いづみ橋
―泉橋酒造(株)―
※2005.2.27大幅加筆修正。ひとつは私の重大な勘違いを訂正、もうひとつは同社商品に関する大きな状況変化によるものです。勘違いに関して深くお詫びすると同時に、(わけあってお名前は申し上げられませんが)情報いただきましたことを厚くお礼申し上げます。
■日本酒における志≠ノついて
といっても、香典返しでもらう300ml入りの酒の話ではない。
僕はかねてより三増酒をなくすことこそ日本酒の地位向上のための最大の道≠ニ訴えている。これに対して三増酒であっても旨ければいい≠ニいう、あくまでも味に座標軸を置く考えが一方で存在するわけである。
そのどちらの考えが正しいとは一概に言い切れないし、恐らくこの問題は未来永劫議論の的となる(つまり、三増酒はなくならない)のだろう。
ただ、僕は少なくとも三増酒を廃止した蔵元にはある種の志≠感じるので、そういう蔵元は支持して行きたい、ということなのである。
こんなこと書くとまた業界内部に詳しい方から三増酒でなくてもいい加減な造り(乳酸や米糠添加など)のアル添酒はたくさんある≠ニ突っ込まれそうだからこれ以上は言わない。
■地酒は米作りから
なぜ日本酒における志≠フことなど書くかというと、今回取り上げる泉橋酒造、日本酒造りは米作りから始めなくてはならない≠ニのポリシーのもとに、地元海老名の田んぼで山田錦だのを栽培している。これなぞまさしく志≠サのものであろう。
これまで神奈川のような好適米の獲れない地域では高級酒造りのためには好適米を輸入≠キるのが当たり前の話だったのが、蔵元および近隣農家の努力により、神奈川あたりでも山田錦が獲れるようになったわけだ。
べつに地元の米じゃなくても旨けりゃいいじゃないか、という考えはここでも出てくるだろう。しかし泉橋酒造は地元で獲れた米を地元の水で仕込んで醸し出される酒こそ真の地酒である、という志≠フもとに酒造りを行っているわけで、そうして完成した酒が旨ければ何の文句もない。
そんなわけで今や完全に神奈川酒のエースになった感のある「いづみ橋」だが、難点を挙げるとすれば商品体系のバランスの悪さか。新興蔵元の常として市場に出回っているアイテムの大半が吟醸酒なのだが、地元海老名あたりの酒屋では吟醸酒をきちんと冷やして売る意識に欠けているので、多くの「いづみ橋」は店内の明る〜い場所で無残な姿をさらしているわけである。純米・本醸造クラスのアイテムがもっと出回っていればいいのだがこれがなかなか少ないのである。そして、実際ここの蔵元の酒でいちばん目にするのが糖類入りカップ酒「丹沢ほまれ せせらぎ」だったりするわけで、「いづみ橋」が神奈川県民から普遍的に愛される酒になるにはまだまだ越えねばならぬハードルは高い、といえるかもしれない。
■糖類添加、廃止(2005.2追記)
↑の斜体表記の箇所について、重要な情報をいただいた。糖類入りカップ「丹沢ほまれ せせらぎ」(神奈川県中央酒販協同組合の手印)から泉橋酒造が撤退し、結果同社から糖類入り商品がなくなったとの由。
| 黄金井酒造製・せせらぎカップ (2005年1月出荷の刻印あり) |
私も早速現地調査を行った。以前泉橋製「せせらぎ」カップを扱っていた座間市の酒店で「せせらぎ」を購入してみたところ、製造場は厚木の黄金井酒造(「盛升」)となっていた。なお、「せせらぎ」カップは黄金井酒造ならびに津久井町の久保田酒造(「相模灘」)に引き継がれたとのことである(ただし、久保田製商品はまだ見たことがない)。元々両社は「丹沢ほまれ」自体には以前より参画していて一升壜等の商品を出していたので、中身的にはそれらと同じものをカップに詰めているのではと推測される。
「いづみ橋」は『dancyu』2005年3月号の日本酒特集のトップで扱われていたりと、神奈川の地酒を代表する銘柄のひとつであることは間違いない。そこが糖類廃止に踏み切ったことは非常に重要な意義を持つであろう。
■飲んでみました
もちろん僕は数少ない純米・本醸造を見つけてきたが、普段ここで紹介するアイテムよりちょっぴり高級めのものになってしまった。そこで罪滅ぼしというわけではないが、普段は飲まない糖類入りカップ酒なぞも飲んでしまいましたとさ。
いづみ橋 恵 純米無濾過原酒超辛口
海老名で「いづみ橋」を買うにはどこがいいか、と訊かれたら、やはり駅前のサティの中にある酒屋がいちばんということになる(↓追記参照)。まあとりあえずひととおりのものは揃う。今回紹介するアイテム(「せせらぎ」を除く)もサティ内酒屋で買いました。
それにしても、まさか本ページで無濾過酒など飲めるとは思ってなかった、というか他に(吟醸でない)純米アイテム見当たらなかったもんで。値段は1,360円(税抜き)。
裏ラベルには『酒蔵は原料の米から自らの手で造り始めなければならないと思います』と書かれている。その志やよし。
さて、超辛口と書いてあるのでどんなもんかと思っていたが、確かにキンキンに冷やして飲むと辛い、というか苦味を感じる。ところが温度が上がって行くにつれてぐっと甘味が乗り旨くなる。はっきりいって冷やし過ぎるとこの酒の真価は半分も発揮できないし、あまり超辛口≠全面に押し出すのはいかがなものかと思う。個人的にはシチュエーションとして暑さも収まった9〜10月頃(真夏はも少し冷えた酒を飲みたいから)に冷蔵庫から取り出し1時間後くらいに飲むのがベストと思う。
いづみ橋 特別本醸造原酒
こちらは本醸造原酒、なのに値段は1,400円(税抜き)と上記純米無濾過原酒よりも高い。ちょっと不思議ではあるがよく見たらあちらはアルコール分17〜18度、こちらは18〜19度。ちょっと濃いい分お高いみたい。
さて、上の「恵」は温度差により味わいの広がりが全然違うと書いたが、こちら本醸造はどの温度帯でも味のブレなし。キンキンに冷やしても甘味があり実に旨い。これはもう夏の暑い時によく冷やして飲むのが最高である。おすすめ。
(2004.8.25追記)3年前に上記2アイテムを購入した海老名サティでは、もう「いづみ橋」を買うことができない。
以前は酒屋がテナントで入っていたのだが規制緩和とやらでサティ海老名店本体が酒の小売を行うようになった。で、例の「大型店舗酒類小売業免許の需給調整要件」により、当面日本酒は500mlリサイクル瓶以外は販売できなくなったわけである。泉橋酒造は当該形態の製品は造っていないようで、現在海老名サティでは秦野の金井酒造店の500ml瓶が幅をきかせている(ちゃんと「海老名」て銘柄のラベルを用意して貼っているのは流石というか)。
私はスーパー等大型店舗でお酒が売られることには賛成の立場であり、「利便と価格を求めるならスーパーで買え」「品質と情報を求めるなら専門小売店で買え」と考えている。実際には小売店にも管理のお粗末なところはいくらでもあり、かといって設備投資の余裕などなく廃業する酒屋が後を絶たないのは重々承知なのだが、こと日本酒に限っていえば専門店の生き残りのポイントは“管理”この点に尽きる気がしてならない。一方スーパーマーケットの定義を“なんでも買える”ことに求めるならば、酒だけが締め出されるのはやはり不公平であり、また現在のような「時限付きで」「500ml瓶を除外した形での」販売制限というものが小売店にとってどれだけのメリットがあるのか、いまひとつわからない。
むしろ販売制限をするのなら、管理上の差別化の図りづらい蒸留酒(つまり焼酎)を対象にすればいいのに・・・と、売場面積割いている割につまらない品揃えしかないスーパーの焼酎を眺めながら考えたりするわけであります。
(2005.2.27さらに追記というか大訂正)私が2001年に上記2商品を購入した海老名サティ内のテナント酒屋(リカーズ中山)、なくなっていなかった。テナントの場所が移転したことに加えて上記のとおりサティ本体で酒を販売するようになったことで私が早合点したものであった。もちろん今でもリカーズ中山では「いづみ橋」をちゃんと扱っている。誤情報を発信してしまい、申し訳ありませんでした。
ちなみに、2005年2月現在、サティ本体の酒売場での日本酒販売は相変わらず500mlリターナル壜のみであった(陳列棚に「日本酒・ビールをお求めの方はリカーズ中山へ」とテープが貼られていた。前回チェックしたときは気付かなかった・・・)。上記のとおり秦野の金井酒造店の商品が優勢であるが、現在休造(蔵移転準備)中の「智恵袋」の、2004年出荷分が(もう地元小田原でもほとんど見かけない)置いてあった。商品の回転は良くなさそう・・・。
なお、上記緑字部分の『私はスーパー等・・・』以降の記述についてはもはや本項とは直接関係のない内容であるが、私の思いであることは事実なので、そのまま残しておきます。
(参考出品)丹沢ほまれ せせらぎ ※2005年現在、泉橋製品は消滅
問題の、泉橋酒造でいちばんメジャーな製品である。もちろんこれは組合銘柄=A「丹沢ほまれ」銘では「盛升」や「相模灘」の蔵元も別アイテムを出しているが、そのどれも品質的には???のものである。
そうはいっても天下の「いづみ橋」の造る酒だけにほんのわずかの期待をこめて飲んでみた。
三増酒はキンキンに冷やすか持てないくらいの熱燗に≠フ鉄則に従い、キンキンに冷やして飲む。うん、これは飲めなくないかな。たしかに甘いが悪くない甘さだし・・・と感じたのは最初だけ。温度が上がってもとの三増酒の味に。これはもうハッキリいえるのだが、糖類入ってない普通酒の出来の良くないやつと三増酒との間には明らかなる味の違いがある、ということだ。やはり三増酒は飲みたくないなあ。
■海老名と国分寺
僕は横浜の大学に通っていたので、秦野市の自宅から大学に通うのに小田急―相鉄と乗り継ぐため、海老名駅は毎日乗り降りしていた。にもかかわらず駅周辺のことに対しほとんど思い出はない。それだけ何もない街ということなのだろう。
しかし、実は駅からほど近いところに超重要な史跡があるのである。相模国分寺跡。
「いづみ橋 恵」のラベルにも描かれている七重塔がかつてあったそうだが現在は『ここにありましたよ』という説明書きがあるだけであとは何もない。歴史観に優れた人であればここに立つことにより古の奈良時代に思いを馳せることができるだろうが、僕のような俗人には地面に丸めて散乱していたティッシュを目にして、昨夜ここで行われたであろうことに思いを馳せることくらいしかできない。
| ここにあったそうです。 |
| ややこしい話だが、国分寺跡からほど近いところに国分寺という名の寺があり(旧国分寺とは無関係)そこにある銅鐘は 国指定文化財。でもどのあたりが貴重なのかは外見からは不明。 |
| 駅前の公園に七重塔のレプリカがあり。夜はご覧のとおりライトアップ(手持ち撮影のためブレてて失礼)。 |