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     Cosmy☆コズミィ/星空セラピー  No.75    2006.08.31
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    冥王星さわぎ
    
    
    この夏に天文学の歴史に残りそうな騒動がありました。
    ニュースがたくさん流れたのでご存じの方も多いでしょう。
    そう、「冥王星が惑星ではなくなった」のです。
    
    学生時代に「水金地火木土天海冥」と惑星の順を覚えた方は
    多いですよね。いや、この覚え方はこの夏までどなたでもそうして
    いたことでしょう。それが突然、「最後の『冥』は覚えなくて良い」
    ことになってしまったのです。
    
    あらためて、この急とも思える騒動を振り返ってみました。
    
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    惑星は非常に古くから重要な星として注目を集めてきました。
    もちろん、観測機器のない古代のことです。注目された惑星とは
    肉眼で見ることのできる五つ…水星、金星、火星、木星、土星の
    ことを指します。(そのほかはまだ発見されていませんでした。)
    
    星座を形作るたくさんの星々が「互いの位置を変えない」のに対し、
    惑星はそれらの星座を巡るかのように自分の位置を変えてゆきます。
    動くものに注目するのは人間の性でありましょうか。人々は「動き方」
    や「動く訳」「動いた結果」などに興味を抱き、地上の王位継承や
    戦争の行方などと関連づけを試みました。しかし科学という分野すら
    ない時代のことでしたから、その関連づけはいわゆる科学的ではなく
    神秘的であり、心理的でもあり、人によって解釈の容易に揺らぐ学問
    でありました。
    
    「天が私たちを操っている」という印象が一度できあがってしまうと、
    私たちはなかなかそれをぬぐい去ることができません。それゆえ、たとえ
    科学が無くても、星座、惑星、地上のできごとを結んだ「占星術」が、
    惑星の地位を高めることになりました。
    
    やがてガリレオさんやニュートンさんが具体的な観測や考察、検証を
    始めると、太陽系にも科学的なメスが入りました。太陽を中心に惑星が
    公転しているという、現在知られた地動説の宇宙観がようやく日の目を
    見たのです。この運動に伴う力関係も見出され、その解析方法まで考察
    されるようになり、惑星の動きは大変詳しく解明されました。
    
    ここから先は「計算や観測精度の向上」と「発見」の繰り返しです。
    
     木星の実際の動きが机上の計算と合わないことが分かり、新たな惑星
     の影響だと予想され、天王星が発見されました。(1781年)
    
     天王星の動きもまた計算と合わず、木星の時と同じ理由で新惑星の
     予想が立てられ、海王星が発見されました。(1846年)
    
     海王星もまた計算と合わず、冥王星が発見されました。(1930年)
    
    
    モデルを作り、実際との違いを見出し、その原因を突き詰め、そして
    新しいモデルを作り直す…天文学に限らず、現在ではあらゆる経験的学問
    に応用されている手法です。肉眼で直接見つけることができなかった
    三つの惑星も、このようにして惑星の仲間入りを果たしました。
    
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    冥王星が見つかって以降、しばらく太陽系の惑星発見はありませんでしたが
    当然のように「第十番惑星があるのではないか」という発想が出てきます。
    でも、それはもはや「惑星の軌道のずれ云々…」という理由からではなく
    外へ外へ、遠くへ遠くへと広がる観測技術の発達が大きかったように思い
    ます。実際、近年になって見つかった第十番惑星候補の星々は、「星空を
    徹底捜索」するような強引な方法論で見つかったものです。
    
    いっぽう、冥王星そのものに関する議論も始まりました。というのも、
    冥王星の特徴があまりにも他の惑星と違いすぎたのです。
    
     ・冥王星は地球の月よりも小さい天体です。
     ・冥王星は他の惑星の軌道面(黄道面)と大きく異なる軌道を通ります。
     ・冥王星を見出すきっかけとなった海王星の軌道のずれの計算は、後に
      誤りと判明。また冥王星のほうも海王星軌道にずれを生じさせるほど
      大きくないことも分かりました。
     ・冥王星にはその半分の大きさほどもある月(カロン)が発見されま
      した。ふたつ合わせてひとつの惑星と見なせるほどのペアです。
      これは冥王星自身にしてみれば、それだけ自分の存在が小さくなって
      しまったということです。
    
    しかし冥王星は「惑星」として発見されてしまったので、その後に
    「惑星らしくない」ことが分かってきたからと言っても、なかなか惑星の
    仲間から外すことができませんでした。広く知られてしまっていることや
    科学者のメンツなどいろいろあるでしょうが、何よりもこれまで惑星の
    定義というものが確立されてなかったので、惑星から外すためのきちん
    とした理由が見いだせなかった訳です。
    
    
    この夏の冥王星さわぎ、正しくは「冥王星をどうするか」という議論では
    なくて、「惑星というものはどんなものか」を国際的に定義した、という
    ことです。そしてその結果「冥王星は惑星ではない」ことになったのです。
    同時に他の惑星候補だった天体も全て「惑星ではない」ことになりました。
    
    この結論、なんだか少し残念な気はします。でも次の世代のことを考える
    と、スッキリした決まり事で分類されていたほうが良い気もします。
    これから先、他の恒星系に惑星が発見されたときなどにもこの定義は応用
    されることでしょう。
    
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    冥王星が惑星ではなくなったことで、教科書、参考書、そして図鑑なども
    大改訂を迫られます。特に教科書は夏に来年度ぶんの編集を終える時期
    なので、図や解説を書き換える時間も取れず大変な目にあっていること
    でしょう。
    
    反対に歓迎ムードなのは天文台、科学館、そしてプラネタリウムなど。
    展示装置や番組内容を構成しなおすので余計なお金がかかるでしょうが、
    それでも世間が星空に関心を持ち、来館してくれるならば大喜びですね。
    冥王星は手慣れたスタッフが扱う40センチ以上の口径の望遠鏡で
    直接見ることが可能です。もしみなさんのお近くの科学館や天文台で
    冥王星を見るチャンスがあるなら、ぜひお出かけください。
    
    なんにしても(惑星でなくなったとしても)、冥王星はちゃんとそこに
    存在しています。人間が何と呼ぼうと、どう分類しようとも、太陽系は
    今まで通りなんです。
    
                           (みゃお)
    
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