吟雪(ぎんせつ)

―渡辺酒造(名)―


■或る日突然、近くなった街
 かつて、東京都武蔵村山市と言えば陸の孤島%Iなところであった。
 もう何年前になろうか、僕が今回紹介する「吟雪」の蔵元を訪ねようと思って地図をみたら、最寄駅がたしか西武線の武蔵大和駅かどこかで、そこから立川行きのバスに揺られて、で結局ルート間違えたようで蔵元前を通ることなく、立川までたどり着いてしまったことがある。その経験から、拙「地酒の真実」東京篇においても、たぶんここの酒を紹介するのは最後になるだろうと思い込んでいたのだが。
 状況は一変していた。
 多摩都市モノレールの開通である。
 多摩センターなり立川なりからモノレールに乗って北側の終点・上北台まで行き、バスにちょこっと乗ればそこは武蔵村山市。「吟雪」蔵元も初乗り170円圏内である。いい時代になったもんです。


■多彩な商品群
 なにしろ今までまったく飲む機会がなかった銘柄なので迂闊なことは言えないのだが、さすがに地元シェアは大きいようだ(ライバルは「千代鶴」「澤乃井」「嘉泉」「多満自慢」あたり。西武線つながりの「金婚」は不思議と見かけない。
 最安価格帯のレギュラー酒は2003年現在相変わらず糖類入りだが、1升ビンの肩ラベルに「精米歩合70%」とデカく書かれているのが正直者ぽくて好き。
 最近は特定名称酒の強化を図っているようで、後で紹介する山廃純吟「江戸造り」の他にも純米原酒「ロック酒」(このネーミング、好き)や雅楽を聴かせて仕込んだ本醸造酒など、多彩な商品群で楽しませてくれている。
 願わくば、1コンセプト=1商品′タ定でなく、山廃本醸造や雅楽を聴かせた大吟醸なんてのも出して欲しいと思う。


■飲んでみました

吟雪 無濾過しぼりたて生原酒
 2003年6月、武蔵村山市街中心部のセブンイレブンでゲット。
 冬季限定品である。出荷は前年11月。つまり、売れ残っていたということ。
 日本酒愛好家にはこういう、酒屋の冷蔵庫の奥にひっそりと眠っていた売れ残り酒を見つけると異様に喜ぶ習性がある。もっともいざ口をつけてみたら老ねていて閉口、なんてこともあるが。
 特定名称種別はどこにも書かれていないし値段(税抜き971円)から判断するに普通酒だろう。アルコール分17〜18度、しぼりたてはたいていそうなのに敢えて無濾過≠強調しているあたり、昨今のブームをきちんと理解しておられる。
 それはそうと、生酒とどこにも表記されていないからもしや火入れ?(マサカソンナコトハ)との疑念を一瞬抱いたが、よくラベルを見たら『生酒ですのでお早めにお飲み下さい』と書かれていた。ということで、生酒である。
 しかし、繰り返すが半年以上前の出荷品である。極めてギャンブル性の高い商品といえよう。半年の熟成を経てものすごく旨くなってるか、若々しさが抜けて落ち着いているか、それとも老ねて不味くなっているか、すべてはセブンイレブンでどういう育ち方をしてきたかにかかっている。
 ツーッ・・・。
 旨い!
 新酒のころの華やかさは無論消えているが、穏やかな甘味があって実にいい。度数が高いから飲み応えももちろんある。こんな素晴らしい売れ残り商品を処分しないでくれてありがとう、セブンイレブンさん。
 なお、飲むときは常温よりもきりっと冷やしたほうがいい感じだな。



吟雪 江戸造り 山廃純米吟醸
 蔵元の顔的商品。
 さて、これをどこで買ったか、ちょっと書くわけにはいかない。書くとお客さん殺到して店の経営圧迫してしまうかも知れないから。
 どういうことかというと、ちゃんと値札(1456円)のついてる本品をレジに持って行ったところ、店のおばちゃん(常連客とおぼしき人と話し込んでた)、「ええと・・・1000円でいいよ」とおっしゃるのである!
 たしかに個人経営のお店の場合、レジ打ちの際値段を勘違いすることは案外あるものだけど(いや、デパートでもあったな。5年くらい前、宇都宮西武で「東力士」の大吟醸買った際、店員さん何を勘違いしたか1500円くらいの値段を言ってきた。根っからの正直者である僕は店員さんの誤りを指摘してちゃんと正価を払ってきたが、そんなことよりも今思うとよくぞ5000円もする大吟醸を自腹で買ったもんだと思う)今回は完全に善意でディスカウントしてくれたのである。ちなみにこのおばちゃん相当話好きとみえて(酒屋さんは大抵そうですけどね)「このお酒、美味しいよ」「たまには、いいもの飲まなくちゃね(たまには≠強調されるあたり、俺の本性を見抜かれているようで・・・)」とか、よくしゃべるしゃべる。常連客のおばちゃんまで話に加わり、「これ、武蔵村山の酒だっけ?」とか訊いてくるし、初めて行く酒屋さんは緊張するけれど、こういうお店(地酒専門店ではありません)は素敵ですよね。
 さて、何故おばちゃんは値引きしてくれたのか? 常連客のいる前で太っ腹なところを見せてあげようと気持ちが働いたのかも知れないが、もうひとつ理由として考えられなくもないのが本品の出荷年月。2002年9月だと。↑のしぼりたてよりもっと古い。もうかなり古い入荷品であることを承知のうえで値引きしたのかも。
 そうはいってもボディのしっかりした山廃である。時を経て味が良くなっている可能性も十分ある。実際そうだったのだが。
 もしこれが非・吟醸であれば無条件で燗つけて飲むところだが、吟醸であることに敬意を表して少し冷やして飲んでみる。おっと、これは案外いけるぞ。吟醸酒だと頭にインプットして飲むとちょっと違うけれど(なにせ酸度2.0)おそらくアルコール分が高いので(17〜18度)冷やでも飲み応えがあるのではと推測される。たとえば、冷やして白ワインの代わりにするなんか良さそうだ。
 しかし、僕はやっぱり燗ですな。あまり温度が低すぎるとしょっぱさが前面に出るが(それはそれで悪くない)40〜43℃くらいだとバッチリ。甘味がグンと引き立ちます。

 こうしてその実力を知らされると、「吟雪」の本醸造あたりの山廃仕込を飲んでみたいとの感は強まるばかり。

■そんなわけで、多摩都市モノレール
 ご存知のとおり、首都圏の鉄道網は山手線の円を中心に放射状に広がっている。で、それら放射線と放射線を結ぶ線というのがもうひとつ充実していないわけですね。しかしとにかく、多摩都市モノレールが開通したことにより、我々湘南ボーイが多摩丘陵にピクニックに行くのも便利になったし、たとえば東大和市民が多摩センターのペンタくんに行くのも便利である、というわけだ。
 てなわけで乗ってきました、多摩都市モノレール。


↑一日乗車券。
これを駅で買ってLet's Begin!
↑始点、多摩センター駅。
この左のほうに噂の「ペンタくんビル」がある。
↑大塚・帝京大学駅のホームから。
画面右、「18歳未満立入禁止 ?」の謎の看板が。
↑体育館≠ニ名のつく駅が2つもあるのがこのモノレールの特徴。
泉体育館ではママさんバレー大会やってた。
↑モノレールは高いとこを走るうえにスピードが緩いので、車窓風景も最高。
こんなかぶりつき席はヲタ以外にも大人気。




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