dancyu 2000年3月号 日本酒特集を批評する

 今年も出ました『dancyu』の日本酒特集。キャッチは旨すぎる!日本酒≠ナある。
 出版媒体で日本酒をきちんと総括したものがほぼ壊滅状態である昨今、『dancyu』や『BRUTUS』の年1回の特集は貴重な存在である。別にマニアはプレジデント社の回しもんではないが、きちんとした特集はきちんと記録しておくべきである。と思う。
 以下、コンテンツ毎にマニアの率直な感想を記す。

※揺るぎない味わい、「神亀」の真髄
 いきなり「神亀」賛歌から始まった。関東圏住民にとって「神亀」って比較的デパートとかでも簡単に手に入るので、地方ではどの程度神格化されているかがいまいち見えてこない。ま、大真面目に造っている蔵元であることはいうまでもない。
 さて、本文を執筆するのはこの人しかいません、藤田千恵子女史。10年前「居酒屋大全」の中でこの埼玉の小さな蔵元のことを熱く語り(もう10年も経ってしまったか・・・歳食うわけだ)第二次地酒ブームの一翼を担った人。が、本人の興味の対象が日本酒にとどまらず食べ物やら銭湯やらまで広がる中で(ビジュアル的にもそこそこイケるのも災いし)雑誌ライターとして便利使いされつついつの間にやらフェードアウト、と思ったら最近子供を産んで復活を果たした。とにかく日本酒に対する切り口の鋭さ(そのくせ惚れた銘柄はとことん誉め尽くすが)は今なお随一。出版社の方に御願い。どこか藤田さんに日本酒の本書かせてあげて。
 話がそれた。「神亀」を賛辞しつつ日本酒の出来るまでを写真で追うなど憎い構成である。デパートでは大宮高島屋がアイテム数を揃えてるのでご参考まで。

※注目必至!若き造り手、小さな蔵の醸す「いま旬の酒」
 その名のとおり、生産量が1000石以下で、蔵元の跡取りが造りの現場に入っている注目の蔵元を紹介している。北から順に挙げると「綿屋」「栗駒山」「会津娘」「飛露喜(前から感じているんだがこのネーミング夜・露・死・苦≠想起させないか?…失礼しました)」「太平海(府中誉)」「琵琶のさざ浪」「喜正」「隆(丹沢山)」「根知男山」「早瀬浦」「志太泉(まだ三増造ってる)」「醸し人九平次」「天遊琳」「松の司(どこやの酒屋がここの三増酒は旨い≠ニ書いていたが本当かねえ)」「奥播磨」「雑賀(三増蔵)」「王禄」「歓(び)の泉)」「小笹屋竹鶴」「悦凱陣(三増蔵)」「美丈夫」「南(玉の井)」「美田(三井の寿)」。さすがにどこでも手に入るというわけにはいかないラインナップ。
 現時点での日本酒のトレンドを探るという意味ではいい企画だが、マニアが彼らに望むのは、まず三増酒をやめること。彼らの先駆者である高木酒造ではいまもって地元で三増酒を流通させている。たしかに超えねばならぬハードルは多いと思うのだが、それを決断できるのは造り・流通双方に携わることのできる彼らをおいて他にいないのだから。

※一度は飲みたい!2000年の定番酒。
 地酒ブームを支えてきた銘柄を改めて検証しようという企画。こういうのはいいね。
 掲載銘柄をまた北から紹介すると(【 】内はマニアの評価)、「浦霞【〇】」「大七【◎】」「四季桜【×】」「清泉【〇】」「手取川【〇】」「三千盛【〇】」「磯自慢【〇】」「月の桂【〇】」「賀茂泉【×】」「香露【×】」。いうまでもなく、×印は三増蔵、◎印はカップ酒ギャラリー掲載蔵、それだけのことです。

※本物の美酒をとことん楽しめる店
 「十四代」「黒龍」「磯自慢」「神亀」「鶴の友」の各銘柄をそれぞれコンプリートに近い状態で揃える飲み屋の紹介、という今一つ意図不明な企画。ちょっと気になったのが例のはせがわ酒店の長谷川氏が今年の「磯自慢」は吟醸生酒原酒がお薦め∞今年の「開運」はすべての酒が特別にいい。何があったのか?と驚いたほど≠ニ語っているところ。「磯自慢」はともかく「開運」ならあちこちで入手可能。さあ、今すぐ酒屋に走れ!

※酒への愛が深まる「蔵見学」に行こう!
 ありがちな企画であるが、紹介しているのが「舞姫(カップ酒はデザインが素敵だゾ)」と「ダイヤ菊(うーん、この銘柄の名前久々に聞いた)」の2つだけというのはちょっと・・・。

※酒が進む!絶品「酒肴」揃い踏み
 こういう企画は「dancyu」の独壇場だよね。みんな旨そう。

※酒造りに挑む、パワフルな女性たち
 最近の雑誌の日本酒特集では必ず登場する企画。今回は「るみ子の酒」のるみ子さん、「福源」の聖子さん(この人のことは初めて知ったが、写真を見る限りかなりイッちゃってる系)そしてまたまた登場「鳳桜」の桜子さんの3人。これに「会津中将」のゆりさんと「富久長」の…名前忘れた…さんを揃えれば完璧だね。ネットアイドルよろしく大活躍のみなさんだが、女性が蔵に入るということが当たり前になってこそ(焼酎の世界ではそんなに大騒ぎされない)日本酒業界が一歩前進しることになるといえるだろうか。

※今夜もほろ酔い。「燗」に向く酒、旨い酒
 「dancyu」が賢いのは、こうして地酒を賛美しながらナショナルブランドへの気配りも忘れないところだろう(さすがプレジデント社)。この企画は燗に向く酒は何かや上手な燗のつけ方を紹介している、と見せかけてナショナルブランドの燗向きアイテムを紹介するのが真の目的である、というのは邪推に過ぎるか。

好き勝手書かせてもらったが、全般的な充実度はかなり高い。しかし、僕たちが絶対に忘れてはならないのは、このようにメディアで頻繁にとりあげられるカリスマ蔵元の陰で地道に酒造りに励むマイナー蔵がまだ全国に多数点在しているということ。情報というやつはとにかく一極集中する傾向にあるので、それらの存在はなかなか明らかにならないが、カリスマ蔵元との酒質の差はその認知度の差ほどあるのだろうか。本来、そういうマイナー蔵を掬い上げる役割はネットの世界にあると思うのだが(一応マニアもそのような使命を胸に本サイトを作っているつもり)、満足できるサイトはなかなかないのが現状である。自分のも含め。
 あと、どうでもいいことだが「dancyu」の酒特集の常連、酔っぱライター″]口まゆみ女史の姿が見られなかったのは残念。昨年出た日経の日本酒ムックの座談会に出席していたが(小檜山派にくら替えか?)そんなもんでお茶濁してないで原稿書きなさい。



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