金婚(きんこん)
―豊島屋酒造(株)―
■ ここは東京?埼玉?
西武線に乗り慣れていない、というか、西武線沿線は私の住むあたりからのアクセスが極めて劣悪なところなので、たまに乗っても土地勘がまったくつかめない。
特にあの、国分寺から出てる2つの路線、途中で知恵の輪のように微妙に絡みつき、気がつけば今走っているところは東京都なのか埼玉県なのか、失礼ながらよくわからなくなる。
今夏久しぶりに西武園競輪場を訪れた際この幻覚感を味わったが、今回紹介する東村山市(東京都)の地酒「金婚」の蔵元、豊島屋酒造(株)は西武園競輪場(埼玉県)とほど近いロケーションにある。だから、たしかに東京都の酒ではあるけれども埼玉県の酒と考えても必ずしも的外れではなさそうである、と書くと市民のみなさんに怒られそうだが。
しかしその一方で、本来豊島屋といえば江戸時代より神田に店を構えた白酒の老舗、だからチャキチャキの江戸っ子酒を名乗る資格だってあるはずである(現に下町での「金婚」の浸透度はかなり高いようだ。もうかなり前だが神田でここのカップ酒自販機を見かけたことあるし)。
とはいえ、現在地が東村山ってのはどうしても田舎酒をイメージさせてしまう。と書くと市民のみなさんに怒られそうだが。
■ カップ酒に見る、商品体系の考え方
「金婚」にはカップ酒もある。上撰とその下のクラス、どちらも無糖加である。
ところが、「金婚正宗」(普通酒の正しい銘柄)の一番下のクラス(金印)は糖類・酸味料入りである。
このあたり、蔵元によって考え方が異なっていて面白いといえば面白い。
東京でいえば「桑乃都」「嘉泉」「吟雪」あたりはカップ酒にも糖類入っているはずである。都内では事例がないかもしれないが、他県では一升瓶クラスは軒並み無糖加なのにカップ酒のみ糖類添加というケースも時にある。
一方でこの「金婚」や「喜正」も、佳撰クラスの一升瓶に糖類添加商品があるにもかかわらず、カップ酒は無糖加ということもあるわけだ。
ちょっとだけカップ酒を優遇しているようで嬉しいではないか。拙ギャラリーには載せないが。
■飲んでみました
「金婚」のお膝元・東村山市では酒販組合手印の「東村山」銘の商品が販売の中心を占めている。今回は(大体いつもそうだが)市内で購入したため、紹介するのはどちらも「東村山」とあいなった。ちなみに、吟醸だろうが本醸造だろうがラベルはすべて共通、このあたりちょっと残念。
東村山 本醸造生貯蔵酒
西武線東村山駅のどっちだったかの改札口(比較的開けてる方)を出て、駅前通を左折したところにあるコンビニ・スリーエフ。ここは以前より豊島屋さんの各アイテムをよく揃えている。上述の「金婚」カップ酒もここで買える。
さて、普通酒アイテムでカップ酒以外のものはと探してみたが、スリーエフでは見つからず(三増ブレンドの「金婚正宗」はあったが)。そこで、冷蔵庫内で売られてた「東村山」銘の300ml入り本醸造を購入した次第。390円(税抜)、アルコール分15〜16度と、生貯なのに度数を下げてないのは個人的に嬉しい。
さて、3デシだから冷たいのを一気に飲み切ってしまった訳であるが、味はというと、うーん、本醸造によくみられる特有の苦味が感じられるかな。それを除けば概して良好、値段も安いしテーブル日本酒としてはいいんではないか。冬場は生生のしぼりたても出るようだし、ちょっと試してみたい。
東村山 純米酒
こちらも東村山駅前のスリーエフで購入、常温販売。出荷が9月、購入10月。
考えるに、この季節の日本酒っていちばん品質的に微妙かもしれない(ひやおろしのような最初から秋に出すことを念頭においた商品は別として)。春先に出荷したものが夏を越して味が乗る、のが本来の姿のはずだが、陽のよく当たる店先で(一応冷房は入ってるんだろうけど)夏を越した日にゃあ、どんなことになってしまうのか・・・。まあ、そんなギャンブル的要素も秋に飲む日本酒の醍醐味とはいえる。もちろん上記「東村山」純米酒は9月に入ってからの出荷だから心配ないだろう。
酸度1.6、蔵元も裏ラベルで燗を推奨。値段は971円(税抜)と、純米酒としては妥当なところだろう。
さて、まず冷や。うーん、ちょっと土っぽい感じがするな。
2日置いて、今度は燗で。これは期待してたものと違うなあ。つまり、あまり燗上がりしない感。
ちょっと期待はずれ感を抱きつつ、開栓1週間後に再び冷やして飲んでみたら、これがいちばん旨かった。若干の雑味は感じつつも、適度に味が乗っていい感じ。肴をつまみながらならなおいいだろう。
■ 「東村山4丁目」は存在しない!所
そその、やはり、東村山といえば、あれである。
そもそもこの音頭には元歌があること、今回初めて知った次第であるが、そうはいっても知りたいのは、歌われた「東村山4丁目」「3丁目」「1丁目」はどこにあるのか?ということである。
しかしまあ、具体的な事象が描かれていない「3丁目」「1丁目」の場所を特定するのは困難であろうから、ここはひとつ「東村山4丁目」を探すことにしよう・・・と思って都市地図を広げたら。
「東村山○丁目」って住居表示、ないじゃん。
つまり「東村山市××町○丁目」というのはあっても、「東村山市東村山○丁目」なるものは存在しないというわけだ。
しかしそれでも諦めが悪い自棄酒マン、その「××町」の中から、東村山音頭に歌われた「4丁目」を探し出そうという次第である。
探索のポイントは2つ。
庭先ゃ、多摩湖であること。
茶どころである(茶畑がある)こと。
あと、しいて言えば、住民の情けが厚いことも加えていいかも知れない。
改めて、地図を広げる。
庭先ゃ多摩湖といえそうな(つまり、多摩湖に接した)住居表示を探してみると、該当するものは2つしかない。
多摩湖町4丁目。
廻田町4丁目。
こうまで絞り込まれればあとは楽だ。いざ出陣。
例によってわかりづらい国分寺からの西武線に乗り、「西武遊園地」駅で下車。
といっても、遊園地とは反対側の、降車客が3人くらいしかいない出口(平日の朝夕はそんなことないのだろうが)からである。
このあたり、多摩湖町。
駅から多摩湖(村山貯水池)はかなり近い距離にあるはずだが、残念ながら堤防のせいでその姿を拝むことはできない。
ちなみに、多摩湖に直接接しているのは多摩湖町3丁目。
4丁目はといえば、新しい家が建ち並ぶハイソな住宅街であった。
これは、茶どころどころではない。
こりゃ違うな、などと考えつつ歩いていたら、ごく最近来たことがある場所に出てしまった。
西武園駅。駅舎内を通り抜ければそこはもう埼玉県所沢市・西武園競輪場である。
ちょうど共同通信社杯競輪の場外売りをやっていたので思わず足をとられそうになるが、ぐっとこらえて再び「4丁目探し」に。
もうひとつの候補地・廻田町4丁目である。
多摩湖町と廻田町は境界を接しているのだが、そこに至るには丘をひとつ越えなくてはならない。
えっちらおっちらと丘を越え、廻田町4丁目ゾーンに突入。
畑は、結構ある。
しかし、茶畑は、ない。
しかも、多摩湖とはかなり距離が離れており、庭先と呼ぶにはちと苦しい。
これも、違うだろ。
ということで、早くも結論が出た。
東村山4丁目は、存在しない。
なお余談が、こういう馬鹿げた探索をしている最中、住民各位からは若干不審な目で見られたりした。
このあたり、情が厚いとは必ずしもいえないようだ。
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