相模灘(さがみなだ)
―久保田酒造(株)―


■すごい場所にある蔵元
 酒造りをされている蔵元というもの、街のど真ん中に威風堂々たる蔵を構えるところもあれば田んぼの中にぽつねんと納屋のような蔵を構えるところもある。中にはそこにたどり着くためには鬱蒼たる山道をだらだら歩かねばならない蔵元もある。
 今回紹介する「相模灘」の蔵元、久保田酒造(株)もかなりとんでもない場所にある。神奈川県の蔵元の中では周辺人口密度の薄さはダントツ。一応蔵元の近くを神奈中バスが(1時間に1本くらい)通っているのでさほど不便ではないが、神奈川にもこんな場所に蔵元があるのかと思うと感動を覚える。

■品質第一、だが・・・
 「相模灘」の銘柄を用いる前は「楽水」の銘で知られていた。現在も地元津久井町ではこのブランドのものも流通しているようだ(実際見かける機会はあまりないが)。粕取焼酎「喜楽」もあり、こちらは有楽町にある『むらからまちから館』(『まちからむらから館』だったかもしれぬ)でも40度のものが買える。
 さて、「相模灘」ブランドのものはどうやら全量特定名称規格で売られているようで、税抜き191円のカップ酒も本醸造である。元来蔵元の理念が普通酒でもまじめに造るべし≠ナあるから、レギュラー商品でも一切手抜きをしていないのであろう。
 しかしそうなると返す返すも残念なのは組合銘柄「丹沢ほまれ」の存在。糖類添加である。これまでも何度か書いてきたけれど、ああいう組合銘柄なるもの、良識ある蔵元の自由な経済活動を阻害する存在でしかない。撤廃すべし

■飲んでみました
相模灘 本醸造生
 津久井町は町域北部を国道412号が東西に横切っているのでスーパーやコンビニも結構あるのだけれど、とにかく「相模灘」や同じく津久井町の地酒「巌乃泉」を扱っているところが皆無といってよい。それは蔵元が古くから付き合いのある酒屋を大事にしていることの表れかも知れないが、この2銘柄の県外での知名度の不当な低さを考えるに、もう少し販売戦略を練る時期に来ているような気がする。
 今回紹介する「相模灘」のアイテムは町域最南部・鳥屋(とや)地区にある(道の駅みたいな施設)『とりいばらふれあいの館』でゲットした。ここは後で詳しく紹介するが、なかなか素敵なスポットである。
 冷蔵庫の中に本醸造生貯蔵酒を発見。ただし、生貯というのは蔵元のHPを見て初めてわかったわけで、ラベルには『生』としか書いてない。(※)値段が税抜き857円。冷やしてないところに売られている火入れの本醸造が900円台なのにおかしいなと思いなつつも買って帰り、ラベルをよく見たら謎が解けた。アルコール分を通常より1度下げている(買う前に気付けよ)。
 僕は生酒に関しては濃醇な、トロリとした味わいが最大の魅力だと考えている。それにはアルコール度数を上げることが不可欠なのだが、本品はその逆の方法をとっている。もっとも生貯蔵酒などは度数を下げているケースが多く、清涼感を味わうにはその方が良いという考え方も一方で存在するわけで、これは蔵元がそういう確固たる信念のもとに造っている酒なわけだから文句を言う筋合いはない。
 さて、試飲。
 うっ、薄い。
 もうこれは個人の好みだから如何ともし難い。生酒の清涼感は確かに感じるからこの度数でちょうどいいと感じる人にはとても旨く思えるだろう。しかし僕にとってはいかにも頼りなさが残る(この頼りなさはグラスでなく、升で飲むことによってかなりの部分解消される)。
 今度は火入れの本醸造で真価を確かめてみたい。

※このページをアップして約1か月後、久保田酒造の蔵元夫人から直接メールを頂戴した。当ページを見てうっかりミス(生貯なのに生≠ニしか表示されていないこと)に気付いた。ラベルの刷り替えを検討するが、それまでの間『生貯蔵』のシールを貼って対応する。迷惑おかけして申し訳ありませんでした、と・・・。
 そ、そんな・・・迷惑なんて全然被ってないですよ。それよりもこんな泡沫サイトの手前勝手な意見を即時に受け入れて対応してくださったことに対する感謝の念と、本来意見すべきことは蔵元に直接伝えるべきところを自分のHPの中だけで偉そうにあげつらっている己に対する反省の念でいっぱいである。

 それにしても、ホームページの影響力は甚大であること、改めて思い知りました。自戒。

 




相模灘 純米吟醸
 「相模灘」の純米アイテムって吟醸規格のものしかないようだ。そこで泣く泣く(嘘)購入したのがこれ。蔵元HPでは価格が1380円となっていたが購入価格は税込1523円。まあ観光地価格ってやつでしょう。
 さて、上記の本醸造生≠ェ薄い≠フとは対照的にこちらのアルコール度数は16.7度。これは期待できそうだ。さて・・・。
 うん、これは旨い。冷やでももちろんいいが、ぬる燗にしてみると冷やではもう一つの立ち香が心地よく漂い、なんともいえぬ甘味が感じられる(酸度1.7。燗向きの数値。ちなみにアルコール度数・酸度は蔵元HPに載っていたもの。是非ラベルにも表記して欲しいなあ)。冷や燗共に向く好酒です。

 

 

 

 

 

 


■鳥居原ふれあいの館
 今回「相模灘」2アイテムを購入したのは津久井町鳥屋(とや)にある地場物産販売施設(道の駅みたいな感じ)鳥居原ふれあいの館(いえ)。ここ、お世辞にも好立地にあるとはいえないのだが、訪れたのが休日だったとはいえ家族連れやらライダーやらで大盛況であった。
 成功の秘訣その1。宮ヶ瀬湖(この呼び方抵抗があるなあ。たしかにダムが完成してその威容は湖と呼ぶには相応しいのだけど)を裏側(津久井側)から眺められるロケーション。表側(清川村側)はすっかり観光地化してしまい(土産物屋の中に梅辰漬物本舗が入ってきたら、そこはダメ観光地への第一歩)面白みがなくなったが、こちらはまだ周囲に何もなく、知る人ぞ知る穴場的存在になっている。その分過ごしやすさは格別。
 成功の秘訣その2。売られている商品の充実ぶり。農産物から工芸品、ソフトクリームに至るまで真の地場産品ばかり。製造者名の書かれていない土産物など全く置いていない。全国的にみても成功している観光物販施設はここと同じコンセプトでやっていると思う。全国の有名観光地の閑古鳥が泣く土産物屋のみなさん、是非ここを視察して、何をどうすれば良いか勉強すべきですよ。
 成功の秘訣その3。レストランのおばちゃん。ホームページにも『元気なおばちゃんの声が聞きたいと、毎週食べに来てくれるファンの方も出来ました』とある。このおばちゃんなのだが、ちょっと個性の強い方なので最初はとまどうかも知れない(なんとも形容しがたいタイプで、上手い例えが思い浮かばない)。でも根はいい人です。出来上がり時に食べ方を丁寧に説明してくれます。あ、おばちゃんも面白いがレストランの味も素朴ながら素晴らしいです。こちらも地元の素材をふんだんに使っており、僕が食べた中華つけ麺(600円)はつけ汁に溶いて入れる辛子味噌と付け合わせの生にんにくが絶品であった。口臭対策を万全にしてお出かけください。

 ここへの行き方。宮ヶ瀬バスターミナルから津久井方面へのんびり歩いても30分くらい(途中渡る虹の大橋という橋、かつては神奈中バスカードの図柄にもなったくらいの名所だったのだが、今では見る影もなし)。


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