富士正(ふじまさ)
―富士正酒造(資)―
■テレビに出てた
ことし1月、たまたま所用で僕はさいたま市内のビジネスホテルに投宿していた。
地方(というとさいたまのみなさんに叱られるが)で宿泊するときはローカルなTV番組を観るのを楽しみにしているので、その夜もローカルなテレビ埼玉をなんとなく観ていたわけである。そしたら、地酒紀行≠フような番組が始まった。これはラッキーと思い、どこの蔵元が紹介されるのか見守っていたところ、出てきたのはここ、富士宮市の富士正酒造であった。
若い女の子のレポーターが佐野社長と古川杜氏にインタビューするというスタイルで、飄々とした社長さんと温厚そうな杜氏さん、なかなかいいコンビだななどと思いながら観ていた。
さて、商品紹介の段、古川杜氏が同社の普通酒ブランド「千代乃峯」に対し、醸造用糖類を添加せず、お酒本来の味を生かすよう努めている≠ニいう主旨の発言をなさった。そこで大写しされた「千代乃峯」1升瓶の肩ラベルの原材料表示には米・米麹・醸造アルコール・糖類≠ニ…。
どういうことなんだよおーーーっ。
この疑問は9か月後に富士宮市内の酒屋で現物を見、原材料表示に糖類の二文字がないことを確認して氷解した。これはあくまで推測だが、「千代乃峯」は平成13酒造年度より糖類添加を止めたが、TV取材時(放映が1月てことは前年10月頃か)は出荷前で、商品撮影には糖類添加のものを使用した、ということだろうか。いずれにせよめでたいことである。
■アットホーム
僕は例によって蔵元のことを直接存じ上げてるわけではないけれど、社長さんの酒は嗜好品、嗜好品の重大要素は造り手の感性、消費者ニーズのみにおもねていては嗜好品としての価値がない≠ニいうお考えに個人的には同調する。もちろん正反対の意見をお持ちの方もいると思うけれど、蔵元の個性は多様な方が面白いと思うし、富士宮市の3蔵元については各々独自の個性があって素敵であると思う。
ホームページを拝見する限り蔵元と蔵人達とのチームワークもいいようだし、社長夫人も活発な方のようで大いによろしいが、日記の更新が3年半前からストップしているのが…。
■飲んでみました
天下泰平 午年
富士正酒造のお酒は富士宮市内ならどこでも売ってるわけではない。仮に売ってるとしても限られた銘柄2〜3種類、て感じのところが多いようだ。
そんなお店のひとつ、上井出(白糸の滝の入口あたり)にある福原酒店でゲットしたのがこれ。
福原酒店については拙ギャラリーでも紹介したが、富士宮+芝川の4社の商品をプライヴェート・ブランドとして多数出している。なかなかマニアックな商品もあるので白糸の滝や朝霧高原に寄られる際はちょっと覗いてみるとよかろう。
さて、店内のさほど大きくない日本酒冷蔵庫を物色していたら富士正酒造の約1年前のアイテムを発見。しぼりたて≠ニ貼り紙がしてある。ただし生≠ニかの表示はない。一般的にいえばしぼりたてとは生酒のはずだから生酒とは思うのだけど、その辺の説明がラベル上で十分になされないのがPB商品の難しいところである。ちなみに、アルコール分15〜16度で特定名称表示も特にないので、これが後々普通酒の「千代乃峯」として出荷されるのだろう(値段:1200円くらい)。
日本酒も1年経つと良くも悪くもなる。この商品はずっと店の冷蔵庫に入っていたようなので結構期待していたのだが…。
まず冷やして。これはやはりちょっと1年経った味って感じかな。
次に燗。これはあまり向いてないかも。
どうやらいちばん旨いのは常温といえそうだ。これが原酒で1年経ったものだと、また全然違う結果になる気もする。
※開栓1週間後くらいが味が落ち着いて旨くなったぞ。
富士正 純米酒
富士正酒造といえば、三増酒全盛の昭和40年代に「富士天然醸造」なる純米酒を世に出したことで知られている。そんなことで純米酒には今でも蔵元の思い入れは大きいようで、「富士天然醸造」銘は今でも存在、他にも純米アイテムは各種豊富である。
これは蔵元からほど近い土佐屋酒店で購入の純米酒。
少し話がそれるが、静岡新聞社の情報サイト「アットエス」内『しずおか蔵元ウォッチ』は県内蔵元のインタビューをなかなか上手にまとめているが、富士正酒造の記事内『お求めはこちらで』で紹介されてる酒屋さんを一通り回ってみた。これがもう、見事なまでにオールドタイマーな酒屋さんばかりで、ちょっと買い物をするのに気が引ける。そんな中唯一まともな(上の手の日本酒を冷蔵庫で売ってる)酒屋さんがここ、土佐屋酒店だった次第。ちなみに、ここから日蓮正宗総本山・大石寺までは歩いて5分ほど、「富士錦」の蔵元所在地・芝川町上柚野へもその気になれば歩ける(過去に経験あり)。
さて、富士正酒造のホームページには全商品一覧≠ェ載っている、が、この純米酒は載っていない。ま、こういうケースはよくあることだが。税抜1300円という値段は純米としてはちょっと高級めのアイテムになろう。
ということで、純吟ぽい味を期待して冷やで飲んでみたのだが…これはもう、見事なまでにオールドタイマーな純米酒の味であった。てなわけで燗をつけてみたら…完璧に化けた。冷やだと感じる土くささが消え、実にまろやかな味になったのである。まろやかといってもそこにはしっかりと純米酒としての自己主張が残っている。日常飲む純米酒としては若干お高いが、燗上がりの醍醐味を味わえるお酒としておすすめです。
■焼きそばその2(まさか3はないだろうな)
前回「高砂」の項で富士宮焼きそばについていろいろイチャモンつけたが、やはり富士宮に行けば焼きそばが食いたい。
ところで、話は唐突に変わるが、よく関東者はお好み焼き定食と称してお好み焼きをおかずにご飯を食したり焼きそば定食と称して焼きそばとご飯を同時に食したりする関西人に対して軽蔑の眼差しを送る。主食もおかずも炭水化物だなんてダッセ〜、てな風に。しかしそんな関東者の手元口元をよくよく観察していると、コッペパンの間に焼きそばの挟まった食物=焼きそばパンなどぱくついていたりするものだから、もののあはれを感じずにはいられない。
そう、今回のターゲットは富士宮焼きそばパンである。
富士宮駅裏のジャスコに入っているパン屋さんはチェーン店ながらなかなか高レベルのパンを供してくれるのでおすすめなのだが、ここで叶屋(富士宮の製麺業者)製焼きそばを使った焼きそばパンが買える。ただし人気商品らしくいつ行っても手に入るとは限らない。前回行ったときは売り切れてた。今回訪れたときは2本だけ残ってた。1本200円であった。
さて、ここで我々の前に重大な難題が立ちふさがる。一般的に焼きそばは熱いうちに食わなくてはならないはずだが、焼きそばパンに挟まってる焼きそばは作り置きのものである、ということだ。当然、冷えている。伸びている。焼きそば専門店は言うに及ばず、アイパー兄ちゃんの焼くお祭り屋台でこんな代物出されたら怒りに拳が震えるであろう。
ところが、この冷えた焼きそばパンが、旨いのである。冷めて伸び切った焼きそばがコッペパンに包まれることにより新たな生命を吹き返すさまは感動的ですらある。(でもあったかい焼きそばパンはもっと旨いぞ≠ニいう意見はとりあえず無視する)
それに、焼きそばパンは、片手で食える。ふつーの焼きそばに、こんな芸当はできない。片手で食えるから、ケータイで友達とおしゃべりしながら、車の運転しながら(危ないぞ)、ヒットマンラリアットを放ちながら(阿修羅原かよ)、それに××××しながら…焼きそばを味わえるのである。
そしてなにより、焼きそばパンはどこへでも持ち歩ける。まさかこんなとこで焼きそば食えないだろ≠トな場所でも焼きそばを味わえるのである。てなわけで、僕もトライしてみました。日蓮正宗総本山・大石寺三門前で焼きそばパン。
こんな神聖な場所でなんて不謹慎な…てな気もするが、まあ三門前で『第三文明』誌を広げるよりはマシでしょう。