岐阜県
同じ岐阜県でも美濃と飛騨では地酒事情がまったく異なると考えてよい。美濃地方では結構な数の蔵元があるにもかかわらず、地元の酒の扱われ方は決してよいとはいえず、他県のナショナルブランドに侵食されている感がある。当然カップ酒などそうおいそれとは手に入らない(存在しないわけではないが、市場がごくごく限定されている)。一方飛騨地方では地元の酒を大事に大事に扱っており、一般の酒屋はもちろんのことスーパー・コンビニ・量販店に至るまで飛騨の地酒で埋め尽くされる。だからカップ酒も容易に入手可能である(にごり酒・原酒のカップが多く存在するのも特徴)。普通酒への糖類添加も大部分の蔵元で止めているようだ。
白真弓
平成の大合併とやらで飛騨市などという救い難い愚かな名前の自治体になってしまったが、小京都・古川のお酒である(「やんちゃ酒」が有名)。↓で紹介している「蓬莱」としのぎを競い合う存在で、「蓬莱」がカップ酒を含めて大消費地・高山市内にも深く食い込んでいるのに対し、こちら「白真弓」は高山でも特定名称酒を中心によく見かけるけれど、ことカップ酒に関しては古川の地まで足を運ばないとなかなか手に入らないような気もする。ただし古川であればスーパーだろうがコンビニだろうが楽勝で入手可能。こちら佳撰カップは203円、上撰だとあと20円くらい高い。
実は今回購入したスーパー、お酒の扱いがいまひとつでこのカップ酒も若干ほこりをかぶったりしていたもので心配したのだが(生鮮品は新鮮でした、念のため)、これはいいお酒である。雑味がなくて飲みやすい、後口もグッド。下で紹介した「久寿玉」や「深山菊」よりも若干淡麗な印象を受けた。
どぶろく娘
世界遺産・白川郷合掌造り集落の一大イベントといえば「どぶろく祭」。そのイメージからなのか、あるいはしっかり地域文化に根付いたものなのかはわからないが、飛騨地方ではどぶろく風にごり酒が広く流通されている。白川郷にはどぶろくを仕込む神社以外には清酒の蔵元は存在しないので(「どぶろく祭りの館」では祭の時でなくてもお祓いを受けるとどぶろくをいただけるようだが、白川八幡神社で仕込んだものなのかは不明)酒屋や土産物店で売られている地酒は必然的に高山や古川のものとなる。しかし銘柄的には絞り込まれているようで、よく目に付いたのは古川の蒲酒造場の商品と高山の「飛騨自慢」「久寿玉」あたり。ちなみに当ページいちばん下で紹介しているその名も「白川郷」、肝心な白川郷では極めて存在感が薄かった。
ここで紹介するのは「白真弓」の蒲酒造場製のにごり酒「どぶろく娘」。蔵元のホームページに掲載されていない銘柄なので、あくまで白川郷での販売に重点を置いているのではと考えられる。値段は観光地価格の350円、店によっては400円で売っているところもあった。
さて、私はどぶろく風にごり酒はあまり得意ではない。特に甘ったるいやつは(たとえ無糖加であっても)NG。今回「どぶろく娘」を買い求めたのは“辛口”と表示されていたからである。期待と不安が入り混じった気持ちで飲んでみたが・・・これは飲める。甘さを感じないわけではないが適度に酸味があるから大丈夫。奈良漬を肴に飲んだらもっとよかった。ただし、よーく冷やして飲むのが重要なのと(常温ではちょっと・・・)他の“清酒”をさしおいてまで飲みたいとは思わないかな、個人的には。
飛騨自慢
前回(2003年12月)高山を訪ねた際にはアルコール分が低いため購入を見送ったのだが、やはり飛騨高山を代表する銘柄、飲まずに済ますわけにも行かず、2004年5月の再訪時に購入。とにかく飛騨地方の酒を扱う店ならどこでも手に入る(と思う)。
繰り返しになるが本品の特徴は200ml入りでアルコール分14〜15度であること、北陸あたりではカップ酒はこれがデフォルトになりつつあるが、飛騨ではまだ他蔵元が追随する気配はない(たしか「飛騨自慢」の佳撰ブランド「老杉」も度数下げてないので、これは紙パックとカップ酒だけに適用していると思われる)。そんなわけで若干不安を抱えつつ口にしたのであるが。
上手く造ってます。味の乗りよく薄さは感じない。もっともかなり辛口なので200ml飲み切る頃にはちょっと舌が疲れる気がする。
久寿玉
飛騨高山におけるカップ酒四天王といえば「飛騨自慢」「深山菊」「蓬莱(これは古川の酒だが)」とこの「久寿玉」。「久寿玉」は全量特定名称、カップ酒も200円と220円の2種類あった。
JR高山駅裏手の方に(観光客は絶対に行かないような場所)運良く「久寿玉」のカップ酒自販機を発見。シンプルイズベストな素敵な自販機である。高山に代表される古い町並みの残る土地の場合、古い酒蔵が残っている反面美観のためカップ酒自販機など真っ先に撤去されてしまう傾向にある。僕のような、カップ酒自販機のフォルムをとても美しいと感じる人間には至極残念な話である。
味。においも味も濃厚。燗向きという意見もあるようだが個人的には冷やのほうが好き。
深山菊
国指定伝統的建造物群保存地区・上三之町にドカンと蔵を構える(有)舩坂酒造店の品。ここはカップ酒に力を入れていて、この普通酒(上撰)のほか原酒やにごり酒などあり、それらをセットにして冷凍みかんを入れる網(正式名称不明)に入れて駅やみやげ物屋で売ったりしていた。バラ売り商品としては原酒にいちばん力を注いでいるように感じられた。
さて、この商品のなんといっても特筆すべきポイントはそのキャップ。「コップ酒」と大書されている。カップ酒と表記しないあたりに蔵元のこだわりを感じる。
味。さすが上撰だけにボディがしっかりしていて旨かった。朴葉みそのような味付けの濃い食べ物によく合う。
蓬莱 小町桜
「蓬莱」は高山でなく古川の酒だが、高山でもよく見かける。
ここは佳撰クラスに「小町桜」という固有の銘柄をつけている。そういえば「飛騨自慢」も佳撰クラスは「老杉」という別銘柄で地元に親しまれている。これは全国的によくあるケースだが、他地区の場合それらは三増ブレンドや煮酒用途の酒であることが多いのに対し、「小町桜」も「老杉」も糖類無添加であるだけでなく、度数もほとんど下げていない。地元の愛飲家をとても大事にしていることがうかがい知れる。
今回本醸造の「久寿玉」、上撰の「深山菊」と飲み比べたが味に引けはとらなかった。あくまで個人的嗜好だが、飛騨の酒は燗つけるより常温で飲むほうが好み。次回飲むときは全然違う印象受けるかもしれないが(いいかげん)。
神宮橋
そのカップ酒との出会いは、ふとした偶然であった。
渋谷東急東横店で日本酒買った帰り、湘南新宿ラインに乗るので(あそこのホームは山手線のそれとえらく離れている)改札内から行かずに外をぶらぶら歩いて最寄りの改札である新南口から入場しようと思ったわけだ。で、ハチ公の側から線路沿いに歩いたらこちら側には改札がなく、結局かなり大回りして跨線橋をまたいで新南口へ向かう途中、酒屋の灯かりに気付き近づく。僕初めて行く土地で酒屋を発見すると、カップ酒自販機がないか必ずチェックするもので。
そしたら、ありましたよ。例の縦長のカップ酒自販機が2台、うち1台は「ハクタカグラス」の自販機なのになぜか「白鶴」を売っていた(「ハクタカグラス」自体は店内で販売)。そしてもう1台、自販機に表示されている銘柄が暗いことかつ達筆ゆえ判読できなかったのだが、とにかく200円投入して買ってみる。そして出てきたカップ酒が「神宮橋」なるもの。神宮橋?全然知らない銘柄である。
キャップをよく見ると、発売元が渋谷酒販協同組合となっている。いわゆる組合手印銘柄か。いわれてみれば神宮橋という銘柄、渋谷ならではである。ところで、製造元はどこだ?キャップの脇の見えにくいところを見ると・・・おっ、岐阜県中津川のはざま酒造である。はざま酒造といえば昔「恵那山」今は「五味饗宴」で注目を集めつつある蔵元、僕もちょっと興味を持っていたところだ。まさかこんなところでカップ酒にお目にかかれるとは。
とにかく家に持ち帰り、はざま酒造のプロフィールを同社ホームページ(かなりきちんと作られている)で調べる。「恵那山」ブランドは本醸造以上、他に普通酒ブランド(こっちのほうが古いのか)に「雛鶴」というのがあり(さっき読めなかった自販機に書かれていた文字はこれだった)HPで紹介されている飲用の酒でいちばん安い精撰も糖なしと紹介されている(料理酒は糖入りに違いない)。ま、これより安いアイテムがある可能性だってあるけれど、どんなに正確を期そうと努力しても所詮間違いだらけの拙サイトだし、構わんでしょう(卑屈な性格だなぁ俺って)。
味。決してきれいに造られていない、しかしだからこそカップ酒としてのアイデンティティを発揮しているといえよう。ちょっぴり辛口。無理に冷やしたり燗つけるよりも常温で飲むのがいちばん旨いような気がする。
女城主
恵那地方、岩村の酒。最近評価を上げているようで、松崎晴雄氏も『Tastes
of 1635 日本酒ガイドブック』で紹介している。
発見場所はなぜか愛知県の足助にあるコンビニ。「菊姫」や「立山」を正価で売っているような良心的な店なのだが、もし「女城主」の評価を耳にして仕入れているのなら大したものだ。
さて、松崎氏は上記の著の中でこの蔵元のことを吟醸酒と純米酒のみを造る吟醸蔵≠ニ紹介しているのだが、今目の前にあるカップ酒は特別本醸造ですよ、松崎さん。ちなみに同社の古くからの銘柄「ゑなのほまれ」には普通酒(蔵元曰く吟醸並みの原料使用≠ニのことだが・・・)もあるようです。
もちろん我がカップ酒マニアとしては少しでも安い酒が飲めるのは大歓迎である。この商品は228円税抜き。本醸造としては妥当な価格だろう。
味についてはさすがに旨い。値段考えれば当然ともいえるが、常温でも燗つけてもよかった。ここの蔵元自身、味に重点を置いた酒造りをしているようで、カップ酒にもそれが表れているといえそう。岩村という町自体、古い町並みが残っているようなので訪れてみたくなった。
千代菊 ペットカップ
新幹線の駅の中にはほんとどうしてこんなとこに駅作ったの?てところが少なからずあるが、岐阜羽島なんてのはその最たる例だろう。今まで岐阜市内に行くにはここから名鉄で行くのが便利かなと思って何度か利用したのだが、名鉄の本数は少ないし結構時間かかるし、何より駅前がスカスカで時間をつぶせない。これからは名古屋で乗り換えることにします。
岐阜羽島(名鉄だと新羽島)から2つ目、羽島市役所前駅から古めかしい商店街が延びていて(昭和マニアには堪らないアイテム多し)、その中に「千代菊」の蔵元がある。歴史は相当古いらしい。
さてこのカップ酒、名前のとおりペット容器入りである。ペット容器は焼酎の専売特許だが、最近日本酒にもぼちぼち見かけるようになってきたな。
今回購入したのは蔵元の前の自販機(冷却:220円)のものなので管理はほぼ完璧。味も平均的ではあるが良くできていた。まあ、環境派のみなさんに言わせるとペット容器というのは何かと問題があるそうなのでどうかとは思うが、割れる心配がないというのは確かに便利ではある。これからペット入りカップ酒も増えて行くのだろうか。
白川郷
有名な純米にごり酒のカップ酒版である(税抜272円)。実際に蔵元があるのは大垣市(奥の細道むすびの地のすぐ近く)。
にごり酒については、糖類入りのやつは論外としても個人的に苦手なんです(「月の桂」「神亀」に代表される活性にごり酒を除く)。いわゆるドブロク風のやつを何銘柄か飲んでみたが、正直全部飲みきれない。にごり酒って結構ファンが多いしニーズがあるのはわかるが、僕的には語る資格ないのでこのへんで。
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