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     Cosmy☆コズミィ/星空セラピー  No.71    2004.08.31
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    立体感
    
    
    宇宙空間は当然「奥行き」があります。
    その果てしなさはあこがれや虚無感をもって人々に受け止められて
    いるでしょう。物理的にどれほどの距離なのか、あるいは測ることが
    できないのかは、現在でもまだまだ研究途上です。
    
    私たちの生活で把握している距離で考えたら、宇宙に「無限」と言える
    ほどの奥行きがあることは確かです。
    
    一方、私たちは小学校などで宇宙のことを「天球に貼り付いた星空」
    という簡易的なイメージで習います。こう考えることで星々が空を巡る
    理屈などを分かりやすく学ぼうとするからです。奥行きを想像する必要
    がなく、表面的な星空の変化のみを見てゆくのですね。星座の配置や
    四季との関連に、深遠な宇宙のイメージは要らないということです。
    
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    授業という枠に捕らわれず、子供達に星々を見せる「天体観望会」を
    年間に何十回か実施しています。天体望遠鏡で実物の星の輝きを
    観察するのです。雲に邪魔されよく見えないこともありますが、
    そのお天気の変化も含めて自然を感じ、味わいます。
    
    ところで天体望遠鏡は片目で見るものがほとんどです。
    望遠鏡を見ないほうの目は閉じるか、手で覆います。
    宇宙の表面を小さく切り取り、拡大し、それを片目で見るのですね。
    顕微鏡も微生物など小さなものを拡大して片目で見ますが、望遠鏡も
    基本的に同じものです。
    
    人間の目は二つあり、健常者は左右の目を使って周囲の遠近を感じ取れ
    ますね。このことは多くの方がご存じでしょう。左右に10センチも
    離れていない目ですが、こんな差でも右と左では景色の見え方に違いが
    出ます。近いほどズレが大きくなりますから、脳の中ではそれが
    「近い」という判断材料になるのでしょう。
    
    双眼鏡という機器もありますね。望遠鏡を二台並べた形をしており、
    両目で見ることができます。双眼鏡である程度近いところを見ますと
    左右でズレが生じますので、遠い、近いという立体感を体験できます。
    
    
    では双眼鏡で星を見たらどうなのでしょう?
    星々の光は無限とも言える遠方からやってきます。だから双眼鏡で
    見ても左右に差が出ません。最も近い天体であるお月さまを見ても、
    やはりそこらの風景や野鳥と比較にならないほど遠いので、
    ことさら立体的には見えないのです。
    
    ある天体が別の天体を隠す「掩蔽」や「食」という現象があります。
    これを観察すれば天体が前後になっている、というのは感じられます。
    でも、そこから宇宙の奥行きまで感じることはまず無いでしょう。
    紙芝居のページをめくるように、ひとつのスクリーンの表面で
    様々な事象が起こっている…宇宙の「見かけ」とはそんなものです。
    背景が真っ暗なのも、奥行きを感じられないことに拍車をかけます。
    
    
    歴代の天文学者や物理学者は、この天球と呼ばれるスクリーン上で
    起きる事実だけを記録し、宇宙には「科学的に」奥行きがあることを
    解き明かしてきました。これは信じられないような、素晴らしいこと
    でしょう。その数式たるや凡人のぼくなどはとうてい理解できる
    ものではありません。実際、かなり科学知識を持っている人でも、
    天を仰いだだけで「深さ」…物理的な距離…を自力で知りうることは
    不可能ではないでしょうか。
    
    
    ところが…私たちは体内のどこかで宇宙の「深さ」を知覚することが
    できています。原理的に立体を把握できないはずの望遠鏡や双眼鏡を
    見た子供達が「浮いてる」「立体に見える」と叫びます。
    単なる思い過ごしだよ、気のせいだよ、と片づけるのは簡単ですが、
    どうもそれだけではない、人間独特の感性を感じます。
    
    夕闇の向こう。森の奥。電気を消した部屋の暗がり。
    霧の中や、海の底、小さな藪の中ですら、深さを感じます。
    せいぜい十数メートルといった短い距離なのに、それ以上の奥行きが
    あります。湖底まで数メートルなのに、底なし沼と呼んでいます。
    
    心理的な深さが実際と違うのは当たり前だと思いますが、面白いのは
    たいてい「深い」と思ってしまうこと。分からないこと、知識の及ばない
    こと、行きたくないところ…そういったものへの畏れが、過剰なまでの
    深みを感じさせるのでしょうか。
    
    望遠鏡で天体を見ているとき「何だか恐い…」と思いつつ見ている子は
    少なそうです。比較的冷静な観察をしているようなのですが、それでも
    奥行きを感じ取り、また実際に「立体に見える」と表現する子はかなり
    多いのです。長いこと不思議だなぁと思ってきたことでした。
    
    宇宙。
    そこは機材の力だけでは補いきれない深さがあるのでしょう。
    
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    かつて果てがないと思われた大地や大洋も、今では4万キロも行けば
    一周できる地球の一部だと、皆知っています。人間は何十年か宇宙へ
    進出する努力をしてきましたが、宇宙全体で考えたら進んでないも同然。
    私たちが宇宙で距離感を持ち、果てしない、悠久の、深遠な、などと
    言わなくなる日は当分来ないことでしょう。
    
    天に貼り付いたような星々を地上から見上げ、
    そこに感じ取れるごくわずかな立体感を愉しみつつ、
    こんなことを考えています。
    
                           (みゃお)
    
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       発行:Cosmy☆コズミィ 
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