菊勇(きくゆー)
※↓の煙突表記に従い、↑のふりがな直しました
―吉川醸造(株)―
■地味。
拙『地酒の真実』ではこれまで神奈川県内の8蔵元を紹介してきた。あと県内の蔵元は残すところ今回を含め5つとなったが(委託醸造会社はオミット)、「曙光」「丹沢山」「いづみ橋」といった有名どころは紹介してしまったので、これからは本当に地味な銘柄ばかりとなる。しかし逆にいえばこれらの酒こそ真の地酒といえよう。
今回紹介する「菊勇」、小田急沿線・伊勢原市に蔵を構える。伊勢原といってもピンとこない人も多かろうが、丹沢・大山の大山の方の登山口にあたる。いたってのどかな街であるがお隣に厚木という学園都市(青学撤退で崩壊ピンチ)を持っているため生活には全然不自由しない。
「菊勇」という名前、最近は山形県酒田市の方が有名になってしまったが(あちらは『きくいさみ』こちらは『きくゆう』)、それなりの伝統を持った銘柄のようで、昭和53年刊『日本酒大事典』では神奈川の酒では「白笹鼓」とここだけが紹介されている。しかしそれも今は昔、すっかり地元だけでしか飲めない酒になっている。
3年くらい前蔵元を見に行ったことがあるのだが、看板も何も出ていない。もちろん蔵構えから日本酒を造っていることはすぐわかるのだが・・・商売っ気がないのかも(今は看板出してるかもしれないが)。→2003年5月に蔵元前を通りかかったら、立派な木の表札があった。多分前回は見落としたのだろう。こんなステキな↑煙突もある。
そんなわけでここの酒、伊勢原市以外ではまず買えない。両隣の秦野市・厚木市それぞれに「白笹鼓」「盛升」という地酒が存在することも市外進出を阻む理由だろう。そのかわり伊勢原では完全にここの天下、「菊勇」の看板を出す飲み屋は数多い。
■『九州スタイル』の日本酒(テント師匠風に)
そんな言葉聞いたことないといわれそうですが、そう、私が考えました。さっき考えたんですよ。急やモン!
九州の日本酒って、上撰クラス(昔の一級)にいまだに堂々と糖類入れてるんですよね。今や全国広しといえども九州だけなんですよね。でも九州の人に注意すると『酒に糖入れてどこがワルか!』とか凄まれそうですしね。
ところで神奈川の「菊勇」って上撰にも糖類入ってるんですよね。だからカップ酒を3種類(ガラス入りの上撰・佳撰と紙カップの佳撰)も出していて、そのすべてが糖類入りなんですよね。神奈川でも珍しいですよね。だから「菊勇」を『九州スタイル』と命名しますね。あ、このネタとらんといてな。
(ここで僕が何を訴えたいかについてはいちいち説明しませんよ、義務教育やないねんからね。ウィッ!ウィッ!ウィッ!
)
■飲んでみました
伊勢原駅南口から徒歩約2分のところに『セブンイレブン伊勢原南口店』がある。店構えはまさしくセブンイレブン以外の何者でもない。しかしここはかつて『菊勇ストアー』という蔵元直営(?)の酒屋だった(らしい。その当時のことは記憶にない)。だから今でも同店では「菊勇」をフルラインナップで揃えているのである。それにしたってレジ打ちのおねえちゃん、4合瓶2本抱えてレジに向かった僕に『ただいまキャンペーン中でホットドックを100円で販売していますが、いかがですかぁ?』なんて訊かないでよ。思わず『また次にします』と答えちゃったじゃないか。無論、次などないが。
かながわ 伊勢原
「菊勇」の銘はキャップにあるのみ。伊勢原酒商組合が発売元となっている伊勢原市内限定発売酒。といっても上述のとおり「菊勇」はほぼ伊勢原市内でしか売られていないのであまり意味ないのでは?と思うのだが。
これいわゆる普通酒である(777円税抜き。縁起がよろし)。実は「菊勇」銘のものも同じ価格で売られているのだが、そちらは糖類入り。こちら「伊勢原」は無糖加。実に不思議な話なのだがこういうケースは日本酒の世界では至るところで出くわす。そんなこと気にしてたら日本酒なぞ飲んでらんない、ってことか。
さて、僕正直なところこの酒についてはまったく期待してなかった。ところがだ、旨いんだよこれが! 冷でよし、燗つけてなおよし。しみじみとした旨味があふれる(無論それは普通酒としてのそれ)。ほんともう糖類加えてる場合じゃないよ。「菊勇」は絶対このレベルの酒で勝負すべきだ。
菊勇 相模大山
こちら純米酒は伊勢原市内ではよく見かける。大山といえば伊勢原最大の観光資源だから是非銘柄にしたいけれど大山≠ニいうと山形県のやつが有名だからなあ、ということで頭に相模≠つけたのだろうか。蔵元の遠慮がみてとれる。924円税抜き。
これ封切ったときは凄く旨いと思ったんだけどな。その後はどうも。まあどちらかといえば冷やして飲む方がいいだろう。ここの蔵元の酒はアル添の方が旨い、とみた。
相模大山 吟醸生酒
2003年5月、久々に伊勢原まで行ってきたので、いつものセブンイレブンに寄ってみた。
そこで冷蔵庫の中を覗いて初めてわかって驚いたのだが、吉川醸造のお酒って生系商品が充実してるんですね。純米吟醸から普通酒(無糖加)まで、生貯も含めると5〜6アイテムがスタンバっている。しかもことごとく300ml入り商品がカバーしているのが嬉しい。
悩んだ末、アル添中吟の生生を購入。3デシで583円(税抜)。アルコール分は15〜16度とノーマル。
これは、どちらかというと味吟醸タイプかな。香りはそんなに強くない。しかし吟醸酒としての主張はちゃんとしているし、鬱陶しくない程度の甘味も感じる。この300ml入りをぶら下げて帰って食事のお供にするのに好適、とみた。
■伊勢原のこと
どこに原因があるのかはわからないが、小田急線伊勢原駅周辺は完全に時代に取り残されてしまった感がある。普通伊勢原くらい乗降客の多い駅であればエスカレータくらい設置されて当然なのだが、いまもってまったく工事が行われる気配がない。駅前の光景も僕がよく下車した15年位前と全然変わっていない(というか寂れた感すらあり)。※ホーム〜改札階のエレベータはできた。しかし改札から出口までの状況は変わらず
僕がこの駅を利用したのは専ら飲む時であった。大学生時代、地元の友人と飲むのはお隣の大都市厚木よりも何故か伊勢原が多かった。南口駅前に今でも『テイク・ファイブ』というパブのような店があるが、ここに高校時代の同級生の岡本という男がバイトで働いていて、そこへも時折飲みに行ったものだ。余談だがこの岡本という男、まだ高校時分だがある寒い日、思わず『さみー』とつぶやいたところを僕が間髪を入れず『ヘイガー!』と叫んだら3分間笑いが止まらなくなった、という純朴な男であった(意味わからない人スミマセン。僕らMTV世代なもんで)。
南口といえばもう今は違う店になってしまったが『ライオン』というスナック(?)やその隣の、店の名前は忘れてしまったが2階が座敷の鳥の唐揚げが名物の店なんかは、高校時代飲み会で利用したものだ(ええと、ここから先の話は社会通念上は問題がある内容となっておりますので読み飛ばしていただいて結構です)。僕はお隣秦野市内の高校に通っていたのだが、さすがに秦野市内で飲むのはまずかろうということで伊勢原の飲み屋が利用されてたのだと思う(とはいえわが母校、生徒の飲酒には寛容で――その代わり喫煙にはムチャクチャ厳しかった――部活の飲み会では顧問の先生も一緒に飲んでたし2年の時のクラス担任なんかは修学旅行で移動中のバスの中でポケット瓶あおってたもんなあ)。で、高3の秋、文化祭の打ち上げで(うちのクラスの出し物はディスコだった)『ライオン』で飲んだ時、当時他のクラスメートよりは多少飲酒経験が豊富だった僕はすっかり調子こいて水割りをイッキ飲みなんぞしたもんだから(僕らイッキ飲み世代なもんで)たまたま前に座っていた、普段なら僕になど目をくれもしない女子生徒から『××(僕の苗字ね)くん、見直しちゃったぁ(^。^)』などと言われて(当時堅物と思われてたから。実際そうだったのだが)またすっかり気分よくなってしまったものだ。結局見直されたのはその晩1夜限りだったが。
すっかり昔話になってしまった。伊勢原とはそういうところです(なんじゃそりゃ)。
ところで、伊勢原北口駅前にこんな店がある。
マルジョーかばん店。店そのものに別に語るべきことはないのだが、ここは何が有名かといえば
か〜ば〜んッ ま〜る〜じょ〜おッ
というジングル(?)を駅前の街頭放送で流しまくっていて、伊勢原っ子は市長の名前は知らなくてもマルジョーかばん店のことは誰でも知っている、という具合の超有名店なのである。
このか〜ば〜んッ≠久々に聴きたくなったもんでICレコーダ持って駅前に貼りついたのだが、1時間粘ったものの不発。どうやらもう街頭放送自体がなくなってしまったようだ。地元経済不振の折、スポンサーがなくなってしまったということなのか・・・。
実はこのネタには続きがある。次回『盛升の真実』を心して待て。
※2003年訪問時に改めて北口駅前に張り付いたところ、街頭放送はまだあった。しかし時間にして約15分、約15軒のお店のCMが流れたにもかかわらずマルジョーのはなし(スピーカーの下でじっと耳を傾ける俺、暇人やなあ)。もしや、ナレーターのおねえさんに♪か〜ば〜んッ をやるの、拒否されたか?