越後杜氏(注:購入当時は越後杜氏であった)が一滴一滴丹念に精魂こめて醸造した手造り純米酒でございます。これを昔の壜に詰め、更に金箔を入れて「長寿よろこびの清酒(さけ)」「命の源泉(みなもと)」にちなんで「黄金酒 白寿」と命名いたしました。百薬の長としてお召し上がり下さい。(化粧箱より)

 うーん、結局金箔を入れることがどう長寿につながるのかがいまいち不明だな。そうそう、このレトロ調瓶も日本酒の容器としては如何なものだろうか。こうやっていろいろ細工した結果として500ml入り1140円という価格になってしまうわけだ。
 味。冷やではちょっと平板。純米のコクに欠ける。燗をつけると結構良くなる。しかしやはり最後の1杯、金箔濃度が高くなって舌に当たって不快だった。ほんと金箔は要りません。




盛升蔵出し 吟醸辛口
 上記2アイテムを飲んだのは3年前の話、あれから「盛升」の世評がうなぎ上りであることを聞くに及び、改めて飲み直さねばと思った次第である。
 さて、本厚木駅周辺の酒屋チェックをしていたら、3年前との変化を発見。サティ(元ビブレ、もっと前はダックシティ厚木百貨店)地下に以前よりあった藤岡屋という酒屋さん、改装されて広々とした店になっていた。冷蔵スペースも比較的広めにとられており(それでも売られてる日本酒全体の1/3程度だが。でも「剣菱」を冷やして売ってるのは素晴らしいぞ)そこで発見した一品。
 なお、金賞受賞の真価を確認するには大吟醸なんだろうが、中吟で済ませてしまうのは単に私がケチだからである(1260円)。
 ここで2004年現在の「盛升」の商品体系について確認しておきたい。蔵元のホームページを見る限りでは「吟の舞」「ぎんから」等の国税局銘柄が掲載されていない。局での審査会は毎年あるはずだから(でも東京国税局のサイトにH15BYの結果が載ってない)たぶん造ってるんじゃないかと推測するが、自社ブランドを前面に押し出した販売体制、大いに好感が持てる。なお、酒販組合ブランド「丹沢ほまれ」は相変わらずよく売られている。
 あと、「蔵出し」シリーズと普通の「盛升」との使い分けについてはよくわからない。鑑評会出品の大吟醸原酒は「蔵出し」だが純米酒の「蔵出し」は低アルコール酒だったりする。
 さて、吟醸酒なんて滅多に飲まないものだからどんな肴に合わせたらいいか悩んでしまう。豆腐とか刺身なら無難なのだろうがそれではひねりもないし、そうだ厚木の名産にとん漬なんてのがあったなと思い、豚ロースの唐揚を作って合わせてみた。
 まず、冷やで。吟醸酒にしては、香りが弱い。味についても、辛口を標榜しているくらいだからドライな切れ味である。全般に非常に飲みやすく、食事の邪魔をせず量を飲めそうな酒である。最初の一口は旨いけれどだんだんしんどくなってくる(名古屋のどてめしのような)甘ったるい吟醸酒が多い中、これはあまり肴で悩む必要がない好酒であるといえる。もちろん豚の唐揚ともよく合った。
 ところで、裏ラベルには“ぬる燗もおすすめ”なんてことが書いてある。蔵元自ら吟醸酒燗を奨めてくれるのはとても素敵である。さてどんな風に燗化けするかと期待しつつぬる燗をつけたが・・・化けなかった。いや、香りも口当たりも喉越しも、冷やで飲むのとまったく変わらないのである。これは考えようによっては凄いことである。たとえば寒かったり体調が今ひとつの時、普段は冷やで飲んでる吟醸酒をぬる燗につけて飲む、なんてことを安心して行えるわけである。熱することにより旨味が増すことばかりが“燗上がり”ではない、冷やと同じ味わいを燗でも楽しめることだって“燗上がり”のひとつのあり方なのではないか・・・己の不明を大いに反省させてくれた「盛升」であった。



■マルジョーかばん店SOUND FILE
 厚木、大都市である。小田急沿線の田舎町(一応市だが)で育った僕には子供の頃よりまぶしい存在だった。駅ビル(ミロード)がある、4階建ての本屋(有隣堂)がある、ダックシティがある、パルコがある、ディスクユニオンがある(中古の品揃えはイマイチだが)、ラーメン屋もいっぱいある・・・。
 だから今でもよく行くのだけれど、いかんせんウチからだと遠いのですよ。大磯から厚木に行くにはまず平塚まで出てそこからバスでエッチラオッチラと向かうわけだが、1時間半はゆうにかかってしまう。これは十分東京まで行ける時間である。直線距離は近いのだけれどね(無論これは僕のように車を持たない人間の話。車なら小田厚で一直線!)。
 さて、現在も進化を続ける厚木市であるが(でも最近『電波少年』のゴミ企画で市の対応が叩かれたね)、10年以上全く変わらないものがある。それは

 か〜ば〜んッ ま〜る〜じょ〜おッ

 そう、あのマルジョーかばん店は厚木にもあるのである(「菊勇」の項参照のこと)。そして、あちら伊勢原店は既に街頭放送をなくしてしまったようだけど、こちら厚木店はいまだ街頭放送が現役、10年以上にわたって全く同じフレーズで厚木市民の脳味噌をメルトダウンさせている、もとい、厚木市民に癒しを与えているのである。だって街頭放送で『かーーばーーんッ』が流れているときに近くを通行する人はみんなニヤニヤしているもの。
 さて、もはや聴くことができなくなったかも知れない伊勢原の街頭放送と厚木のやつを比べると微妙に違いがあった。厚木の方が『かーーばーーんッ』をかなりゆっくりめに発音するのである。近藤正臣(from『柔道一直線』)に言わせるとアンダンテ・カンタービレ・コン・エスプレッシオーネってところか。まあ実際に聴いていただくのがよろしいでしょう。店の写真をクリックしてみて。
※このジングル、音源として発売されているわけではないので著作権は発生しないはずですが、一応取り扱いにはお気をつけください。




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