富士錦(ふじにしき)
―富士錦酒造(株)―
■静岡篇はこれが最後です
地酒の真実$テ岡篇、長らく新規銘柄の更新が滞っておりましたが、久々「富士錦」の紹介であります。
なお、突然ではありますが、静岡篇については今回の「富士錦」の紹介をもってひとまず終了したいと思います。
理由はいろいろあるのですが、端的にいってしまえば静岡の酒について正しく語る自信がない≠アとに尽きます。
静岡の酒については思い入れの強いお方が多く、私のいい加減な知識認識では到底太刀打ちできないのでWebの世界での静岡酒紹介はそれらのエキスパートの方にお任せしようということ、それにいい加減なことを書いて関係者各位にご迷惑をかけたくない(実は後で反論された時に自分が受けるダメージを恐れているとはつくづく小心者である)ということです。
幸い芝川町の「富士錦」で地域的にもひと区切りつきますので(富士急バス管内)地酒の真実≠ニしての静岡酒紹介はこれにておしまい、ということにいたします。
■こんなところで超老舗、その他
僕は何年か前に富士錦酒造の所在地、芝川町上柚野(ゆの)を訪ねてきたことがある。この時は富士宮からバスで市内下条(「富士正」「白糸」の蔵元所在地)まで行き、そこからてくてく歩いて(30分はかからなかったと思う)上柚野まで出て、バスで富士宮まで帰ってきた。春秋の気候のいい時分ならなかなか悪くないウォーキングコースだが、逆コースだと登り坂が多くて骨が折れる。なお、平日の夕方に上柚野→富士宮のバスに乗ると、近所の工場のパートのおばちゃんたちが大量に乗り込んでいて車中賑やかなことこのうえない。
この上柚野というところ、蔵元周辺はそれなりに開けているものの立地的にはかなりとんでもない場所である(身延線芝川駅から直行するバスがない)。そのことと、「富士錦」という普遍的な銘柄、それに伊豆などの観光地でよく見かけることを踏まえると新進気鋭の蔵元≠ニの印象を受ける。が、しかし、気鋭は気鋭なのだが老舗も老舗、超老舗なのである(なんと元禄年間年間創業)。
で、どういうところが気鋭かというと、上にも書いたとおり純然たる地酒の存在が手薄な伊豆半島等の観光スポットに深く食い込んでいること、かといって蔵元が集中している富士宮市内でも十分な販路を開拓していること、つまるところ伝統と品質に裏打ちされた信頼を獲得しており、同時に商売上手ということなのだろう。そういう点では西の「花の舞」と同タイプの蔵元という印象を僕は持っている。
唯一残念なのが佳撰クラスの普通酒に糖類が入っていること。無糖加の「しぼりたて」が非常に旨いだけに。
■飲んでみました
富士錦 しぼりたて 普通生詰原酒
おそらく現在において「富士錦」ブランドでもっとも知名度の高い商品。過去に2度、伊豆みやげとしていただいたことがあり、3度目にしてはじめて自腹で購入した(於:富士宮市内の酒屋さん、1030円くらい)。
19〜20度の普通酒(無糖加)で、最初から生生ではなく一回火入れして出荷されている。管理の良くない観光地での販売を念頭に置いてそうしているのだとすれば、なかなかの好判断といえよう(生生も飲みたいけど)。
さて、この酒初めて飲んだときはほんと飛び上がるくらい旨いと感じた(まだ、いわゆるしぼりたて≠飲んだ経験が少ない時期だった)。さすがに3回目ともなると感動も薄れてはくるけれど、やはり、相変わらず旨い。原酒ならではのとろ〜んとした甘味がなんともいえない。生生ではないからはじけるような酸味はないが、その分管理には比較的神経を遣わなくて済む。「旨い普通酒」の入門篇として絶対お勧めである。
なお、このちょっとコテコテしたラベルのデザイン、蔵元のオリジナルではない。石川の「天狗舞」しぼりたてが同じラベルを使っている。
富士錦 純米酒
最近忘れられがちだが、「富士錦」といえば早い時期より「天然醸造」の名の下に純米酒を世に出し、評価を得てきた。ということは、純米づくりの腕には相当長けていると考えていいだろう。実際、そのとおりであった。
このレギュラー純米酒、富士宮市内あたりでもごく普通に売られているが、何故か僕は静岡市街、新静岡センター近くのコンビニ「モンマートつかもと」で購入。当然のことながら静岡市で買わなくてはならぬ必然性はない(予断ながら上記コンビニ、モンマートゆえ酒の品揃えはなかなかいい。特に「満寿一」は各アイテム充実)。値段、税抜き1070円。
さて、裏ラベルを見て少し驚いたのが酸度の高さ(1.6)。かなりの濃醇型のようである。ところが。
これが案外すっきりしているのですよね。濃醇型の純米酒って、冷めたくして飲むと土っぽくてダメなケースが多いのだが、これは不思議とするする飲める。ただし、ちょっと雑味は感じるかな。
そこで燗。これがもう、ドンピシャであった。雑味がスッと消えて実にふくよかな味。あまり熱くし過ぎるよりもぬる燗のほうがよさそうだ。いずれにしても、旨い。
そういえば天然醸造≠フ朋友、「富士正」の純米酒も素晴らしく燗上がりしたっけ。古くから純米酒を世に問うてきた蔵元ならではということか。
「しぼりたて」と純米酒、2本のしっかりした柱を持つ「富士錦」、素敵ですね。
■本当になにもない芝川町
いやあ、参ったね。本当になにもないや。
一応町の中心は身延線芝川駅周辺なのだろうが、駅から5分歩いたあたりに町役場やら町内唯一のコンビニやら竹の子マン(エスパルスのユニフォームを着て竹の子を売っている謎のお兄さん)やらが集中しており、そこから先、もうなにもない。
芝川のもうひとつ先の駅、稲子のあたり(といっても相当距離ありそう)には「ユー・トリオ」なる日帰り温泉施設があるが、恐るべきことに日曜・祝日は(町営)バスの便がない。町が観光スポットして「ユー・トリオ」を盛り立てて行くつもりなら、休日にこそバスを走らせるべきだと思うんですけど・・・。
そんなわけで芝川町、とりたてて紹介するものもないのですが、内房地区(芝川駅から徒歩30分くらい)にこんな廃スナックの看板がありました。
涙愛と書いてルアー・・・日本語って素晴らしい。