2003 No.2

2003年12月9日発行

   支部ニュース 本号の見出し

      ●副支部長より
      ●研究室紹介
      ●支部会員の声

      

     日本化学会北海道支部 事務局

        北海道大学大学院工学研究科
        分子化学専攻内
        E-mail:csjh@nifty.com

支部ホームページへ戻る>>>
支部Newsバックナンバー/2000〜2002>>>
支部Newsバックナンバー/2003〜>>>


「副支部長より」

「高校−大学間科学教育連携」の時代

日本化学会北海道支部副支部長
  高橋 信夫 (北見工業大学機能材料工学科)

 

 日本化学会北海道支部北見地区の幹事は、ほぼ年齢順に機械的に決まります。2年前、「次はあんただから」と言われて、何も考えずに引き受けたのが大きな過ちでした。引き継ぎの幹事会で、2003年の夏季研究発表会が北見で開催されること、それに加えて、その年が日本化学会創立125周年に当たり、その記念事業が北見でも開催されることになっていることを知りました。とんでもない時期の幹事を引き受けてしまったものだと、慌てふためき大いに後悔しましたが後の祭りでした。そんな頼りない実行委員長ではありましたが、会員の皆様の暖かい御協力をいただき、二つの行事とも大きなトラブル無しに、何とか終えることができました。この場をお借りしまして、皆様の御協力に厚く御礼申し上げます。

 さて、北見での夏季研究発表会の開催は6年ぶりとなりますが、その間、大学を取り巻く情勢は大きく変化しました。そのような中で、「高校と大学の教育連携」についての動きが活発となっています。各大学では、高校への出前授業を実施しています。また、文科省による「スーパー・サイエンス・ハイスクール」制度及び北海道版「スーパー・サイエンス・ハイスクール」制度、「高大連携講座を含むサイエンス・パートナーシップ・プログラム」制度も動いています。日本化学会では、小中高生徒に対してのサイエンスへの誘いを目的とした多くの事業を展開しており、北海道支部としましても、片岡先生(小樽商大)を中心に活発な活動が展開されていることは、よくご存じのことと思います。そのような状況の中、北見での夏季研究発表会にも、数は少しですが、高校生が訪れました。また、125周年事業の「記念講演会」についても、できるだけ多くの高校生に参加を呼びかけました。日程が文化祭と重なる高校もあり、当初予定した数には達しませんでしたが、それなりの数の高校生が参加してくれました。白川先生、茅先生、松本先生のお話は、高校生のサイエンスに対する興味の引き上げに、大きな作用を及ぼしたものと確信いたしております。12月13日に実施されます札幌での125周年事業では、野依先生の御講演と「高大連携」を主題としたパネル討論会が企画されています。「高大連携」と一口に言いましても、様々な切り口があり多くの問題を含んでいます。活発な議論が展開されることを期待いたしております。

 昨年のクリスマスには、白川先生から御講演受諾のお葉書という大きなプレゼントをいただきました。今年も残り少なくなり、忘年会シーズンの到来も間近です。筆を置くに当たり(そのうち、ワープロを閉じるにあたり、とかなるのでしょうか?)、会員皆様の御健勝と、御研究の益々の御発展を祈念いたしますとともに、楽しい忘年会シーズンをお過ごしになりますことを願っております。

 

                                                                  


「研究室紹介」

北海道大学 大学院理学研究科化学専攻
有機金属化学研究室 (澤村 研究室

[所在地]
〒060-0810 札幌市北区北10条西8丁目 理学部6号館 6-605

[構成]

教授 澤村 正也 (Masaya Sawamura)

  TEL: 011-706-3434 (直通)
  FAX: 011-706-3749 (教授室)
  E-mail: sawamura@sci.hokudai.ac.jp

  高知県に生れる(1961年)
  土佐高校 卒業(1980年)
  京都大学工学部合成化学科 卒業(1984年)
  同大学院工学研究科博士課程 修了(1989年)
  京都大学工学部合成化学科 助手(1989年)
  米国ハーバード大学化学科 客員研究員 (1993年〜94年)
  東京工業大学理学部化学科 助手 (1995年)
  東京大学大学院理学系研究科化学専攻 助手 (1995年)
  同 講師 (1996年)
  同 助教授 (1997年)
  北海道大学大学院理学研究科化学専攻 教授 (2001年)
  科学技術振興機構PRESTO「合成と制御」領域研究者(兼任)(2002年)

助教授 伊藤 肇 (Hajime Ito)

  TEL: 011-706-3432 (直通)
  FAX: 011-706-3749 (教授室)
  E-mail: hajito@sci.hokudai.ac.jp

  大阪府に生れる (1968年)
  大阪府立富田林高校 卒業(1987年)
  京都大学工学部合成化学科 卒業 (1991年)
  同大学院工学研究科博士課程 修了 (1996年)
  筑波大学化学系 助手 (1996年)
  岡崎国立共同研究機構分子科学研究所 助手(1999年)
  米国スクリプス研究所 客員研究員 (2001年〜02年)
  北海道大学大学院理学研究科化学専攻 助教授(2002年)

助手 原 賢二 (Kenji Hara)

  TEL: 011-706-2719 (直通)
  FAX: 011-706-3749 (教授室)
  E-mail: hara@sci.hokudai.ac.jp
  島根県に生れる(1975年)
  熊本高校 卒業 (1994年)
  東京大学教養学部理科一類 入学 (1994年)
  東京大学理学部化学科 卒業(1998年)
  東京大学大学院理学系研究科化学専攻修士課程 修了 (2000年)
  日本学術振興会特別研究員(DC1) (2000年)
  ニューヨーク州立大学ストーニーブルック校 客員研究員 (2000年)
  東京大学大学院理学系研究科化学専攻博士後期課程 中退 (2001年)
  北海道大学大学院理学研究科化学専攻 助手(2001年)

 

【代表者から一言】

 21世紀が幕を開けた2001年1月、原 賢二助手と6人の学部学生とともに、北海道大学の研究室をスタートさせて3年になろうとしています。ほとんど何の設備もなく、研究課題もすべて新規で、まさにゼロからのスタートでしたが、昨年は伊藤肇助教授を迎え、いよいよ研究室の形ができてきました。今年は新しい研究課題に関する初論文も報告することができました。
 「新機能分子の設計、合成に基づく反応開拓」が私たちの研究の機軸です。遷移金属錯体の配位子設計に加え、固体表面やナノパーティクルの化学修飾によって有機合成反応場を作り出す新しい試みも行っています。ゼロからのスタートした日の所信を忘れず、新しい化学を探求していきたいと思っています。

                                                                   


「支部会員の声」

  平野 博人   正会員

  (苫小牧工業高等専門学校物質工学科)

 苫小牧高専では、一般市民への研究・教育内容の紹介、理科系教育の推進などを目的としてさまざまな活動を行ってきています。昭和58年からは「中学生のための化学実験講座」を開催しており、今年で20回目を迎え、これまでの記録をまとめた記念誌を作成しました。この講座の受講者総数は324名を数え、そのうち高専に入学したものは49名にも上り、講座が果たしてきた役割の大きさを実感しています。
 
また、平成11年より「やってみよう化学」と題して、小学生以上の一般市民を対象とした研究室開放や実験講座、小学校・中学校への出前講座を実施しています。今年度は、土曜日に4回の実験講座を行い、稲わらからのはがきつくり、ナイロンつくり、炭電池つくりなどの内容でした。
  これらの講座を開催するにあたって、今一番の悩みは受講者集めです。苫小牧の都市規模によるものなのか、理科離れのためなのか、あるいは本校が交通の不便な場所にあるためか、最近は定員を満たすことができないでいます。市の広報に会告を載せることはもちろん、ポスターやチラシをつくり小中学校に配布するなど、いろいろ手は尽くしているつもりです。受講者を増やすために何か妙案があれば教えていただきたいと思います。

    

  吉田 安規良   教育会員

  (北海道滝川市立開西中学校教諭)

 日本化学会と私との関係で印象に残っているのは、初めて査読付き論文を投稿し、掲載されたのが「化学と教育」誌であったことです。そんな日本化学会とのお付き合いも、早いものでもう10年になろうとしています。最初は学生会員、その後就職して一度正会員になりましたが、化学の専門領域の最先端とは直接関係の無い教職の道へ進んだため、現在は教育会員として所属しています。
 学生時代は、生物有機化学(筋肉生化学)が主な研究対象でした。今は、化学教育方法論、化学教育教材開発を主な研究テーマとしています。論文の査読以上に厳しい指摘を受けるのは、共同研究者でもある「子ども達の目」です。私達の身の回りには、「化学」によって便利になったものがたくさんあります。そして子ども達は、「小さな化学者」となって、試験管やビーカーなどをつかった「実験」を楽しみにしています。しかし、「理科(化学)」の勉強そのものは「嫌い」なようで、「あまり実生活に有益だと思っていない」子が多いようです。
 本来、「化学」は有益で面白いものだと思います。しかし自分自身を振り返っても、「面白いなぁ」と感じ始めたのは、卒論実験も終わりに近づいたころでした。やはり、「わかってくる」と「面白くなる」のでしょう。今の教育は、「わかること」よりも、「興味・関心を持つこと」に重点が置かれています。しかし、公開授業研究会などの授業公開では、それがいつのまにか「面白ければそれでいい」にすり替わってしまったものもたくさんあります。そうした現状に危機感を持った私は、「新しい科学の教科書」(http://www.bun-ichi.co.jp/kyoukasyo.html)などの執筆へも参加しています。北海道支部のとりくみの目玉である大学教官の出前授業など、子ども達が「本物の化学」とふれあう機会が増えてくる中で、子ども達が「本物を理解」できる基礎学力向上へとつながる指導法の研究にも力を注いでいます。
 最後に、今私が指導方法や教材開発にとりくんでいる題材に「有機化学」や「生化学」があります。中学校の教科書に掲載されている実験のほとんどは「無機化学」です。「有機化学」は高等学校の教科書には掲載されてはいますが、あまり重要視されていないのが現状です。有機化学や生化学の領域は、今日の人間生活を取り巻く環境と密接な関係を築いています。これを子ども達により一層身近なものに感じてもえるような教材や、指導法、カリキュラム開発を研究しています。

    

  西形 孝司   学生会員

  (北海道大学大学院工学研究科)

 7月19日に北見工大で夏季研究発表会が行われました。札幌から会場まではかなりの距離がありましたが、北海道の雄大な景色を楽しむことができました。大学はきれいなビルが立ち並んでおり、発表はその一画を占有して開かれました。私も含めそれまでに蓄積したデータを、皆、10分程度の短い時間に濃縮しそれぞれの実験の成果を報告し合いました。苦労を重ねたデータはどれも優れた興味深い結果であり、大変有意義な時間を過ごすことができました。また、今回は日本化学会創立125周年ということもあり、発表会の翌日にノーベル賞受賞者である白川英樹先生らの記念シンポジウムが、北見芸術文化ホールで行われました。ホールは北見市特産の"はっか"のいい香りがたちこめる北見駅に隣接しており、我々の泊まったホテルからはそこを抜けて反対側にありました。一般市民も交えた先生らの講演はどれも表現が豊かで、聞いていて自然と興味が沸いてくるようなすばらしいものでした。事実、講演後の質疑は一般の方々からもあり関心の高さが伺えました。毎年の支部会では北海道地区の多くの方々の研究成果を聞くことができ、楽しみなイベントの一つです