三増酒の是非
―私の意見―



・横浜で居酒屋の店長をされておられる、町田さんからのご意見です。

私も日本酒をお客様に楽しんでいただく観点から言って、必ずしも三増酒をすすめたいとはやはり思いません。
が、確かに梅一輪酒造の社長がおっしゃるように、三増酒にも功と罪があるのは事実だと受け止めています。

突然のメールでこんなことを言うのは何なのですが、ちょうど先日当店で利き酒会で参加者に配ったリーフレットに、「アルコール添加の功と罪」というようなテーマで一筆書かせていただいたのですが。
〜以下は同氏のサイトからの抜粋です〜
アルコール添加の功と罪
 さて純米酒を2種類試していただいたところで、続いては通称「アル添酒(アルテンシュ)」と呼ばれるお酒をさらに2種類試してみてください。
G(神奈川県・A酒造店)
原料/米・米麹・醸造アルコール・糖類・酸味料
T(山形県・T酒造)
原料/米・米麹・醸造アルコール
酒米/美山錦・50%精米 酸度/1.3 日本酒度/+5
アルコール度数/16度以上17度未満
 いかがですか?
 日本酒の原料が米と米麹、水で造られたお酒が純米酒というのは先ほどお話しました。ところがこの2種類のお酒にはそれに加えて醸造アルコールというものが入っています。
 この醸造アルコール、原材料の項目にわざわざ書くぐらいですから、日本酒を醸造する過程で出来るアルコールとは別のアルコールを加えるということなんですが、では、なぜわざわざそんなことをするのでしょうか?
 一般に米だけで出来た酒(純米酒)の方が良い酒で、醸造アルコールを添加した酒(アル添酒)の方が良くない(=まがい物?)酒というイメージもあるかもしれません。
 しかし、純米酒にわざわざ醸造アルコールを添加するのは、実は大きな意味があるのです。
 まず、第1に腐敗防止。生の状態では劣化しやすい日本酒に、別の醸造アルコールを加えることによって、防腐効果があることは江戸時代から行なわれてきた由緒正しい日本酒製造の技術です。
 そして第2に香味の調整があげられ、これにはさまざまな効用があります。
 まず、米だけで作られた純米酒は、酒質がしっかりとしている反面やや重たい飲み口となるのを醸造アルコールを添加することによって、爽やかな飲み口を得ることが出来ます。
 さらに、吟醸造りという日本酒の技術力の高さを物語る醸造方法において、フルーティで何ともいえない爽やかな香り(吟醸香)を得ることが出来るのですが、実はこの香り、お酒が出来上がった後そのまま搾ると、お米のほうに多く香りがついてしまって、肝心のお酒のほうにはあまり香りを残すことが出来ません(つまり、お酒そのものよりも酒粕の方に香りの要素が多く残ってしまう)。
 ところが、搾りの前に醸造アルコールを添加することによって、その吟醸香をお酒の方に残すことが出来るのです。
(このため純米吟醸酒よりもアルコールを添加した吟醸酒のほうが香りは強くなります) こういったあたりが、日本酒にあえて醸造アルコールを添加する理由です。
 しかし、アル添をする目的の中には、もうひとつ無視できない理由があります。それが、『増量』です。
 通常、本醸造や吟醸といった表記がされる日本酒(特定名称酒といいます)のアルコール添加の量は、(白米総重量の)10%までという厳密なルールが決められています。しかしそれ以上のアルコールを加えても日本酒は造れます。そしてそれらはすべて『普通酒』というカテゴリで分けられます。
 もちろん良心的な蔵元さんの中には、普通酒に分けられるお酒でも10%よりもはるかに少ないアルコールの添加量でお酒を造っているところもあります。が、そういった蔵元さんばかりではないのも事実です。
 お米だけでお酒を造れば、当然のことながらコストがかかります。しかし、工業的に造られた醸造アルコール(醸造アルコールは米から造った酒も含みます)を大量に加える、つまり薄めることによって、元のお酒の量をはるかにふやすことが出来るのです。
 ですが、当然といえば当然ですが工業的に精製されたアルコールは無味無臭ですので、お酒としておいしいわけがありません。そこで、糖類や酸味料といった人口の産物で味をつけてやる。そうすれば、かつて日本酒業界を席巻した粗悪な日本酒の代表「三増酒」の出来上がりです。
 通常みなさんが、「甘くてべたべたした酒」と感じ、古き良き日本酒を知らない層の日本酒離れを引き起こした酒の多くは、実はこういった作り方をされているものも少なくありません。
 もともとこの方法は、戦後食べるにも困るほど米が少なかった時代に考え出された方法で、その時代においては実に理にかなった方法だとは言えたでしょう。しかし、現代にいたってもこういった造り方で醸造される酒があるというのは、実に嘆かわしい話です。初めて飲む日本酒がそういったお酒だったがゆえに「日本酒は不味い」という印象をもってしまったとしたら、それはなんて悲しいことなのでしょう。
 今回このコーナーで「T」と引き合いに出してしまった「G」がそういう目的で作られた酒であるかどうかはわかりません。しかし、消費者に「安く」商品を届けたいというメーカー姿勢ならわかりますが、出来る限りコストを「安く」商品を作りたいという(原価削減=儲け至上主義)意識の元に造られた粗悪な酒が現在でも数多く流通しているという事実は、決して見逃してはならないものなのかもしれません。
 以上、多少難しい話となりましたが、日本酒をもっと楽しむために、そして日本酒の良さをもっと多くの人に知ってもらうために、ちょっと耳を貸してください。
 いつだって、やっぱりうまいのは「本物」なんです。

追記
繰り返しになりますが、「普通酒」という表記のお酒でも、心有る蔵元さんが造った増量を目的としないアル添酒は数多くあります。一概に普通酒が悪いわけではありません。……これ以上突っ込んだお話はまた、後日談として……。


 最近の日本酒のトレンドが純米指向に傾きつつある中、アル添の意義を店のお客さんにわかりやすく説明しておられる。ただ、アル添も蔵元の匙加減(つまり良心)によって酒を良くも悪くもする、その悪い方の行きつく先が三増酒である、ということか。
 つい6〜7年前までは地方のちょっとした食堂とかで地酒≠頼むと大抵出てくるのは地元の蔵元の三増酒で、ではと冷酒≠頼むと出てくるのは「大関」か「白鶴」あたりの生貯蔵酒、というケースが多かったが、最近飲食店で供される日本酒は確かにかなり底上げが図られたと思う。ちょうど第2次地酒ブームによって日本酒の虜になった若い人たちが現場に入るようになったからだろう。たぶん町田さんもその1人ではないか。
 なお、上に引用したアル添の功罪のみならず、利き酒の会のリーフレットはたいへんよくできている。また町田さんのサイトそのものが、お客さんにお酒を楽しんでもらおうという気持ちに溢れている素敵なHPである。是非のぞいてみて。
ホントに行きたい、お店(NOMIYA)を作ろう!



・長野県の大雪渓酒造(株)で造りに携われておられる、三河の蔵人さんからのご意見です。

私の、三増酒に対する考えですが、日本酒をダメにする悪の元凶という考えをしていた時期もありました。
しかし、美味い三増酒もある事も事実です。
一番重要なのは、味ではないでしょうか?
純米酒しか、酒でないという人たちもいますが、アルコールの添加により、良い効果もあります。
蔵元が、最高の酒を送り出す、全国新酒鑑評会も、ほとんどの酒がアルコールを添加しています。
三増の話にもどりますが、蔵元が目的の酒質にするために、三増を使うことがあります。
例えば、酒質を淡麗にする為、三増をブレンドする蔵も知っています。
ほとんどが、コストを安くするためのというのが、現状と思いますが、それだけでないという事も、知っておいてください。
正直なところ、三増酒が、いいのか、悪いのか、決めかねているのが現状です。


 ポイントは3つ。(1)旨い三増酒もある。(2)蔵元が目的の酒質にするために三増酒を使うことがある。(3)三増酒をブレンドすることにより、酒質が淡麗になることもある。
 (1)については梅一輪の社長さんもおっしゃっていたとおり。ひとくちに三増酒といっても造り手の良心≠ノよって味に差が出るということ。(2)(3)については正直飲み手には実感が湧かないなあ。アルコールのみの添加でなんとかならないのだろうか。
 僕たちにとってなにより困るのは、どこの三増酒の品質が優れているのかの判断を下すための情報が全然不足しているということだろう。大手の三増酒が一概にダメとは言いきれないわけだし、吟醸酒で名を馳せている蔵元の三増酒だからといって旨いとはいえないだろう。結局誰かが飲んだ結果を公表するしかないわけで…しょうがねえなあ、自分がやるかな、って気に最近ちょっとなっている。
 あと、やはり日本酒の評価ポイントしては味や香りだけでなく志≠チてのもあると思う。すべての製品に三増酒を造らない、という志≠ヘ蔵元を評価する重要なポイントだと思うが。

 日を改めて、三河の蔵人さんから再度メールがあった。

前回のメールの内容は、本音半分と、言い訳半分といった内容です。
言い訳半分というのは、三増に対する否定的な考えがあっても強く批判しにくいのが、現状です。
というのは、味の問題ではなく混ぜものを、していることにはアル添も、三増も変わりないということです。
難しい問題なので、これから考えていきましょう。

 たしかに難しい問題である。
 ちなみに三河の蔵人さんが造りに携われている大雪渓酒造(株)は志も立派な蔵元である。ホームページもよくできているので是非ご覧を。
山の酒・大雪渓酒造株式会社ホームページ



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 さらに地酒とは何ぞや?≠考えるため、北海道内で醸造されているすべてのメーカーの日本酒を飲み比べてきた。そのもようはこちら